科学的根拠に基づく目標へのコミットメントを作成する

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

• 科学的根拠に基づく目標のコミットメントを作成するプロセスを説明する。
• 会社のコミットメントを作成する。

コミットしますか?

科学的根拠に基づく目標 (SBT) を設定するときの最初のステップではコミットメントを作成します。コミットメントは気候変動アクションに向けた会社のビジョンと考えることができます。これは会社が長期的に達成したい気候目標です。進むパスを定義するのに役立ちます。 

コミットメントの作成は、SBT イニシアチブ (SBTi) への正式なエンゲージメントを開始するときの最初のステップでもあります。SBTi にコミットメントレターの形式でコミットメントを提出する必要があります。SBTi にコミットメントレターを提出することにより、SBTi の条件やガイドラインに準拠した科学的根拠に基づく排出削減目標の設定に取り組むという会社の誓約を表明することになります。 

すでに排出目標を定義している企業や、他のイニシアチブに参加していたものの、SBTi に合わせて取り組みたい企業は、SBTi にコミットメントを提出して目標を検証してもらうことができます。

中小企業 (SME) のアプローチ

SBTi では中小企業 (SME) を従業員数 500 人未満の企業と定義しています。企業が SME の場合、SBTi では目標設定の経路を簡素化または迅速化します。 

コミットの初期フェーズを省略して直接スコープ 1 および 2 の排出量を設定できます。この SME 用の簡素化されたアプローチでは、コミットと目標設定が 1 つのステップに統合されています。SBTi は SME にスコープ 3 排出量の目標設定を義務付けておらず、推奨に留めています。Net Zero Cloud では、SME かどうかに関係なく SBT の設定プロセスは同じです。

コミットメント種別

Net Zero Cloud では、会社の内部向けと外部向けに複数のコミットメントを作成できます。外部コミットメントは通常、SBTi のような気候変動対策のイニシアチブやプログラムに提出するコミットメントです。内部コミットメントは、社内での追跡専用に作成するコミットメントです。 

Net Zero Cloud では 5 つのコミットメントオプションまたは種別がサポートされます。 

• 1.5°C: 地球温暖化を 1.5°C に抑えるための排出削減目標を会社が目指すことを示します。産業革命以前のレベルからの温暖化を 1.5°C に抑えることで、気候変動の最も危険で取り返しのつかない影響を抑制できます。この温度を目指すパスは、気候変動アクションの最も意欲的なビジョンに対応付けられます。2021 年 12 月に SBTi は、最小スコープ 1 および 2 アンビションを「2°C を十分に下回る」から「1.5°C を十分に下回る」に引き上げました。
  
  
• Net Zero: 気温上昇を 1.5°C に抑え、2050 年までにネットゼロ排出を達成するための SBT を会社が必ず設定するという長期的なコミットメントを示します。このコミットメントは、会社は短期と長期の両方の SBT を設定する必要があると定める、SBTi のネットゼロ標準に対応付けられます。ネットゼロ達成の長期的な目標は 2050 年 (電力部門では 2040 年) までに達成する必要があります。
  
  
• Well-below 2°C (2°C を十分に下回る): 産業革命以前のレベルからの気温上昇が 2°C を十分に下回るように地球温暖化を抑えるための排出削減目標を会社が目指すことを示します。2019 年に SBTi は、受け入れられる最小レベルのアンビションを「2°C」から「2°C を十分に下回る」に引き上げました。
  
  
• 2°C: 地球温暖化を 2°C に抑えるための排出削減目標を会社が目指すことを示します。SBTi ではこのコミットメントはもう十分または十分に意欲的とはみなされません。これは、2019 年より前に受け入れられていた最小レベルのアンビションです。早期にコミットした企業は 2°C コミットメントのままである可能性があるため、Net Zero Cloud ではこの選択肢を残しています。 
  
  
• カスタム: 会社は他のコミットメント種別に対応付けられないカスタマイズしたコミットメントを作成できます。会社が独自のビジョンやコミットメントを設定する場合、あるいは特定のアンビションを持つプログラムに参加する場合は、このコミットメント種別を選択できます。

NTO の最高サステナビリティ責任者である Sam Rajan は、どのようなコミットメントを選べるか理解しました。Net Zero Cloud で会社の内部と外部向けの気候変動対策へのコミットメントを作成するのが楽しみです。 

コミットするには?

Sam は NTO が SBTi の 1.5°C のビジネスアンビションキャンペーンにコミットできるように、地球温暖化を 1.5°C に抑えるための目標を設定します。 

Sam がコミットメントを作成するには、大きく分けて次のタスクを実行する必要があります。

1. Net Zero Cloud でコミットメントレコードを作成し、内部ステークホルダーから承認を得ます。
2. コミットメントレターを作成して SBTi に提出し、SBTi のコミットメントプロセスを完了します。Sam が別のコミットメントプログラムへの参加を選択した場合は、そのプログラムのプロセスを実行する必要があります。

Sam がこれらのタスクを実行する手順を見てみましょう。

Net Zero Cloud でコミットメントレコードを作成する

コミットメントレコードを作成するために、Sam はまず Net Zero Cloud で [科学的根拠に基づく目標 (SBT)] を開く必要があります。Salesforce システム管理者から提供されたログイン情報を使用してログインします。このコミットメントレコードがあると、SBTi に提出するコミットメントレターを入力するときに便利です。 

1. Net Zero Cloud アプリケーションの Lightning コンソールドロップダウンリストから、[科学的根拠に基づく目標 (SBT)] を開きます。ランディングページに目標設定プロセスの 3 ステップが表示されます。
   
   
   
   
2. [排出削減コミットメントを作成] ページで、[新規] をクリックし、次の詳細を指定します。
   • 名前: NTO's Business Ambition for 1.5C Commitment (NTO の 1.5°C コミットメントのビジネスアンビション)
   • 状況: 進行中
   • コミットメントプログラム: SBT イニシアチブ
   • コミットメント種別: 1.5°C
   • 業種業界: 繊維、服飾、履物、贅沢品
   • 会社の従業員数: 700
3. [保存] をクリックします。

NTO の従業員数が 500 人未満であれば、[中小企業] チェックボックスをオンにする必要があります。今回は該当しないため、Sam は選択をスキップします。

特定のビジネスユニットの内部コミットメントや、会社全体のもっと意欲的なコミットメントを作成する場合は、[コミットメント種別] で [カスタム] を選択し、内部コミットメントとしてプログラム名を指定します。コミットメント種別が [カスタム] の場合、SBTi で承認されるコミットメント以外のコミットメントを柔軟に作成できます。 

Sam はコミットメントレコードを確認します。問題がなかったため、Chatter で内部ステークホルダーと共有してレビューや承認を依頼します。 

レコードのレビューを依頼したら、Sam は速やかにコミットメントレコードの状況を [内部承認申請済み] に更新します。[状況] 項目はコミットメントの進行状況を追跡するのに役立ちます。 

SBTi コミットメントプロセスを実行する

Sam は内部ステークホルダーから SBTi の 1.5°C のビジネスアンビションキャンペーンにコミットする承認を得たところです。 

次は、SBTi コミットメントプロセスに進みます。SBTi の Web サイトで登録し、標準のコミットメントレターに入力するとき、Net Zero Cloud のコミットメントレコードが重宝します。すべてを入力し終えたら、コミットメントレターを提出します。 

Sam は NTO's Business Ambition for 1.5°C Commitment レコードの [状況] を [気候変動団体に送信済み] とマークして、最新の状態に更新します。

SBTi がコミットメントレターをレビューして承認するまで数日かかります。Sam は承認待ちの間、次のステップの準備をします。 

メールが来ました! Sam は SBTi から NTO のコミットメントへの承認を受け取る日を心待ちにしていました。承認日から 24 か月以内にコミットメントの SBT を設定する必要があります。 

Sam はすぐに NTO's Business Ambition for 1.5°C Commitment レコードを承認の詳細で更新します。承認済みコミットメントレターをアップロードし、コミットメントレコードに添付します。Sam はこのコミットメントの目標を Net Zero Cloud の予測で使用するため、[予測に使用される目標] チェックボックスをオンにします。 

SBTi はコミットメントが承認された認定企業を Web サイトとカーボンディスクロージャープロジェクト (CDP) や We Mean Business などのパートナー Web サイト上で公表します。ネットゼロアンビションにコミットした企業は、UNFCCC の Race to Zero Web サイトにも追加されます。

Sam は NTO のコミットメントを NTO の Web サイトで公開して世界に発表します。

この単元では、Sam が Net Zero Cloud でどのように最初のステップであるコミットメントの作成を実行するかを確認しました。SBTi から承認を得て、Sam はインベントリの準備や科学的根拠に基づく目標の設定に進めるようになりました。 

リソース

• Salesforce ヘルプ: 排出削減コミットメントの作成
• 外部サイト: Set a Target (step-by-step guide) (目標の設定 (ステップバイステップガイド))
• 外部サイト: Science Based Targets Initiative—Commitment Letter (SBT イニシアチブ — コミットメントレター)
• 外部サイト: SBTi Corporate Net-Zero Standard (SBTi 企業ネットゼロ標準)