市場圧力と変革について学ぶ
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- エネルギートランスフォーメーションの 4 つの D を定義する。
- エネルギー・公益事業会社のデジタルトランスフォーメーションを推進する要因を説明する。
- 分散型エネルギー資源と需要側管理がエネルギー市場に与える影響を説明する。
エネルギートランスフォーメーションの 4 つの D
エネルギー・公益事業業界では、規制緩和、分散化、分散型エネルギー資源 (DER) といった変革が起こっています。さらに、脱炭素化、デジタル化、需要側管理がそれに拍車をかけています。エネルギートランスフォーメーションは、脱炭素化 (Decarbonization)、規制緩和 (Deregulation)、デジタル化 (Digitalization)、分散化 (Decentralization) の 4 つの D で定義されます。各プロセスを詳しく見ていきます。
Decarbonization (脱炭素化)
脱炭素化は、よりクリーンなエネルギーと環境保護行動への移行です。これにより、発電に使用されるテクノロジー (風力や太陽光など) が変わります。この変化は、ビジネスのインフラストラクチャと販売される商品に影響を与えます。脱炭素化によって、商品の種類には、グリーンエネルギーや再生可能エネルギーを使用する製品が含まれます。その結果、顧客に対応する営業やサービスの機会に影響を与えます。
Deregulation (規制緩和)
規制緩和市場は、垂直型公益事業から離れつつあります。こうしたシフトのお陰で新しい市場モデルが出現しており、非伝統的なエネルギー企業がエネルギー顧客関係を所有できるようになっています。その結果、従来の公益事業会社は、既存の商品をサポートする新しい商品とシステムを提供し、競争に勝つ必要があります。これはシステムに対する需要の増加を意味します。
Digitalization (デジタル化)
デジタル化では、顧客行動により注目し、クラウド、モノのインターネット (IoT)、ビッグデータを使用して、よりスマートで反応性の高いグリッドを構築します。顧客は他の業種で提供されている高度なデジタルサービスに慣れており、公益事業会社にも同じようなサービスを期待するようになってきています。デジタルトランスフォーメーションについては、この単元の後半で詳しく説明します。
Decentralization (分散化)
太陽光発電、EV、マイクログリッド、バッテリー貯蔵など、顧客によるオンサイト発電と分散型のエネルギー源が増加したことにより、顧客の選択肢の幅が広がり、顧客がグリッドに対して今までにない影響力を持つようになりました。これは顧客にとって一見好ましいことですが、エネルギーグリッドの一部となったすべてのエネルギー源を公益事業者が所有、保守、または物理的に制御しなくなったため、公益事業のインフラストラクチャの安全確保に関する新たな負担を増大させます。
デジタルトランスフォーメーションを推進しているものは何か?
エネルギー業界が進化するにつれて、顧客の期待と公益事業のイノベーションがますます多様化します。新時代のエネルギー業界の需要に応えようとする公益事業者からの質問を見ていきます。
顧客の期待と価値
公益事業会社としてお客様の期待に応え続けるにはどうすればよいですか? 非常に多様な顧客ベースで、商品とコミュニケーションをパーソナライズするにはどうすればよいですか? お客様の期待に応え、ニーズを予測するにはどうすればよいですか? お客様に真の価値を提供するにはどうすればよいですか?
デジタルファースト、ワーク・フロム・エニウェア、リアルタイム
お客様と従業員に、どこからでもつながれるデジタルファーストなエクスペリエンスを提供するどうすればよいですか? 十分なアジャイル性を確保できるでしょうか? インサイトを生成し、リアルタイムで顧客にとって価値があり、ビジネス目標をサポートするアクションを実行できるようにすることはできますか?
破壊的な規制とテクノロジーの変化
新しい分散型の民主化、脱炭素化されたエネルギープログラムにより、競争市場での公益事業業界の展望はどのようなものですか? IoT、スマートデバイス、メーター、VPP、ネットワークをどのように使用すれば、グリッド、顧客、ビジネスの価値を最大化できますか? 新しいエネルギー市場モデルで私はどのような立ち位置にありますか?
Salesforce のソリューションは、世界中のあらゆるタイプの公益事業市場モデルをサポートし、各市場のさまざまな期待とイノベーションに対応できる十分な柔軟性を備えています。
分散型エネルギー資源の影響
DER は、さまざまな小型のグリッド接続 (配電系統接続) デバイスで構成される発電施設や電力貯蔵施設です。分散型の発電と電力貯蔵によって、多数のソースからエネルギーを収集し、環境への影響を抑え、供給の安全保障を向上させることができます。
石炭火力発電所やガス火力発電所、原子力発電所、水力発電ダム、大規模太陽光発電所などの従来の発電所は集中型で、電気エネルギーを長距離送電します。
従来の発電所とは対照的に DER システムは分散型のモジュール式で、供給先の近くにある柔軟なテクノロジーを利用します。ただし、DER の容量は 10 メガワット (MW) 以下とわずかです。このシステムは発電と電力貯蔵の複数のコンポーネントで形成される場合があり、複合発電システムと呼ばれることがあります。
DER システムは通常、水力、バイオマス、バイオガス、太陽、風力、地熱などの再生可能エネルギー源を使用します。エネルギー業界が再生可能エネルギーに移行するにつれ、DER は配電系統において重要な役割を果たします。
グリッド接続デバイス
電力貯蔵用グリッド接続デバイスは、DER システムとして分類することもでき、分散型エネルギー貯蔵システム (DESS) と呼ばれます。DER システムは、インターフェースを介してスマートグリッドで管理、調整することができます。
マイクログリッド
マイクログリッドは、従来の集中型電気グリッド (マクログリッド) とは対照に、最新の局地的な小規模グリッドです。DER は、マイクログリッドのコンポーネントである場合もあります。マイクログリッドは、コミュニティやいくつかの街区で構成される地域など、定義されたエリアのエネルギー需要を満たすことができる、小さな独立型グリッドと考えることができます。マイクログリッドでエネルギーを自給自足するにはエネルギー源が必要です。
過去には、マイクログリッドにディーゼル発電機などのエネルギー源が含まれていましたが、技術的な進歩により太陽光や風力などの DER が含まれるようになりました。規模が大きい場合は、エネルギーを貯蔵するために効率的なバッテリーがマイクログリッドに追加されます。
マイクログリッドは集中型グリッドから切り離して自律的に運用することができ、グリッドの復元力を強化し、障害を軽減するのに役立ちます。マイクログリッドは通常、ディーゼル発電機を使用する低電圧 AC グリッドであり、供給先のコミュニティによって設置されます。今日のマイクログリッドは、炭素排出量を大幅に削減する太陽光複合発電システムなど、種類の異なる DER を混合して採用しています。
需要側管理の影響
需要側管理 (DSM) は、電気エネルギーの供給にかかるコストを削減するために、各サイトのエネルギー消費を効率的に管理するように設計された一連のアクションです。コストは、グリッド料金や、税金を含む一般的なシステム料金によって発生します。
公益事業者がグリッド上の需要を満たすことができる 1 つの方法は、顧客の消費に影響を与えることによって顧客側の需要を減らすことです。節約されるエネルギーはネガワットで測定されます。これは冗談ではありません。ネガワットは、効率的なエネルギー消費によって節約されたエネルギー量を測定するための仮説上の電力単位です。ネガワットは使用しない電子であるため、最も安価な電子です。
公益事業が提供する省エネルギーまたはエネルギー効率化プログラムにより、顧客は特定のピーク時にエネルギーをほとんどあるいはまったく使用しないという取り組みにコミットしやすくなり、その結果、電力会社は予備の発電所を稼働させずにすみます。こうしたプログラムがない場合、電力会社が顧客の需要を満たすために予備の発電所を稼働させることが多々あります。たとえば、ロサンゼルスの猛暑の際、すべてのエアコンのスイッチが一斉に入れられるような場合です。
DSM 最適化の目的は、電力消費の次の点に関する機能を変更して、電気料金の節約を可能にすることです。
- 消費の全体像
- 消費時間プロファイル
- 契約供給パラメーター (契約電力やグリッド接続のパラメーターを含む)
再生可能エネルギー源が広く普及し、発電源が分散化された結果、多くの国のグリッド管理者はグリッドの不安定性が上昇したことによってサービスの中断が発生すると考えています。
グリッドサービス
グリッド管理者は、グリッドサービスを提供する発電システムと消費システムを使用して、サービス中断の影響を制限し、エネルギー消費量とグリッドへの送電量のバランスを保つことができます。需要側管理を実施するための第一の要件は、オンサイト消費の詳細な分析を行うことです。これには、各サイト独自の要件と、電力会社が顧客の消費習慣を最適化できるかどうかの評価が含まれます。
習慣を変えることが実現不可能であるか、期待されるコスト削減を達成するには不十分である場合は、電力会社は次のオンサイト設備を評価できます。
- バッテリーエネルギー貯蔵システム (BESS)
- 再生可能エネルギー源システム (ソーラーパネルや風力タービンなど)
- コージェネレーションシステム
まとめ
お疲れさまでした。このモジュールでは、エネルギー業界、公益事業サービスの種類とこうしたサービスを提供する公益事業会社について学習しました。次に、さまざまなエネルギー市場の概要と公益事業会社に与える影響について学びました。また、エネルギー・公益事業の業界用語、測定単位、価格設定方法も確認しました。最後に、エネルギー・公益事業業界が直面している課題と、進化するビジネス環境でどのような変革が行われているかを理解しました。
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Salesforce のお客様である場合は、次の学習ジャーニーを参照して、一連の素晴らしいデジタルトランスフォーメーションツールと業界向けアプリケーションについてスキルアップする方法を確認してください。
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