排出量予測の方法を学ぶ
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 予測で使用される主要な要素を挙げる。
- 予測の計算方法を説明する。
- 予測の調整方法を説明する。
将来に目を向ける
予測を目標と比較し、目標達成までどの程度進んでいるかインサイトを得られたら素晴らしいと思いませんか? Net Zero Cloud の予測機能ではそれだけでなく、他にも多くのことができます。排出量予測が高精度ではない可能性もありますが、それでも会社の排出量がどうなるかがわかり、排出量削減について先を見越した判断をするのに役立ちます。
予測で使用される主要な要素
排出量予測の計算方法を学習する前に、Sam Rajan は時間を取って予測で使用される基礎要素を理解することにしました。
- 予測ディメンション
- 基準
- 期間グループ
- 取引先
予測ディメンション: 予測は排出活動オブジェクトに事前定義されている排出活動について計算されます。すべての排出活動のリストは、「排出活動と排出量スコープカテゴリ」を参照してください。
排出活動には 3 つの論理レベルがあります。
- 排出活動の最下層には、排出を生成する資産と活動 (スコープ 3 出張など) があります。
- 中間レベルには、最下層の排出活動が属するスコープカテゴリ (スコープ 3 など) があります。
- 最上位の [すべての排出] は、会社の合計排出量を表します。
基準: 基準は時間とともに変化するデータポイントのセットで、排出量予測で使用されます。サンプル排出量予測セットに事前定義されています。自動計算される基準も、手動指定が必要な基準もあります。基準は以下のいずれかの論理カテゴリに分類できます。
- ビジネス評価指標
- 目標
- 実際の排出量
- 予測
- カーボンクレジット
予測セットでサポートされるビジネス評価指標は、収益、人数、延焼面積 (sqft)、調達支出です。すべての排出活動の排出量予測は、基礎となるビジネス評価指標に基づいています。たとえば、スコープ 3 出張の排出量予測は将来の収益がどう増加するかに基づいています。Sam が予測期間のビジネス評価指標値を指定する必要があります。
目標基準と実際の排出量基準は、予測時にそれぞれ排出削減目標レコードと排出インベントリレコードから自動入力されます。
予測基準には、予測計算と、予測計算に影響を与えるために使用できるユーザーが編集可能な基準が含まれます。
カーボンクレジット関連の基準には、将来の各年のカーボンクレジット要件と投資の計画に役立つ情報が含まれます。予測プロセスでは、会社レベルのネットゼロ目標を使用し、目標排出量を予測された排出量と比較してカーボンオフセットを計算します。
すべての基準のリストは、「排出活動と排出量スコープカテゴリ」を参照してください。排出活動とその予測に使用される、基礎となるビジネス評価指標については、「指標種別」を参照してください。
期間グループ: 排出量予測は、デフォルトで将来の 15 年間の期間の各年に対して生成されます。過去 7 年間の履歴データも使用可能であれば表示されます。必要に応じてデフォルトの期間を設定できます。
取引先: 予測プロセスでは代表となる取引先レコードが必要です。取引先は計算では使用されませんが、すべての予測レコードは取引先に関連付けられます。Sam は Northern Trail Outfitters (NTO) の取引先が作成されていることを確認します。
予測の前に
主要な要素を理解したところで、Sam は予測に必要な前提タスクをメモします。
- NTO の取引先を作成する。
- ビジネス評価指標データをアップロードする。Sam はシステム管理者と協力してこのデータをインポートできます。または、ユーザーインターフェースからデータを入力できます (詳細は後述)。
- 前年の実際の排出量データを使用できるようにしておく。Sam は前年の排出インベントリレコードが存在するかどうかを確認します。将来の排出量を予測するには、排出活動について前年の実際の排出量が必要です。
予測を始める
事前定義された予測ロジックが含まれる 3 つのデータ処理エンジンジョブテンプレートを標準で使用できます。Sam はシステム管理者と協力し、必要に応じてテンプレートジョブを実行します。
- Initialize Emissions Forecasts (排出量予測の初期化): このジョブテンプレートを実行して排出量予測を初期化します。
- Calculate Emissions Forecasts (排出量予測の計算): このジョブテンプレートでは、前年の実際の排出量データ、目標情報、ビジネス評価指標を取得して将来の各年の排出量予測を計算します。Net Zero 目標を達成するための必須カーボンクレジットも計算します。
- Reinitialize Emissions Forecasts (排出量予測の再初期化): このジョブテンプレートは、基本的な基礎となる予測データに変更があった場合にのみ実行します。たとえば、Sam が期間グループの予測期間を 15 年から 10 年に変更した場合などです。
これで Sam が予測を始める準備ができました。システム管理者と協力して、まず Initialize Emissions Forecasts ジョブテンプレート、次に Calculate Emissions Forecasts ジョブテンプレートを実行します。
Sam は [高度な取引先販売予測セットパートナー] ページから、Initialize Emissions Forecast ジョブテンプレートを実行したときに自動作成された高度な取引先販売予測セットパートナーレコードにアクセスします。
[高度な販売予測] ページの予測グリッドには排出行動と、選択された基準グループに属する基準のセットが表示されます。Sam は追加の基準グループを作成できます。たとえば、出張に関連する基準を基準グループとしてグループ化できます。詳細は、「基準グループの作成」を参照してください。
予測グリッドで、Sam はビジネス評価指標値を入力または変更したり、ユーザー定義の基準の値を指定したりできます。
Sam はスコープ 3 出張の予測を表示したいと考えています。グリッドのデータをこの排出活動で簡単に絞り込むことができます。適切な基準グループを選択して、特定の基準を表示できます。
Sam は予測計算に何が使用されるかを知っていますが、実際にどう計算されるかに関心があります。
予測を計算する
排出量予測は、排出活動ごとに計算されてから、スコープ別に集計されます。排出活動ごとの排出量予測は大きく 2 フェーズに分けて計算されます。
最初に、排出データを使用できる前年の排出原単位が計算されます。
実際の排出原単位 = 実際の排出量 (tCO₂e)/ビジネス評価指標
次に、この原単位値が予測年度の関連付けられたビジネス評価指標値で乗算されて排出量が生成されます。
まとめると、将来のある年度 (仮に 2026 年とする) の排出活動の予測計算では、次の情報が必要になります。
- 実際の排出量原単位
- 前年度 (2021 年) の排出活動の実際の排出量
- 前年度 (2021 年) のビジネス評価指標値
- 将来の年度 (2026 年) のビジネス評価指標値
スコープ 3 出張排出活動とそれに関連付けられたビジネス評価指標 (収益) の例を使用した原単位計算と排出量予測を見てみましょう。
IF 前年度 2021 年の実際の排出量 (tCO₂e) = 75
AND 2021 年度の収益 = 120
THEN 2021 年度の実際の排出原単位 = 75/120 = 0.625 (四捨五入して 0.63)
IF 2026 年度の収益 = 200
THEN 2026 年度の予測排出量 (tCO₂e) = 200 * 0.63 = 126
スコープレベルの予測はスコープ内の排出活動の予測を集計して求められます。[すべての排出] の排出量予測はスコープ 1、スコープ 2、スコープ 3 の予測を集計して求められます。
予測プロセスでは、Sam が将来的に Net Zero 目標を達成するために購入できるカーボンクレジットも計算されます。カーボンクレジットは、会社全体の排出量を表す [すべての排出] レベルで予測されます。次のように計算されます。
カーボンクレジット = 最終予測排出量 - 目標補正排出量
ここで、目標補正排出量は Net Zero 目標用に作成された排出削減目標レコードから取得されます。
Sam は、カーボンクレジットコストを指定して、年度の必須カーボンクレジット投資を取得できます。予測機能では、必須カーボンクレジットを指定されたカーボンクレジットコストで乗算して、年度の必須カーボンクレジット投資を自動的に計算します。
予測を調整する
NTO は複数の排出削減イニシアチブを開始する予定です。Sam は簡単にそうしたイニシアチブやプログラムの影響を取得して、関連する排出活動の予測が削減されることを確認できます。
Sam が 2026 年度のスコープ 3 出張排出活動の計算済み予測に対し、排出原単位削減と計画済み事業排出量削減の値に基づいて、どう影響を与えることができるかを確認しましょう。
Sam は次の値を指定します。
- 予測排出原単位削減割合:
20
- 計画済み事業排出量削減 (tCO₂e):
20
Sam は再びシステム管理者と協力して Calculate Emissions Forecasts ジョブテンプレートを再実行します。ジョブテンプレートの実行が完了すると、再計算された最終的な排出量予測が次のように求められます。
最終的な予測排出量 (tCO₂e) = 予測排出量 (tCO₂e)) * (1- 予測排出原単位削減割合/100)) - 計画済み事業排出量削減 (tCO₂e)
= 126 * (1 - (20/100)) - 20 = 80.8
Sam は予測グリッドで更新された予測を確認します。
Sam は予測グリッドを使用して必要な予測調整を行う方法を理解できたため、主要なステークホルダーと協力して排出量削減イニシアチブやさまざまな排出活動への取り組みを検討しています。こうしたイニシアチブを反映して基準を更新し、定期的に予測データ処理エンジンテンプレートジョブを再実行して、最新の予測を確認し、目標にできるだけ近づけるようにします。NTO の主要な排出削減イニシアチブが反映された予測を使用することで、Sam は将来の各年度で排出量が目標にどの程度近づくかをより的確に理解できます。
気候変動ダッシュボードを使用して視覚的なインサイトを得る
Sam は、事前定義された CRM Analytics ダッシュボードである [Climate Action Dashboard (気候変動アクションダッシュボード)] を使用して、排出量データに関する視覚的インサイトを得ることができます。
[Climate Action Dashboard (気候変動アクションダッシュボード)] の [Carbon Emission Forecast (炭素排出量予測)] タブでは予測、目標、実際の排出量データが視覚的に比較されます。Sam は合計排出量、各スコープの合計排出量、排出活動別の排出量のグラフを表示するように選択できます。
まとめ
Salesforce Net Zero Cloud を使用すると 1 つのソリューションだけで NTO の気候変動アクションへのコミットメント、カーボンインベントリ、科学的根拠に基づく目標を追跡して管理できます。Sam は予測機能を使用して、目標達成や必要な軽減アクションの計画で生じる課題の解決をサポートできます。Sam と同様に、あなたも簡単に目標を管理、追跡し、目標達成に取り組んで気候変動に対するコミットメントを全うできます。