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バリュードリブンデザインについて学ぶ

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

  • バリュードリブンデザインを定義する。
  • バリュードリブンデザインがリレーションシップデザインの鍵を握る理由を説明する。
  • 組織がプロダクトやサービスでバリューを具現化する方法を挙げる。

バリューのビジネスインパクト

バリューと言うと、個人や組織が目指す、あるいは体現する重要な特性や行動規範を思い浮かべるかもしれません。ビジネスの世界では、多くの企業がそのバリューを表明しています。組織は通常、インクルージョンやカスタマーサクセスなどのバリューを掲げ、企業文化の基本要素にしています。

けれども、顧客データを悪用したり、ずさんな行為によって消費者を危険にさらしたりする組織の裁判や報道など、昨今の不祥事から深刻な疑問が浮上します。こうしたバリューは単なるリップサービスなのでしょうか? 実際のところ、組織はそのバリューをどの程度ビジネス判断やプロセスの指針にしているのでしょうか?

Web サイトや企業文書でバリューを紹介することも大切ながら、特に社会不安が高まり、変化が求められるこの時代には、お客様も従業員もそれ以上のことを期待しています。最近では、将来を見据えたバリューを掲げて実践することで、ビジネスインパクトが生み出されています。したがって、組織は一貫してバリューを実践し、行動や活動を通じてバリューを体現してお客様の期待に応え、競合他社と一線を画す必要があります。

バリューを指針にする

組織がそのバリューを具現化できる 1 つの方法は、バリュードリブンデザインを実践することです。この実践では、組織がコアバリューをデザインプロセスの中心に据え、プロダクトやサービスでそのバリューを積極的に具現化していきます。

バリューをそもそも重視していない組織は、財政的成長や短期的な投資収益などを優先し、バリューを軽視してしまうことが少なくありません。こうしたビジネス目標が人間のニーズよりも優先される場合、意図的か否かに関係なく、それもバリューの具現化ということになります。組織が収益的価値を高めて測定し、奨励することを促進すれば、お客様もそれを察知します。

このモジュールでは、バリュードリブンデザインの詳細を学習します。たとえば、プロダクトやサービスのデザインや機能に関する重要な決定をバリューに基づいて行う場合のベストプラクティスなどについて解説します。また、バリュードリブンデザインで意図的かつ効果的な成果をもたらす方法も検討します。

まず、バリュードリブンデザインがリレーションシップデザインの鍵を握る理由を検証します。リレーションシップデザインとは、継続的なエンゲージメントを促進し、長期にわたって人、組織、コミュニティ間のつながりを強化するエクスペリエンスを作り出す手法です。

メモ

リレーションシップデザインについての詳細は、Trailhead の「リレーションシップデザイン」モジュールを参照してください。

リレーションシップの接着剤

日々の暮らしにおいて、家族や友人、コミュニティグループとバリューを共有しているという感覚が、さまざまなリレーションシップをつなぎとめる接着剤になっています。他方、ビジネスコミュニティでは、リレーションシップをつなぎとめる接着剤が、プロジェクトの完了や、商談成立に伴う収益の確保など、職務上の主要なニーズの高まりにまつわるものであることが少なくありません。職場のチームは通常、こうしたニーズを満たして組織の目標に向かって邁進するというバリューを共有します。

けれども、消費者のニーズを満たすソリューションが多数市場に出回っているこの時代、組織には他社と一線を画す新たな方法を見出すことが求められます。組織がそのバリューを積極的に打ち出せば、他と差別化を図り、消費者と信頼のおけるリレーションシップを築きやすくなります。

バリュードリブンデザインを実践する組織は、そのコアバリューに従って組織、消費者、コミュニティ間の内外のリレーションシップを押し上げ、導き、強化します。組織はコアバリューを活動やプロセスの指針とし、短期的な利益よりも、職務上の長期的なニーズに重点的に取り組みます。たとえば、商品の製造コストの削減方法の模索など、操業上の短期的なニーズに基づいて選択を行う組織は、工場建設の目的で先住民の土地を侵害し、コミュニティに害悪をもたらすおそれがあります。他方、組織がバリューをこの決定の指針にしていれば、こうした害悪を回避できるものと思われます。

コアバリューを実践する組織は、消費者と信頼のおける透過的なリレーションシップを築き、持続可能なビジネスへのコミットメントを示すことができます。こうした取り組みは全員にメリットをもたらします。

続いて、リレーションシップデザインがバリューに基づくものでなければならない理由を説明するために、バリューに基づいてリレーションシップを構築して強化する方法の一例を見ていきます。

万人向けのアプリケーション

ミネソタ州ブルーミントンにある Bloomington Caregivers という在宅医療機関のプロダクトデザインチームは、年内に立ち上げる予定の新しいモバイルアプリケーションのデザインを構想しています。高齢者を対象に幅広いケアを実施する Bloomington Caregivers は、ミネアポリス/セントポール全域の約 3,000 人のクライアントに対応しています。先頃、家庭医療という新規市場に進出することを決定しました。Bloomington Caregivers はミネアポリス広域の数か所に診療所を試験的に設置しており、優れた患者エクスペリエンスを可能にするその実行力を外来診療にも拡張したいと考えています。プロダクトデザインチームはこの目標を念頭に、患者が効率的なチェックインサービスやアフターケアサービスを簡単に利用できる新しいモバイルアプリケーションをデザインしています。

同業他社を分析中、ある他社のアプリケーションはチェックインフォームの性別が男女の二択で、人種のカテゴリも限られていたため、非難の的になったことを知りました。Bloomington Caregivers のチームは、こうしたチェックを突破し、インクルージョン、カスタマーサクセス、説明責任というそのコアバリューを尊重するために、最初からデザイン/構築プロセスに上記のバリューを意図的に織り込むことにします。

デザインプロセスにバリューを織り込む方法について話し合っている Bloomington Caregivers のチーム

チームは説明責任を組み込むために、多様な人々からなる諮問委員会を設置し、Bloomington Caregivers のアプリケーションを、従来の性別の概念に合致しない人々やさまざまな人種の人々にも配慮したインクルーシブなものにするにはどうすればよいか助言を受けることにしました。諮問委員会は、医療従事者、組織の従業員、エグゼクティブ、潜在的なお客様、患者擁護団体のコミュニティメンバーなどで構成され、Bloomington Caregivers がデザインプロセスを通じて、インクルージョンへのコミットメントに対する説明責任を継続的に果たせるようにします。

Bloomington Caregivers はまた、カスタマーサクセスを推進する目的で、モバイルデバイスに常にアクセスできるとは限らないお客様もアプリケーションを利用できるようにしたいと考えています。このコミットメントを果たすために、チームはプロジェクトに新たなスコープを追加することにします。つまり、誰でも利用できるという公平性を確保するために、試験的な拠点で利用できるキオスクをデザインして設置します。

このコミュニティ主導のデザインプロセスの結果、Bloomington Caregivers はアプリケーションの機能を拡大することができました。更に、インクルーシブなアプリケーションエクスペリエンスを実現するうえで欠かせない諮問委員会のメンバーの実体験や専門知識を取り入れた機能に投資し、患者のために次のオプションを用意しました。

  • 希望する代名詞、性自認、人種を選べるように選択肢を拡大する。
  • 受診票や転帰票の回答に基づいて、コミュニティサポートや患者支援グループとつながることができる。
  • 家族や大切な人がケアに参加しやすいように、病院の患者図書室から治療計画や医師の訪問診療に関する教育ビデオを借りられる。

Bloomington Caregivers のアプリケーションの拡張機能

更に、コミュニティ主導のこのプロセスは、Bloomington Caregivers、そのお客様、広範なコミュニティのリレーションシップの強化にも役立ちました。たとえば、諮問委員会のメンバーは、Bloomington Caregivers のデザインチームが委員会のガイダンスをプロダクトデザインにかなり取り入れたことを知り、自分たちの意見が聞き入れられ、尊重されたと実感しました。また、疎外されてきた集団のお客様も、その存在が認められていると感じるようになりました。更に、ブランド支持者になる人が現れ、ブランドとの有意義な体験をコミュニティの人々に紹介しています。

組織がそのコアバリューを決定やプロセスの指針にすれば、お客様や外部のコミュニティに有言実行であることが示されます。今後も信頼やつながりを強め、効果的なプロダクトやサービスを構築していけば、成功を加速できます。

バリュードリブンデザインと、それがリレーションシップデザインの要となる理由について学んだところで、次は関連するベストプラクティスを見ていきます。

リソース

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