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指標を使用したビジネスケースの強化

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

  1. 経営幹部に提示する指標を特定する。
  2. KPI をビジネス価値に変換する。
  3. 顧客を維持することの重要性を説明する。

組織で出世していくにつれ、財務面の責任が増大します。この単元では、組織の財務指標を使用してビジネスに対する理解を深める方法を学習します。また、具体的にどの数値に注意を払う必要があるかもわかるようになります。

経営幹部の仲間入りする場合の大きな課題の 1 つが、極めて広大な責任を担うことです。リーダーには常に細部に目をやる時間があるとは限りません。方向性を見定め、「どこに向かう必要があるか」を考えます。経営幹部の視点で財務を確認するときは、売上、収益、コスト、利益、利鞘などに着目します。来年度の予算を立てるために昨年度の予算にも目を向けます。ビジネスの実際の動向を理解することが極めて重要です。 

経営幹部に提示する指標の特定

経営幹部の大半は、インプット指標よりもアウトプット指標を重視します。「こうした細々としたコンポーネントを構築した場合、事業運営にどのような影響があるのか?」といった質問をしてきます。経営幹部が知りたいのは、人々にブランドがどう見られるかということです。彼らは新しい商品やサービス、そして競合他社の分析を重視します。

新任のリーダーとして経営幹部ミーティングに参加するときは、アウトプット指標に焦点を当てるようにします。早い段階で信用を築くためには、経営幹部が関心が抱く内容をデータや分析を用いて説明することです。コンタクトセンターの分野には豊富なデータがあります。経営幹部にとってコンタクトセンターが重要であるのはそのためです。コンタクトセンターでの経験を有するあなたは、顧客のインサイトを把握しています。これは経営幹部にとって莫大な価値があります。あなたは顧客がどのように行動し、顧客がどのような疑問や問題を抱えているかを知っています。経営陣の新たな同僚にこの種の情報を提供することが重要です。

経営幹部が心底欲しているのは、動向を理解し、その動向を基にビジネスを向上させることです。コンタクトセンターのリーダーとして、経営幹部に次のインサイトを定期的に提示します。

  • コンタクトセンターテクノロジーのトレンドと現在実装されているテクノロジーに関する情報
  • アップタイムと顧客の苦情に関するレポート
  • 重大インシデントのレポートと解決策
  • コンタクトセンターからの収益生成、およびクロスセリングとアップセリングに関するレポート
  • コンタクトセンターのコストと改善の機会

コンタクトセンターで得たデータを使用して上記の分野の詳細を示すことができれば、あなたの存在価値が示されます。 

KPI のビジネス価値への変換

リーダーシップの観点から言えば、重要業績評価指標 (CSAT、AHT、NPS) を価値の促進要因に変換できなければなりません。KPI を、組織全体にとって重要な情報に変換するにはどうすればよいのでしょうか? 顧客努力スコア (CES) を使用した例で説明します。カスタマーエクスペリエンスが断片的であれば、顧客が不満を抱き、企業から離れていく可能性が高まります。このすべてが収益減につながるため、あなたは経営幹部としてこの点に焦点を当てる必要があります。

優れたリーダーは、損益に影響を及ぼす可能性がある不測の事態に備えなければなりません。大手リテーラーの事例を考えてみましょう。チェーン全体を下支えしているアプリケーションが 1 日、もしくは 1 週間もダウンしたらどうなるでしょうか? 瞬く間に甚大な財務損害を被るであろうことは数学が得意でなくてもわかります。さまざまな潜在的問題を予測することができれば、早い段階で損失を食い止める手段に投資できます。 

通常リーダーは、システムのダウンタイムを非生産時間数に換算します。けれどもシステムのダウンタイムがもたらすのは生産時間の損失だけではありません。これは問題の 1 つに過ぎません。上記のようなクラッシュが生じれば、スコアが悪化し、ビジネスは多額の収益を失うことになります。リーダーであれば、これらの数値を定量化して示す必要があります。数値を基に、大規模なダウンタイムの発生を防ぐために必要な投資について明確に説明することができます。

投資の必要性の主張

あなたが描くビジョンへの継続的な投資のビジネスケースを提案するかどうかは、リーダーであるあなたの判断次第です。経営幹部の賛同を求めるのであれば、競合の点から説明します。あなたが検討している投資によって市場で優位に立てるであろうことを示します。 

賛同を取り付けるために、人から厳しい質問を投げ掛けられる前に自ら問いかけます。「コンタクトセンターの投資収益率はどのくらいか?」、「会社全体にどのくらいのメリットがあるか?」、「どのようにして定量化するのか?」といった質問です。ROI の計算が完璧である必要はありません。会社を望ましい方向に導くことができればよいためです。そして質問を受けたときのために、答えを用意しておきます。あなたは投資による価値を認識しています。

投資を将来の戦略的能力に結び付けます。会社が 5 年後、この投資のうえにどのようなことを構築できるかを説明します。ビジネスケースでは、顧客のために今何ができるかばかりに気を取られることが少なくありません。あなたが提案する投資ごとに、「3 年後、あるいは 5 年後にこの投資が会社にどのような影響を及ぼすか?」、「長期的にこの投資によってどのような戦略的優位性がもたらされるか?」をチームに考えてもらいます。こうした質問への回答が、ビジネスケースがうまくいくかどうかの分かれ目になるかもしれません。

各顧客の価値の理解

顧客を維持することはコンタクトセンターの使命です。ブランドに忠実な顧客は、会社にとって最も価値が高い人々と考えられます。なぜでしょうか? ブランドに強い親近感を抱いている長期的な顧客は往々にして、新規顧客よりも売上高が多いためです。長期的な顧客はまた、ビジネスのことをすでに信頼しているため、長い目で見れば購入頻度が高く、購入量が多い傾向にあります。こうした情報を活用して、コンタクトセンターへの戦略的投資を提案します。 

事態を悪化させるさまざまな状況を考えれば、顧客価値の大切さがわかります。たとえば、ソーシャルメディアであなたの会社が非難を浴びたときに、カスタマーケア部門がこの問題にきちんと対応しなかったとします。その結果、世間に醜態がさらされるだけでなく、相当数の顧客が会社との取引を止めることにもなりかねません。 

ブランドのリスクはどのように計算するのでしょうか? まず、財務面への即時の影響を算出します。以下の例では、この悪評が消え去らず、対処もされなかったため、3 か月の間毎日 50 人の顧客から問い合わせを受けます。  不満を持つ顧客 15,000 人に、顧客のライフサイクルの価値を乗じれば、すぐさま財務面にどのくらいの影響が及ぶかがわかります。

例:  

顧客あたりの月間平均収益 = 100 ドル/月

1 日の離反数 50 件 = 1500 件/月 

CSAT スコアが減少した月数 = 3 か月

100 x 1500 x 3 = 450,000 ドル。これが 3 か月間の減収です!

次に、離反した各顧客の長期的なライフサイクル (ここでは 3 年とします) にわたる平均価値を考えてみましょう。商談の損失は軽く 100 万ドルを上回ります。

例:  

1 か月間に離脱した顧客数 1500 人 = 計 4500 人の顧客が離脱

離脱に関連する事象の期間 = 3 か月

顧客の平均 CLV = 3 年で $1800

1 件の事象に起因する CLV の総損失 = $8,100,000

4500 x 3 x $1800 = $8,100,000。これが顧客生涯価値の損失です!

独自の指標を組み込めば、顧客の維持につながる投資を提案しやすくなります。

財務に強くなることは、リーダーシップというパズルの 1 つのピースに過ぎません。大切なのは、KPI や顧客価値を決定するだけではありません。数値が事業運営にどのように結び付いているかを理解することも重要です。次の単元ではこの点を学習します。

リソース

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