廃棄物を追跡する
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 廃棄物からの排出量を計算する方法を説明する。
- 発生廃棄物レコードについて説明する。
- 廃棄物フットプリントレコードについて説明する。
NTO の水使用量データを追跡した Sam は、廃棄物からの排出に注目したいと考えています。この排出は NTO の業務、廃棄物処理、NTO が販売した製品の廃棄による廃棄物によって生じます。GHG プロトコルでは、廃棄物関連の排出はスコープ 1 またはスコープ 3 カテゴリの排出に分類されます。
Sam はシステム管理者に依頼して [Net Zero 設定] で [廃棄物関連データを管理] 機能を有効にしてもらいます。
廃棄物による排出量を計算する
廃棄物による排出量の計算を始める前に、Sam はシステム管理者に依頼して、設定ページから [参照データの読み込み] を使用して [廃棄物処理排出係数] データセットをアップロードしてもらいます。排出係数データには廃棄物種別と廃棄物処理種別ごとの排出係数が含まれています。
廃棄物に伴う排出量は廃棄物の種類 (段ボール、食品廃棄物、プラスチック、アルミニウム缶) と処理方法 (焼却、埋立、リサイクル) によって異なります。
廃棄物関連の排出量を計算するために、Sam は次のことを行う必要があります。
- 発生廃棄物レコードを作成する。
- 特定の年の廃棄物フットプリントレコードを作成し、該当するすべての発生廃棄物レコードを関連付ける。
発生廃棄物レコードはスコープ 3 排出源または固定資産排出源にリンクされています。さらに廃棄物による排出量を計算するために、廃棄物処理排出係数セットレコードが発生廃棄物レコードに接続されます。各発生廃棄物レコードは廃棄物フットプリントレコードとも関連付けられており、廃棄物フットプリントレコードには子の廃棄物フットプリント項目レコードを設定することもできます。同様に、各廃棄物処理排出係数セットレコードには複数の廃棄物処理排出係数セット項目を設定できます。
次の図は、廃棄物関連のレコードと排出源とのリレーションを示しています。
Sam は次のいずれかの方法を使用してサードパーティによる廃棄物の廃棄や処分からの排出量を計算できます。
- サプライヤー固有の方法: 廃棄物に関するスコープ 1 とスコープ 2 の排出量を廃棄物処理会社から直接収集します。
- 廃棄物種別に固有の方法: 発生廃棄物データ (特定の廃棄種別と処理方法の廃棄物数量) を取得し、廃棄物関連の排出係数を適用してスコープ 1 またはスコープ 3 排出量を計算します。
発生廃棄物レコードを作成する
Net Zero Cloud では発生するすべての廃棄物に対して発生廃棄物レコードを作成する必要があります。
発生廃棄物レコードを作成するには、次の主要項目のデータが必要です。
- 廃棄物種別
- 処理種別
- 処理場種別
- 廃棄物処理量
- 廃棄物処理量単位
Sam は排出源を固定資産排出源またはスコープ 3 排出源として指定する必要があります。発生廃棄物レコードを作成するときに、Sam は既存の廃棄物フットプリントに関連付けるか (これについては後ほど詳しく説明します)、新しい廃棄物フットプリントを作成できます。
Sam が入力した値と該当する排出係数に基づいて次の発生廃棄物項目が計算されます。
- 廃棄物処理量 (トン)
- スコープ 3 (上流) 事業から出る廃棄物に伴う排出量 (tCO₂e)
- スコープ 3 (下流) 販売した製品の廃棄に伴う排出量 (tCO₂e)
- スコープ 1 排出量 (tCO₂e)
さまざまな項目や値がスコープ 3 排出量のアカウンティングにどのように影響するかを理解しましょう。
- Sam が固定資産排出源レコードを発生廃棄物レコードに関連付け、[処理場種別] 項目の値に [オフサイト] を指定すると、計算された排出量は [スコープ 3 (上流) 事業から出る廃棄物に伴う排出量 (tCO₂e)] 項目に記録されます。
- Sam が固定資産排出源レコードを発生廃棄物レコードに関連付け、[処理場種別] 項目の値に [現地] を指定すると、計算された排出量は [スコープ 1 排出量 (tCO₂e)] 項目に記録されます。
- Sam がスコープ 3 の排出源レコードを発生廃棄物レコードに関連付け、[処理場種別] 項目の値に [オフサイト] を指定すると、計算された排出量は [スコープ 3 (下流) 販売した製品の廃棄に伴う排出量 (tCO₂e)] 項目に記録されます。
Net Zero Cloud では廃棄物による排出量を計算するために廃棄物処理排出係数セットレコードに読み込まれた廃棄物関連の排出係数が使用されます。これらの排出係数には廃棄物による排出量の計算に役立つ次の 2 つのエンティティが含まれています。
- 廃棄物処理排出係数セット: 固定資産またはスコープ 3 の排出源に関連付けられた廃棄物処理の排出係数を表します。
- 廃棄物処理排出係数セット項目: 廃棄物種別と処理種別に基づいた廃棄物処理の個々の排出係数を表します。
廃棄物処理排出係数セットには、各廃棄物種別と処理方法に 1 つずつ、複数の廃棄物処理排出係数セット項目を含めることができ、具体的な排出係数 (tCO₂e/メートルトン単位) を指定できます。詳細は「廃棄物処理排出係数セットレコードの作成」を参照してください。
廃棄物フットプリントを計算する
廃棄物フットプリントレコードは、事業の一環として、または製品の廃棄によって発生する廃棄物からの排出量を集計したものです。これはカーボンフットプリントレコードに似ています。
Sam は NTO について 1 年ごとに 1 つの廃棄物フットプリントを作成し、すべての発生廃棄物レコードを関連付けます。各廃棄物フットプリントには子の廃棄物フットプリント項目を設定できます。この品目では廃棄物種別と処理種別ごとに排出量が集計されます。
廃棄物フットプリントレコードを作成するには、次の主要な情報が必要です。
- 名前: 廃棄物フットプリントの名前。
- フットプリントフェーズ: 廃棄物フットプリントの最新のワークフロー状況。フェーズはウォーターフットプリントやスコープ 3 カーボンフットプリントのものと同じです。
- レポート期間の詳細: このフットプリントが生成される期間の詳細。[開始日]、[終了日]、[報告年] が含まれます。
- 排出源: [固定資産排出源] または [スコープ 3 排出源] のいずれかです。
-
補足排出量 (tCO2e): どのレコードにも含まれていない係数の排出量入力を含めるには、Sam は次の項目に値を入力する必要があります。
- スコープ 3 (上流) 事業から出る廃棄物に伴う追加排出量 (tCO₂e)
- スコープ 3 (下流) 販売した製品の廃棄に伴う追加排出量 (tCO₂e)
- スコープ 1 追加排出量 (tCO₂e)
この廃棄物フットプリントを作成するときに、Sam は既存の年間排出インベントリに関連付けるか、新しい年間排出インベントリを作成するかを選択できます。
次の廃棄物フットプリント項目は廃棄物フットプリントレコードに関連付けられた発生廃棄物レコードを集計することによって計算されます。
- 発生廃棄物の詳細レコード件数
- 合計廃棄物量 (トン)
- スコープ 3 (上流) 事業から出る廃棄物に伴う排出量 (tCO₂e)
- スコープ 3 (下流) 販売した製品の廃棄に伴う排出量 (tCO₂e)
- スコープ 1 排出量 (tCO₂e)
廃棄物フットプリントを作成する方法についての詳細は「廃棄物フットプリントの計算」を参照してください。
Sam が廃棄物フットプリントレコードを作成したため、廃棄物フットプリントの報告期間の NTO の合計廃棄物量と合計 GHG 排出量が表示されます。Sam が新しい発生廃棄物レコードの作成または関連付けを行ったり、廃棄物フットプリントのその他の補足排出量の数値を調整したりした場合には、[再計算] オプションを使用して排出量の値を再計算できます。また、誤って更新されたり自動プロセスによって更新されたりすることがないように、廃棄物フットプリントレコードをロックすることもできます。これによって関連付けられた (または子の) 発生廃棄物レコードもロックされます。
すべてのレコードの準備が整いました。では、NTO の合計排出量を得るには各種レコードをどのように使用すればよいのでしょうか? Sam は特定の年の年間排出インベントリレコードを作成することで、その年のカーボンフットプリントと共に、すべての排出源と活動の廃棄物フットプリントを積み上げ集計することができます。インベントリの作成についての詳細は、「Net Zero Cloud を使用した科学的根拠に基づく目標設定と排出量予測」を参照してください。
廃棄物による排出量を分析する
Net Zero Cloud の Waste Management ダッシュボードでは、組織の廃棄物によって発生する炭素排出量に関するインサイトを得ることができます。
Sam はこのダッシュボードを使用して NTO の合計廃棄物処理量を廃棄物種別と処理ごとに表示します。また、NTO の合計廃棄物排出量も上流活動と下流活動ごとに分類して表示できます。
Net Zero Cloud を使用することで、NTO は水使用量と廃棄物のデータを効率的に追跡し、ネットゼロ排出を達成できます。