テリトリー管理のベストプラクティス
学習の目的
このモジュールを完了すると、次のことができるようになります。
- 会社目標に基づいてテリトリーを分割する。
- 複数の条件を使用してテリトリーの均衡を保つ。
パフォーマンスも満足感も高いチームの基盤となるのがテリトリー管理で、チームがどのように分割され、誰がどのリードに対応するかを決定して、各人の目標を具体化します。けれども、このテリトリーはどのようにして決定するのでしょうか? 「そんなこと言われてもわかりません。私が来たときにはもうこうなっていました」思っているかもしれません。大丈夫です。聞かなかったことにしましょう。けれども、「これ以上よくなることはない」という言葉を聞き逃すことはできません。
この単元では、データを使用して、会社が市場参入の目標達成に向けて幸先の良いスタートが切れるようにすると同時に、担当者のモチベーションを高めて維持できる、効率的なテリトリーの設定方法を学習します。
会社目標に基づくテリトリーの分割
営業テリトリーを作成する手っ取り早い方法は、地図上の各区画に営業担当をそれぞれ割り当てていくことですが、これが最も効率的であるとは限りません。それよりも、会社の市場参入戦略や全体的なビジネス目標を検討します。「今年会社で最も重要視している点は何か?」、「それによって今後 5 年間のビジネス成長がどのように方向付けられる可能性があるか?」などです。
以下に、会社の市場参入戦略を理解し、テリトリー管理プロセスを方向づけるうえで役立つと思われる質問をいくつか示します。
- 今年新規市場に参入するつもりか?
- 新しい業界の顧客向けに商品を変更したか?
- 特定の業界は TAM (実現可能な最大市場規模) が当初の見込みより大きかったということがあったか?
- 今年特定の規模の企業をターゲットにしているか?
今年アジア太平洋市場に商品投入するのであれば、APAC 専門の営業チームの編成を検討します。ヘルスケア業界や製造業界の TAM が莫大であることが判明している場合は、専門チームを設定する価値があります。会社目標に基づいて、どこにより多くの営業担当を配置し、テリトリーをどのように区分するか判断します。
テリトリー間の均衡を保つ
会社の最も重要な目標を念頭に、大まかなテリトリーを決定しました。次は、どの担当者がどの管轄を統括するかを決定します (こうした権限によって大英帝国の君主のように感じられるのであれば、紅茶とビスケットでもお召し上がりください)。
複数の条件を使用したテリトリーの分割
テリトリーの分割には既存の方法がいくつかありますが、その 1 つのみに基づけば問題が生じるおそれがあります。次に例を示します。
- 担当者に郵便番号を割り当てるとします。けれども、もし Seema には人口密度の低いモンタナ州の 59007 が割り当てられ、Marisol にはサンフランシスコ中心部の 94105 が割り当てられたらどうなるでしょうか? Seema は Marisol ほど多くの取引先を見つけられないでしょう。
- 各担当者に同数の取引先を割り当てた場合はどうでしょうか。簡単ですよね。けれども、Mark はリードの 45 件が停止状態で有望なリードが 5 件しかないのに対し、Ramon は 50 件とも有望なリードであるとしたらどうでしょうか? Mark のほうが目標達成がはるかに難しくなるでしょう。
1 つの要因のみでは、テリトリーを均等に分割できない可能性があることがおわかりでしょう。では、どうすればよいのでしょうか? 方程式の要素を増やします。次のような要素を組み込むことが考えられます。
- 企業数
- 場所
- 企業の規模 (従業員数または年間収益で判断)
- 購入の傾向
- 業種
目標を設定して担当者の意欲を高める
それでもなおテリトリーを望みどおり均等にできない場合は (完全に均等になることはないでしょうが)、目標を調節して均等な状況を創り出します。
目標は成功を測る重要な手段ですが、担当者全員の目標をまったく同じにする必要はありません。営業担当にはさまざまなレベルの経験やスキルをもつ多様な人々がいます。ですから、大規模なテリトリーは目標値を高くして、商談を確実にものにする経験豊富な担当者に割り当てます。他方、小規模のテリトリーは目標値を低くして、経験を積む必要のある新参の担当者に割り当てます。これで全域に担当者を配置し、担当者が目標を達成できるよう準備を整え、繰り返し成果を挙げられるように担当者のモチベーションを高めることができました。
一流のテリトリー管理が必要な理由
「私にとっては担当者全員に同じ面積を割り当てたほうが楽なのではないか?」とまだ思っている人は手を挙げてください (手を下ろしていただいて結構です。こちらからは見えませんから!)地図を定規で仕切ってしまえば簡単です。けれども、「ここで多少手間をかけてもテリトリーを整備しておけば、この先大きな見返りが得られる可能性がある」と考えます。
Salesforce のコマーシャル営業担当 SVP である Adam Gilberd は、時間をかける価値がある理由を次のように概説しています。
「データを使用して、すべての AE に目標達成の平等なチャンスが与えられるようにするのはなぜでしょうか? 第一に、担当者の維持率が高まるためです。数値を達成する人や目標に近づく人が多いほど、AE の離職率が低下します。訓練を受けた担当者の後任を探すことは極めてコストがかかり、場合によっては 50 万ドルから 100 万ドルも要します。2 つ目の理由は、AE 全員の生産性の均衡が保たれるためです。つまり、皆が同様の成果を生み出している場合は、ビジネスの健全性が高まります。心配の種が減り、管理を要する火種も減少します」
均衡が保たれたテリトリーを創出すれば、会社の目標に向けて営業チーム全体を動員することができます。マネージャー間で、失敗のリスクを伴う負荷を均衡に保ちます。そしておそらく最も重要な点は、すべての担当者に成功のチャンスを与えることです。担当者が成功できるように手助けすると考えただけで、心温まる気持ちになりませんか?