Salesforce Platform を拡張する
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- API によって Salesforce が外部システムとどのように統合されるかを説明する。
- Heroku プラットフォームの機能を説明する。
- 組織の固有のニーズを満たすために Einstein プラットフォーム製品をどのようにカスタマイズできるかを説明する。
Salesforce プラットフォーム API について知る
以前に、Salesforce で Lightning アプリケーションビルダーや基本的なフローなどを使用してノーコードまたはローコードのカスタマイズとオートメーションを作成することについて説明しました。このようなツールでは、Salesforce の基盤となる API の操作はほとんど必要ありません。
プログラム型 (バックエンド) の開発に移行するにつれて、さまざまな方法で Salesforce データにアクセスできる API の強力なセットを使用することになります。簡単に言うと、組織内のすべてのオブジェクトにはそのオブジェクトのデータにアクセスするための API 参照名があります。前の単元で見た Dreamhouse サンプルアプリケーションの Propertymap.js ファイルをもう一度見てみましょう。
11 ~ 15 行目に注目してください。各行の __c
はオブジェクトがカスタムオブジェクトまたはカスタム項目であることを示しています。これは、組織内の物件に関する情報を取得するために使用される propertyMap オブジェクトに対して自動的に作成された API アクセスポイントです。
Salesforce が提供している API の中でよく使用されているものとその用途を次に示します。
API
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実行できること
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---|---|
SOAP API |
標準 SOAP プロトコルを使用して組織のデータを他のアプリケーションと統合します。 |
REST API |
標準 REST プロトコルを使用して組織内のオブジェクトにアクセスします。 |
メタデータ API |
組織内のカスタマイズを管理し、メタデータモデルを管理するツールを作成します。 |
Tooling API |
プラットフォームアプリケーション用のカスタム開発ツールを作成します。 |
Marketing Cloud API |
REST API を使用して Marketing Cloud Engagement 機能を公開し、SOAP API を使用してほとんどのメール機能に対する包括的なアクセスを可能にします。 |
Bulk API |
大きなデータセットで非同期クエリの読み込み、削除、実行を行います。 |
ストリーミング API |
安全で効率的に通知を送受信します。通知には組織内のデータ変更またはカスタムイベントを反映できます。 |
Connect REST API |
コマース、CMS 管理コンテンツ、Experience Cloud サイト、ファイル、通知、トピックなどための UI を作成します。 |
Pub/Sub API |
プラットフォームイベント (リアルタイムイベントモニタリングイベントや変更データキャプチャイベントなど) の公開と登録のための 1 つのインターフェースです。 |
GraphQL |
データの送受信の新しいパラダイムであり、1 回の要求で必要なデータをすべてコールする 1 つのエンドポイントをクライアントに提供します。 |
Mobile SDK |
これは厳密にはソフトウェア開発キットですが、ここに含めるに値します。ネイティブまたはハイブリッドのモバイルアプリケーションを Salesforce に直接統合します。 |
下の「リソース」セクションには Salesforce API について学習できるその他の方法が挙げられています。
Salesforce と統合するその他の方法
Salesforce でどれだけ多くのことをできるかを説明してきた一方で、Salesforce ですべてのことは実行できない、というよりしないということも説明しておくべきだと思います。API の説明を読んだときに、「統合」という言葉がたびたび登場することに気がついたかもしれません。これは、API を使用することで、Salesforce 内のデータを同期できるのに加えて、Salesforce と外部システムとの間でデータを渡すことができるためであり、Salesforce が行わないことを外部システムで行うことができます。
たとえば、Salesforce を給与支払アプリケーションと統合することができます。このアプリケーションが特定のデータに同期することで、従業員が期日どおりに支払を受け、正しい税金や福利厚生コストが差し引かれます。あるいは、Dreamhouse が Salesforce の物件レコードを DocuSign のようなアプリケーションと統合して、住宅購入者が新しい物件の契約書に署名するときのセキュリティを確保することも考えられます。
Salesforce を外部と統合するための方法は API だけではありません。SalesforceConnect、HerokuConnect、MuleSoft Composer、Apex といったソリューションを使用することで、組織全体のシステムやデータを簡単に統合し、ほぼすべてのビジネスニーズに対応できます。このようなツールについての詳細は、この単元の最後にある「リソース」セクションを参照してください。
プラットフォームイベント
その他の統合の種類としてプラットフォームイベントもあります。プラットフォームイベントを使用するとシステムを監視し、変更を他のシステムに伝達できます。これは、送信者から受信者へのラジオ放送のようなものです。たとえばあなたが甥の誕生日プレゼントを注文すると、プレゼントがいつ発送され、甥にいつ配達されるかを知らせるメッセージを受信します。または、登録しているニュース提供元から、ニュース速報のメッセージが送信されることもあります。
プラットフォームイベントはプロセス、フロー、Apex によって、または API を使用した外部アプリケーションによって Salesforce の内外に伝達されます。プラットフォームイベントに関する詳細情報へのリンクは、「リソース」セクションを参照してください。
その他の方法
ここまで取り上げてきたトピックのほとんどは、開発環境の基本事項です。ただし、Salesforce ではその他にもお客様がスキルを活かしてビジネスへの影響を最大化するため方法が提供されています。Salesforce を使用して社内従業員や顧客向けの素晴らしいエクスペリエンスを作成するいくつかの方法を紹介します。
Heroku によってアプリケーションを活用する
API は Salesforce 内部と外部システムで使用できるのに対して、Heroku は外部とのやり取りのためのものです。Heroku は Web アプリケーションをすばやく作成、リリース、拡張できる柔軟な拡張ソリューションです。
Heroku の利点の 1 つはアプリケーションを柔軟に記述できることです。Java が好きな場合は Java でアプリケーションを記述できます。Python を愛用している場合は Heroku でもそのまま使用できます。PHP に精通している場合は自由に PHP を使用できます。
Heroku は Amazon Web Services (AWS) 上に構築されているため、標準的な Web アプリケーション開発で発生するようなインフラストラクチャに関する懸念は自動的に対処されます。さらに、Heroku Connect を使用すれば、Salesforce データが Heroku Postgres データと統合され、プラットフォーム間での情報の移動を管理する必要がありません。インフラストラクチャやデータストレージについて心配する必要がなければ、新しい開発に集中できます。
先ほど、Heroku は外部とのやり取りのためのものだと述べました。ということは、顧客の視点から Heroku がどのように見えるか気になるのではないでしょうか。これをお見せするために Salesforce サンプルアプリケーションギャラリーの別のアプリケーションを見てみましょう。eCars サンプルアプリケーションです。eCars サンプルアプリケーションは架空の電気自動車メーカーに基づく自動車の販売とサービスのアプリケーションです。
このアプリケーションでは、顧客は一般向けの Heroku Web アプリケーションを通じて新しい電気自動車を設定するときに、API を使用してシームレスに eCars の Salesforce データを操作します。
Salesforce Einstein を使用して予測する
Salesforce Einstein は AI テクノロジーの統合セットであり、これによって Einstein 1 はよりスマートになり、Salesforce エコシステムのすべての人に AI が提供されます。Einstein のインサイトと人工知能によって、企業が世界との関わるやり方が変わります。Einstein について詳しく知ると、Einstein プラットフォームに非常に多くの標準機能があるため、あらゆることが考え尽くされていると思われるかもしれません。それでも、Einstein をカスタマイズできることを知っていますか? 次に例を示します。
- Einstein ボットをカスタマイズして、サポートを求めている顧客に AI 駆動のコンテキストに沿ったヘルプを直ちに提供するスマートなアシスタントを作成する。
- Einstein 予測ビルダーを調整して、あらゆる種類のデータを取り込み、ビジネスについて組織の人々が考え得るあらゆる質問や懸念に対する答えを予測する。
- Einstein Next Best Action と Einstein Discovery を使用して、作成するカスタマイズに基づいてアクション可能なインサイトや分析を適切な人に適切なタイミングで表示する。
- Einstein Vision と Einstein Language をカスタマイズして、未加工データ (ソーシャルメディアなどの Web からの画像も含む) を分析することで、トレンドやセンチメントを明らかにし、組織が提供する製品やサービスに関して対象を絞ったフィードバックや分析を提供する。
- 質問や発言のようなプロンプトを Einstein 生成 AI に提供し、会社のデータでグラウンディングされた正確な応答を受け取る。Einstein 生成 AI は人間のごとく文章を書くようにトレーニングされており、Salesforce 内に構築されているため、生成する内容をすべてビジネスに合わせてカスタマイズできます。
まとめ
このモジュールでは多くの内容について学習しましたが、これはプラットフォームで実行できることのほんの一部にすぎません。Salesforce Platform とは何か、それをどのように使用してノーコードまたはローコードのツールやオートメーションによって短時間で開発できるかということを取り上げました。また、このプラットフォームのバックエンドコーディングの柱である Lightning Web コンポーネント、Apex、Node.js やその他の標準コーディングプラットフォームについても学習しました。最後に Salesforce Platform を拡張するための新しい画期的な方法にも触れました。
このモジュールのもう 1 つの要点は、このプラットフォームが非常に動的であるということです。高速な開発機能と、Salesforce と統合する多くのテクノロジーによって、Salesforce 組織を拡張する可能性は無限に広がります。
Trailhead の学習を続けていけば、ここで紹介したテクノロジーについてさらに多くを知ることになります。また、Salesforce 開発者ドキュメントは Salesforce Platform のカスタマイズに関するさまざまなことを参照できる有用なリソースです。開発者ガイド、ブログ、コミュニティ、その他多くの情報にアクセスでき、ジャーニーを始めるときにも取り組みの最中にもガイドとなります。
次のステップ
次は「はじめての Salesforce 開発」プロジェクトに取り組むことをお勧めします。このプロジェクトでは、ここで学習した内容を活かして開発者環境を設定し、プラットフォームの機能やコードを詳しく見ていくことでスキルを高めることができます。
リソース
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Trailhead: プラットフォーム API の基本
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Salesforce 開発者ドキュメント: API ライブラリ
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Trailhead: クイックスタート: Salesforce Connect
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Trailhead: MuleSoft Composer の基本
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Trailhead: Salesforce と Heroku のインテグレーション
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Trailhead: クイックスタート: Apex
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Trailhead: Heroku Enterprise の基礎
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Trailhead: プラットフォームイベントの基礎
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Trailhead: Einstein Trust Layer
著作権
Rights of ALBERT EINSTEIN are used with permission of The Hebrew University of Jerusalem. (ALBERT EINSTEIN の権利は、ヘブライ大学の許可を受けた上で使用しています。)Represented exclusively by Greenlight. (Greenlight が排他的に代理人を務めています。)