ユーザエンゲージメントの開始
学習の目的
- ユーザエンゲージメントをユーザエクスペリエンスの主要な部分として説明する。
- 主要なユーザエンゲージメントシナリオを挙げる。
- ユーザのエンゲージに使用できる Salesforce コンポーネントについて説明する。
美術館のユーザエンゲージメントシナリオ
ユーザエンゲージメントは、アプリケーション内ガイダンスによるユーザのオンボーディング、強化、支援、教育のプロセスです。そうとは気付かずに Salesforce のアプリケーション内ガイダンスを目にしたことがある方もいるでしょう。Salesforce では、ユーザがより効果的に作業できるように、情報バブルやツールチップなど、アプリケーション内ガイダンスコンポーネントを提供しています。しかも、システム管理者が組織やユーザに関する固有の知識を活かしてこうしたコンポーネントをカスタマイズできるようになりました。ただし、始める前に、なぜ、どのような場合にアプリケーション内ガイダンスを追加するかを理解する必要があります。
ユーザエンゲージメントには 4 つの主要なシナリオがあります。その説明に使用する例では、オフィスを出て美術館に行きます。自分が美術館にいると想像してください。チケットを買い、荷物を預けたら、最初に知りたいことは、どの展覧会が開催中で、どこから始めればよいかです。あなたはギャラリーガイドと地図を手に入れます。開催中の展覧会をすべて把握し、常設展のレイアウトを確認し、最も見たい作品の場所まで特定できました。オンボーディングモードのユーザには、同じような疑問があります。このフェーズのユーザエンゲージメントでは、ユーザにどこから始めるかを示し、新機能と変更された機能を強調します。

しばらく美術館を歩き回りました。素晴らしい作品を見ながら、いくつかの解説パネルに「コレクションの詳細は、無料のオーディオツアーをご利用ください」というメモがあることに気付きました。無料のツアーを利用できるとは知りませんでしたが、興味が湧いてきました (特に「無料」の部分)。ユーザエンゲージメントの世界では、これは機能の発見と採用と呼ばれます。短いメッセージがユーザを役に立つ機能へと誘導します。このオーディオツアーに関するメモは特に効果的でした。それはあなた (ユーザ) が今していること、つまり目の前にある作品について学ぶことに関連するからです。
昼食後、あなたはオーディオツアーにサインアップします。ただし、美術館を回っているときに、ツアー中の大人数の学生グループの後ろで立ち往生することになりました。オーディオツアーで説明されている作品の詳細を見ないという選択肢はなく、ツアーの一部を再生する必要があります。うまい具合に、オーディオツアー機器には、ヘルプカードが付いていて、その方法を知ることができました。このカードは、Salesforce アプリケーションのトラブルシューティングやヘルプと同じ目的に役立ちます。よくあるタスクや問題についてはヘルプを提供し、中断を長引かせずにユーザが仕事を続行できるようにすることをお勧めします。
オーディオツアーを聞いた後、写真の展覧会についてさらに詳しく知りたくなりました。そこで、その展覧会に関する次回のガイドツアーに参加することにしました。ガイドは、アーチストの人生、影響、より大きな写真のムーブメントの中での位置付けなどについて豊富な知識を持っています。深化学習ガイダンスはこうした考え方に基づいています。このガイダンスでは、仕事でより生産的かつイノベーティブになるために必要な概念の理解を深めるための学習ジャーニーをユーザが進めるようにします。
まとめると、ユーザエンゲージメントには 4 つの基本的なシナリオがあります。
シナリオ | 説明 | 例 |
---|---|---|
オンボーディング | ユーザにどこから始めるかと、新機能および変更された機能を示します。ユーザがすぐに「アハモーメント」に達するようにします。 |
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機能の発見と採用 | 初心者がエキスパートになる手助けをします。経験豊富なユーザが新しいことを学習する手助けをします。新しい機能やリリースの認知度を高めます。 |
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トラブルシューティングとヘルプ | ユーザが実践による学習をしやすいように、最適なタイミングでプロンプトを表示します。信頼できるリソースを提供し、サポートを利用できるようにします。 |
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深化学習 | 製品やアプリケーションからできるだけ多くの価値を得るために必要なスキルと情報をユーザに提供します。 | ユーザが新機能への理解を深めたがっている |
これらのシナリオを覚えておくことが重要です。コンポーネントによって、どのシナリオで効果が大きいかが異なります。次は、Salesforce で使用可能なユーザエンゲージメントコンポーネントのラインアップを見てみましょう。
コンポーネントとパターン
ユーザエンゲージメントの「なぜ」はわかりました。次は「何」に進みましょう。Salesforce は、ユーザエンゲージメントシナリオに関係なく、メッセージを配信するための豊富なオプションを用意しています。

Salesforce の優れている点の 1 つは、クリック操作 (宣言型の開発) とコード (プログラム型の開発) で使用する機能があることです。
コンポーネント | 説明 | プログラム型/宣言型 |
---|---|---|
歓迎メッセージ | ユーザが Lightning Experience に最初にログインしたときの使用開始リソースを提供します。 | プログラム型 |
ヘルプメニュー | ヘッダーにあるヘルプアイコンをクリックすると、コンテキストヘルプトピック、Trailhead モジュール、動画など、Salesforce が選定した項目のメニューが開きます。 | 宣言型 |
プロンプト | ニュース、トレーニング、オンボーディングに関するメッセージを表示する小さなウィンドウでユーザに直接連絡するために使用します。 | 宣言型 |
ポップオーバー | ニュース、トレーニング、オンボーディングに関するメッセージを表示する小さなウィンドウでユーザに直接連絡するために使用します。 | プログラム型 |
空状態 | 空白のセクションを次のステップの手順に置き換えます。 | プログラム型 |
項目レベルのヘルプ | 標準項目またはカスタム項目の目的と機能の詳細を説明します。 | 宣言型 |
設定アシスタント | ユーザが組織、クラウド、または機能の使用を開始しやすくなるように設計された、一元化されたタスクのリスト。 | プログラム型 |
ウォークスルー | 一連のオンボーディングステップを通じてユーザをガイドする、ハンズオンインタラクティブツアー。 | 宣言型 |
ここまで学習してきたシナリオとコンポーネントをまとめましょう。次の表は、各シナリオに最も適したコンポーネントを示しています。
コンポーネント | オンボーディング | 採用と発見 | トラブルシューティング | 深化学習 |
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歓迎メッセージ | ![]() |
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ヘルプメニュー | ![]() |
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プロンプト | ![]() |
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ポップオーバー | ![]() |
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空状態 | ![]() |
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項目レベルのヘルプ | ![]() |
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ウォークスルー | ![]() |
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シナリオ内で、特定のメッセージにどのコンポーネントを使用するかをどう判断すればよいのでしょうか? 各コンポーネントには、領域と形式に関する考慮事項があります。たとえば、項目レベルのヘルプに長い手順を含めることはないでしょう。一方、最適なユーザエンゲージメントメカニズムを選択するときに考慮すべき要素がもう 1 つあります。プルメソッドかプッシュメソッドかです。次は、この点について考えましょう。
プッシュメソッドとプルメソッド
ユーザがヘルプに気付いていないか、ヘルプを探していない場合でも、支援が有効である場合はプッシュメソッドを使用します。ユーザが探していなくても、コンテンツをユーザに提示します。たとえば、最初のログイン時に歓迎メッセージを表示したり、ユーザに取引先ホームページが表示されたらプロンプトを表示したりします。プッシュメソッドの例として、プロンプト、ポップオーバー、ウォークスルーがあります。
プッシュコンポーネントには、通常の表示では「隠れて」いるものもあります。空状態メッセージ (ゼロ状態または初回使用状態とも呼ばれる) と項目レベルヘルプメッセージは、プッシュメカニズムとみなされます。これは、ユーザが明確にヘルプを探していなくても、ユーザインターフェースに表示されるためです。
ユーザがヘルプを探そうとしている場合は、プルメソッドを使用します。この場合にはヘルプメニューが役立ちます。常に表示され、開かれるのを待機していて、ユーザが必要とするときに支援できるからです。他によく見られる例として情報バブルがあります。これは、アイコンにカーソルを置くとツールチップを表示します。

(1) 歓迎メッセージのワイヤーフレームと (2) 情報バブルのワイヤーフレーム
ユーザをサポートするプッシュメソッドとプルメソッドの両方が含まれるユーザエンゲージメント戦略を策定します。ヘルプメニューのみを使用すると、ユーザは探し方がわからずに主要な機能を見落とす可能性があります。一方で、プロンプトのみを利用すると、ユーザは必要とするときに必要なヘルプを得られない可能性があります。
その他のユーザエンゲージメントオプション
他にも追加の機能、オプション、オプション、コンポーネントがありますが、これらはユーザエンゲージメントとみなされてさえいないかもしれません。
- ユーティリティバーのメモ — ユーザが固定フッターから一般的な生産性ツールにすばやくアクセスできるようにします。ユーティリティは、ドッキングパネルで開きます。
- リッチテキストコンポーネント — テキストやシンプルな HTML マークアップを Lightning ページに追加します。
- パスに基づく成功へのガイダンス — パスの各ステップで、ステップに固有のガイダンス (ヒント、リンク、会社のポリシーに関する情報など) を提供してユーザの操作をサポートします。
- プロセスからのカスタム通知 — 重要なイベントが発生したときに、カスタマイズした通知を送信します。たとえば、新しいサポートケースが登録されたら、取引先所有者にアラートを表示します。
- Einstein Analytics ダッシュボード内動画 — 教育動画で採用とエンゲージメントを促進します。各ダッシュボードやそのグラフをユーザが最大限に活用するために役立つカスタマイズされた指示を提供します。
この時点で、Salesforce のユーザエンゲージメント環境にワクワクしていることでしょう。次は、最も強力なツールの 1 つ、アプリケーション内ガイダンスプロンプトをすばやく簡単に設定する方法を学習します。
リソース
- Lightning Design System: User Engagement Overview (ユーザエンゲージメントの概要)
- Salesforce ヘルプ: カスタムヘルプコンテンツ
- Salesforce ヘルプ: Lightning アプリケーションへのユーティリティバーの追加
- Salesforce ヘルプ: Lightning ページの標準コンポーネント
- Salesforce ヘルプ: プロセスからのカスタム通知の送信
- Salesforce ヘルプ: ダッシュボード内動画を使用したオンボーディングのカスタマイズ