デジタルの世界を変えるテクノロジーについて学習します。
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 第 4 次産業革命の主要な仮想世界のテクノロジーを挙げる。
- これらのテクノロジーによって、私たちの生活や仕事の仕方がどのように変化したのかを説明する。
- これらのテクノロジーを用いた現在の研究によって、私たちの今後の生活や仕事がどのように変化する可能性があるのかを説明する。
すでに始まっている変化
これまで、現実の世界に影響を及ぼす変化について話してきましたが、デジタル世界で台頭してきている強力なテクノロジーがあります。この単元では、人工知能 (AI)、ブロックチェーン、計算技術、仮想および拡張現実が、どのようにして、デジタル世界にかつてないほどの変革をもたらしているのかを説明します。
まずは AI から見ていきましょう。
人工知能 (AI)
AI に関するフィクションの映画では、自律性を持った邪悪なロボットがすべての人間をコントロールまたは殺そうとするストーリーが多いようです。映画で観た以外に AI について聞いたことがない場合、恐ろしそうに見えても仕方ありません。
映画の話はさておき、現在の AI が実際にはどのように機能するのかについて説明します。AI は、自律車両や自律ロボット、音声アシスタント、ショッピングボットにいたるまで、幅広くさまざまなアプリケーションのバックグラウンドで機能します。さらに具体的な例を次に示します。
- 携帯電話のオートコンプリート機能
- 衣服、音楽、家庭用品などを購入する Web サイトから表示されるおすすめ
- 写真の中の顔を認識する能力
今日、AI を搭載した機械では、複雑なパターンの認識、情報の合成、結論の導出、予測など多くの作業が、人間の能力を超えるスケールとスピードで行われます。
将来、AI の普及範囲はさらにいっそう広がり、あらゆる会社のすべての従業員がスマートかつスピーディに業務をこなし、生産性を向上させることができるでしょう。常にリスニングし、関連性のあるデータを収集して私たちのニーズを先読みし、さらに代わりに行動を起こすような AI 搭載のデジタルパーソナルアシスタントを、私たち一人一人が所有することもあり得るでしょう。
とはいっても、まだ今のところはロボット革命についてやきもきする必要はありません。インテリジェントな機械が人間の計算能力や分析速度を超えたとしても、これらの機械の機能を定義するのは人です。今日、AI は人に創造力を与えるものであって、取って代わるものではありません。
ブロックチェーンアプリケーション
ブロックチェーンは新しいビッグデータです。話題には上りますが、それが何なのかは誰も知らないようです。
まずそこから説明しましょう。ブロックチェーンは、すべての人に同じデータが表示されるように、データを記録し共有する方法です。そのうえブロックチェーンでは、誰にも知られずにデータを変更することができないようになっています。
ブロックチェーンテクノロジーでは、たとえ匿名であっても双方のユーザーの間で信頼関係が築かれます。厳密に言えば、ブロックチェーンは、デジタルオブジェクトおよびトランザクションを保存する、共有された、プログラム可能な、分散化および暗号化された安全な台帳です。ブロックチェーンアプリケーションを 1 人のユーザーまたは機関が制御することはありません。誰でも詳しく調べることができます。
たとえば、ブロックチェーンアプリケーションの例としてビットコインがあります。ビットコインはデジタル通貨であり、すべてのトランザクションで公開台帳が使用されます。デジタル通貨でなくとも、ブロックチェーンテクノロジーでは、コンピューターコードとして表現可能であれば、どのようなトランザクションでも処理することができます。次のようなシナリオが考えられます。
- 保険請求
- 投票
- 不動産の所有権
- 運転免許証
投票や国民意識が、ブロックチェーンテクノロジーでサポートされる日が来るかもしれません。ブロックチェーンを使用して、商品がどこから来たもので、偽造品ではないことを追跡することもできるでしょう。ブロックチェーンは非常に画期的なものなので、毎日のように新しい応用方法が見つかっています。
新しい計算技術
材料科学と物理学の飛躍的進歩のおかげで、コンピューターはますますスマートかつ迅速になってきています。量子計算など新しい計算形式によって、現在の数百万倍も強力な計算システムを作成できる可能性があります。
量子計算とは何でしょうか? まずはデジタルコンピューターの説明から始めましょう。今日のコンピューターには情報が 1 と 0 で保存されます。量子コンピューターでは、量子ビットを使用して、情報が 0 か 1、またはその両方として同時にエンコードされます。量子コンピューターは複数の値を同時に表すことができ、従来のコンピューターの数百万倍の速度で計算を行います。
量子システムには、AI を大幅に向上し、新しい医薬品や材料の発見の迅速化、高度に複雑なデータモデルを数秒でモデル化できる潜在性を秘めています。
仮想現実と拡張現実
古代ローマのツアーに行きませんか? 複雑な医療処置の方法を学びますか? 邪悪なロボットが出てくる映画の参加者になりますか? それなら仮想現実 (VR) が適しています。
VR は現実世界をシミュレーションする没入型デジタル体験を提供します。現在 VR で仮想世界に入り込むには、高価で、大きくて、扱いにくいヘッドセットを必要としますが、これは急速に変化してきています。時間が経てば、このテクノロジーは縮小化され、コストも低下することでしょう。
では、VR と拡張現実 (AR) はどのように違うのでしょうか? まず、VR では仮想現実を探索できますが、AR はデジタル世界と現実の世界とを融合させます。AR 対応デバイスを使用すれば、道を歩いているとき、その場所と関連する役立つ情報をあなたの視界に表示できます。
AR 技術の応用として、トレーニングが挙げられます。不足していたり練習で使用するには高価すぎたりする対象物で作業を行うことができるのです。たとえば、建築士が物理的な空間にデータや仮想画像を重ねて、建物のインテリアデザインをいろいろと試してみることができます。または、医師が手術部位に患者の MRI を重ねることもできます。
今後の数十年で、AR と VR によってコンピューターとの接し方が様変わりするかもしれません。仮想世界と現実世界の融合をサポートするデバイスを、ますますたくさん着用し始める人たちを見たとしても驚かないでください。
10 大テクノロジーをまとめる
これら 10 の技術的進歩はそれぞれが、人の私生活と仕事に大きな変化をもたらす道を開くものです。そして、こうしたテクノロジーの組み合わせが第 4 次産業革命の基盤となります。次に例を示します。
- 人口知能を活用するロボット。
- 携帯電話用の小型で効率的な電池。
- 車の整備が必要なときや、留守宅の照明がすべて点灯したときなどに通知する、接続センサーの配列。
- 科学者が新材料開発のために使用する強力な計算機能、3D プリンティング、バイオテクノロジー。
第 4 次産業革命のテクノロジーを原動力とする、明るい未来を簡単に想像することができます。ただし、私たちが慎重でなければ、これらのテクノロジーが社会を不安定にさせることもあるでしょう。
過去 3 回の産業革命がプラスとマイナスの影響をもたらしたのと同様に、第 4 次産業革命の新しいテクノロジーにも、マイナスの結果をもたらす潜在的危険が伴います。目標が共通の利益に合致せず、AI と遺伝子工学が間違った手に渡ると、望ましくない方法で私たちの未来を変えてしまう可能性があります。また、テクノロジーの普及によって世界が変化していく中で、一部の地球市民のみが恩恵を受け、多くの人の意見がないがしろにされる可能性もあります。
これが、新しい時代です。政府、ビジネスリーダー、科学界、および市民は、リスクを最小限に抑え、あらゆる人の境遇が改善されるように、第 4 次産業革命のテクノロジーの進むべき道と方向を定義するために協力する必要があります。
変化がもたらされると、ワクワクすると同時に不安になる場合があります。どのような規模の変化であっても、気持ちが揺らぐのは当然のことです。このトレイルの次のモジュールでは、引き続き第 4 次産業革命について詳しく探りながら、これらのテクノロジーのプラスとマイナスの影響について説明します。
リソース
- Marc Benioff: We’re on the cusp of an AI revolution (Marc Benioff: 私たちは AI 革命の先端にいる)
- By 2030, this is what computers will be able to do (2030 年までにコンピューターで実現できること)
- Blockchain: the ledger that will record everything of value to humankind (ブロックチェーン: 人類にとって価値あるものをすべてを記録する台帳)
- Top 10 Emerging Technologies 2017 (2017 年最新テクノロジーのトップ 10)