進化ループを使用したプロセスの改良
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- KCS 手法で進化ループを使用する方法を定義する。
- 記事と検索の有効性を評価する。
- レポートとダッシュボードを使用してメトリクスを追跡することの価値を理解する。
KCS の進化ループ
KCS 手法の 1 つの要素として、進化ループというメカニズムを使用した継続的な改良が挙げられます。進化ループとは、既存の記事やタスクを分析してパターンを見つけ出し、その情報を使用してコンテンツの健全性、プロセス、パフォーマンス、リーダーシップを改良するものです。
Ursa Major ではこのメカニズムを採り入れる前に、KCS プロセスを導入し、その進歩状況を監査する必要があります。現在、Zhang、そして Ada のエージェントがこの作業に取り組んでいます。数週間にわたって、エージェントがプロセスの使用や記事の品質に関するガイドラインをどのくらい遵守しているかを点検してきました。そして、パターンを見つけ出すだけの十分なデータが揃いました。
Ada と Zhang がコンテンツの健全性を評価します。2 人は、記事に価値があり、有用であることを確認したいと考えています。また、記事が検出され、ケースに添付されていることを確認することも大切です。そこで、エージェントが記事を利用してケースを解決するときに、KCS プロセスに従っているかをチェックします。さらに、応答時間が基準を満たしていることも確認します。
こうした評価は、エージェントが正しいことを継続的に行うよう促し、不十分な領域を改善させるうえでも役立ちます。問題領域のパターンが特定された場合には、そうした問題を解決するためにチームで根本原因分析を行うことが考えられます。
たとえば、Ada は過去にある顧客から、太陽熱温水器を設置した後で屋根から水漏れしたという電話を受けたことがありました。そのときに、この問題の解決法を詳述した記事を作成しました。今回 Zhang と一緒に、この記事に添付されているケース数を示すレポートを見たところ、憂慮すべきトレンドを目の当たりにしました。屋根が損傷したという顧客が 1 人いたことでも問題なのに、その後何件も生じていたのです。
この問題が生じた顧客の全員が、同じ種類の温水器を所有していることがわかりました。この情報を設置業務の責任者に伝える際、Ada は根本原因分析を行いました。そして、この給湯器の取り付けには長いネジが使われていることが判明しました。通常は問題ないのですが、特定の屋根では水漏れが発生するおそれがあります。Ada は設置担当チームと協力して、短いネジを使用すべき状況を特定しました。設置担当者が必要に応じて短いネジを使うようになってからは、屋根の水漏れに関する電話がなくなりました。
エージェントが知識ベースを利用して、屋根から水が漏れた顧客に迅速に対処したことは素晴らしいことです。ただし、Ada と Zhang の場合は、Ursa Major の問題の根本的な解決に取り組んだため、屋根の水漏れという問題自体がなくなりました。これが進化ループの威力です。
検索の評価
エージェントがケースを解決するために検索をどのように使用しているのか調べたいと Ada が Maria に相談しました。エージェントが必要とする記事を見つけることは重要です。ただし、見つからないことがあります。Ada は、こうした検索ギャップを調べ、検索されにくい記事を検出されやすくする方法を検討するつもりです。
また、利用頻度が最大の記事を見極めたいと思っています。記事が頻繁に検索され、参照されているということは、その記事が役に立っているということです。と同時に、Ursa Major の顧客が、記事に説明されている問題に遭遇していることを意味します。屋根の水漏れのケースと同様に、顧客にとって一番良いのは、問題が生じる前に Ursa Major が予防策や商品の解決法を示すことです。たとえば、問題を防止する目的で、チームが重要な領域について顧客に教育するトレーニングプログラムやメールキャンペーンを考案することが考えられます。
最後に、Ada とそのチームは、カスタマーコミュニティに比較的多くの記事を公開してきました。そこで、顧客がどのようなことを検索しているのか知りたいと考えます。この場合も、こうした記事が作成されることになった問題の根本原因を Ursa Major が突き止めることができれば、おそらく太陽熱温水器に発生している問題の数を減らすことができます。
Maria は、Ada に協力する最善の方法は、検索に関する情報を示すダッシュボードを作成することであると判断しました。そして、次のような新しいダッシュボードを作成しました。
Ada は感激します。[Search Activity - Gaps (検索活動 - ギャップ)] ダッシュボードでは、「お湯が熱すぎる」が 117 回検索されていますが、必要な情報を見つけてクリックした人はいませんでした。既存の記事がある場合は、Ada が更新して検索されるようにします。記事がない場合は作成して、誰もがその質問の回答を得られるようにします。
上位の記事も、貴重な情報です。上位の記事の多くは保証に関するものでした。そのため、保証情報を公開知識ベースに移行すれば、顧客が電話をしなくても、この種の情報を見つけられるものと思われます。
他の主要なメトリクスの確認
ダッシュボードの威力を目の当たりにした Ada は、チームが実行できる操作の追跡にもダッシュボードを使用したいと考えます。ただし、望ましくない行動を助長するようなダッシュボードは避けたいところです。たとえば、記事の作成数を追跡するダッシュボードを導入すれば、エージェントができるだけたくさん記事を作成しようとします。ただし、大切なのは数量よりも品質です。ですから、できる限り有益な記事を作成するほうが望ましいことになります。
Ada は次の質問を検討します。
- 記事の状況は何か? ドラフトフェーズに何件の記事があるか? 何件の記事が公開されているか? カスタマーコミュニティにロールアウトされている記事は何件か? 多数の記事がドラフトフェーズに留まっている場合は、その公開に取り組むことが考えられます。記事がカスタマーコミュニティに公開されていないのであれば、その点にも取り組むべきでしょう。
- Zhang が蓄積している PAR データをどのように活用できるか? ケースが記事作成の対象として検討された場合、どのくらいの頻度で実際に記事が作成されたか? 記事にすべきケースの多くで記事が作成されていない場合は、担当エージェントにさらなるトレーニングが必要である可能性があります。
- どのくらいの頻度で記事がケースにリンクされているか? ケースの中には記事がなくても解決できるものもありますが、記事がある場合にはエージェントに利用してもらいたいと Ada は考えています。
これで Maria は手一杯でしょう。Maria が Ada のためにダッシュボードを作成すればするほど、Ursa Major のカスタマーエクスペリエンスを向上させ続けることができます。
Maria は Ada のチームに、Ursa Major に KCS 手法を導入するためのツールを用意しました。そして Ada らと協力して、記事の状況を表示して管理し、アクセス権を設定して、検索や品質監査を最適化しました。Ada のチームは KCS のジャーニーを歩み始めたところですが、すでに顧客のエクスペリエンスを向上させています。ナレッジセンターサービス手法について詳しく知りたい方は、このモジュールの各単元の「リソース」セクションに記載されている資料を参照してください。