ナレッジセンターサービスの使用開始
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- ナレッジセンターサービス (KCS®) を定義する。
- KCS 手法の基本原則を説明する。
- エージェントが KCS プロセスを使用して顧客の要望を処理する方法を説明する。
チームの概要
Ursa Major はソーラー設備の部品やシステムを販売する企業で、米国南西部の太陽が降り注ぐ都市に拠点を置いています。太陽エネルギーへの注目が高まる中、同社のビジネスも成長しています。ビジネスが成長するということは、顧客が増大するということです。ソーラー設備の部品やシステムは複雑な場合があることから、Ursa Major ではカスタマーサポートでナレッジを活用することの重要性を認識しています。その一環として、サービス組織にナレッジセンターサービス (Knowledge-Centered Service: KCS) 手法を導入することにしました。
KCS 手法とは?
KCS 手法を採用している企業は、その多大なメリットを実感しています。時間とともにカスタマーエクスペリエンスが向上して、従業員の離職率が低下し、新規従業員を対象とするトレーニング時間が減少します。Ursa Major もこうしたメリットを享受するために、次の特性を備えたプログラムの開発に取り組んでいます。
- 会社のあらゆるレベルから強い賛同が得られる。
- 役員がプログラムの重要性の伝達に積極的に取り組む。
- トレーニングやコーチングを通して、全員が各自の責務を明確に理解する。
- Ursa Major のプロセスの経時的な有効性を測定し評価する方法のガイドラインを策定する。
Ursa Major ではすでに、CEO を筆頭とする経営陣から強力なサポートを受けています。Ursa Major ではこの移行をスムーズに進める目的で、サポートチーム内で KCS コーチを任命しています。特に優秀な商品サポートエージェントの 1 人である Ada Balewa が、サービスチームへのプロセスの導入に取り組んでいます。Ada はすでに Lightning Knowledge のエキスパートで、KCS 手法のトレーニングも受けています。
導入計画の要点の 1 つは、Ursa Major が KCS 手法を採用する際、エージェントが受け入れやすいように Lightning Knowledge を設定することです。そこで Ada は、Salesforce システム管理者を務める Maria Jimenez と、KCS プログラムを成功させるために Service Cloud と Lightning Knowledge にどのように機能を追加するかを打ち合わせます。
ナレッジの基本原則
サポートチームは、ナレッジを中心に据えた業務の遂行を計画しています。Ada はチームとナレッジの次の基本原則を共有します。
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豊富である。知識の共有は全員にメリットがあります。ジョージ・バーナード・ショーは次のように述べています。「君のリンゴと僕のリンゴを交換したところで、リンゴを 1 つずつ持っていることに変わりはない。でも、君のアイデアと僕のアイデアを交換したら、どちらも 2 つのアイデアを持つことになる。」Ursa Major でも同様に、記事を介してナレッジを共有すれば、エージェント全員の知識が向上します。
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価値がある。サポートエージェントは知識を駆使するナレッジワーカーです。サポートエージェントの最大の資質は、各人の知識と、その知識を顧客に伝えるノウハウです。記事に記録されているナレッジは、組織全体にとって貴重なものです。エージェントに記事の作成や編集を依頼することが、エージェントの時間の浪費のように思えるかもしれません。けれども、KCS 手法を使用して、共有するナレッジをワークフローに取り込めば、全員にメリットがあります。エージェントが知識ベースで共有される的確な最新情報を活用して、問題を迅速に解決できるようになるためです。
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需要に基づいてる。エージェントは、メール、電話、ライブチャット、チャットボットなど、あらゆるチャネルから届いたケースのコンテキストで、各自の必要に応じて記事を作成します。こうした記事は、顧客が連絡してきた問題を解決するものであるため、常に問題に即しています。エージェントは記事を利用して同様のケースを解決するときに、記事の内容を点検し、最新の情報であることを確認します。
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信頼。Ursa Major では、エージェントが記事を作成または更新すべき状況を心得ているものと信頼しています。顧客の問題解決に 1 日中取り組んでいるのは他でもないこれらのエージェントであり、顧客が何を求めているかを熟知しています。エージェントが問題を解決し、記事を作成してくれるものと信頼することが、エージェントの育成と、業務に対する意欲の維持につながります。経営陣がこのプロセスを理解し、エージェントの真摯な取り組みとその結果生み出された価値に報いれば、従業員の満足感や安心感が持続します。
KCS はツールでなく、プロセス
Ursa Major は KCS 手法の導入を決定しましたが、ツールを購入するわけではありません。この手法の導入とは、ナレッジに対するエージェントやマネージャーの考え方を改めるということです。Ada とそのチームにとって何がどのように変わるのでしょうか?
現在は、Ada が過去のコールに基づいてすべての記事を作成し、他のエージェントがその記事を利用してケースをクローズしています。新しい記事が必要になると、エージェントが Ada に作成を依頼します。記事に誤記があれば、エージェントはケースフィードで指摘し、Ada に修正する時間を確保してほしいと思っています。けれども、多忙を極める Ada は、すべての依頼を処理することができません。たとえ時間があったとしても、Ursa Major で必要とされる記事を 1 人の人間がすべて作成し編集することは不可能です。必要なナレッジはエージェント全体に拡散され、常に変化しています。トレーニングを受けたこうしたエージェントこそ、知識ベースの記事を作成する適任者です。
Ursa Major では現行のプロセスを、KCS 手法を反映したものに変更したいと考えています。そこで同チームは、顧客の要望をエージェントがどのように処理するかに関する新しいプロセスを考案しました。以下は、その要点です。
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把握する。エージェントが、問題にまつわる顧客のコンテキストを把握します。顧客は問題をどのように説明しているか? 顧客の言葉でとらえます。
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検索する。エージェントが関連性の高い記事を検索します。この問題を過去に解決したことがあるか? 既存の記事を使用して問題を再度解決することは可能か?
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利用する。エージェントが適切な記事を見つけたら、その記事を利用してケースをクローズします。具体的には、その記事情報を電話で伝えるか、顧客との連絡に使用しているメール、チャット、ソーシャル、その他のチャネルを通じて記事のリンクを設定する、または記事を共有します。
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作成する。適切な記事が存在しない場合は、トレーニングを受けたエージェントが、記事に必要な項目や構造を指定するテンプレートを使用して、すばやく記事を作成します。Maria はすでに、Ursa Major で使用する記事の種類ごとにページレイアウトを作成しています。エージェントはケースを解決しながら、新しい記事テンプレートの項目に情報を記入していきます。記事に入力し終えると、それ以降のケースで使用できるための処理に進みます。Ada は、記事ページレイアウトに、KCS の導入で必要となる項目が揃っていることを確認します。
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修正またはフラグを設定する。記事が存在するものの、改善を要する場合は、エージェントが修正するか、フラグを設定します。トレーニングを受けたエージェントは、既存の記事の問題をすぐに修正します。トレーニングを受けていないエージェントは、間違った記事にフラグを設定して、経験豊富なエージェントが修正できるようにします。
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プロセスが進化する。マネージャー、コーチ、ナレッジ分野のエキスパートが、記事の利用状況やエージェントの処理を追跡します。こうした人々は有益なメトリクスを使用して、プロセスを恒常的に改善していきます。
次の動画で、Ada が顧客から電話を受けたときに、この新しい手法がどのように機能するのかをご覧ください。
ツールも重要
Ursa Major では、業務の新しい進め方をサポートするツールが必要です。ここで登場するのが Lightning Knowledge です。Salesforce Service Cloud と Knowledge は KCS v6 の認定を受けています。つまり、Salesforce は、KCS 手法を導入するために組織で必要となるすべての機能をサポートしていることを確認する厳格な認定プロセスを経ています。
Ursa Major には適切なツールがありますが、チームがそのツールを使い始めるためには一定の設定が必要です。Ursa Major の新たな目標やプロセスに合わせて、Maria が Salesforce Service Cloud と Lightning Knowledge の設定を行う必要があります。
KCS の一定の基本事項を理解した Maria は、チームをサポートする目的で Lightning Knowledge の設定に進むことができますが、その前にまだ学ぶべきことがあります。次の単元で、記事の状況の使用方法と管理方法について学習します。
リソース
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記事: The Consortium For Service Innovation
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KCS 記事: The KCS Academy
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KCS 記事: KCS V6 Practices Guide (KCS V6 の実践ガイド)
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KCS 記事: KCS v6 Principles and Core Concepts (KCS v6 の原則と基本概念)
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KCS 記事: KCS v6 Verified Tools (KCS v6 の認定ツール)
KCS® は Consortium for Service Innovation™ のサービスマークです。