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適切な契約構成を選択する

学習の目的 

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

  • 最も一般的な 3 つの契約構成を使用する。
  • 高度な契約構成について説明する。

一般的な契約構成の長所と短所

営業担当のスキルを磨く上で、契約構成を理解して適切な構成を選択できるようにすることは、身に付けておくべき重要なスキルです。この単元では、契約構成の選択から顧客との契約条件の合意まで、契約の価格設定全体を取り上げます。 

このトピックを始める前に、いくつかの用語を定義しましょう。 

用語 定義

契約構成

製品に対する顧客のサブスクリプションを定義する規約。通常は、価格、ライセンス数、契約期間が含まれます。

終了年

契約の最後の年。3 年契約であれば 3 年目を意味します。

終了価格

終了年のサブスクリプション価格。価格の強さを評価する場合は、この数字が最も重要です。

ユーザーあたりの月額 (PUPM)

ユーザー 1 人の 1 か月の製品価格。

Salesforce では、単純、段階的有効化、価格ランプという 3 つの構成を主に使用して契約を構成しています。 

契約構成 定義

単純

固定された期間分の固定数のライセンスを固定価格で購入します。 

段階的有効化

特定数のライセンスを購入しますが、何回かに分けて有効化し、料金を一度に支払うのではなく、有効化のたびに支払います。

価格ランプ

固定数のライセンスを購入し、価格は時間の経過と共に上昇します。

では、それぞれの契約構成の詳細、Salesforce での使用例、そして長所と短所について見ていきましょう。(ここではソフトウェアライセンス販売を例として使用していますが、これらの概念はあらゆる商品の販売に応用できます。)

単純契約、段階的有効化契約、価格ランプ契約の構成を並べて比較した画像。

単純契約

単純契約は、名前から推測できるように、かなり単純です。次の式で簡単に表すことができます。

価格 × ユーザー数 × 契約期間

計算してみましょう。Salesforce の顧客である Rad Unlimited が次の契約を希望しているとします。

  • ユーザー 1,000 人分のアクセス
  • 12 か月の契約
  • 1,000 人というユーザー数に基づいたユーザーあたりの月額 (PUPM) 固定価格として $100
  • すべてのユーザーを初日に有効化

必要な計算は「PUPM × ユーザー数 × 期間」です。

したがって、$100 × 1,000 × 12 = $1,200,000 となります。

単純契約では、すべてのユーザーが初日に有効化され、PUPM 価格は固定されています。

追加の割引も、段階的な有効化も、価格の変動もありません。単純契約は、年間契約金額 (ACV) を最大限に高めることができるため、会社にとっては最も好ましいと言えます。

可能なら、お客様との交渉を始めるに当たって、まずは単純契約を提案してみるのも良いでしょう。ただし、お客様が大量購入を検討していて、この構成がお客様のニーズに合わない場合は、他の契約構成の出番となります。

段階的有効化契約

段階的有効化契約では、顧客はユーザーを一度に有効化せずに、段階的に有効化することができます。これによって初期費用を抑えることができます。Salesforce の視点からは、このタイプの契約には 2 つの重要な側面があります。

  • 顧客は、終了年に一定数のユーザーを有効化する必要があります。
  • 1 年目には、終了年でのユーザー数の 50% 以上を有効化することが求められます。

段階的有効化契約は、次のような状況に適しています。

  • 顧客が異なるグループのユーザーに対して異なるタイミングでライセンスが必要な場合。
  • ライセンスが必要なときに支払えば良いという優遇措置を条件として顧客が契約する意志がある場合。
  • 複数年の契約において、顧客が 1 年目や 2 年目に予算の制約がある場合。

段階的有効化契約では、ユーザーは何回かに分けて有効化され、PUPM 価格は固定されています。

先ほどと同じ Rad Unlimited を顧客として段階的有効化契約の例を見てみましょう。

  • 顧客の状況
    • Rad Unlimited では 3 年間で合計 1,000 人分のユーザーを必要としています。
    • 1 年目と 2 年目は、すべてのユーザーをオンボーディングする予算も必要もありません。
    • 合計契約金額 (TCV) を懸念しており、3 年間で 270 万ドルを超えることはできません。
  • 契約情報
    • 1,000 人というユーザー数に基づいたユーザーあたりの月額として $100 を想定します。
    • 初日には 500 人 (終了年でのユーザー数の 50% ) のユーザーを有効化します。
    • 12 か月後に 250 人のユーザーを追加します。
    • 24 か月後にさらに 250 人のユーザーを追加します。
    • 合計ユーザー数は 1,000 人です。
  • 価格の計算
    • 1 年目: 500 人のユーザー × $100 × 12 か月 = $600,000
    • 2 年目: 750 人のユーザー × $100 × 12 か月 = $900,000
    • 3 年目: 1,000 人のユーザー × $100 × 12 か月 = $1,200,000
    • 3 年間の合計契約金額 = $2,700,000

同じ 1000 人のユーザー契約を単純契約で成立させた場合の価格設定は次のようになります。

  • 1,000 人のユーザー × $100/月 × 36 か月 = $3,600,000
  • この例では、合意した段階的有効化日にライセンスを有効化したときにのみ料金を支払うことによって、顧客は100 万ドル近くも節約しています。会社にとってのメリットは、最終的なライセンス料が確約されていることです。

段階的有効化契約はすべての顧客に適しているわけではありません。段階的有効化契約を使用するために満足する必要がある 4 つの条件を見てみましょう。

  • 顧客が希望する製品とエディション、そしてユーザー数を会社が把握している。
  • 時間の経過と共に増える顧客のユーザー数 (概算) を会社が把握している。
  • 1 年目または 2 年目の予算が限られていることを顧客が実証している。
  • 各段階でユーザー数が固定された段階的なロールアウトに顧客が同意している。

将来の予測は不確実であり、数年後にどのくらいの数のライセンスが必要になるのかは顧客にもわかりません。

段階的有効化契約には、特定時期のロールアウトに対する顧客の確約が含まれますが、顧客はスケジュールより早く新しいユーザーをオンボーディングすることもあります。これは、ライセンスの前倒しと呼ばれます。顧客がライセンスを前倒しした場合は、直ちにその分の料金を支払い、残りの契約期間も支払い続けることになります。このシナリオでは会社の ACV は保持されます。

会社の ACV が保持されるもう 1 つの理由は、顧客は確約したライセンスのロールアウトを取り消すことができないということです。確約した合計ライセンス数に基づいてユーザーあたりの価格が設定される代わりに、顧客は契約で合意した日にはロールアウトを実施しなければなりません。会社と顧客にとって単純契約も段階的有効化契約も適さない場合は、もう 1 つの契約構成があります。

価格ランプ契約

価格ランプ契約は、会社にとっては 3 つの構成の中で最もリスクが高いと言えます。価格ランプ契約では、初日にすべてユーザーが製品を使用できるようになりますが、契約の初期には価格が低く設定されています。価格は時間の経過と共に上昇 (ランプアップ) し、通常は契約の最終年 (5 年契約の場合は 3 年目) に上限価格に達します。顧客がこの契約構成を求める理由は、早期にライセンスを使用しつつ費用を抑えるためです。価格ランプを利用した顧客は、次の契約でも再び価格ランプを希望する可能性が高くなります。

価格ランプは、契約の 1 年目の予算が限られている顧客が合計契約金額 (TCV) に懸念がある場合や、契約を前倒ししたい場合に適しています。価格ランプでは 1 年目または 2 年目の収益は減りますが、新規顧客を開拓して、終了年に多くの収益を得ることができます。1 年目には、終了年での平均注文金額 (AOV) の 50% 以上を含めることが求められます。カギは、顧客が各員したロールアウトプランに毎年の価格を合わせることです。

価格ランプを使用する場合は、顧客の全体的な戦略に適合している必要があるため、すべての関係者が揃った状態で見当してください。

価格ランプ契約では、すべてのユーザーが初日に有効化され、PUPM 価格は特定の日ごとに上昇します。

では、価格ランプ契約が Rad Unlimited でどのように機能するかを見てみましょう。

  • 顧客の状況
    • Rad Unlimited では 3 年間で合計 1,000 人分のユーザーを必要としています。
    • 同社では、1,000 人分のライセンスをすぐには必要としていません。また、合計契約金額 (TCV) を懸念しており、3 年間で 270 万ドルを超えることはできません。
    • Rad Unlimited では、まだ正確なタイムラインは確定していませんが、3 年目までには 1,000 人のユーザー全員をロールアウトしようと計画しています。
    • また、実装テスト用にすべてのライセンスを最初に使用できることには価値を見出しています。
  • 契約情報
    • 1,000 人というユーザー数に基づいたユーザーあたりの月額の終了価格として $100。
    • 契約は初日から 1,000 人のユーザーで開始。
    • 初日からの価格は、すべてのユーザーに対してユーザーあたり月額 $50 で開始。
    • すべてのユーザーの価格は、12 か月にユーザーあたり月額 $75 に上昇。
    • すべてのユーザーの価格は、24 か月にユーザーあたり月額 $100 に再び上昇し、3 年契約の終了価格に到達。
  • 価格の計算
    • 1 年目: 1,000 人のユーザー × $50 × 12 か月 = $600,000 (終了年の ACV の 50%)
    • 2 年目: 1,000 人のユーザー × $75 × 12 か月 = $900,000
    • 3 年目: 1,000 人のユーザー × $100 × 12 か月 = $1,200,000
    • 3 年間の合計契約金額 = $2,700,000

今回も、同じ 1,000 人のユーザーで単純契約にした場合よりも TCV は低くなります。単純契約の場合の TCV は $3,600,000 になります。この契約では、Rad Unlimited は 1,000 人分のライセンスを 3 年間フルに利用できます。そのため、多くの面で顧客に有利な契約となっています。

会社の観点から見ると、新規顧客を獲得し、2 年目または 3 年目には十分な終了価格まで引き上げることができるという点が鍵となります。目標は、この終了価格で契約を更新して新しいユーザーを獲得することです。

価格ランプ契約構成を検討する際に考慮すべき条件は次のとおりです。

  • 顧客が希望する製品とエディションを会社が把握している。
  • 会社がライセンスの前倒しを画策している。(つまり、顧客がスケジュールより前倒しで追加のライセンスを購入するように仕向ける。)
  • 顧客の 1 年目の予算または契約の総予算が限られている。
  • 顧客が各フェーズで未知の需要によってロールアウト期間を延長している。

価格ランプ契約はこれらの 4 つの条件がすべて満たされる場合に機能しますが、ACV の視点から言えば、3 つの一般的な契約構成の中で最も好ましくないオプションです。価格ランプを最初に提案することは避けた方が良いでしょう。

まとめ

この単元では、一般的な契約構成について学習しました。どの契約構成にするかが決まっていても、契約成立の前にもう少し調整が必要な場合はどうすれば良いでしょうか? 次の単元では、交渉で与えるものと得るものについて説明します。

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