顧客ニーズを営業プラクティスの中心に置く
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 顧客中心のエンゲージメントモデルが、組織の営業プラクティスを改善するためにどのように役立つかを説明する。
- 従来のリテールバンキングセールスモデルと顧客中心のアプローチの違いを説明する。
- 顧客中心のリテールバンキングセールス戦略の 5 つの要素を挙げる。
銀行向けの顧客中心エンゲージメントモデル
この「顧客の時代」に、銀行やその他の金融サービス企業は、長い間に確立してきた販売方法から新たなアプローチへとシフトしています。この画期的な変化によって、金融サービス企業は、これまでにないほど顧客との距離を縮めることができます。ただしその一方で、他にも多くの法的、技術的、人口統計的な変化が起きている業種にとって、それは困難なことに思える場合もあります。
そこで Salesforce が役立ちます。Salesforce を使用することによって、銀行は顧客のニーズを中心に周到に作成されたセールス戦略を確立できます。
あらゆる金融サービス分野において、規制は、企業が顧客とやり取りを行う方法の変化を促進する大きな力です。米国の資産管理業界は、アドバイザーが顧客の利益を最優先していることを説明できる新しいテクノロジーを導入しようとしています。ヨーロッパの金融企業は、EU の第 2 次金融商品市場指令 (MIFID II) の一環であるコンプライアンス要件を満たす準備を進めています。Thomson Reuters 社のレポートによると、全世界の金融サービス企業の 69% が、2017 年には義務を果たすためのコンプライアンス予算が増加すると予測しています。
そして、年月が経つにつれて金融サービス企業が変化することを余儀なくさせているのは規制当局だけではありません。顧客もイノベーションを促進する強力な要因です。
2016 年に管理コンサルティング会社 EY が行った調査によると、銀行が中正なアドバイスを提供することを完全に信頼している顧客は 33% にすぎません。2017 年の Salesforce の調査によると、銀行が自分のためを思ってくれているということに強く同意したアメリカ人はたった 26% です。
そこで登場するのが顧客中心のバンキングです。
金融サービス企業は、クロスセルと営業プラクティスにおいて、販売した商品の量に重点を置くという長年の常識を再考しなければならないことを知っています。これからは、顧客満足と顧客維持の達成レベルに重点を置く必要があるのです。銀行が自分たちのインセンティブと顧客の利益を一致させることに成功すれば、はるかに深いレベルで顧客とつながることができ、これまで以上に高い消費者のロイヤルティを勝ち取ることができます。
Salesforce では、古い販売モデルと顧客中心アプローチの 6 つの主要な違いに重点を置いています。では、1 つずつ見ていきましょう。
旧モデル |
顧客中心モデル |
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業務とチャネルにおけるサイロによって、銀行は顧客を完全に知ることができない。 |
企業全体で顧客とのやり取りが単一のビューにまとめられているため、顧客の財務ニーズと財務目標についてのインサイトを得られる。 |
商品中心のアプローチは、営業担当が顧客の本当のニーズに対応する機会を逃す原因となる。 |
ニーズ評価によって、銀行の商品やサービスで対応できる顧客の財務目標を発見できる。 |
量ベースのメトリクスによって、攻撃的で (場合によっては) 不適切な営業行動が助長される。 |
顧客満足度と行動のメトリクスによって、営業担当が各顧客のニーズに合った商品を提案することが促進される。 |
説明責任がしっかり設定されていないため、顧客の関心と一致していない営業行動を特定して対応するのが難しい。 |
同意承認が適用されるため、顧客は商品やサービスが自分の目標と一致していることを必ず確認する。 |
プロセスにつながりがないため、営業担当は顧客の財務ニーズに対するソリューションを提供する機会を逃す。 |
商談とリードをシームレスに管理することによって、一貫性のあるセールスシーケンスを実行できる。 |
データが分断されているために、現場の動向への組織のレスポンス時間が遅くなる。 |
リアルタイムのレポートとインサイトにより、マネージャーは問題をすばやく特定して修正できる。 |
この新しいパラダイムにシフトするために、銀行は、新しいポリシー、インセンティブ、テクノロジーの組み合わせを必要としています。それらを実現すれば、銀行は特定の銀行商品や取引ではなく、顧客のニーズを中心としてセールス戦略を策定できます。そうした戦略は、銀行と顧客の長く続く良好な関係につながります。
顧客中心バンキングの 5 つの要素
Salesforce では、銀行がこの変革を行うために次の 5 つの要素が重要であると考えています。
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インテリジェントな顧客プロファイル: 顧客に関するあらゆることを理解するために役立つやり取りのログを提供します。銀行の営業、サービス、マーケティングチャネルでのやり取りと、それらのやり取りによって表される商談が含まれています。これらのプロファイルは、顧客とその人が本当に必要とする商品やサービスとを結ぶための基盤となります。
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データ分析とインテリジェンス: 個人顧客を対象としたセールスと口座開設プロセスを追跡し、それらがスムーズで簡単であることを確認できます。マネージャーは異常を発見し、修正するための対策を取ることができます。
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セールスガバナンスモデル: 商談を一連の特定のフェーズ間で移動させる一貫したプロセスを提供します。これにより、銀行は顧客の財務ニーズに対して提案したソリューションを顧客が理解し、それに同意する可能性を最大限に高めることができます。
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ニーズ評価と顧客同意プロセス: 顧客のニーズを商品やサービスの適切な組み合わせに一致させます。これにより、顧客は購入した商品やサービスに満足し、エンゲージメントが維持されます。
- 新しいセールスメトリクス: 顧客の維持、口座使用状況、顧客満足度を従業員の報酬目標の基礎として考慮します。
Salesforce Intelligent Customer Success Platform には、銀行が顧客中心のセールス戦略のこれらの 5 つの要素を実現するための機能がいくつかあります。
営業担当は、Salesforce で活動を記録し、既定された一連の ToDo に従うことで、強力なセールスシーケンスを促進し、すべての顧客に高品質な体験を実現できます。さらに、営業担当とマネージャーはダッシュボードを使用してパフォーマンスを監視できます。ダッシュボードでは顧客のニーズ、満足度、口座使用状況に関するリアルタイムのインサイトが提供されます。
さらに Salesforce には、堅牢なニーズ評価機能があり、営業担当はそれに従って見込み客に適切な質問をすることで、見込み客のニーズに最適な商品やサービスの組み合わせを特定できます。追跡可能な取引開始によって、マネージャーは、営業担当がニーズ評価を実行してから、商談が口座開設および入金の最終フェーズまでどのように進行しているかを確認できます。
同意サービスも Salesforce を通じて使用できます。同意サービスでは、顧客が商品やサービスを承認するプロセスを確立し、レポートと監査のためにそれらの承認のログを生成します。これにより銀行は、コンプライアンス要件を満たすことができるとともに、銀行の商品やサービスに対するニーズをはっきりと示し、有効であり続ける可能性が高い顧客を獲得できます。
商談標準化の適用により、銀行員は、特定のフェーズを経由して商談を進める規定されたモデルに従い、顧客に適切な商品やサービスを適切なタイミングで提案できます。
最後に、Sales Cloud Einstein では、インテリジェントでアクション可能な顧客ビューによって潜在的な顧客ニーズを特定できます。また、やり取りが記録されることで、銀行員は顧客との会話の状況を把握することができます。
次は、銀行がこれらの機能をどのように使用して顧客のニーズに最適な金融サービスを提供して顧客を満足させるかを示す具体的なシナリオを紹介します。
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