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難しい会話に向けて準備する

学習の目的 

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

  • 恐怖に対する心と体の反応を説明する。
  • 難しい会話に対する生理的反応を認識する。
  • 難しい会話に対する心理的反応に対処する。
  • 心身を整えて、難しい会話に備える。

では、お客様との難しい会話に向けて心身を整える方法について詳しく見ていきましょう。まずは、脳の働きの基礎から始めましょう。

脳と体がストレスに反応するしくみ

私たちの脳は情報を受け取ると、前頭前野皮質と扁桃体という 2 つの主要領域に送ります。 

前頭前野皮質は、人が判断したり、冷静で理性的かつ論理的でいたりするための機能を司っています。

人間の脳の前部にある前頭前野皮質

犬の鳴き声に怯えたことはありませんか? 最初に起こるのは恐怖の反応かもしれません。次に、息をひそめたり、息が浅くなったりしていることを自覚します。ですが、数秒後には状況をより適切に判断できるようになります。前頭前野皮質はこの時間と新しい情報を使用して、「待て、犬は柵の後ろにいる。大丈夫だ。危険はない」と判断します。

なぜ、これが即座に起きないのでしょうか? あなたの心は、あなたの命を守るように訓練されています。前頭前野皮質でより有用な情報が機能するまで、常に恐怖が最初の反応となります。では、何が警報系を活性化させるのでしょうか? それは扁桃体です。

闘争、逃走、不動化の本能は、扁桃体からきています。扁桃体は情報を受け取り、即座に危険ボタンを押し、すべての系統に警告を発して反応させます。呼吸器系が速くなったり遅くなったり、循環器系が活発になったりして、発汗し、感覚が研ぎ澄まされます。コルチゾールとアドレナリンというホルモンが分泌され、体内を駆け巡ります。

人間の脳の内側側頭葉にあり、海馬のすぐ前にある扁桃体。

また、感情が高揚している段階では、扁桃体は海馬が全容を把握するのを妨げることがあります。海馬の仕事は、情報をストーリーとして記憶することであり、つまり、自分だけのドキュメンタリーの管理人だと考えてください。扁桃体が優位に立ち、危険メッセージを送ると、海馬はフィルム全体ではなく、スナップショットだけを受け取ります。これは、まるで扁桃体が「みんな、逃げろ!」と叫んでいるかのようです。また、その際、扁桃体が海馬にぶつかり、海馬がカメラを落としてしまったかのような状態でもあります。カメラは地面に落ち、連続した一本のフィルム映像ではなく、数枚のスナップショットしか撮れません。その写真は意味をなさないことがあり、通常は不完全なものです。 

そのため、予期せぬ会話の後、すべての詳細を思い出すことができない場合があります。メモを見返す必要があるかもしれません。自分がどう感じたか、またはお客様が本当に憤慨して声を荒げていたことはよく覚えているかもしれません。これは、前頭前野皮質が優位に立ち、あなたを落ち着かせる前に、海馬がカメラを落としてしまったためです。 

他の人よりも大胆で、リスクに動じないような人に会ったことはありませんか? 扁桃体の反応の仕方によっては、そのような人もいます。扁桃体の大きさが、その人の反応に影響を与えるのです。肝の据わっていると表現される人物を思い浮かべてください。彼らは向こう見ずなのでしょうか、それとも脳の構成によるものなのでしょうか? 脳とその反応を理解することは、準備をする上での重要な要素となります。

難しい会話への準備

お客様との難しい会話に向けて態勢を整えているとき、こころを落ち着かせるための準備として実行できることがいくつかあります。

  • お客様の取引先詳細を確認する。
  • チームやパートナーと連携して、お客様の現状の全体像を把握する。
  • お客様にとって何が問題となっているのかを特定する。
  • 推奨事項の選択肢をブレインストーミングする。
  • 会議の参加者を調査し、力関係を確認する。
  • 評価指標や主要業績評価指標 (KPI) を確認し、現在のビジネス価値の進捗を把握する。

このような手順を踏むことで、準備ができていると実感し、恐れや不安を和らげることができます。また、前頭前野皮質の状況に対する見方が構築され、前頭前野皮質による論理的なコントロールが可能になり、扁桃体の働きを抑えることができるようになります。以下に、難しい会話の準備と実行のためのヒントをいくつか紹介します。

  • ミーティングの前に呼吸に意識を集中させる
  • ミーティングが始まる前に自信に満ちたポーズ (パワーポーズ) を取る
  • ミーティングの前に曲やプレイリストを聴いて脳を落ち着かせ、感情的な部分から抜け出す。
  • ミーティングの現状を書き出し、アウトラインを作成する。アウトラインには、ミーティング中に取り上げる必要がある重要な項目を含めます。これにより、順調に進めることができます。
  • 車の中で、シャワーを浴びながら、またはマネージャーと一緒に、メッセージを伝える練習をする。これにより、自分の考えを整理し、自分の発言を確認して、お客様の反応を予測することができます。
  • ミーティングの内容と問題点をマネージャーに報告する。マネージャーに絶えず最新の状況を報告することで、お客様がさらに問題を大きくした場合でも、後で自己弁護する必要がなくなります。また、マネージャーやメンターが、あなたが気付かなかったソリューションを見つけてくれる可能性もあります。
  • コンピューターの代わりにメモ帳と紙を持参する。コンピューターを使用すると、相手と視線を合わせることができなくなったり、物理的な空間が取られたりすることがあります。
  • 相手と目を合わせる。目で物や人物を完全に確認できないと、不審なものとして認識されることがあります。
  • 期待事項を設定する。この会話が 1 回で終わるものではないことを自覚していることもあるでしょう。自分に縛りを設けて、事前に期待事項を設定してもかまいません。たとえば、「正時までにミーティングを切り上げる必要があります」または「私のチームがこのトピックについて調査し、より多くの人材を集めていますので、詳細を確認してから、また進めていきましょう」と伝えます。自分がコミットできる事項と、お客様の責任になる事項を明確にします。書面によるコミュニケーションで、ミーティングをまとめます。

ストレスを感じているのはお客様も同じこと

難しい会話は、お客様から信頼されるアドバイザーとして、紙一重の評価の差となります。陥りやすい落とし穴としては、お客様がすでに答えているような質問をしたり、お客様が適切なビジネスのやり方を知らないかのような質問をしたりすることなどがあります。このような間違いは、お客様のストレス反応を引き起こします。 

肝心なのは、お客様の脳内で反応が起きていることを認識し、前の単元で学んだベストプラクティスを使用して、まず認めることから始めて、お客様を落ち着かせることです。 

自分の脳を知り、扁桃体を反応させるトリガーを知ることが重要です。同じことがお客様にも言えます。扁桃体を抑制するための事実、情報、手法で脳を準備し、どんな難しい会話にも対処できるようにしておきましょう。同僚やお客様について、このような点を認識できるようになれば、難しい会話でも相手をナビゲートできます。

リソース

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