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持続可能な設計の課題に取り組む

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。 

  • 設計において持続可能なビジネスプラクティスが重要である理由を説明する。
  • 持続可能性の計画上の重要性を認識している企業にとって、設計が重要である理由を説明する。

消費者、投資家、政府、資本家のいずれもが、企業が地球規模の課題に対する持続可能なソリューションを見出し、その過程で社会との関係を再定義することを求めています。 

持続可能性とは、環境のような単一のトピックに焦点を当てるものではありません。健康、平等、機会へのアクセス、環境、または国際社会として繁栄する能力に影響を及ぼすその他の差し迫った問題など、社会が抱える現在の課題に企業が十分に関与する方法を追求するということです。 

持続可能なビジネスプラクティスは設計にとって重要です。それはなぜでしょう? 

  • 課題から逃げない。設計者はビジネス価値を高めることができます。設計はビジネスの計画的課題を解決するために使用されます。たとえば、顧客にとって何が重要なのか、作成した商品で顧客にとって重要なものやブランドの価値をどうやって具現化するのか、などです。持続可能性は、今後数十年のビジネスにおいて最も重要な計画的課題であることはほぼ間違いありません。設計はその手助けとなります。
  • 計画は設計者によって商品やサービスに反映される。持続可能性は、ビジネスの在り方を変革する計画的優先事項です。この変革の一環として、企業が商品やサービスをどのように設計して、包装し、提供するのかが重視されます。この議論において、設計者が中心的な役割を果たすことが重要です。
  • 正しい行い。設計を行う人は、改善することが好きだからこそ設計を行います。間違いを正していきましょう。

また、設計は持続可能性を優先する企業にとって重要です。それはなぜでしょう? 

  • 優れた設計は、慣習を打ち破り、情報や行動を喚起するものを明確かつ直感的に伝えることができるため、行動を起こすきっかけとなります。
  • 設計者は、世界が必要としている画期的なアイデアを開発するために、実証済みの反復可能なプロセスを実践します。この詳細は後述します。
  • 設計者が意図を持ってものづくりを行うと、設計した商品は目的に合った喜ばれるものになります。つまり、優れた設計の商品やエクスペリエンスを好む人は、こういったものを有意義な変革に必要な規模で採用する可能性が高いということです。

行動を起こすきっかけを作る

持続可能な設計では、長年にわたる世界の課題や不当行為を今までにない斬新な方法で検討することで、これを解決する方法を提案できます。気候変動を例にとると、科学界が何十年にもわたって気候変動のリスクを警告してきたにもかかわらず、地球規模の排出量は増加しているだけでなく、加速の一途を辿っています。これにはさまざまな理由がありますが、その 1 つは警告の設計そのものにあります。 

政府の公聴会で行動を起こすように訴える何万枚ものホワイトペーパー、ポスターボードに書かれたグラフ、プレゼンテーションのスライドに優れた設計の利点が活用されていたら、気候変動に対する行意欲はどのように違っていたでしょうか? 科学を否定している人や、すでに気候変動対策に積極的に取り組んでいる人の意図を変えることは決してできなかったでしょう。ですが、行動を起こそうとしていた人たちの行動を加速させることはできたかもしれません。 

地球の平均気温の上昇を示す以下の標準的なグラフを見てみましょう。

着実に上昇しているが 1.2℃ を超える温暖化への上昇が読み取りにくい、1850 年から 2025 年までの気温上昇を示すグラフ

1850 年~2020 年の地球の平均気温のグラフ、出典: Met Office 

これは悪いグラフではありません。また、折れ線グラフで地球の平均気温の上昇が示されてもいます。

ですが、Climate Lab の科学者とグラフィックデザイナーが協力して作成した下記の気候スパイラルと比較してみてください。

0℃、1.5℃、2℃の温暖化を示す同心円。月別の気温推移が見ている人に向かって、また気温が高い方に向かって上昇していく動的な線同士の重なりとして示されているアニメーション画像

Climate Lab が作成した動的な地球の気温変化スパイラルは、標準的なグラフとは大きく異なっています。出典: Climate Lab Book、CC BY-SA 4.0

Climate Lab のスパイラルにはアニメーションが使用され、データにストーリーテリングによるアプローチが組み込まれています。100 年分に相当するデータが、見慣れたグラフで静的に配置されるのではなく、見る人の方に向かってきます。この動的な成長するデータセットによって、見る人との関係が変化します。温暖化データが見ている人自身に近づいてくるかのように感じられ、気候変動の外側に配置されている場合とは対照的に、気候変動とより直接的につながっているような感覚が生み出されます。

実行に移す

ここでは、演習を用意しました。作業内容をテストするわけではありませんが、このようなアプローチを一連の設計スキルの強化に加えるには最適な方法です。設計者らしく、同僚やメンターと自分の作業内容を共有して批評してもらいましょう。ビジネスにおいても、次のような思考実験を検討してください。  

データを動的にできるか? 

ビジネスでは、計画的な意思決定プロセスにおいて、リスク、機会、外部連動関係、競合を検討します。 

  • ビジネスでこのような意思決定を行うために使用するデータをどのような方法でより動的に可視化できますか?
  • 情報設計において、見る人の視覚的視点をどこに置いていますか?

気候変動リスクを含むことができるか? 

今日、気候変動の影響は目に見えて感じることができ、地球規模の排出量が大幅に削減されなければ、社会やビジネスへの影響は増大することになります。そうなれば、世界中のビジネスに重大なリスクが生じます。 

  • そのリスクは、経営陣がリスクを予測や評価するために使用しているツールのどこかに示されていますか?
  • 気候変動リスク (および機会) について、どのような方法でより明確に示し、他のリスクと比較してどの程度の重み付けを行う必要がありますか?

イノベーションに向けて、実証済みの反復可能なプロセスを提供する

気候変動というトピックでは、その原因への対処が遅れるほど、地球規模の排出量の削減を急ぐ必要があります。温室効果ガスは大気中に蓄積されることが明らかになっているためです。つまり、気温の上昇を 1.5°C に抑えようとするなら、迅速に方針を転換し、排出量を大幅に削減すると同時に、すでに大気中にある排出ガスを削減する方法を見つける必要があります。 

なぜ、排出量を 1.5°C 未満に抑える必要があるのでしょうか? 一例を挙げると、1.5℃ の温暖化では地球上の人口の約 14% が致命的な熱波に定期的にさらされるようになり、2℃ の温暖化ではその値が 37% に跳ね上がるからです。 

Center for International Climate Research の調査員が作成した以下のグラフには、世界の温暖化を 1.5℃ 未満に抑えるために算出した排出削減曲線が示されています。1 年経つごとに 1.5℃ への道のりが険しくなっているのがわかります。 

排出削減曲線グラフ

この曲線は、エネルギー転換と呼ばれるものを表しています。エネルギー転換とは、電気、輸送、建物の暖房を温室効果ガス (GHG) を排出する化石燃料から再生可能エネルギーや将来のゼロ炭素燃料に転換することです。 

この転換は経済のあらゆる分野に影響を与えるため、エンジニア、政策立案者、経済学者、資本家、その他多くの人々が協力して関与することになります。 

ここでも設計が必要です。 

エネルギー転換がもたらすチャンスをうまく利用するには、ビジネス界を含めた世界全体が、迅速かつ大規模なイノベーションを実現するための実証済みプロセスを必要としています。設計によって一貫してビジネス上の価値が高めることができる理由の 1 つは、その実践によりイノベーションを成功に導く実証済みの反復可能なプロセスが提供されるからです。 

従来、設計とデザイン思考は相互に関連したフェーズ (共感、定義、アイデア創出、試作、テスト、反復) で実行されるプロセスとして説明されてきました。

 

設計プロセスのフェーズである共感、定義、テスト、アイデア創出、試作の無限の繰り返詩を示す無限大のシンボル

デザイン思考プロセス: イノベーションのための実証済みの反復可能な方法

機会に共感して定義し、アイデアを創出して、試作し、テストします。真のニーズを解決し、リピーターになるほど顧客を満足させるエクスペリエンスが実現できるまで、このプロセスを繰り返します。これが設計者の仕事です。

実行に移す

ここでは、別の演習を用意しました。作業内容はテストされませんが、場合によっては、作業内容を同僚、マネージャー、メンターと共有して、フィードバックを受けることもできます。 

このイノベーションのための設計プロセスを、次の課題に適用します。

  • エネルギー転換をシンプルで快適かつ効果的にする新しいデジタルエクスペリエンスを設計してください。以下に、必要に応じて使用できる例を示します。 
    • 屋根に設置したソーラーパネルで今日生成されたエネルギー量、電力会社に売却した量、ガレージに停めてある電気自動車の充電状況を住宅所有者に通知するインターフェース。 
    • ソーラーパネルを設置するのに地域で最も適した屋根に関するデータ分析と、設置のための最適なローン条件を決定するアルゴリズムの組み合わせ。 
  • エネルギー転換を加速させるために、政府と企業間のコラボレーションを設計してください。以下に、必要に応じて使用できる例を示します。
    • あらゆる年齢層の人々が安全に移動できるような都市部の自転車インフラストラクチャと、通勤や買い物に便利な電動自転車、キックボード、スケートボードの組み合わせ。 
    • 家庭のエネルギー効率向上を快適なカスタマーエクスペリエンスに変えるビジネスモデルと、エネルギー使用量を削減するための税制上の優遇措置の組み合わせ。 
    • 再生可能エネルギーの需要を高めるマーケティングプログラムと、風力、太陽光、地熱エネルギーを効率的に変換するインフラストラクチャ構築のための連邦政府の補助金の組み合わせ。

愛される商品を作る

設計の実践方法では、人が意図を持って商品を作成し、反復作業に取り組む (ユーザーテストによる) ことができるため、設計によって作り出される商品やサービスは、多くの場合、より広く普及して愛用されます。このように、世界の課題に対する持続可能なソリューションを間違えると、その影響は大きくなります。幸いなことに、設計では物事を正しく進めるためのアプローチが提供されます。

では、そのようなスキルを駆使した 2 つの例を見てみましょう。 

電動キックボード: 大規模なイノベーション

大規模な試作: 目が覚めると、電動キックボードが至る所にありました。

エネルギー転換では移動手段が電気化されるようになります。キックボードによって電力を利用した移動手段の一種が大規模に試作されました。

都市計画家や環境保護主義者は、自動車が都市で短い距離を移動する走行距離が多いことに長年悩まされ、なぜ人は自転車や徒歩で移動しないのかと不思議に思っていました。そんなとき、電動キックボードが発売されました。

そうです。何事にもトレードオフの関係があります。キックボードによって、歩道を騒音を出して走ったり、車や歩行者と衝突したり、企業によって設計の良し悪しがあったりという課題が発生しましたが、一方でスクーターが解決した課題もありました。 

同時に、この都市交通への新しいアプローチの台頭は、全体で共有された設計プロセスを表すものでもありました。さまざまな企業が、新しいビジネスモデルや新商品の設計、新しいデジタルと物理的なカスタマーエクスペリエンスを実験し、世界中の都市で新しいカスタマーエクスペリエンスでリアルタイムに発見された欠陥を修正しました。課題はあるものの、エネルギー転換を加速させ、地球温暖化を 1.5℃ 未満に抑えようとする場合、必要なのはこのような大規模な持続可能なイノベーションです。

課題はありますが、これからのエネルギー転換には、このようなイノベーションが必要です。  

家庭用オートメーション: 新しいものを設計する

これまで、エネルギー転換の大部分は、電気エンジニア、開発財務マネージャー、規制当局が担う領域でした。

このグループは、ソーラーパネルの効率を向上させたり、自動車をバッテリーで走らせる方法を考えたりと賞賛に値する仕事を成し遂げていますが、規制や設計を行うだけでなく、エクスペリエンスを設計することも必要です。 

エネルギー転換を設計する良い例として、優れた設計のゼロエミッションの家庭用オートメーションシステムが増えてきていることが挙げられます。このシステムでは、屋根に設置されたソーラーパネルのパフォーマンス、ソーラーパネルで生成された電力を蓄えるバッテリー、ガレージの電気自動車の充電を携帯電話の使いやすいインターフェースで追跡して管理することができます。

家の電気が消えてしまったとき、ヒューズボックスを操作したことがありますか? もしあるなら、おそらくヒューズボックスは壁にボルトで固定された長方形の箱のようなもので、ギシギシと音がするドアを開けると、表示ラベルのないスイッチが並んでいます。

懐中電灯を持って古いヒューズボックスを見ている Salesforce の Landian。矢印の先にいる同じ人が、家庭用エネルギーシステムを管理できることを示すアイコンが表示された携帯電話を見て微笑んでいる様子。

洗練され、直感的で、高度に構成された設計からもたらされるメリットを使用した家庭のエネルギー制御

家庭の温室効果ガスの排出量を削減したいと考えている住宅所有者のために、設計者はそのエクスペリエンスをどのように再構築できるでしょうか? そのプロセスとエクスペリエンスを設計しようとするなら、住宅所有者の日常生活を理解することが不可欠です。 

ユーザーを中心としたエクスペリエンスを実現しようとするなら、機能や特徴が分離されないように立ち向かうことが重要です。つまり、ユーザーの視点に立てば、全体で 1 つの家であるため、屋根の上のソーラーパネルの制御、ガレージの EV 充電ステーション、サーモスタット、月々の電気代などを統合することを目指すべきではないでしょうか? 

次に、コンテキストを理解し、ハードウェアの統合が可能になったら、電気工学のトレーニングを受けていない人でもこのような複雑なテクノロジーをすべて理解できるようなデジタルエクスペリエンス、つまり、恐々と操作しなければならないものではなく、購入したいと思わせるものを設計しましょう。

実行に移す

気候変動のような地球規模の喫緊の課題を直接解決するような商品やサービスを作成する立場にある人もない人も、創造力を発揮しましょう。ここでは、別の演習を用意しました。作業内容をテストするわけではありません。ですが、作業内容を同僚、マネージャー、メンターと共有し、批評してもらってもかまいません。 

  • Project Drawdown の「table of solutions (ソリューション一覧)」を参照してください。気候変動や関連する社会的不公平に対する上位 100 件のソリューションのランキングリストが掲載されています。このリストを十分に理解してください。自分の設計スキルが、このようなソリューションの設計や拡張にどのように応用できるかを考えてみましょう。自身の設計によるソリューションを考え出してください。ただし、周りの環境からもためらわずにインスピレーションを得てください。

ビジネスの世界、また世界全体が、最大の課題に対する斬新で優れた設計のソリューションを今すぐ必要としています。設計ではその手助けとなるスキルを活用できます。それでは始めましょう。

リソース

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