リーンの原則の実践方法
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- リーンの原則について説明する。
- リーンの原則がアジャイルプロセスにどのように影響するか説明する。
Salesforce では、アジャイルという新たなジャーニーを進めるうちに、この新しい業務の遂行方法を支える、確固たる文化的価値を創出する必要性が生じました。そこで、リーンソフトウェア開発の手法のページを引用して、同じ価値を取り入れました。
Salesforce 版の 7 つの価値
- 人々を尊重する
- 無駄を省く
- いち早く配信する
- ジャストインタイムの決断
- 全体を最適化する
- 知識を創造する
- 品質を組み込む
人々を尊重する
人々に業務の進め方を指示する必要はないと私たちは考えています。Salesforce でマネージャーは、「人々に仕えるリーダー」、つまりチームの声に耳を傾けるリーダーであるという概念を取り入れています。適切な人材を採用したら、業務への取り組みは本人に任せます。チームメンバーを業務を遂行する手段とみなせば、創造性やイノベーションを発揮してもらう余地がなくなります。
チームの成功が実現するのは、お互いを尊重し、協力して取り組むときです。個々人が自分だけ秀でようと思えば、チームの成功が妨げられる傾向にあります。
では、この価値は Salesforce でどのように位置付けられているのでしょうか? Salesforce の顧客や組織の成功にとって、Ohana 文化は不可欠であると私たちは考えています。ハワイの文化で Ohana は、血族であれ姻族や養子縁組であれ、家族には絆があり、各人がお互いに対して責任を持つという考え方を表します。
無駄を省く
せっかく取り組んだ作業がまったく必要とされなかったというのは嫌なものですよね? 私たちも嫌です。そのため、企業として、リソースの最適化に努め、顧客に最大限の価値をもたらすプロジェクトのみに取り組むようにしています。
時間を浪費する例として次のものが挙げられます。
- マルチタスク
- 段取りの悪いミーティング
- 事後対応で割り当てられた作業
- やりかけの作業
私たちは、時間を無駄にすることがないように、準備の定義という標準を定めています。これは、その名のとおり、作業項目の開始にあたって必要と思われる事項の標準リストです。この目的は、何らかの作業に着手した後になって、まだ機が熟していなかった、あるいはまったく必要なかったことに気づいて時間を無駄にすることがないように、事前の適切な話し合いを促すことです。
わかりますよね? では、このトピックでこれ以上時間を無駄にしないことにします。
いち早く配信する
Salesforce は常にイノベーションの最前線で他をリードする企業であることから、変化に対応して競争力を維持するために、臨機応変である必要があります。短期的なスプリントとは、何が機能して何が機能しないのかを継続的に学び、それに応じて変更に取り組むことを意味します(技術製品チームでは現在 2 週間のスプリントに取り組んでいます)。
ジャストインタイムの決断
Salesforce では、あらかじめ設計することを避け、重要な判断を責任の及ぶ限り先延ばしするようにしています。この手法によって顧客のニーズを的確に理解しやすくなります。もちろん、責任の及ぶ限り先延ばしする期間は、作業の内容に応じてチームが自ら判断します。
全体を最適化する
Salesforce のエコシステムは、単に各部の総和ではありません。そして、顧客に対する信頼と高い品質を維持するためには、チームが孤立した状態で業務にあたることがないようにする必要があります。
Salesforce では、チームが広い視野で考え、無駄なく行動し、協力して取り組み、失敗を恐れず、すばやく学習できるようにしています。
知識を創造する
私たちは、学習と継続的な改善を可能な限り拡充したいと考えています。短期的なスプリントを用いれば、継続的にテストしながらソリューションを構築することができます。
つまり、短期的なサイクルで、常に意識を集中させ、恒常的に学習して適応し、革新していきます。こうした短期集中型の業務の進め方で、顧客の信頼を獲得しています。たとえば、何をするにも必ず顧客のフィードバックを考慮するのもその一環です。私たちは、自社製品の価値を顧客の成功によって定義しています。
Salesforce で知識を共有する方法の 1 つが Slack の利用です。チームが Slack にアクセスすれば、ファイルやドキュメント、インサイトを共有できます。また、チームに継続的に情報を伝えるために、コードレビュー、ペアプログラミング、昼食時の共有セッションなども実施しています。
さらに、チームの全員に新しいスキルを習得して成長してもらいたいと考えています。チームの各人が 1 つの専門知識しか持ち合わせていなければ、チームの生産性が低下します。誰もが知識と責任を分かち合う、バランスの取れた学習環境の創出を望んでいます。
品質を組み込む
信頼は Salesforce の基本的価値の 1 つで、私たちが常に顧客を成功に導く高質なサービスや製品の創出に努めているのもそのためです。
私たちはこの実現のために、すべての製品の柔軟性、保守性、効率性、応答性を高める技術的な手法をいくつか実践しています。業務の途中でリファクタリング (あるいはコードの再構成) を行うことで、作業を単純明快かつ簡潔にしています。
顧客と信頼を築くうえでもう 1 つの重要な要素は、堅牢で効率的な一連のテストプロセスを設けることです。アジャイルに移行する前は、他のタスクが生じたために製品テストが阻まれることが多々あり、これが遅延の原因になっていました。けれども現在は、品質に対する責任を誰か 1 人が担うのではなく、全員が品質に対する所有権を有します。
私たちが実践したことの 1 つは、技術製品組織内の品質管理エンジニアという職務を排除し、「ハイブリッドエンジニア」という職務を新設したことです。この新種のエンジニアはコーディングからテストまで全サイクルを担当するため、プロセスの各部分を異なる人々が作業することがなくなりました。
アジャイルパッケージ
「Salesforce のプロセスはどのようなものですか?」と質問されることがよくあります。実際のところ、単一のプロセスはありません。
Salesforce では各チームがさまざまな業務を担当しているため、一種類のプロセスや手法を命じるようなことはありません。結局のところ、それぞれのチームが、リーンの原則や継続的な改善の概念に基づいて、独自のプロセスを定義する必要があります。
Salesforce では、Ohana の文化とリーンを踏まえて、チームが業務の進め方を判断し、一連の共通目標を目指す人々をサポートするマネージャーの下で、チームが正しいことを行えるようにしたいと考えています。