はじめての Agentforce
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- Agentforce とは何かを説明する。
- Agentforce の主な特徴を挙げる。
- Agentforce のユースケースをいくつか挙げる。
始める前に
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このジャーニーのヒーロー
Cloud Kicks の Salesforce システム管理者である Linda Rosenberg をご紹介します。Cloud Kicks はスタイリッシュで履きやすいカスタムスニーカーを販売していて、急速に成長しています。Linda は常日頃、お客様に質の高いサービスを実施し、Cloud Kicks の従業員の業務を容易にする方法を模索しています。Agentforce によって価値がもたらされるのではないかと関心を抱いています。
Linda の目的は、時間がかかる反復的なタスクを自動化して従業員の生産性を高め、空いた時間をより戦略的な活動に充てることです。また、お客様への応答をさらにパーソナライズして、お客様が必要とするサポートを確実に受けられるようにしたいと考えています。
ある日、Alex というお客様から Cloud Kicks に問い合わせがありました。Agentforce が導入されていない現行のやり取りは次のようになります。
お客様 (Alex):「こんにちは。先ほどカスタムスニーカーを注文したのですが、いつ頃届くかわかりますか?」
カスタマーサービス担当者 (CSR):「Alex さん、こんにちは! ご注文の商品は 2 ~ 3 営業日以内に発送され、発送後 5 ~ 7 営業日以内にご指定の住所に届く予定です。
Alex:「ありがとう! ニューヨーク市内に店舗はありますか?」
CSR:「どうでしょうか。店舗の所在地を確認してみます。少々お待ちください。」
(しばらくしてから) CSR:「ニューヨーク市内の店舗に関する情報が見つかりませんでした。詳細は、当社の Web サイトでご確認いただけます。」
Alex:「わかりました。ありがとう。もう 1 つ、ニューヨーク市内におすすめのランニングコースはありますか?」
CSR:「申し訳ありませんが、そのような情報はありません。地元のランニングクラブか観光案内の Web サイトでおすすめのコースを確認できるのではないかと思います。ほかに質問はありませんか?」
Alex:「特にありません。ありがとう。」
CSR:「どういたしまして。ご連絡いただきありがとうございました。」
Alex は感じよく会話を終えたかもしれませんが、この会話では、カスタマーサービスの自動化に包括的な情報とリアルタイムのデータアクセスがないことの課題が浮き彫りになっています。回答に時間がかかり、不完全であるため、カスタマーエクスペリエンスが低下しています。
お客様とのやり取りを一変する Agentforce の潜在性に Linda は大きな期待を寄せています。Agentforce があれば、自律型のカスタマーサービスが可能になり、関連性の高い情報が提示されます。Agentforce により、あらゆるやり取りがスムーズかつ効率的で、有益なものになります。
Agentforce の概要
Agentforce は、タスクの遂行を支援する自律型人工知能 (AI エージェント) のカスタマイズ可能なスイートです。AI エージェントは、タスクやビジネス上のやり取りを実行する、目標指向の AI アプリケーションです。インテリジェントな判断を下すように設計された Agentforce は、一連のタスクを開始して完了したり、自然言語の会話を処理したり、ビジネスデータから取得した関連性の高い回答を安全に提示したりすることができます。ユーザーがデスクトップを使用している場合でも、モバイルデバイスを使用している場合でも、Agentforce は幅広いワークフローややり取りに役立ちます。
この最大の長所は、コードをまったく知らなくても Salesforce で AI エージェントを設定できることです。ユーザーがすべきことは Agentforce を有効にしてエージェントを作成するだけです。AI エージェントは次のような標準アクションをすぐに実行できます。
- 商談、取引先、ケースなどの Salesforce レコードを要約する。
- メールのドラフトを作成する、またはメールを修正する。
- Salesforce レコードを見つけて更新する。
- Salesforce データを集計する。
- 知識ベースからの情報を使用して質問に回答する。
上記のほか、AI エージェントは既存の Salesforce Platform を使用して簡単に拡張できます。たとえば、Salesforce に商品のおすすめを行うフローがすでにある場合、数回のクリック操作でその機能をエージェントに追加できます。
Agentforce の特徴
この新しいデジタルコンパニオンに慣れるために、Agentforce の特徴を 1 つずつ見ていきましょう。
信頼できる
Salesforce では、信頼を最大の価値としています。そのため、Agentforce などの生成 AI ツールの構築においても、信頼をその中核に据えています。
AI エージェントは、Salesforce の標準アクセスコントロールを尊重し、セキュアなアクションを保証します。また、Agentforce は、Salesforce Platform に組み込まれたセキュアな AI アーキテクチャである Einstein Trust Layer に統合します。顧客データを損なうことなく生成 AI のメリットがもたらされ、信頼できるデータを使用して AI の応答を強化できます。
このしくみは次のとおりです
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データグラウンディング: Trust Layer で、生成プロンプトが信頼できる会社データでグラウンディングされ、応答の質が高まります。
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データ保持ゼロ: データの安全性が確保されます。ユーザーのデータがサードパーティの大規模言語モデル (LLM) プロバイダーに保持されることがありません。
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AI 監視: AI のやり取りがログに記録されるため、各ユーザーとのやり取りを表示できます。
正確性が求められる重要なシナリオでは、エージェントが会話を人間の担当者にシームレスに転送できます。たとえば、ユーザーがパスワードのリセットなどの複雑な問題でサポートを必要とし、人間の担当者による対応を希望している場合は、エージェントがユーザーの本人確認を行った後、ただちに会話を転送してパーソナライズされたサポートを可能にします。
プロアクティブ
AI エージェントの中にはリクエストに応じるだけでなく、プロアクティブに対応するものがあります。常に変化するビジネス環境ではこうした対応が不可欠です。AI エージェントは Agentforce の推論エンジンを使用して、推論と動作のプロセスを実行します。推論エンジンは、エージェントが日常的なタスクを自動化したり、面倒な作業を処理したり、お客様の最適な解決策を見つけたりすることができるようにします。こうした支援によって Cloud Kicks のサービス担当者の処理が簡素化され、各人の業務が容易になり、効率性が向上します。
以下に、AI エージェントが推論を使用してアクションを強化する方法を示します。
ケース状況を更新する場合:
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推論: エージェントがケースのコンテキスト、現在の状況、最近の更新内容を確認します。
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動作: エージェントがお客様に変更を通知したり、問題を上位のサポートチームにエスカレーションしたりします。
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観察: エージェントがケースの結果を監視し、効率的な解決を可能にするためにアプローチを調整します。
メールを受信した場合:
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推論: エージェントがメールの内容とリクエストの真意を確認します。
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動作: エージェントがメールを処理したり、新しいサポートチケットを作成したり、適切な部門に転送したりします。
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観察: エージェントが応答を監視して、問題が正しく処理されたことを確認し、必要に応じて調整します。
営業のフォローアップをする場合:
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推論: エージェントがお客様の関心事項と問い合わせのコンテキストを確認します。
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動作: リードへのエンゲージメントを維持する目的で、エージェントが営業担当によるフォローアップの電話をスケジュールします。
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観察: エージェントがフォローアップの結果を監視し、今後のやり取りを向上させるためにアプローチを調整します。
自然言語
会話型インターフェースでは、まるで人間と話しているかのように、自然言語で質問したり指示を与えたりすることができます。Agentforce に会話のコンテキストが保持されるため、フォローアップの質問や関連するリクエストをシームレスに実行できます。
たとえば、営業担当は Salesforce UI をナビゲートしてレコードを探す代わりに、「Acme の商談を表示して」と入力することができます。AI エージェントはこのリクエストを解釈して、自然言語で応答し、一致する商談のリストを表示します。あたかも信頼のおける同僚とチャットしているかのように感じられます。
同じ会話で、営業担当が続けて「そのオープンケースを表示して」と指示するとします。AI エージェントはコンテキストを記憶しているため、「その」が Acme を指していることを認識します。この機能により、一貫性のある効率的な一連のやり取りが可能になります。
しかも、Agentforce の利用は会話型インターフェースやチャットウィンドウに限定されません。フローや Apex クラスをコール可能な場所であればどこからでもエージェントをトリガーして、バックグラウンドタスクやイベント駆動型タスクを実行できます。
動的な情報検索
動的な情報検索により、AI エージェントは複雑なタスクを極めて効率的に処理できます。このしくみは次のとおりです。
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検索拡張生成 (RAG): エージェントは、Data Cloud の構造化データと非構造化データに対してセマンティック検索を実行し、外部ソースやデータベースから関連する情報を取得します。
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汎用情報検索ツール: Web 検索やナレッジ Q&A などのツールは、エージェントが複雑なタスクを処理するうえで役立ちます。たとえば、オンラインで企業や商品について調べ、その情報を社内のナレッジと組み合わせてメールサマリーを作成できます。
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フロー、API、Apex クラスへのリリース: エージェントをこうした環境にリリースすれば、あらゆるコンテキスト情報をエージェントに渡すことができます。シナリオごとにカスタムソリューションを用意する必要がなくなり、エージェントの汎用性と効率性が向上します。
Agentforce があれば、お客様とのシームレスなやり取りが強化され、面倒なタスクが自動化されることがわかったところで、冒頭の会話に戻り、Agentforce を活用すると会話がどうなるか見てみましょう。
お客様 (Alex):「こんにちは。先ほどカスタムスニーカーを注文したのですが、いつ頃届くかわかりますか?」
Agentforce:「Alex さん、こんにちは! ご注文の商品は 2 ~ 3 営業日以内に発送され、発送後 5 ~ 7 営業日以内にご指定の住所に届く予定です。ご注文についてほかに何か質問はありますか?」
Alex:「ありがとう! ニューヨーク市内に店舗はありますか?」
Agentforce:「ニューヨーク市に実店舗はありませんが、来月 Fashion Avenue 123 で 10 月 1 日から 10 月 15 日まで期間限定のショップを開催します。オンラインショップでも最新のスタイルをお買い求めいただけます。」
Alex:「助かります! もう 1 つ、ニューヨーク市内におすすめのランニングコースはありますか?」
Agentforce:「もちろんです! おすすめはセントラルパークの貯水池ループです。全長 1.58 マイルで、美しい景色を楽しめます。もう少し長いコースをご希望ならば、13 マイルに及ぶハドソン川のグリーンウェイがおすすめです。快適なランニングをお楽しみください!」
Alex:「完璧です。いろいろとありがとうございました!」
Agentforce:「どういたしまして! ほかにも何かご質問があれば、お気軽にお問い合わせください。ご連絡いただきありがとうございました。」
有益な会話になりました! どの質問に対しても、待たせたり、曖昧な返答をしたりすることがなく、明確な情報で応じています。Agentforce の機能を確信した Linda は、すぐにでも使い始めたいと考えます。
では、Linda が Agentforce のさまざまなコンポーネントを調べ、機能のしくみについて学習する様子を見ていきましょう。