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質問の作成

学習の目的

このモジュールを完了すると、次のことができるようになります。

  • 狙いと範囲をしっかりと定めて質問を作る。
  • 面談セッション全体で効果的な流れを生むように質問を組む。
  • 開放的で、誘導的ではなく、バイアスのない質問を作る。

効果的な質問を作るコツ

前の単元では、ユーザー調査のアプローチを考えて定義する方法を学びました。この単元では、創造力を働かせて、ユーザーに質問する質問を作る方法を学習しましょう。質問の作成にはコツがあり、もちろんガイドラインが用意されています。質問を作るときには以下を考慮してください。

  • 調査の狙いと範囲
  • 質問の構造と流れ
  • 具体的な質問の仕方

質問を作る際には、調査の結果に最も興味を持ち、最も大きな影響を受ける人達 (オーディエンス) と密接に連携することが非常に重要です。オーディエンスに積極的に参加してもらい、作った質問について意見を聞きましょう。その意見に基づいて質問を修正し、面談に使える質問になるまで改善を続けます。これらの反復作業を通して、関係者をプロジェクトに関与させます。

狙いと範囲を定めて質問を形作る

まず、言葉の定義です。

  •  狙いとは、作業の目的、つまり何を探し出したいかです。
  •  範囲は、調査の対象となる人のグループと、分析の方法を定義します。

調査の狙いと範囲を定義することで、質問の方向性を明確にすることができるため、質問の分析が容易になります。

では、これらの要素が質問の構造 (そして最終的な質問の内容) にどのように影響するかを見てみましょう。

何を探し出したいのか?

あなたは調査者として、ユーザーの現在のエクスペリエンスと、新しい製品やサービスに対するファーストインプレッションを理解しようとしています。そのため、ユーザーの目的、動機、仕事内容、そして製品やサービスを仕事にどのように活用しているかについて質問する必要があります。

疑問符に囲まれた調査者のイラスト

これらの基本的な質問をすることで、ユーザーの現在のワークフローにおいて何が上手く機能していて何が上手く機能していないかを調べ始めることができます。この調査によって満たされていないニーズを知り、全体的なエクスペリエンスを改善するための糸口を掴むことができます。上手く機能していることと、機能していないこと、そして何を改善できるかを調べるのです。課題を見つけ出すための質問を作ることで、ユーザーの考え方を洞察することができます。

質問をスムーズに進めるため、視覚的な要素を用いて意見を求めます。機能を説明するスケッチや製品そのものなどを使うのもよいでしょう。この場合の質問は以下の点に主眼を置きましょう。

  • 意図されている製品の使い方をユーザーが簡単に理解して答えることができるかどうか。
  • 製品やサービスのコンセプトの各部分についてどういうファーストインプレッションを持つか。
  • 提案されている変更点をユーザーが理解しているかどうか。
  • 画面の移り変わりについてユーザーがどのようなインプレッションを持つか。

Leah Buley が 2013 年に書いた『一人から始めるユーザーエクスペリエンス』の中に、「クイックアンドダーティユーザビリティテスト」についての記述があります。このテストは、デザインの要素をユーザーに見せながら、今見ているものと、次に何を見るかの予想についてユーザーに質問します。この方法により、提案しているコンセプトがユーザーの期待と一致するかどうかを確認することができます。

調査でのペルソナの活用

質問を作るときには、調査の狙いと焦点だけではなく、誰と面談したいかについて検討することも重要です。

単元 1 ではセグメント (ペルソナ) によって対象者を選ぶ方法を説明しました。ペルソナは、主要なユーザーが誰であるかを決めるのに利用できます。ペルソナとは、特定のユーザーグループを表す、現実的な性格の記述を意味します。チームでペルソナを使用して検討を重ねることで、調査の対象にどのユーザーを選ぶかを決めることができます。ペルソナはチームでの検討と意思決定を推進します。「Salesforce の UX ペルソナ」モジュールでは、Salesforce のペルソナのその使い方について学習します。

データの分析方法

 量的データ: 質問を作る際には、最終的に何を得たいのかを考えることが役に立ちます。たとえば、量的データを集めたいのであれば、対象となる製品やサービスを使用してユーザーにタスクを行わせるのも良いでしょう。次のような量的データを集めることができます。

  • タスクを完了するのに必要な時間
  • タスクを完了するまでのエラー件数

 質的データ: 量的データの分析方法について検討するのは、かなり単純明快なことだといえます。たとえば、平均や差分を得るための数式を使用することができます。しかし、参加者のコメントに関する注釈といった質的データを分析するにはどうしたらよいでしょう? 質的データは、単純に結果を計算するだけとは限らないので、分析が難しい場合があります。メモをどのように整理し、すべてのデータをどのように分類して分析するかを事前に考えておきましょう。データの分析方法については単元 4 で学習します。

質問の構造と流れの定義

調査の狙いと対象となるユーザーについて検討しましたので、次は面談の構造を考えましょう。

質問の構造と流れ

面談は砂時計のようなものです。幅広い一般的な内容から開始し、特定の事柄へと狭めてから、再び幅広い一般的な内容に広げてまとめに入ります。

 開始: 最初は、ユーザーの仕事内容、現在どのように製品を使用しているか、そして全般的に物事がうまくいっているかどうかなどを尋ねます。次のような質問をしましょう。

  • 典型的なお仕事の内容はどのようなものになりますか?
  • 日々のお仕事の中で最も大きな課題は何ですか?

 中盤: 次に焦点を絞り、改善したい機能への詳細な意見を聞き出すように質問します。たとえば、アプリケーションの特定の機能、コンセプトの要素、あるいはページの項目について質問します。答えに対しても「なぜ?」と掘り下げて質問することで、答えの背後にあるユーザーの論理的思考にたどり着くことができるのです。次のような質問をしましょう。

  • アプリケーションの新しい/改定された [調査対象] 機能についてどう思いますか? なぜそう思ったのですか?
  • 次の画面には何が表示されると思いますか? なぜそう思ったのですか?

 まとめ: ユーザーの全体的なインプレッションなどに関する重要な質問をして、まさに今この瞬間の、とても興味深い内容であることが多いユーザーの考えを聞き出します。次のような質問をしましょう。

  • 1 つだけ何かを変えられるとしたら何を変えたいですか?
  • このデザイン/プロトタイプでのエクスペリエンスを 7 点満点で評価するとしたら何点を付けますか?
  • この機能/デザインの便利さを 7 点満点で評価するとしたら何点を付けますか?
  • 何かご意見があったらどうぞ。

Carla のケースに戻りましょう。彼女は収集した回答をどうやって分析しようかと悩んでいます。彼女は、回答者が見せた肯定的な反応と否定的な反応を数えることで、新しいセールスアプリケーションの全体的なインプレッションを知りたいと思っています。これだけではなく、コンセプトに対する意見に見られるパターンを集め、そこから考え得る解決策を特定することもできます。質問の原案を見てみましょう。

 開始 

  1. 現在のお仕事を続けてどのくらいになりますか?
  2. 毎日のお仕事の様子を聞かせてください。
  3. お仕事の中で最大の問題は何ですか?

 中盤 

  1. この最初の 2 つの画面についてどう思いますか?
  2. 次は何が表示されると予想しますか?
  3. この画面のどこが好きですか?

 まとめ 

  1. デザイン全体をご覧になって、どのくらい気に入りましたか?
  2. 何かご意見があったらどうぞ。

原案としては悪くないですが、さらに別の 1 人か 2 人に見てもらう必要があります。チームの他のメンバーのレビューを通して、質問にバイアスが含まれていないかどうかを確認するのです。

質問からのバイアスの除去

質問を文章にするときには、開放的であり、かつ誘導的ではない言葉を選ぶ必要があります。お察しのとおり、誘導的な質問は、面談相手を特定の答えに誘導してしまいます。

誘導的な質問はバイアスを生み出します。恐ろしいことに、バイアスのかかった質問をしてしまう罠に人はいとも簡単にはまってしまうものなのです。バイアスを避けるためには、自分はユーザーが考えていることを知ろうとしている、ということを常に忘れないことが大切です。

当たり前のことのようですが、では実例を見てみましょう。次の 2 つの質問の違いを認識できますか?

  • このアプリケーションの機能のどういった点がお好きですか?
  • このアプリケーションの機能についてどのようにお考えですか?

最初の質問の仕方では、ユーザーを肯定的なインプレッションのみを答えるように仕向ける可能性がありますが、2 番目の質問では肯定と否定のどちらでも答えやすくなります。2 番目が開放的な質問の例なのです。さらに最初の質問は、どう考えるかではなくどう感じるかを尋ねています。感情とは個人差がとても大きいため、分析は非常に困難です。

バイアスのかかった質問をすると、得られる回答も偏ってしまい、せっかくの発見点が核心からずれてしまうのです。そんなものを求めているのではありませんね。

 バイアスを除去するためのヒント: 

  • 誘導的な質問を避ける
  • 開放的な質問を心がける
  • ユーザーが何を感じているかではなく何を考えているかを尋ねる

さて、Carla の質問に戻ると、2 つの質問にバイアスがかかっていたことが分かりました (彼女はチームが開発したデザインに思い入れがありすぎたのです)。そこで彼女は質問を修正しました。

前の質問 バイアスを除去した質問
この画面のどこが好きですか?
この画面についてはどう思いますか?
デザイン全体をご覧になって、どのくらい気に入りましたか?
デザイン全体をご覧になって、どのような考えを持ちましたか?

どういった質問を使用し、どういった質問を避けるべきかの良い例となるリソースを追加してありますので、ぜひ参照してください。

習うより (もっと) 慣れろ

「習うより慣れろ」は人生の真実です。そしてこれは面談でも同じです。練習を積むことで、次のようなコツが身につくでしょう。

  • 面談の時間を決める
  • 質問の分量を調整する
  • 質問の流れを改善する
  • 質問をさらに洗練させてバイアスを取り除く

最高の練習方法は、チーム内の誰かにユーザーとなってもらって実際に面談を行うことです。エクスペリエンスに対して建設的な意見が得られるような人を選び、相手にはどういうペルソナを想定しているのかを伝えましょう。質問を 1 つずつ述べて答えてもらい、最初から最後までの時間を測定しましょう。

以下は役に立つヒントです。

  • 実際の面談では、よく喋る人もいます。面談の練習では完結に答えるようにお願いして、面談時間は 5 ~ 10 分ほどの余裕を持たせておきましょう。
  • 短くて正確な質問は、同じく短くて正確な答えを導き出しやすくなります。この手法を上手に使いましょう。
  • 話の長いユーザーの場合は、重要な質問を先にしましょう。「必須」の質問を決めておき、それらの答えは必ず得るようにしましょう。
  • 最初の面談を成功させるため、練習は早いうちに始めましょう。

この単元では、質問の作り方とセッションの組み立て方を学習しました。次の単元では、バイアスを回避して貴重なインサイトを得られるようにユーザー調査を実施するための方法を学習します。また、ユーザーが何をしていて何を必要としているかを聞き出す方法も学習します。面白いですよ!

リソース

  • 開放的な質問と閉鎖的な質問: これらの違いを記述したリファレンステーブル
  • Portigal, S. (2013)『Interviewing Users (ユーザーへのインタビュー)』Rosenfeld Media LLC.Brooklyn, NY
  • Buley, L. (2013)『The User Experience Team of One (1 つのユーザーエクスペリエンスチーム)』Rosenfeld Media LLC.Brooklyn, NY
  • Pruitt, J. and Grudin, J. (2003) Personas: Practice and Theory. ACM (Pruitt, J. と Grudin, J. (2003) 『ペルソナ: 実践と理論』 ACM)
  • Understanding Your Users, Second Edition: A Practical Guide to User Research Methods (Interactive Technologies) (ユーザーを知る、第 2 版: ユーザー調査の実践ガイド (インタラクティブテクノロジー))
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