バリュードリブンデザインを実践する
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 組織が掲げているバリューをどのくらい効果的に具現化しているか評価する。
- バリュードリブンデザインによって組織のデザインの実践を強化する方法を挙げる。
いよいよ実践
ここで、バリュードリブンデザインについて学習した内容を実践に移します。事例やベストプラクティスなど、バリュードリブンデザインに対する理解を深めたところで、企業の整合性ワークショップを開催し、組織が掲げたバリューをどのくらい効果的に具現化しているか評価する方法を見ていきます。組織はこのワークショップとプロセスを使用して、次のことを行います。
- プロダクトやサービスで具現化するバリューについて理解する。
- バリューの具現化の現在の状態と理想の状態のギャップを明らかにする。
- バリューに基づいてデザイン/構築プロセスを進めることが重要な理由に対する理解を深める。
- チームにビジネスコンテキストにおけるバリューを紹介し、個人的なバリューを組織のコアバリューとは切り離す習慣を確立する。
企業の整合性ワークショップ
前述のとおり、組織が財政的成長のようなビジネス目標を何よりも優先する場合、意図的か否かに関係なく、それもバリューの具現化ということになります。ただし、プロダクトやサービスでバリューを具現化する場合、プロセスの最初の時点から意図的に計画しなければなかなかうまくいきません。
ここで役立つのが企業の整合性ワークショップです。このワークショップのプロセスは、オンライン、対面、グループ、個人など、さまざまな状況に適応可能ですが、ワークショップの一般的な構成では参加者に次のことが求められます。
- バリューというレンズを通してプロダクトやサービスを分析し、現在どのようなバリューが具現化されているか検討する。
- この具現化を組織が掲げるコアバリューと比較する。
- 重視する組織のコアバリューを具現化する方法を、既存の特徴の変更と新しいアイデアの両面からブレインストーミングする。
ワークショップのフレームワークがわかったところで、Bloomington Caregivers という架空の会社の例を通して、各ステップがどのように機能するか見てみましょう。
医療アプリケーション、教育アプリケーション
バリュードリブンデザインでどのようなことが可能なのかを理解した Bloomington Caregivers は、プロダクトパイプラインに存在する別のアプリケーションでこの点を実践することができます。Bloomington Caregivers は、現在開発中で稼働間近の別のアプリケーションにバリュードリブンアプローチをどのように適用できるか検討するために、企業の整合性ワークショップをスケジュールします。
このアプリケーションは、在宅ケアの利用者の家族が、大切な人のケアに関する詳しい情報を確認できるようにするものです。利用者の同意を得た家族は、ケア担当者の訪問や医療機関からの健康状態に関する最新情報を 1 か所で管理し、懸念や疑問があればテキストや音声メッセージで質問できます。企業の整合性ワークショップで、Bloomington Caregivers は次のことを行います。
- 現在、このアプリケーションでどのバリューが具現化されているか分析する。たとえば、ユーザーインターフェース (UI) が英語のみの場合、どのようなバリューが具現化されているか話し合います。
- この具現化を組織が掲げるコアバリュー (インクルージョン、説明責任、カスタマーサクセス) と比較する。インクルージョンの例では、言語のオプションが 1 つしかないのであれば、このバリューを実践していないとチームは判断します。
- コアバリューを的確に具現化できそうな変更や新しい案についてブレインストーミングする。たとえば、UI に英語かスペイン語を選択できるオプションを組み込めば、よりインクルーシブな対応が可能になることを提案します。
このワークショップの結果、Bloomington Caregivers は言語オプションをもう 1 つ追加すれば、常に最優先事項であるカスタマーサクセスが推進されることを認識しました。また、インクルージョンを念頭にデザインすれば、チームがインクルージョンを意識するようになり、お客様の多様なニーズが考慮されるようになることが判明しました。更に、説明責任を積極的に果たしていけば、フィードバックを継続的に収集したり、満足度を評価したりするアプリケーション内ツールを組み込むという方法でリレーションシップを育むことができます。
出発点に戻る
一周して元の場所に戻ってきました! Bloomington Caregivers のチームは、バリュードリブンデザインを再び最初から検討することにします。企業の整合性ワークショップを実施したチームは、この新しいアプリケーションにコアバリューを反映する機能を拡張すれば、お客様とのリレーションシップを強化できることを認識しています。
Bloomington Caregivers はどちらのアプリケーションの例でもバリュードリブンデザインを使用し、次の方法で全体的なデザインの実務を強化しました。
- バリューを念頭に置いてアクティビティやプロセスに取り組めば、内外の整合性が図られることに対する理解を深める。
- ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン (DE&I) アプローチを実践して、多様な人々の「ためにデザイン」するモデルから、多様な人々と「ともにデザイン」するモデルにシフトする。
- 企業の整合性ワークショップのプロセスで、プロダクトで具現化されるバリューを評価し、この評価に基づいてプロダクトを改善する。
組織がそのバリューを指針にすれば、内外で信頼のおけるリレーションシップが築かれ、バリュードリブンデザインによって全員にメリットがもたらされます。