フィードバックを与える/受ける
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 肯定的かつ建設的なフィードバックを行う。
- 自己防衛に効果的に対応する。
- 気軽にフィードバックを受ける。
フィードバックの重要性を理解する
フィードバックを行うのは簡単ではありません。向かい合って納期遅れについて話すときの気まずい雰囲気を思い出してください。あるいは最近、顧客とのミーティングで失敗したときのことでもよいでしょう。そのまま放置して二度と起きないことを望んだほうが簡単に思えますが、フィードバックをしないと、おそらくまた同じことが起きます。
Gallup 社の調査は、従業員が十分なフィードバックを受けていないことを示しています。あなたが十分にフィードバックしたつもりでも、従業員はそう思っていない可能性があります。不十分なフィードバックには、時間、作業の質、低パフォーマンスに対処する負担などの代償がつきものです。
では、なぜマネージャーはフィードバックを行うことを避けるのでしょうか?
もちろん、マネージャーなら、建設的なフィードバックを行うことを避けるために、いくつも理由を挙げることができるでしょう。あるいは、いつも忙しすぎて、立ち止まって他人の優れたパフォーマンスを評価する時間がないのかもしれません。ところが、時間を取って適切に行えば、フィードバックには驚くべき効果があります。
従業員フィードバックの効果に関する詳細なデータに関心がある場合は、この注目すべき従業員フィードバックの重要性に関する統計をご覧ください。
興味深いですね!
「フィードバックは贈り物」という言葉を聞いたことがありますか? フィードバックによって、従業員にあなたが彼らのパフォーマンスに注目していることを示せます。従業員の成功を気にかけていることも伝わります。あなたが従業員に厳しく役に立つフィードバックをすれば、たとえ聞くのがつらいことでも本当の贈り物になります。従業員はフィードバックから学ぶことでさらに能力を伸ばせます。
従業員にフィードバックすると、目下の状況が改善されるだけでなく、長期的な信頼も築けます。Chicago Innovation Awards では、最近コラボレーションに重点を置いています。事例研究とインタビューを通じて、信頼があると、イノベーション、コラボレーション、およびクリエイティブシンキングが盛んになり、誰もが同じ目標に向けて取り組むことが判明しました。これは素晴らしい贈り物です。
納得しましたか? フィードバックが従業員にとって重要なのは明らかです。そしてビジネスにとっても重要です。
フィードバックを行う
フィードバックが簡単ですぐに終わるときもあります。優れたプレゼンテーションの後に、感謝の言葉を共有したり、ミーティングで気が付いた点を指摘したりするときです。双方が笑顔で頷き、解散します。任務完了です。
ただし、いつもそうとは限りません。パフォーマンスに関して難しいフィードバックをしなければならない場合はどうでしょう。おそらくすぐには終わらず、簡単でもありません。
状況はそれぞれ異なるため、毎回異なるアプローチを使用しているのではないでしょうか。アプローチには次の要素が影響します。
- あなたのスタイル — 単刀直入と婉曲的のどちらがしやすいか?
- 相手のスタイル — フィードバックにどう反応するのが最もよいか?
- 状況 — 単純か、複雑か?
- フィードバックの種類 — 1 回限りの状況か、継続的な行動パターンか?
では、望ましいフィードバックの準備、実施、およびサポートに役立ついくつかのモデルを見てみましょう。
フィードバックの準備はできましたか? 次の 2 つのオプションがあります。
- 共有してから質問する。あなたの見解を示してから、相手がそれに対してどう考えるかを質問します。
- 質問してから共有する。最初に質問をして相手の見解を聞いてから、あなたの見解を話します。
最初に質問するか、見解を示すかをどう決めればよいのでしょうか? 次の推奨ガイドラインを確認しましょう。
状況 | アプローチ | 発言の例 |
---|---|---|
1 回限りの出来事 (ミーティング、やりとり、納期遅れ) |
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継続的なパフォーマンスの問題 (おそらく気まずい話題) |
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最初の状況では、まず相手の見解を尋ねています。もし相手が事態と自分の役割を認識していれば、あなたの見解は言わなくてもかまいません。この場合、相手の事情を聞き、速やかに次のステップに移ります。まるでコーチングのよう? そのとおりです。GROW モデルを思い出しましたか?
継続的な状況では、最初にあなたが観察したことを共有し、次に相手の考えを聞きます。行動パターンがある場合は、相手が事態を認識していないか、どうしてよいかわからない可能性もあります。
次に、会話のどの部分で行うかに関係なく、自分の見解を共有する簡単な方法について説明します。これは SBI と呼ばれます。
SBI モデルは、具体的に話し、フィードバックを明確かつ客観的に共有し、アクションプラン作成の準備をするために役立ちます。
次に例を示します。Susan は顧客へのデモを終えたところです。どう話せばよいか、見てみましょう。
Situation (状況) | 「Susan、午前中のデモについて話したいことがあります。」 |
Behavior (行動) | 「お客様のニーズについて質問しませんでしたね。」 |
Impact (影響) | 「その結果、お客様の最重要事項がわからず、商談を成立できるかどうかに影響します。」 |
Susan が見事なデモを実施した場合はどうでしょう。肯定的なフィードバックにも SBI は適用されるのでしょうか? もちろんです。
S | 「Susan、今日あなたが実施したお客様へのデモについて話したいことがあります。」 |
B | 「お客様のニーズに関する重要な情報を明らかにする質問をしましたね。」 |
I | 「お客様は感心し、製品への信頼を高めました。私たちは確実に商談成立に向かっています。」 |
まだ方法がよくわからない場合は、さらに例を見てみましょう。
SBI を使用した発言の例 | 不適切な発言の例 |
---|---|
「期日は金曜日でした。あなたからの報告がなかったので、顧客に最新情報を提供できませんでした。これは、会社への信頼に影響します。」 | 「あなたはいつも報告が遅いですね。お客様は失望しています。」 |
「John が金曜日のミーティングで見解を発表できないのではないかと心配していました。彼のチームの見解がないと、私たちはこの後、月曜日までに提案をまとめることができません。」 | 「あなたは他の人とうまくコラボレーションしていません。あなたのせいで、私たちの評価が下がります。」 |
「レビューミーティングでマーケティングチームの質問に全て答えていましたね。あなたが準備していたおかげで、信頼が築かれ、相手を動かすことができました。それがなければ、商談を進めることができなかったでしょう。次週のミーティングでもよろしくお願いします。」 | 「よくやってくれました!」 |
「製品チームへの提案は画期的でよく練られていました。あなたがいなければ、チームのアプローチは違っていたでしょう。今後もチームの窓口としての活躍に期待しています。」 | 「ありがとう!」 |
「状況を明らかにした」完了! 「行動と影響を説明した」完了! それで終わりですか? いいえ、まだ残っています。
フィードバックで最も大事なのは解決策を見つけ、協力して次のステップを考えることです。
次のように質問してみてください。
- やめること、始めること、続けることは何ですか?
- どのアクションでこの状況に対処しますか?
- 学んだことは何ですか?
「始める」「やめる」「続ける」を使用する
チームメンバーが自分で解決策を検討する場合、何を始める、やめる、または続けるのか、具体的なアクションを考えさせるのがよい方法です。
次は、ミーティングの進行に苦労している人の例です。
始める | 「私は今後、ミーティングの議事を決める際にディスカッションに必要な時間をもっと現実的に設定します。全員の意見を聞きたいのです。」 |
やめる | 「私は今後、自分の気が急いているために他の人の話を遮ることをやめます。もっと時間を取り、議事の進め方を改善することで実現できます。」 |
続ける | 「私は現在、選択肢と利点および欠点を適切に検討できています。今後も、チームが具体的な解決策とその利点および欠点に集中できるようにサポートします。それで効果が出ます。」 |
何をすべきか、こと細かに指示されたいと思う人はいません。実際、すべきことを指示し、それが失敗した場合には「こうしろと指示したのはあなたです」と言われてしまうでしょう。
自分で解決策を検討するように求め、どうサポートすればよいかを尋ねます。
次のステップを実施するときは、必ず継続的にサポートします。
- 1 対 1 面談で状況を確認する。
- 次のステップを追跡する。
- 継続的なフィードバックを行う。
- 改善を評価する。
- 従業員に支援が必要なのはどこか尋ねる。
うっかり、フィードバックを行うときによくある失敗をしないようにしてください。
代わりに、次のフィードバックを行う際のヒントを参考にしてください。
- 会話の準備をする。
- タイムリーにフィードバックを行う (状況発生後 24 ~ 48 時間後)。
- 「あなたはいつも」や「あなたは決して」のような誇張表現の使用を避ける。
- 質問をし、話しに耳を傾ける。
- フィードバックを双方向の会話にする。
- 具体的に話し、SBI を使用して例を挙げる。
- 率直、的確、簡潔にする。
- 客観性を保つ。
- 自分と相手のボディランゲージに注意する。
- 前進するためのアクションを識別する。
これらのヒントを参考にして、今日の午後は効果的なフィードバックを行いましょう。
フィードバックを計画する
フィードバックを行うことにまだ躊躇いがありますか? パフォーマンスに関する気の重いフィードバックをしなければならない場合などは特に、プランを立てるとやりやすくなります。気分が落ち着き、自信が高まり、プランに沿って進めることができます。事前に想定しておくことで不意打ちに戸惑うことながく、楽な気持ちで会話を進めることができます。
検討すること | 実践すること |
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目的は何か? |
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どのような質問をするか? |
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どのようなことを分かち合うか? |
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予想される相手の反応のうち、こちらの準備が必要となるのはどれか? |
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次の段階としてどのようなことを考えているか? |
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フィードバックのプランを作成する必要がありますか? コーチングとフィードバックパックに Feedback Planning Tool (フィードバック計画ツール) のサンプルが含まれています。
依然として不安が拭えない場合や、マネージャーとして初めての試みである場合は、フィードバックを行う新任マネージャーのためのヒント集をご覧ください。
自己防衛的な態度をとる人に対応する
大変よくない状態です。うまくフィードバックできたと思った矢先に、相手が自己防衛的な態度をとるようになりました。誰もが経験していることです。そのうち、言い争い、非難、苛立ち、言い訳といった対立に発展します。どうすればよいのでしょうか?
相手の話が自己防衛的になってきたら、恐れずにこう言います。「あなたが困惑しているのはわかっています。それについて話しましょう。」少し間を置いてから、質問して状況を明らかにします。
次のような質問をしてみましょう。
- 今、何を考えていますか?
- このフィードバックのどこに苛立ちを感じましたか?
- 同意できるのはどの部分ですか?
- 同意できないのはどの部分ですか?
少し休憩してから、後でフィードバックについて話し合ってもよいでしょう。ためらわずに小休止します。相手は先に進む前に少し発散する必要があるかもしれません。
自己防衛的な態度をとる人に対応するには、次のチェックリストを念頭に置いてください。
- 冷静を保ち、自分が自己防衛的な態度をとらないようにする。
- 明快で簡潔にする。
- 自由形式の質問をする。
- 相手の言い訳を聞く。
- 相手の言うことを聞いたら内容を確認する。たとえば「私がこれについて共有したことに同意していないようですね...」など。
- 質問を促す。
- 必要なら休憩する。
- 会話の方向を解決策に向ける。
- 共感し、気を長く持つ。
リラックスしてフィードバックを受ける
フィードバックを受ける場合はどうでしょうか? もちろん、マネージャーにもフィードバックは必要です。私たちの誰にも向上の余地があります。
何より、フィードバックは自身を高める素晴らしい方法です。フィードバックがなければ、マネージャーとしてうまくやっていくために自らを改善する機会がありません。頻繁にフィードバックを求めることが重要です。
1 対 1 の面談でフィードバックを求めます。チームメンバーの考えを聞くことに前向きであることを示します。「私に対してどのようなフィードバックがあるのですか?」などと聞いてはなりません。相手を圧倒したり、威圧的になったりする可能性があるためです。気軽に質問します。
- 私の言動は役立っていますか?
- 何がうまく行っていないのですか?
- 私にしてもらいたことは何ですか?
- 私が控えたほうが良いと思うことを 1 つ挙げてもらえますか?
- 私がやり方を変えたほうが良いと思うことを 1 つ挙げてもらえますか?
- どうすればもっと良い形でサポートできますか?
従業員が、フィードバックを行えば批判されるかもしれない、否定的に取られるかもしれない、あるいは恨まれるかもしれないと考えて躊躇することが考えられます。あなた自身は効果的なフィードバックを行うスキルを習得していますが、従業員はそうしたスキルを持ち合わせていないこともあります。
寛大な気持ちで望み、相手に完璧なフィードバックを期待しないようにしましょう。従業員からのフィードバックを所望し必要としていることを伝えて安心させます。学習し成長することに前向きで、向上していくためにフィードバックをもらえれば嬉しいことを知らせます。
他者からフィードバックを受けるときは、それに同意するかどうかに関係なく、真剣に耳を傾けます。そして聞いた内容を要約して質問します。
フィードバックを受ける場合のヒント:
- 深呼吸する。
- 平常心を保つ。
- 耳を傾ける。
- 明確にするための質問をする。
- 異議を唱えたり、自己防衛に走ったり、言い訳をしたりしない。
- 寛容な姿勢を保つ。
フィードバックが的外れと思われるような場合でも、自己弁護すれば、フィードバックを率直に受け入れる気がないというメッセージを相手に送ることになります。従業員が抵抗を察知すれば、今後フィードバックをもらえる可能性は低くなります。
フィードバックを受け取った後、その内容を評価します。時間をかけて、考えてみてください。やみくもに受け入れたり拒絶したりしないようにします。
検討事項:
- 他者から似たようなことを言われたことはないか?
- すでに自覚していたことか?
- 驚いたか?
- よく考えてみるべきことだと思うか?
以下はフィードバックを受けるときに、やって良いことといけないことの一覧です。
実践すること | やってはいけないこと |
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話を聞き終えるまで口を挟まない | 話を割って言い訳をする |
明確にするための質問をする | フィードバックが正確かどうか問い掛ける |
聞いた内容を別の言葉で言い換える | 臆測する |
自身の反応に注意を払う | 個人攻撃とみなす |
フィードバックのやり取りについて多少なりとも気が楽になったのではないでしょうか。では、ここで実際にやってみましょう。フィードバックは贈り物だということを忘れないでください。
リソース
- 10 Reasons Your Employees Need Feedback (従業員にフィードバックが必要な 10 の理由)
- Statistics on the Importance of Employee Feedback (従業員のフィードバックの重要性に関する統計)
- 10 Common Mistakes in Giving Feedback (フィードバックの実施時によくある 10 の誤り)
- GROW Model (GROW モデル)
- First Time Managers Guide to Giving Feedback (初めてフィードバックを行うマネージャーのためのガイド)
- Feedback Planning Tool (フィードバック計画ツール) (コーチングとフィードバックパックをダウンロード)