プログラムベースのビジネスについて知る
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- サプライヤーと OEM のピラミッドについて説明する。
- プログラムベースのビジネスモデルのしくみを説明する。
- プログラムベースのビジネスにおける一般的な問題と、Manufacturing Cloud がどのように役立つかを説明する。
- プログラムベースのビジネスを有効化して権限を設定する。
メーカーとサプライヤーのピラミッド
1 台の車には 2 万点以上の部品やコンポーネントが使われていることをご存知ですか? 自動車メーカーは、これらの部品やコンポーネントを多くのサプライヤーから調達していますが、それらのサプライヤーも原材料を他のサプライヤーに依存している場合があります。したがって、自動車業界におけるサプライチェーンモデルは、複数のメーカーとサプライヤーに依存していることになります。この構造は、各層がその上の層に材料を供給する階層型のピラミッドとして考えることができます。
では、これらの階層の詳細を見ていきましょう。
- ピラミッドの最上層は、自動車メーカーである OEM (Original Equipment Manufacturer) です。OEM は車両を設計し、サプライヤーにコンポーネントを発注して、最終的に車両を組み立てます。ピラミッドの次の 3 つの層は、コンポーネントを販売するサプライヤーで構成されています。
- ピラミッドの 2 番目の層は、直接 OEM に部品やアクセサリを供給する Tier 1 サプライヤーで構成されています。Tier 1 サプライヤーは、1 社または複数社の OEM に合わせて特別に設計した部品を製造することもあります。
- ピラミッドの 3 番目の層は、Tier 2 サプライヤーで構成されています。これらのサプライヤーは、Tier 1 サプライヤーや他の会社にコンポーネントを供給しています
- ピラミッドの 4 番目、つまり最下層は、他のすべての層に金属やプラスチックなどの原材料を供給する Tier 3 サプライヤーで構成されています。
航空宇宙、自動車、その他の受注生産業界では、メーカーはプログラムベースのモデルで顧客と協力して業務を行います。このモデルは次のように機能します。
- サプライヤーは、新しいプログラムの生産予測を、OEM や Information Handling Services Markit (IHS Markit) などの外部調査機関から収集します。IHS Markit のような企業は、自社の Web サイトで主要 OEM の生産予測を提供しており、サプライヤーはそのデータを簡単に自社のシステムに取り込むことができます。Tier 1 サプライヤーの主要取引先マネージャーは、OEM 取引先と緊密に連携し、プログラムに必要な機器要件を把握します。マネージャーは、プログラム販売予測にサードパーティの調査データを使用することがよくあります。
- このデータに基づいて、サプライヤーはプログラムに必要な部品を予測し、それに応じて OEM に供給する可能性のある商品を計画します。
- 取引先マネージャーは、顧客のプログラムとプログラムのさまざまなバリエーション/モデルの販売予測に基づいて、提案で使用するコンポーネントの販売予測を立てます。
- OEM からのインプットに基づいて販売予測を調整することで、精度が向上します。セールスプランニングでは、取引先マネージャーが販売予測とコンポーネントコストのデータを検証し、どの販売予測を商談に変換するかを決定します。
- サプライヤーが商談成立に至れば、定期的なビジネスが生まれ、通常は販売合意として管理されます。
このモジュールでは、Tier 1 サプライヤーである Rayler Motors が、有名な OEM 企業であり、自動車メーカーの世界でよく知られたブランドでもある Xela Automotive と協力する様子を見ていきます。
Rayler Motors と Xela Automotive
Rayler Motors は、ブレーキ、サスペンション、ギアボックス、アクセルなどの自動車用コンポーネントを製造しています。Rayler Motors の取引先マネージャーの Jackie Leong は、Xela Automotive を担当しています。Xela Automotive が新しい商品ラインやバリエーションを発売するたびに、Jackie は部品の必要数を把握し、コンポーネントの在庫管理をより適切に行う必要があります。Jackie は、Rayler Motors が定期的な仕事を得られるように、正確なプログラム販売予測を作成したいと考えています。
Jackie と Xela Automotive が協力する様子を見てみましょう。Xela が新しい商品ラインを市場に投入する際に、Jackie は Xela の調達マネージャーと積極的に連携して、新型車や車種バリエーションに関する最新情報を入手します。そして自動車プログラムですべての要件を追跡します。Rayler Motors は、IHS Markit などのサードパーティの市場データを利用して、新型車のプログラムと各バリエーションの販売予測を実施しています。
サードパーティデータは、車種やメーカー、地域、その他の市場固有の要因ごとに分類された予測数量と収益を示します。その販売予測データに基づき、Jackie は Rayler Motors のエンジニアリングマネージャーと協力して、Rayler Motors が新車用に Xela に供給できる部品とコンポーネントの販売予測を計画します。
これからプログラムの詳細と管理方法について詳しく見て行きますが、その前に Rayler Motors のシステム管理者である Susan Rehman を紹介します。Rayler Motors は、Salesforce Manufacturing Cloud を使用して、Xela Automotive などの顧客とのランレートビジネスを管理しています。Susan は、Manufacturing Cloud がプログラムベースのビジネスプロセスの管理にどのように役立つかを知りたいと考え、Salesforce のアカウントエグゼクティブに連絡を取りました。そして、Rayler Motors が必要とするデータモデルやワークフローなど、Manufacturing Cloud のプログラムベースのビジネスについていろいろと情報を得ました。そして Susan は、もっと詳しく知りたいと考えています。
プログラムデータをどのように管理するか
Xela は新型スポーツカー「PowerUp」を発表します。Jackie は、Xela が 2 つのバリエーション (PowerUp XZ と PowerUp XZ Plus) を製造していることを知ります。また、それぞれには複数のカラーバリエーションがあります。バリエーションごとに仕様が異なるため、プログラムレベルだけでなく、バリエーションレベルでもコンポーネントを予測することが重要です。
たとえば、XZ Plus のバリエーションにはサンルーフとシートヒーターが装備されています。Jackie は製造プログラムを作成して、正確な販売予測に基づくセールスプロセスを管理したいと考え、Susan に協力を求めます。Susan は Jackie の要件を把握し、各要件に対してどのように Manufacturing Cloud が役立つかを整理します。
Jackie の要件 | Manufacturing Cloud がどのように役立つか |
---|---|
プログラム販売予測とバリエーション販売予測で使用するために、外部ソースから生産予測データを組織にインポートしたい。 |
取引先マネージャーは、CSV ファイルを使用して、サードパーティの調査からプログラムおよびバリエーションの販売予測データを組織にインポートできます。 |
同じ固有の設定と構造を持つ複数のプログラムを作成したい。 |
システム管理者は、各レベルの販売予測設定のセットを定義するプログラムテンプレートとテンプレート項目を作成できます。そして、テンプレートを使用して、複数のプログラムを作成できます。 |
車種や製造工場など、異なるディメンションで集計されたプログラムレベル、バリエーションレベル、コンポーネントレベルの販売予測が欲しい。 |
事前定義済みの製造プログラム販売予測結果オブジェクトには、ディメンションとして使用できる項目があります。また、システム管理者はいつでも独自のディメンションを定義できます。 |
取引先の商品と、自社が製造する関連コンポーネントとのリレーションを簡単に確認できる方法が欲しい。 |
エンジニアリングマネージャーは、サプライヤーのコンポーネントと最終商品を関連付け、リードタイムや単価などの追加情報を提供できます。 |
プログラムレベルとバリエーションレベルの販売予測から得られたデータに基づいて、コンポーネントレベルの販売予測の計算を自動化したい。 |
標準で用意されているデータ処理エンジン (DPE) テンプレートは、コンポーネント販売予測の計算、生成、繰り越し、再生成に使用できます。計算ロジックやデータ変換条件は、会社の要件に応じてカスタマイズできます。DPE は、スケジュール済みフローでトリガーできます。 |
各商品のバリエーションごとの市場シェアの割合、供給する各コンポーネントの固定費と変動費の合計、各コンポーネントの予想利益率などのデータを確認したい。 |
製造プログラム、バリエーション、コンポーネントの販売予測結果オブジェクトには、販売予測セットで販売予測基準として定義できる項目セットがあります。 |
販売予測が承認されて確定したら、それを商談に変換して、最終的には契約に結び付けたい。 |
Manufacturing Cloud に同梱されている変換 API は、販売予測レコードを商談レコードに変換するのに役立ちます。そして販売合意 API を使用すると、これらの商談レコードを販売合意レコードに変換できます。 |
これらはどれも役に立ちそうで、Susan は期待に胸を膨らませています。では、Susan がプログラムベースのビジネス機能をどのように設定しているのかを見てみましょう。
権限の割り当て
Susan は、組織で以下の機能を有効化しています。
- 高度な取引先販売予測
- データパイプライン
- プログラムベースのビジネス
次に、Susan は、Jackie がプログラムベースのビジネス用のオブジェクトにアクセスして販売予測を管理できるように、以下の権限セットを Jackie に割り当てます。
権限セット | 説明 |
---|---|
高度な製造取引先販売予測 |
プログラム、バリエーション、コンポーネントの販売予測の設定を保持する販売予測セットを作成できるようにします。 |
製造プログラムベースのビジネス |
テンプレートから製造プログラムを作成できるようにします。 |
また、Susan は、システム管理者プロファイルにデータパイプライン基本ユーザー権限セットを割り当てます。この権限セットは、システム管理者がデータ処理エンジンの定義を作成、カスタマイズ、実行、監視できるようにします。
次の単元では、Susan は Manufacturing Cloud にあらかじめ用意されている販売予測結果オブジェクトを詳しく調べて、販売予測セットを作成します。