市場モデルと公益事業への影響について学ぶ
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 世界の公益事業市場モデルのさまざまなタイプを説明する。
- 公益事業が今日直面している主な課題を特定する。
- ビジネスプロセスの変更が主要な公益事業部門にどのような影響を与えるかを説明する。
世界の公益事業市場モデルのタイプ
世界各地のエネルギー市場は、脱炭素化が引き金となり、イノベーションに支えられた改革の真っ只中にあります。一部の国がエネルギー規制緩和を実施し、エネルギー市場に競争をもたらしたことが、新しいタイプのエネルギー市場の創出につながりました。世界で認識されているエネルギー市場モデルをいくつか見ていきます。
規制
規制市場の公益事業会社 (垂直統合公益事業者とも呼ばれる) は、投資収益を上げるか、支出に対して利益を生み出さなければなりません。
規制市場では、公益事業会社がインフラストラクチャを所有しています。このインフラストラクチャには、送電線とあらゆる関連設備 (電柱、電線、変圧器など) が含まれます。このような公益事業会社は通常、自社で発電をするか、電力を購入して顧客に販売します。
規制された競争
規制された競争市場の公益事業者は、規制市場の公益事業者に似ていますが、エネルギー供給事業者とある程度の競争にさらされています。このタイプの市場モデルは総じて、使用率または需要が高い顧客ベースを対象とします。
一部の規制市場では、エネルギー供給事業者のある程度の競争が支持されています。規制市場の公益事業者は通常、垂直統合と見なされます。つまり、顧客への電力の販売を独占しているということです。けれども、多くの地域では、一部の顧客セグメントに限られた選択肢しか提供していません。そのような地域の例として、米国内ではカリフォルニア州、ジョージア州、ミシガン州、ネバダ州、オレゴン州、バージニア州があります。
住宅用の顧客は、コミュニティや再生可能エネルギー供給事業者から電力を購入することがあります。多くの場合、使用率と需要が高い商工業用 (C&I) 顧客は、クリーンエネルギーで運営予算とサステナビリティ目標を達成できるエネルギー供給事業者から電力を購入します。
移行
移行市場は、本格的な競争にさらされています。
ただし、以前の規制市場のすべての既存事業体が完全に分離されたわけではありません。こうした事業体には、発電、送電、配電、小売が含まれます。
競争
競争市場は、規制緩和されたエネルギー市場としても知られています。競争市場では、公益事業会社が送電インフラストラクチャの所有と保守、電力の配電を行い、他の会社は顧客への電力とガスの供給と販売で競争します。
規制緩和市場では、垂直統合企業は市場の特定の側面に焦点を絞った複数の独立系企業に分割されます。たとえば、1 社の垂直統合公益事業会社が、発電会社、送配電会社、電力供給会社に分割されますが、これは市場によって異なります。さらに、メーターアセット管理やメーター所有権などのサービスが、別々の会社に分割される場合があります。
エネルギー規制緩和の目的は、独占を解体し、供給事業者間の競争を促進することです。これにより、顧客はより多くの選択肢を持ち、価格競争が促進されます。規制緩和市場が成功すると、顧客は競争料金を比較し、ニーズやライフスタイルに合ったオファーを選ぶため、解約が発生します。
公益事業が直面している課題
エネルギー・公益事業業界は、現在のビジネス環境に起因する多くの障害に直面しています。統合により、ビジネスサポートシステムの統合、マージ、調整の必要性が高まっています。業界環境の概要と課題について見ていきます。
Deregulation (規制緩和)
エネルギー・公益事業業界を民主化し、顧客に選択肢を提供するために、世界各国でエネルギー規制緩和が実施され、エネルギー市場に競争がもたらされました。市場競争が激化すればするほど、公益事業者の顧客獲得と維持のプレッシャーが高まります。
規制緩和:
- エネルギー価格を抑えるために、顧客の選択肢を増やし、エネルギー供給事業者間の競争を促す。
- 生成、送電/送出、配電、供給、カスタマーサービスを分割する。
- 電気、ガス、水道のプロセス全体の独占を解消するのに役立つ。
インフラストラクチャの老朽化と労働力
競争のプレッシャーとともに、エネルギー・公益事業セクターは転換点を迎えています。老朽化したインフラストラクチャは刷新する必要があり、新しい世代が労働市場に加わります。物理的なインフラストラクチャだけでなく、変化する市場のデータとセキュリティの要件に、古く柔軟性のない顧客情報システム (CIS) と請求システムではもはや対応できなくなっています。
エネルギー料金への小売競争の影響
競争市場では価格が下落し、商工業セグメントがその恩恵を最も享受します。競争によって選択肢が広がるため、競争の激しい地域の公益事業者が提供するデフォルトのサービスを利用している顧客でさえ、競争市場の恩恵を受けています。
気候変動と環境責任
気候変動は文字通り「ホットな」話題です。省エネルギー対策や効率化対策、再生可能エネルギー使用の実装は増加し続けています。そのため、公益事業会社は、さらに高い水準の環境管理と保護を実現するために、戦略を見直し、事業を転換する必要があります。サステナブルなプロセスを通じてエネルギーの新しい生成方法を見つけるチャンスは今しかありません。
さらに、エネルギーのサステナビリティ対策によって大きな経済的利益の機会が生まれます。サステナビリティ対策は、消費と生成に関する貴重なデータを使用して大量の情報を生み出し、コストの削減に役立てることができます。
デジタルトランスフォーメーション
デジタル化と急速なテクノロジーの変化により、公益事業者は仕事のやり方や提供するサービスなど、現在のビジネスモデルの見直しを余儀なくされています。より優れたサステナビリティと省エネルギーを実現するために、公益事業者は顧客が重要な役割を果たす、新しいサステナビリティ技術の設計、実装、運用を容易にするデジタル化戦略を実施する必要があります。
顧客は、よりスムーズなパーソナライズされたエクスペリエンスを期待しています。料金や消費量に関する詳細なデータなど、より多くの情報を求めています。公益事業者は顧客中心の戦略を立て、プロセスとツールをデジタル化する必要があります。
主要な事業単位とプロセス
公益事業者が新しいテクノロジーを採用し、顧客が商品をより細かく制御できるようになるにつれて、エネルギー業界の規則が変わってきています。
ビジネスプロセスの変更が顧客と主要な事業単位に与える影響を詳しく見ていきます。
経理規則の変更: 情報サービス
規制市場の公益事業者が資本設備の場合と同じように、サービスに費やすコストから利益を得られることはあまりありません。規制市場には競争がないため、公益事業者はビジネスプロセスをサポートするクラウドコンピューティングソリューションなどの情報サービスを優先してきませんでした。ただし、一部の公益事業者はサービスとしてのソフトウェア (SaaS) によって提供されるメリットを認めているため、この状況は変わりつつあります。
公益事業規則の変更: 誰がエネルギーを生み出すのか?
今日の顧客は自ら発電した電力を所有する力を持っています。屋上ソーラーパネル、電気自動車、バッテリー、マイクログリッドがあれば、顧客は電力をグリッドに売り戻すことができます。公益事業者は、電力網の供給能力が逼迫した際に、顧客が消費を抑制したり蓄電した電力を使用したりすることに対して、対価を支払うこともできます。
分散型エネルギー資源は、顧客喪失の影響を恐れるグリッド運用者が懸念、危惧しているものです。ただし、公益事業者と顧客が連携している場合、分散型エネルギー資源は公益事業者と顧客の双方に次のようなメリットをもたらすことができます。
- 電力の流れの調節
- よりクリーンなエネルギーへの移行
- グリッドの安全と安心の確保
- エネルギーコストの削減
グリッドの変更: 多方向への移行
グリッドの進化により、クラウドプラットフォームの必要性が高まっています。その理由は、エネルギーグリッドの分散化が進み、多方向になるにつれて、データやトランザクションの流れを管理するために必要なエンタープライズプラットフォームを適応させなければならないからです。
以前は電力が一方向に流れていたため、システムで重視されていたのは安全かつ確実に手頃な価格の電力を供給することでした。分散型エネルギー資源などの新しいイノベーションや破壊的なイノベーションによってこれが変わってきています。現在、電力は双方向に流れています。エネルギーはモバイルである場合もあり、すべてを管理するために必要なコンピューティングニーズははるかに大きくなっています。Salesforce などの新しいデジタルエネルギークラウドプラットフォームはこのニーズを満たしています。
まとめ
この単元では、各種の公益事業市場モデルについて学習しました。また、公益事業者が直面する課題や、業界のトランスフォーメーションがビジネスユニットやプロセスに及ぼす影響も確認しました。
次の単元では、公益事業の一般的なサービスと、エネルギーの主な測定単位について学習します。