科学的根拠に基づく目標について知る
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 科学的根拠に基づく目標について説明する。
- SBT イニシアチブ (SBTi) について説明する。
- Net Zero Cloud で目標を設定するためのステップを挙げる。
前提条件
開始する前に次の内容を完了していることを確認してください。
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「Net Zero Cloud の基本」モジュールを修了して、ビジネスにとっての Net Zero Cloud を使用することの利点と、主要な機能や用語を理解します。
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「Net Zero Cloud での資産のカーボンアカウンティング」および「Net Zero Cloud を使用したスコープ 3 のカーボンアカウンティング」 モジュールを修了して、Net Zero Cloud でカーボンフットプリントレコードを作成する方法を理解します。
排出削減: どれだけ減らせばよいのか?
Sam Rajan は、アウトドアやレクリエーションの用具と衣料品の (架空の) 大手小売ブランド Northern Trail Outfitters (NTO) の最高サステナビリティ責任者です。
Sam は Salesforce システム管理者のサポートを得ながら Net Zero Cloud を設定しています。Net Zero Cloud の標準の計算機能を使用して会社の合計カーボンフットプリントを計算したところで、大きな疑問が生じています。「NTO はどのくらいの温室効果ガス排出量をどのくらいの期間で削減できるのか?」
Sam にはわかりません。取り組んでいるのは正しいことであって、簡単なことではありません。Sam は科学的手法に基づいた体系的なアプローチを採用したいと考えています。そこで科学的根拠に基づく目標が役に立ちます。
科学的根拠に基づく目標とは何か、なぜ必要なのか?
科学的根拠に基づく目標 (SBT: Science-Based Targets) とは、明確に定義された温室効果ガス排出削減への道筋を付けるために企業が設定する目標です。SBT は最新の気候科学で地球温暖化を 1.5°C 以下に抑えるために必要とされる排出削減量に従っています。
SBT は、企業が削減できる GHG 排出量ではなく、サステナブルな地球の実現に向けた全体的な努力の中で企業が役割を果たすために削減しなければならない量に基づいて設定します。
気候変動の影響を軽減するために役割を果たすこととは別に、SBT を設定することにはさまざまな理由で NTO にとってビジネス上の意味があります。Sam はその利点を考えてみました。
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ブランド認知度: SBT を設定することで、会社の高いレベルの信頼性、責任、長期的思考を示すことができ、増え続けるサステナビリティ意識の高い投資家や消費者の共感を呼ぶことができます。
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規制への準備: SBT を設定しておくと、将来的に政府から排出量の多い活動を抑制する規制が課された場合の順守に役立つ可能性があります。
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イノベーションと競争力: 必要は発明の母です。低炭素経済を実現するアプローチを作成することで、会社はイノベーティブで効果的な方法を考案して既存の問題を解決できます。イノベーションが進めば、会社は常に競合他社の先を行くことができます。
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将来的な利益: イノベーティブなソリューションによる積極果敢な SBT でエネルギーコスト削減が促され、事業全体の効率化が進みます。
SBT イニシアチブ (SBTi) とは?
SBT (Science Based Targets) イニシアチブ (SBTi) は、カーボンディスクロージャープロジェクト (CDP)、国連グローバルコンパクト、世界資源研究所、世界自然保護基金 (WWF) の連合体です。
このイニシアチブの主目的は SBT の設定を標準のビジネスプラクティスにすることです。それにより、企業は自然界と調和しながら経済に活気をもたらすことができます。
SBTi は企業に 1.5 °C 目標に向けた炭素削減目標を設定するように求める「Business Ambition for 1.5°C」 (1.5°C へのビジネスアンビション) キャンペーンを主導しています。目標は、全世界の GHG 排出量を 2030 年までに 50% 削減し、2050 年までにネットゼロ (排出量と除去量が等しい状態) を実現することです。
SBTi には次のような目的があります。
- 気候科学に基づく SBT 策定のベストプラクティスを定義して推進する。
- 気候変動アクションにコミットした企業に技術的支援とエキスパートリソースを提供する。
- 目標の独立検証を提供する。
SBT を決定する方法は複雑です。SBTi では、詳細な調査と分析を実施し、各部門の科学者とサステナビリティエキスパートの助言を得たのちに、それを踏まえて SBT を導き出す方法を開発しました。SBTi は明確に定義された SBT 設定プロセスと共に一連の条件と推奨事項を公開しています。このイニシアチブでは、サインアップを希望する企業をサポートするためのツールと方法を提供しています。
気候科学に従って科学的根拠に基づく目標を設定する場合、その絶対的標準となるのが SBTi です。目標が SBTi によって検証されれば、排出量削減への意欲的で信頼性の高いコミットメントをしたことをステークホルダーに示すことができます。
Net Zero Cloud は、SBTi に対応し、準拠しています。Net Zero Cloud は「気候変動対策に関する誓約」のような他のプログラムやイニシアチブにも使用できます。Net Zero Cloud の目標設定機能はカスタマイズ可能で、コミットするプログラムを選択できます。
SBTi では次の目標設定ステップを定義しています。
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Commit (コミット): SBTi の標準に従って気候変動アクションに向けた意志を示すコミットメントレターを作成し、SBTi に提出します。
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Develop (目標設定): SBTi の条件に従って SBT を準備し、設定します。
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Submit: (申請): 目標を SBTi に申請して検証を受けます。
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Communicate (通達): コミットメントと目標をステークホルダーと共有します。
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Disclose (公開): 会社の合計排出量を追跡して毎年 1 回報告し、公開します。
Sam は SBTi フレームワークを使用して SBT を設定することにしました。Net Zero Cloud で NTO の目標設定を始める準備はできています。
Net Zero Cloud を使用した目標設定手順
大がかりなプロセスを管理して SBTi の目標設定要件を満たすことは、ときとして困難で時間がかかります。複数のスプレッドシートやドキュメントにまたがる複雑な数式を処理するのは気が遠くなるような作業です。
Net Zero Cloud ではこれが簡素化され、SBTi フレームワークに従って簡単に会社の目標を作成し、すべてを 1 か所で管理できます。
Net Zero Cloud では 3 ステップのプロセスで SBT を設定します。ガイドに従ってステップを進めることができます。
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コミットメントを作成: このステップは SBTi の Commit (コミット) ステップに準拠しています。
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排出インベントリを設定: 年間排出インベントリは目標を設定するための前提条件です。
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目標を設定: このステップは SBTi の Develop (目標設定) ステップに準拠しています。
Sam が Net Zero Cloud で [科学的根拠に基づく目標 (SBT)] を開くと、ランディングページに目標設定プロセスの各ステップが表示されます。[排出削減コミットメントを作成] ページの [Emissions Reduction Commitments (排出削減コミットメント)] リストビューに会社のコミットメントがすべて表示されます。Sam はまだコミットメントを作成していないため、このページは空白です。
この単元で、Sam は科学的根拠に基づく目標、その利点、SBT イニシアチブについて学びました。Net Zero Cloud を使用した目標設定手順も確認できました。次の単元では Sam と一緒に各ステップを詳しく見ていきましょう。
リソース
- Trailhead: Net Zero Cloud の基本
- Trailhead: Net Zero Cloud での資産のカーボンアカウンティング
- Trailhead: Net Zero Cloud を使用したスコープ 3 のカーボンアカウンティング
- 外部サイト: FAQs -Science-Based Targets (FAQ - 科学的根拠に基づく目標)
- 外部サイト: Science-Based Target Setting Manual (科学的根拠に基づく目標設定マニュアル)