メディア企業を理解する
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- メディア企業の種別を定義する。
- メディア企業の中核的な機能について説明する。
- メディア企業の運営方法を要約する。
メディア企業の概要
ご存知のとおり、メディア業界というのは包括的な概念で、膨大な範囲に広がっています。この業界が手がけるのは、もはや映画やラジオだけではありません。時代とともに、あらゆるテクノロジーを駆使してコンテンツを消費する創造的な方法を見つけ出してきました。
メディア企業は、楽しいコンテンツを配信するだけではありません。さまざまなメディア商品やサービスを届け、広告販売で収益を上げています。
メディア業界では多様なメディア企業が競合しています。特定のオーディエンスをターゲットにしているところもあれば、ニッチなコンテンツに絞っているところもあります。その多くはコンテンツを数種の形態で配信しています。では、メディア企業の代表的な種別を見てみましょう。
メディア企業の種別 |
説明 |
例 |
---|---|---|
放送局、スタジオ |
放送局はテレビやラジオで配信する番組を製作します。台本があるものやないもののほか、生放送の番組もあります。 スタジオには、テレビやその他のプラットフォーム向けのコンテンツを製作する撮影所やテレビ局、ラジオ局などが該当します。 |
放送局: BBC、21st Century Fox、Sony Pictures スタジオ: NBC、Universal、Disney |
マスコミ、出版 |
マスコミには、主として大衆向けに活字媒体のコンテンツを届ける新聞社やデジタルコンテンツプロバイダーが該当します。 出版社は、書籍、雑誌、定期刊行物、新聞を印刷する B2B (企業間) 企業や B2C (企業対消費者) 企業です。 |
マスコミ出版: The New York Times、The Huffington Post 出版社: McGraw Hill、Pearson |
ストリーミングメディア |
ストリーミングメディア事業は、モバイルデバイス、セットトップデバイス、コネクテッドデバイス、スマートホーム商品に搭載されたアプリケーションを介して音声や動画のコンテンツを配信します。 |
Netflix、Spotify、Roku、Amazon |
代理店 |
代理店は、広告を出す方法や場所について企業に助言するビジネスです。多くの場合、Pepsi のようなブランドと NBC のようなメディアパブリッシャー間の仲介役を担います。広報活動を取り仕切ることや調査を実施することもあります。 |
WPP、Publicis |
ビデオゲーム |
ビデオゲームは、スタンドアロンデバイスまたはインターネットを介してビデオ画面上で遊ぶ電子ゲームです。 |
ビデオゲーム: Call of Duty、Overwatch、Mario ビデオゲームパブリッシャー: Blizzard Entertainment、EA Sports、Ubisoft |
スポーツ団体 |
スポーツ団体は、スポーツのイベントやチームを通して商品やサービスを宣伝するクラブやチームです。 |
スポーツ団体: Manchester United、Boston Red Sox |
デジタルメディア/エンターテイメントプラットフォーム |
デジタルメディア/エンターテイメントプラットフォームは、独自のコンテンツの作成やユーザー生成コンテンツの配信を行うデジタルネイティブのプラットフォームで、主としてモバイルデバイス上の Web ブラウザーやアプリケーションを介して消費されます。 |
YouTube、Facebook |
有料テレビ |
有料テレビには、各種のビデオをパッケージにバンドルし、サブスクリプションベースのサービスとして販売するケーブルテレビやサテライトテレビが該当します。 |
Comcast、Spectrum、DirecTV |
エンターテイメント、レジャー |
エンターテイメントやレジャーに該当するのは、屋外イベントやライブイベントを通してエンターテイメントを届ける企業やコンテンツサービスです。 |
Six Flags、AMC Theaters、Ticketmaster |
ビジネス情報/データ |
ビジネス情報/データには、科学、技術、医療、教育、研修に関するコンテンツが該当します。 |
Thomson Reuters、Wolters Kluwer、Dow Jones |
小売メディアネットワーク |
小売メディアネットワークは、小売企業や E コマース企業が自社のデジタルチャネルでサードパーティブランドに広告スペースを販売できる特殊な広告プラットフォームです。 |
Amazon Advertising、Walmart Connect、Kroger Precision Marketing |
教育メディア |
教育メディアには、幼稚園や大学などの学術機関に教育コンテンツを配信するサービスが該当します。こうした事業が、配管工や溶接工といった技術者向けの職業訓練を実施することや、プログラマーや医師などの社員向けの専門教育を実施することもあります。 |
Coursera、Cengage、Coursera、Khan Academy |
メディア企業の中核的な機能
これまでに、メディア企業が業界の課題に直面し、その状況に巧みに適応させたさまざまなシナリオを見てきました。ところで、こうした企業はどのように収益を上げているのでしょうか? 至ってシンプルです。メディアプロバイダーは、コンテンツ、商品、サービス、エクスペリエンス、広告に課金して収益を生み出します。明快なコンセプトながら、実際に収益を得るのは容易いことではありません。
メディア企業の成功は、お客様を第一に考え、そのニーズに応えるエクスペリエンスを創出できるかにかかっています。メディアビジネスでは、オーディエンスについて、特にその関心事や価値、過去の行動などを把握する必要があります。さらに、そうした情報に基づいてコンテンツを適切なチャネルで売り込むことも必要になります。
顧客中心のアプローチで収益源を一本化すれば、メディア企業が顧客の獲得から維持までそのライフサイクルを通してお客様にエンゲージできます。この収益源には、サブスクリプションや広告、コマーストランザクションによる収益が含まれます。メディア企業にとっては顧客を維持する方が新たに発掘するよりも費用効果が高いため、顧客の離脱を最小限に抑える方法を常に模索しています。
メディアプロバイダーが顧客を維持し、顧客生涯価値を向上させるための方法をいくつかご紹介します。
- 消費者の選択肢: コンテンツサブスクリプションに多彩なオプションを揃えます。
- インベントリによる収益化: 有料サブスクリプションパッケージの代わりに、広告付きコンテンツを配信します。
- ライセンス供与: ディストリビューターやマーチャンダイザーなどサードパーティのパートナーを介して消費者にリーチするコンテンツを販売またはライセンス供与します。
- コマース: コマーストランザクションを使用して、ゲームのダウンロードやエクスペリエンス (テーマパークやイベントのチケットなど) などのコンテンツベースの商品を販売します。
メディア企業の運営方法
メディア企業の事業運営は、製作、マーケティング、配信、最終消費者エクスペリエンスという 4 つの柱で支えられています。
事業運営の出発点は、高品質なコンテンツの製作です。次に、コンテンツのマーケティング活動を行い、主要なユーザーグループに配信します。メディア企業は、このすべてのフェーズで優れたユーザーエクスペリエンスを実現する必要があります。
製作
現在では、ほぼ万人がメディアアカウントを所有し、それを駆使して自身の考えを世間に伝えています。ビデオブログ、ポッドキャスト、記事、解説、オンラインゲームなどその手段は無限です。今やメディア業界は、映画やテレビ番組を意味するものではありません。
では、メディア企業とは一体何なのでしょうか? メディア企業には、新たな機会を活用し、常識を覆す新技術を積極的に取り入れ、ビジネスモデルを再考し、企業や消費者に利益をもたらすことが求められます。
ここで重要な点は、コストがひっ迫している状況でも、配信するコンテンツの質を落とさないことです。また、企業はリモートチームによるバーチャルプロダクションという手法を実践する必要があり、こうした方針はパンデミックによって加速されています。さらに、クリエイティブ業界の優秀な人材を集めなければなりません。つまり、企業は、高品質のコンテンツを製作し、バーチャルプロダクションの手法を考案し、優秀な人材を採用する必要があるということです。
マーケティング
昨今の消費者は、推奨コンテンツや、パーソナライズされた広告やプロモーションが増えることを望んでいます。その一方で、関係のない広告が目や耳に入らないようにするためなら、割増料金を支払っても構わないと考えています。ただし、調査によると、消費者はテレビで見る広告は聞き流すが、ソーシャルメディアの利用時に見かける広告は気に留めることが多いということです。つまり、さまざまな場所で、さまざまな方法でマーケティングを実践できるということです。スーパーでさえマーケティング活動の場になります。
メディア企業が収益を上げる方法は次の 2 つに大別されます。1 つは、広告やスポンサーシップ、商品販売などの手法により、コンテンツを通じて消費者に直接マーケティングを行う方法です。もう 1 つは、ファーストパーティの顧客データやインサイトを収益化して間接的にマーケティングを行う方法です。マーケティングにおいては、プライバシーに関する煩雑な規則や規制に十分注意します。
配信
メディア企業には長い歴史があります。かつては、コンテンツを 1 つの配信チャネルでオーディエンスに届けることしかできませんでした。一部の企業はこの旧態依然とした方法を続けていますが、現在では代替的な配布手段が存在します。現在のメディア企業は、お客様との関係、ファーストパーティの顧客データ、インサイトなどを活用して、間接的な配信から直接的な配信に移行できます。こうした移行により、収益化の機会が広がる一方で、企業がプライバシーに関する規則や規制を遵守しやすくなります。
最終消費者エクスペリエンス
ユーザー中心のメディアエクスペリエンスは極めて重要で、お客様の期待は高まっています。お客様はメディア企業に、好き嫌いを含め自分のことを知ってもらいたいと考えています。消費者は新しいコンテンツや商品を推奨してもらうこと、そしていつでも、どこでも、どのデバイスからでもコンテンツを消費できることを望んでいます。
今日のお客様はお客様中心である企業にロイヤルティで報いるため、関係の構築に成功したメディア企業は繁栄し、成長を続けることができます。
メディア業界に対する理解が深まりましたが、収益モデルや、業界が目下直面している課題を理解しなければ十分とは言えません。