サプライヤーとエンゲージする
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- サプライヤースコアカードの作成方法を説明する。
- 購入した製品・サービスからの排出量を計算する手法を説明する。
サプライヤースコアカードを作成する
Northern Trail Outfitters (NTO) のサステナビリティジャーニーは続きます。
最高サステナビリティ責任者である Sam Rajan は、NTO のスコープ 3 排出量がサプライヤーのスコープ 1 とスコープ 2 排出量であることを認識しています。サプライヤーと協力して Sustainability データを追跡するには、Net Zero Cloud の Sustainability スコアカードを使用する必要があります。
これまで、Sam は調達支出金額に基づいてサプライヤーのスコープ 3 排出量を推定してきました。これはあくまで一次推定であり、NTO の目標は、サプライヤー自体からより具体的なデータを得ることで、このデータの精度を向上させることです。
精度に加え、評価すべき重要な側面が他にもあります。たとえば、NTO に生地染料のサプライヤーが 2 社あるとします。サプライヤー A は価格は安いのですが、依然として運搬に燃焼エンジン車を使用しています。サプライヤー B はサプライヤー A の 2 倍の価格ですが、電気自動車を使用しています。Sam が EEIO データだけを使用した場合、一見するとサプライヤー B の排出量の方が多いように見えます。これは、支出金額が多くなると、tCO₂e 換算で排出量の数値が大きくなるためです。ただし、これはこの例では正確ではありません。支出金額については、持続可能な調達を選択する方がより高額になる可能性があります。
スコープ 3 排出量計算の包括的で正確なデータの鍵は、NTO のバリューチェーンにおけるサプライヤーとの関係の確立にあります。Sam は、サプライヤーとより頻繁に交流して関係を築き、信頼を確立する必要があります。
Sustainability スコアカードはサプライヤーとの関係構築に集中するのに役立ちます。
サプライヤー用のスコアカードを作成する手順は、次のとおりです。
- Net Zero Cloud のアプリケーションランチャーから [Sustainability スコアカード] を開きます。
- 右上隅にある [新規] をクリックします。
[New Sustainability Scorecard (新規 Sustainability スコアカード)] ページで、Sam は [名前] や [サプライヤー] などの必須フィールドに情報を入力し、その他の利用可能なサプライヤーの詳細を追加して、[保存] をクリックします。
次に、Sam は NTO のサプライヤーに連絡して、自分が作成した Sustainability スコアカードに詳細を記入するように依頼します。
サプライヤースコアカードデータを取得する
サプライヤーは、Experience Cloud ポータルから Sustainability スコアカードにアクセスできます。完成したスコアカードを使用して、Sam は排出量計算の精度を高めることができます。
サプライヤーは、スコアカードにスコープ全体の排出量を提供します。このスコアカードから、Sam は各サプライヤーのサステナビリティ成熟度を総合的に判断することが可能です。また、サプライヤーは開始日と終了日も指定して、スコアカードのレポート期間を示します。
スコアカードの関連項目を使用して、サプライヤーは科学的根拠に基づく目標 (SBT) と温室効果ガス (GHG) 排出量に関する以下の情報を共有します。
項目 | 説明 |
---|---|
SBT 状況 | サプライヤーが SBT を設定している場合、[Planning (計画)]、[目標設定済み]、[コミット済み]、または [Declined (拒否済み)] などの SBT 状況を示すことができます。 |
サプライヤー排出量削減コミットメント種別 | サプライヤーは、自社のビジョンに基づき、[1.5°C]、[2°C]、[Net Zero]、[Well Below 2°C]、または [その他] などの排出削減コミットメント種別を設定できます。 |
サプライヤー提供排出量種別 |
サプライヤーから提供される排出量データの種別。
|
スコープ 1 排出量 (tCO₂e) | スコープ 1 の合計/配賦排出量の値 |
スコープ 2 ロケーション基準の排出量 (tCO₂e) | グリッド排出量に関するロケーション基準のデータに基づいて計算されたスコープ 2 排出量 |
スコープ 2 マーケット基準の排出量 (tCO₂e) (省略可能) | 公益事業の情報に基づく排出量データと割り当て済み再生可能エネルギーに基づいて計算されたスコープ 2 排出量 |
スコープ 3 排出量 (tCO₂e) (省略可能) | スコープ 3 の合計/配賦排出量の値 |
もちろん、サプライヤーから口頭やメールで情報を取得した場合、Sam は自分でこのデータをサプライヤースコアカードレコードに入力することもできます。
サプライヤーデータを検証して、排出量を計算する
NTO のすべてのサプライヤーはスコアカードにデータを提供済みですが、Sam は最終的なスコアカードを完成させる前にその詳細を検証する必要があります。
サプライヤーからから収集した排出量データは、EEIO ベースの排出量計算に基づいて異なる調達項目にに配分する必要があります。
Sam は、サプライヤーごとにスコープ 1、2、または 3 を選択し、提供された排出量データを配賦するための適切な計算基準を選択する必要があります。
計算基準 | 説明 |
---|---|
サプライヤー提供の排出量値 |
サプライヤー提供の排出量値: サプライヤーは、企業が直接責任を持つスコープ 3 排出量データを提供します。 ここでは、サプライヤーはすでにデータを配賦しているため、企業の担当者は何もする必要がありません。 |
サプライヤー年間売上 |
サプライヤーに起因するスコープ 3 排出量は、サプライヤーの合計収益に対する企業の支出金額の比率に応じて割り当てられます。 ここで、サプライヤーはその収益の詳細と合計排出量を企業と共有します。企業の担当者はサプライヤー収益に対する企業の支出金額の比率から、スコープ 3 排出量の割合を計算する必要があります。 たとえば、サプライヤーの合計収益が 1 億ドルで、NTO がそのサプライヤーから購入した金額が 100 万ドルの場合、NTO はサプライヤーが報告した排出量の 100 分の 1 を配賦します。 |
Emissions Percentage (排出率) |
サプライヤーに起因するスコープ 3 排出量は、サプライヤーから提供された割合で割り当てられます。 ここで、サプライヤーは自社全体の排出量を提供し、企業が責任を負う正確な割合を示します。 たとえば、サプライヤーが 100 台の車両を所有し、NTO がそのうちの 2 台をリースしている場合、NTO の割合は 2% となります。 |
会社年間支出 | これは、関連する調達項目から計算された EEIO スコープ 3 排出量の合計です。 |
スコアカードの [スコープ 3 排出量計算基準] 項目には、Sam が各サプライヤーに起因するスコープ 3 排出量を計算するために選択した基準が取得されています。検証が完了したら、Sam はスコアカードの状況を [Validated (検証済み)] に変更します。
サプライヤースコアカードの排出量を調達項目に割り当てる
USEEIO データセットを使用して調達データを排出量に変換すると、ほとんどが近似値になりますが、スコアカードを通じてサプライヤーから排出量データを取得する方法では、企業のバリューチェーン排出量をより正確に把握できます。次は、NTO のサプライヤーデータを調達項目の関連付けと最終スコアカード排出量の割り当てに使用する必要があります。
調達項目を関連付ける
Sam は、Sustainability スコアカードの [調達項目を関連付け] クイックアクションボタンを使ってこれを実行します。サプライヤーおよびスコアカードの開始日と終了日に基づいて、Net Zero Cloud によって対応する調達項目が照合されます。その後、スコアカードが [関連] タブで調達項目と関連付けられます。
最終スコアカード排出量を割り当てる
Sustainability スコアカードがそれに関連する調達項目に関連付けられると、最終スコアカード排出量を調達項目に割り当てることができます。
これを実行するために、Sam は Sustainability スコアカードの [最終スコアカード排出量を割り当て] クイックアクションボタンを使用します。
関連付けられているスコープ 3 調達項目ごとに、最終スコアカード排出量の値が選択したスコープ 3 排出量計算基準に基づいて計算されます。
たとえば、スコアカードの最終スコアカード排出量の値が 15,000 で、このスコアカードに関連する調達項目が 3 つある場合、項目レベルの割り当ては次の表の「最終スコアカード排出量 (tCO₂e)」列に記載されているデータのようになります。
調達項目 | 支出金額 (USD) | EEIO 計算による tCO₂e | 最終スコアカード排出量 (tCO₂e) |
---|---|---|---|
調達 1 | 700 | 10000 | 7500 |
調達 2 | 1000 | 3000 | 2250 |
調達 3 | 300 | 7000 | 5250 |
合計 | 2000 | 20000 | 15000 |
割り当てが完了した後、Sam は調達項目の新しい tCO₂e 値を確認します。この新しい値から、サプライヤーによって提供された NTO のスコープ 3 排出量データがより正確に示されていることがはっきりとわかります。
さて、Sam は異なる 2 種類の方法で調達品目の排出量の値を計算しています。
- 調達排出係数セット排出量 (tCO₂e): これは、EEIO 計算による tCO₂e の値に基づいて計算されています。
- 最終スコアカード排出量 (tCO₂e): これは、スコアカードで選択した計算基準に基づいて計算されています。
Sam は特定の調達項目で最終的な GHG 計算に使用される適切な手法を選択できます。そのためには、[スコープ 3 排出量計算種別] 選択リストから次の値のいずれかを選択する必要があります。
- 調達排出係数セット
- Sustainability スコアカード
[最終スコープ 3 排出量 (tCO₂e)] 項目の最終スコープ 3 排出量の値は、[スコープ 3 排出量計算種別] に基づいて計算されます。
Sam は NTO のサプライヤーから必要な入力を受け取っているため、最終的な GHG の計算には Sustainability スコアカードが当然の選択となります。
まとめ
このモジュールでは、Net Zero Cloud でスコープ 3 排出量の追跡という課題にどのように対処するのかを例を挙げて見てきました。スコープ 3 排出量データを追跡してカーボンフットプリントを作成する方法と、より正確なデータを取得するためにサプライヤーを管理して、サプライヤーとつながる方法を学習しました。NTO がこのすべてを Net Zero Cloud の機能を使用して実行できるなら、皆さんにもできます。