ライセンスのしくみを理解する
学習の目的
- Salesforce ライセンスとは何かを説明する。
- プラットフォームライセンス、ユーザーライセンス、権限セットライセンスを定義する。
- プラットフォームライセンス、ユーザーライセンス、権限セットライセンスがエディションやアドオンとどのように関係しているか説明する。
ライセンスとは?
Salesforce をそこそこ使用している方ならば、Salesforce を大規模なオフィスビル、お客様の組織をビルにオフィスを構えるテナントとする喩えを聞いたことがあるかもしれません。各組織が Salesforce の共有テクノロジーインフラストラクチャを使用し、各自のセキュアな非公開運用スペースにそのユーザーのみがアクセスできるようになっています。
この喩えをさらに一歩進めると、Salesforce ライセンスは資産管理者とテナントが交わす賃貸契約のようなものです。Salesforce ライセンス、より正確に言えば、ライセンス定義は、各自の組織が使用できる Salesforce の機能とサービスのメタデータ記述です。
ライセンス定義には、組織全体の機能と組織内の個別のユーザーの機能が説明されています。ライセンスそのものは、Salesforce と特定のお客様間の固有の契約で、そのお客様の組織の機能を定義します。
組織は通常、使用可能なすべての機能やサービスを構成する複数のライセンスを所有しています。組織のライセンスには、開始日と終了日、Salesforce にアクセスできるユーザーの数、組織が作成可能なカスタムオブジェクトの数など、組織に固有の情報が定められています。
この単元の後半で、Salesforce が提供する各種のライセンスと、各ライセンスで管理される機能について詳述します。
プロビジョニングとは、まずライセンスを有効にし、続いて組織の機能を有効にするために Salesforce が実施するプロセスです。組織のプロビジョニングを喩えると、テナントが資産管理者と会って初回の賃貸料を支払い、オフィスの鍵を受け取るようなものです。組織がプロビジョニングされると、Salesforce で仕事ができるようになります! アップグレードとアドオンについては、3 つ目の単元で詳しく説明します。次に該当する場合は自動プロビジョニングプロセスが実行されます。
- Salesforce 組織を初めて購入して設定する場合
- アップグレードまたはアドオンを購入する場合
- Salesforce のパッチリリースにライセンス定義への変更が含まれている場合
プロビジョニングは本番組織にのみ適用されます。本番組織とは、ユーザーがアクセスしてライブデータを操作する有効な組織です。Sandbox 組織 (テストに使用するステージング環境) が 1 つ以上ある場合は、ライセンスの変更を各 Sandbox 組織にプッシュして、Sandbox 組織を常に本番組織と同期させておく必要があります。Sandbox 組織はそのまま更新することも、本番ライセンスの照合ツールを使用して更新することもできます。Sandbox 組織の更新については後ほど詳述します。デモ組織、開発者組織、スクラッチ組織、トライアル組織にはプロビジョニングが適用されません。
ライセンスの種別
ライセンスについて理解するために、背景事情から見ていきましょう。Professional、Enterprise、Unlimited など Salesforce のエディションについてはご存知のことと思います。エディションには、各レベルのビジネスニーズに応じた機能やサービスがバンドルされています。組織のエディションを補完する機能を追加するアドオンについてもご存知と思います。さらに、権限と環境設定というのも聞いたことがあるのではないでしょうか。この 2 つは組織または個別のユーザーの特定の機能へのアクセスを管理するものです。
では、エディション、アドオン、権限、環境設定はどのように連携しているのでしょうか? その答えとなるのがライセンスです!
権限と環境設定は設定で、言い換えれば製品機能の特定の側面を設定するメタデータスイッチです。概して、権限は、Lightning Experience や Chatter などの機能へのアクセスや、セキュリティの特定の側面を管理します。環境設定は、タイムゾーンやパスワードのオプションなど、お客様が指定できる設定を定義します。権限と環境設定については次の単元で詳しく説明します。ここでは、権限と環境設定が、組織全体 (プラットフォームライセンス) または個別のユーザー (ユーザーライセンス) を定義するライセンスにバンドルされていることを覚えておいてください。
組織のシステム管理者は、ユーザーのロールに基づいて各ユーザーにユーザーライセンスを 1 つ割り当てます。ユーザーライセンスによって、ユーザーがアクセスできる機能が決まります。エディションまたはアドオンには、製品に応じて数種類のユーザーライセンスを含めることができます。たとえば、Sales Cloud の Enterprise Edition には、CRM 機能にアクセスする必要があるユーザーのために Full CRM ユーザーライセンスが付属します。また、Chatter にアクセスする必要があるが、CRM 機能にはアクセスする必要がないユーザーために Chatter Free ユーザーライセンスも付属します。
Sales Cloud や Service Cloud など、Salesforce 製品の 多くには権限セットライセンスも含まれます。権限セットライセンスは、ユーザーライセンスと同様に、ユーザーレベルの機能を定義します。ただし、ユーザーがユーザーライセンスを 1 つしか所有できないのに対し、権限セットライセンスは複数割り当てることができます。システム管理者がユーザーに権限セットライセンスを割り当てれば、割り当て済みのユーザーライセンスで提供される機能を強化できます。ユーザーライセンスと権限セットライセンスを割り当てたら、追加のステップとしてプロファイルと権限セットを割り当て、特定のユーザーの機能を確定します。この点は次の単元で詳述します。
プラットフォームライセンス、ユーザーライセンス、権限セットライセンスはすべて設定が含まれるため、設定ライセンスといわれています。次のセクションでは、設定ライセンスとエディションやアドオンがどのように関係しているのか見ていきます。
エディションとアドオンについて
ここまでの説明で、ライセンスによって組織のプラットフォームレベルとユーザーレベルのアクセスがどのように管理されるのかを多少なりとも理解することができました。ところで、エディションやアドオンとはどのように関係しているのでしょうか?
Salesforce のお客様が個別の権限や環境設定を直接購入することはありません。実際のところ、個別のプラットフォームライセンス、ユーザーライセンス、権限セットライセンス (すべて設定ライセンス) も購入することはありません。その代わりに、製品ライセンスであるエディションやアドオンを購入します。エディションやアドオンは、プラットフォームライセンス、ユーザーライセンス、権限セットライセンスをさまざまな組み合わせでバンドルした機能のスイートで、必要な機能やサービスのパッケージを簡単に選択できます。
賃貸契約の喩えを続けると、プラットフォームライセンス、ユーザーライセンス、権限セットライセンスは賃貸契約の個々の条項のようなもので、各条項が借り受ける特定の物件 (例: 「 125 Market Street に所在する建物の 30 階の 1 ~ 12 号室」) を表します。エディションまたはアドオン製品ライセンスは、賃貸契約文書全体と考えられ、一定の物件に関する条項や、管理者と賃貸人の契約に関する一般情報が記載されています。
それぞれの組織に、その組織を有効にするために必要な全機能をまとめたエディションが 1 つ存在します。エディションは、一連のプラットフォームライセンスとユーザーライセンスで構成される組織のエディションライセンスによって決まります。組織に、その組織の 1 つのエディションライセンスでユーザーに Salesforce へのアクセスを許可する契約が複数存在する場合があります。ただし、組織が複数のエディションライセンスでユーザーに同時に Salesforce へのアクセスを許可することはできません。アドオンとは、その名が示すとおり、エディションと同様にプラットフォームライセンスやユーザーライセンスで構成されるオプションの補完機能です。組織にはエディションが 1 つ必要ですが、アドオンは好きなだけ追加でき、1 つもなくても構いません。
では、エディションとアドオンがどのように連携するのか例を挙げて説明するために、米国南西部を拠点とする太陽光発電の設備やシステムのサプライヤーである Ursa Major Solar を見ていきましょう。Ursa Major Solar は従業員 200 人程度の小さな企業です。
Ursa Major は Service Cloud の Enterprise Edition を購入します。このエディションの一部として Full CRM ユーザーライセンスを 100 個購入し、100 人の従業員が Service Cloud の CRM 機能にアクセスできるようにします。
Ursa Major はまた、包括的な人工知能システムである Salesforce Einstein に搭載されたカスタムサービス機能も使用したいと考えています。そこで、Service Cloud Einstein を アドオンとして購入します。このアドオンには Service Cloud Einstein 権限セットライセンスが付属し、アクセスを必要とするユーザーに割り当てることができます。Ursa Major で Einstein 機能を必要とするのは 10 人のアカウントエグゼクティブのみであるため、このアドオンの一部として Service Cloud Einstein 権限セットライセンスを 10 個購入します。
この単元の用語
- アドオン
- 組織の任意の拡張機能で、エディションにバンドルされた機能を補完する。組織に複数のアドオンを設定できる。アドオンには 1 つ以上の権限セットライセンス、プラットフォームライセンス、ユーザーライセンス、あるいはこの組み合わせが付属する。
- デモ組織
- Salesforce の実際の機能を見込み客に説明するために使用するサンプル組織
- 開発者組織
- 有効期限のない無料の組織で、開発者がアプリケーションの開発、テスト、リリースに使用できる。
- エディション
- 組織の有効化に必要な機能を構成する機能とサービスのバンドル。Salesforce には数種類のエディションが用意され、それぞれ機能のレベルが異なる。
- ライセンス
- Salesforce と特定のお客様間の契約上の合意事項で、お客様の組織で使用できる Salesforce 関連製品の機能のメタデータ記述が含まれる。
- ライセンス定義
- お客様の組織で使用できる特定の Salesforce 製品の機能のメタデータ記述
- 権限
- 製品機能の特定の側面を設定するメタデータスイッチ。概して、権限は、Lightning Experience や Chatter などの機能へのアクセスや、セキュリティの特定の側面を管理する。(環境設定を参照)
- 権限セットライセンス
- ユーザーライセンスの機能を補完するために割り当て可能なユーザーレベルの機能を定義するライセンス。ユーザーに複数の権限セットライセンスを割り当てることができる。権限セットライセンスは権限セット (次の単元で定義) とは異なる。
- プラットフォームライセンス
- 組織全体の機能を管理するメタデータスイッチ (設定) のライセンス
- 環境設定
- 製品機能の特定の側面を設定するメタデータスイッチ。概して、環境設定は、タイムゾーンやパスワードのオプションなど、お客様が指定できる設定を定義する。(権限を参照)
- 製品ライセンス
- 1 つ以上の設定ライセンスと、お客様が購入可能な製品の他のメタデータをバンドルしたエディションまたはアドオン
- 本番組織
- お客様の有効な組織で、ユーザーがアクセスしてライブデータを操作できる。
- プロビジョニング
- まずライセンスを有効にし、続いて組織の機能を有効にするプロセス
- Sandbox 組織
- 本番組織のレプリカで、本番組織やユーザーに影響を及ぼすことなく、お客様が変更をテストできるステージング環境として機能する。
- スクラッチ組織
- Salesforce の短期リリースで、開発者が Salesforce のさまざまなエディション、機能、環境設定をエミュレートできる。スクラッチ組織の有効期限は最大 30 日。
- 設定
- 製品機能の特定の側面を定義するライセンスのメタデータスイッチ
- 設定ライセンス
- 製品機能の特定の側面を定義する設定 (メタデータスイッチ) を含む権限セットライセンス、プラットフォームライセンス、ユーザーライセンス
- トライアル組織
- サンプルデータを搭載した無料の組織で、見込み客が購入前に Salesforce を評価することを目的に設計されている。
- ユーザーライセンス
- ユーザーレベルの機能を定義するライセンス。各ユーザーにユーザーライセンスが 1 つ割り当てられる。