コンタクトセンターでのお客様の苦情の管理
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 不満を持つお客様に対応する。
- コミュニケーションチェーンの概念を使用する。
- 深刻化を未然に防ぐ。
不満を持つお客様への対応
コールセンターで働いている方は、すでにお客様の懸念を解決するノウハウをご存知かも知れません。ただし、人生のあらゆることと同じように、常に向上の余地はあります。この単元では、問題解決を支援し、顧客を維持するために使用できるヒントを紹介します。
コミュニケーションチェーン
心理学者が使うコミュニケーションチェーンという概念では、人は何かを口に出して表現すると、そのメッセージに対する応答を期待します。最初のメッセージは、コミュニケーションチェーンの「リンク」です。リンクに対する反応がなければ、チェーンはつながらないまま、または壊れたままです。コミュニケーションチェーンを形成するには、お客様の懸念を認識する必要があります。
研究によれば、人間の脳は左右それぞれで 2 種類の異なる機能を果たしています。脳の右側は、恐怖、喜び、不安、衝撃、愛情などの感情を司どり、左側は、論理面を司どります。科学や数学などの論理を伴う作業は左側で処理されます。
カスタマーサービスに連絡してくるお客様は、まず苦情や不満を吐き出し、その後の反応を期待しています。反応が得られないと、会話の処理が右脳に移行し、より感情的になる可能性があります。最初の単元では、お客様の感情のトーンを認めることの重要性を学習しました。吐露した懸念や怒り、不満が受け止められなかった場合、お客様はさらに気分を害すことになります。
そこで、コミュニケーションチェーンの考え方が、会話の感情的側面へのアプローチにどのように役立つかを見ていきましょう。
お客様が懸念を表明したのにそれが認められないと、チェーンが断ち切られ、会話は右脳に移行するため、お客様は苛立ち、怒り、困惑などを感じます。お客様が左脳で情報を処理しているときの方が、生産的な会話ができます。お客様の懸念を認めることで、お客様は論理的思考を行う左脳を使用するようになり、それと同時に、コミュニケーションチェーンのリンクがつながることで、会話が前に進みます。
コミュニケーションチェーンをつなげる語句
大切なのは、お客様の懸念を真摯に認めることで、コミュニケーションチェーンをつなぐということです。自分をお客様の立場に置きます。それにより共感が生まれます。あとはその共感をお客様に返すだけです。認めるということは、つまり共感するということです。
さまざまなチャネルで懸念を認識する方法の例を紹介します。
電話
- 「お話はよく分かりました。」
- 「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
- 「承知いたしました。解決できるように最善を尽くします」
- 「徹底的に原因を調査させていただきます。」
ソーシャルメディア
「こんにちは、Myra さん。それは問題ですね。大変申し訳ありません。どのような方法で連絡を差し上げるのがよいか、DM を送信していただけますか? 解決に向けて努力します。」
チャット
「お困りであることはよくわかりました。状況を整理させてください。」
テキスト
「ご不便をお掛けして大変申し訳ございません。お調べいたします。」
深刻化を未然に防ぐ方法
すでに不満を持っているお客様に対応するときに、やりとりでミスを犯すと、状況が一気に悪化することがよくあります。本筋を外れることなく、かつお客様の気分を害さないようにするためには、次の 3 つのステップを覚えておきましょう: 理解する。説明。対応。
理解。お客様が言った内容を繰り返し、お客様の懸念を理解して認識していることを伝えます。
説明。最新の状況をお客様に落ち着いて説明します。
対応。問題に対応するためにできることをお客様に伝えます。
不満を持つお客様への対応方法
すでに不満を持っている人に電話で対応するときには、次のことを行います。
まず、お客様の懸念をしっかり認識することから始めます。さらに、次の 3 つを説明します。
- わかっていることはこのとおりです。
- 実施したことはこのとおりです。
- 次に実行することはこのとおりです。
実際にこれらのステップを使用したエージェントの例を挙げます。
- 「わかっていることはこのとおりです: お客様のお荷物は、飛行機の到着後、手荷物受取のターンテーブルに現れませんでした」
- 「実施したことはこのとおりです: お客様のお荷物を取った人がいないか確認するために、セキュリティ担当にその日時以降のカメラ映像を確認するように伝えました」
- 「次に実行することはこのとおりです: 防犯カメラに何か残っていた場合はお知らせします。お客様には、警察に届けて、保険会社に連絡していただく必要があります。保険会社がお客様の損失を補償できる可能性があります」
お客様が抱いている懸念が当然であることを認識することは、問題を緩和および解決する最適な方法です。上記のような方法を実践すれば、成功の可能性は大幅に高まります。