営業パフォーマンス目標を設定する
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 営業に関する一般的な主要業績評価指標 (KPI) を特定し、説明する。
- 活動と結果の基準を区別する。
- さまざまな基準がどのように連携しているかを説明する。
- 年間を通して KPI を調整するときにベストプラクティスを適用する。
営業チームは、数値 (計上する必要がある金額、作成する必要がある商談数など) に基づいて行動しています。これは当たり前のことと思えるかもしれませんが、多くの要素が組み合わさって営業チームの目標が構成されています。
ここで問題なのは、「このような数値を企業がどのように定めるか」という点です。
営業パフォーマンスの世界へようこそ。
KPI を使用して目標を超える
強力な営業チームの基盤を構成するのは、明確に定義された主要業績評価指標 (KPI) です。KPI は、営業担当の行動指針となる「もの/こと」や「程度」を示します。たとえば、目標は、特定の年に営業担当が会社にもたらすことを期待する金額です。
そうです、目標は一般的に主要な KPI とされています。とはいえ、営業チームが確実に成果を上げられるように、Sales Ops チームと営業リーダーが連携して、営業チームの目標達成に役立つ総計値の確固たるフレームワークを構築します。つまり、この KPI は、営業担当が目標を達成し、目標自体を現実的なものにする方法がまとめられたものと言えます。
活動と結果の KPI を使用する
ここで役立つのが活動と結果の基準です。
- 活動の基準は、営業担当が関係を構築したり、新規顧客とつながったりするために毎日、毎週、毎月行うアクションに焦点を合わせた KPI です。活動の基準は、営業担当が結果の基準を達成できるようにすることを目的とします。
- 結果の基準は、このようなアクションの結果に焦点を合わせており、通常、より密接に金額に関係しています。
それでは、活動と結果の一般的な基準とは何でしょうか?
活動の基準 |
説明 |
発信した通話数 |
一定期間に各担当者がかけた電話数 |
送信したメール数 |
一定期間に各担当者が送信したメール数 |
設定した打ち合わせ数 |
一定期間に各担当者が設定した打ち合わせ数 |
ボイスメール数 |
一定期間に各担当者が残したボイスメール数 |
IP ログイン数 (勤務状況) |
営業チームが営業活動自動化 (SFA) やカスタマーリレーション管理 (CRM) などの会社のシステムにアクセスした頻度とアクセスに使用した IP アドレス |
客先訪問数 |
一定期間に営業担当が見込み客やクライアントを訪問した回数 |
Web セミナーの視聴者数 |
営業担当の勧めによって特定の Web セミナーを視聴した人の数 |
結果の基準 |
説明 |
収益 |
計上金額 |
達成率 |
営業担当が収益目標の達成にどの程度近づいているか (パーセント) |
新しいロゴ |
新規に契約した顧客 |
生成されたリード |
外部向け営業活動の結果として行われた問い合わせ |
リードのフォローアップ時間 |
営業担当が新規問い合わせのフォローアップにかける時間 |
リードのコンバージョン率 |
顧客になったリードの割合 (パーセント) |
リテンション |
前年同期比で、顧客のままである顧客の割合 (パーセント) |
チャーン |
顧客の離反や購入またはサブスクリプションの減少により損失する各年の再生可能な収益の割合 |
顧客のライフスパン |
再生可能な顧客が取引を続けている期間 (年数) |
適切な総計値を見つける
ここで 2 人の営業担当を見てみましょう。どちらも 100 通のメールを送信するという業務を任されましたが、それぞれアプローチが異なります。1 人目の営業担当は、対象を絞り込んだメール (パーソナライズされ、顧客の特定ニーズに合わせた内容) をきっかり 100 通送信します。この作業には数日かかりますが、この取り組みのおかげで打ち合わせを 5 回設定できます。2 人目の営業担当は、型どおりのダイレクトメールを 1,000 通送信します。作業にかかる時間はわずか数時間で、設定される打ち合わせは 1 回です。
両者とも必要な送信数は満たしましたが、結果は異なりました。送信されたメール数のみを見てみると、2 人目の担当者の方がパフォーマンスが高いように見えます。ところが、設定された打ち合わせの回数を合わせて考えると、1 人目の担当者の方がよい成果を上げています。
セールスオペレーションの主な要点は次のとおりです。
- このケースの場合、全体的な目標がより多くの打ち合わせを行い、より多くの商談を成立させることであれば、送信されたメールの数が活動の基準として十分なほど有力でないことは明らかです。
- 送信したメールの質と数は予定される打ち合わせの回数に影響します。
- このような結果は、次回行われる四半期ごとのビジネスレビューで話し合い、メールの質に関係する新しい基準を追加するべきです。
では、基準と KPI の適切なバランスはどのように見つければよいのでしょうか? 必要なのは、時間とイテレーションです。
反復
イテレーションはあらゆる KPI にとって重要ですが、そのタイミングはさまざまです。
- 活動の基準は 1 年を通して調整しやすいため、多くの場合は上記の例のように、Sales Ops チームによって再評価され、妥当性の確認が行われます。
- 通常ビジネスは収益目標を設定しているため、達成率などの結果の基準は一般的に年間を通じてそれほど変わりません。
Sales Ops の担当者はチームの活動と結果の基準を決定すると共に、目標の有効性を評価する方法と時期を計画することも必要です。このイテレーションは、会社の既存プロセスと足並みを揃えるべきです。たとえば、四半期ごとにビジネスレビューを行う場合、その場を、活動の基準の調整と営業リーダーへの提示を行う機会として利用できます。
活動と結果の基準を連携させる
適切に行った場合、設定した活動目標によって結果達成への明確な道筋がもたらされ、収益生成に結び付きます。
この論理をシンプルにすれば、次のようになります。
営業担当が四半期を通して「活動の基準」を一貫して達成する場合、最終的に「結果の基準」も達成される。
ここでキーワードとなるのは「一貫」です。
次の演習を行いましょう
たとえば、あなたの会社では、送信したメール数と設定した打ち合わせ数が商談成立と収益生成に役立つ活動であるとします。次の事実を考慮して、特定の月に営業担当 1 人が責任を持つ収益の額はいくらでしょうか?
- ターゲットを絞ったメールの作成は最大 1 時間かかる。
- 過去のパフォーマンスから、送信されるターゲティングメール 2 通に 1 通の割合で、打ち合わせが 1 回予定されることがわかっている。
- 打ち合わせの長さは平均 3 時間である。
- すべての打ち合わせで商談が保証されている。
- 平均の商談から生まれる額は 1,000 ドルである。
これは収益額を推定していただくクイズではありません。上記の簡単な演習で、適切な KPI の特定に必要な作業を知ることができます。過去の取引先データのほか、商談を成立させている担当者から得たインサイトなどを考慮し、数学の知識を駆使します。
上記に挑戦したら、次の質問について考えてみてください。「バケーションのための休暇取得やワークライフインテグレーションを実践できるように、担当者に週末や時間的余裕を考慮しましたか?」
この演習で計算したところ、担当者は毎月およそ 65 通のメールを送信するべきであり、その結果、打ち合わせは 32 回、毎月の収益は 32,000 ドルとなります。
質問をもう 1 つ。「営業チームが過去のこの数値を持続的に達成していたらどうしますか?」
110% にできるか? 答えはノーです。
モチベーションの高い営業担当は、おそらく 100% の達成率を追求し、自身に設定された活動と結果の基準すべてを達成します。100% に達すると達成感をもたらすことができますが、設定した目標によっては機会費用も生じます。
たとえば、予定より大分早く 100% を達成しそうな場合 (すべての目標の達成がすぐの場合)、あなたと営業リーダーが設定した基準は低すぎたのかもしれません。結果的に、目標の設定が低すぎれば、収益を失います。
目標が低すぎる場合は上げましょう!
でもちょっと待ってください。そんなに単純ではありません。
目標を度々変更すれば、士気に影響が及びます。あと 2 ~ 3 件の商談をまとめれば会社が定めた成功を達成できるという状況にある営業担当の立場になって考えてみてください。KPI が変更になれば、不満を抱く可能性があります。
さらに考えてみましょう。年度の終盤で数値が変わり、その数値がかけ離れているため、どうやって達成すればよいのかわからない場合はどうでしょう? より安定性が高い新規の営業職を検討し始めるかもしれません。
変更が必要な場合は計画的に!
営業チームが第 2 四半期 (Q2) で年間目標を達成した場合、計画がおろそかだったことを示している可能性がありますが、チームには目標を達成し、仕事をうまくこなせたと実感してもらえるようにします。そのため、四半期ごとに基準を再評価する場合があるとしても、KPI への変更は計画的に行うようにします。
次の方法が役立ちます。
- 計画の早い段階で、1 年を通して調整できる活動と結果の基準を特定する。このようにすることで、変更されやすい基準と営業リーダーとの詳細な計画が必要になる可能性がある基準が明確になります。
- KPI の変更を行う前に、コンテストやストレッチ目標を試してみましょう (たとえば、月末までにリードの転換が最多だった担当者に旅行をプレゼントするなど)。
- 会社の業績に基づいて基準を調整する必要がある場合は、こうした変更をどのように伝えるかにも注意を払います。何が営業チームのモチベーションを高めるのかを知り、そのモチベーションをメッセージに結び付けます。この点は、「Sales Ops のユースケースとベストプラクティス」モジュールで詳しく説明します。
次は報酬アップ
全般において 100% 達成することは素晴らしいことですが、それだけでは十分でありません。次の単元では、輝かしい営業成績を促すのに役立つさまざまな種類のインセンティブに目を向けます。