つながりを築く
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- トランザクションセリングとリレーションシップセリングの違いを説明する。
- お客様とつながるときにセールスストーリーを考案する。
リレーションシップセリングを通してつながりを築く
関係には目もくれず、販売しようと躍起になっていると、いわゆるトランザクションセリングというものに陥る可能性があります。トランザクションセリングとリレーションシップセリングの違いを見てみましょう。
リレーションシップセリングで重視する点:
- 長期的な結果
- 信頼の構築
- 見識の提示
- お客様の価値の創造
トランザクションセリングで重視する点:
- 近視眼的な 1 回限りの取引
- 販売の達成
- 商品
- 価格
リレーションシップセリングは、1 回限りの取引に留まりません。リレーションシップセリングを実践するうちに、他者を紹介してもらえるようになり、リピート客のネットワークが構築され、顧客ロイヤルティを獲得できます。人間関係を重視した販売を行うためには、お客様の視点に立つことが必要です。このプロセスを進めるときは、常にお客様の視点に立って行動します。
セールスストーリーを通してつながりを築く
デール・カーネギーの『ゴールデンブック』には、その不朽の価値と原則が列挙されています。この原則の多くは、リレーションシップセリングの基盤になるものです。デール・カーネギーは、こうした原則をセールスプロセスの各ステップに結び付けています。1 つ目の「つながる」ステップは、「相手に誠実な関心を寄せる」という原則に基づきます。
誠実な関心を寄せるとはどういうことなのでしょうか? 誠実な関心を示すにはどうすればよいのでしょうか? さまざまなやり方がありますが、その 1 つ目はセールスストーリーを伝えることです。
自分とよく似た誰かがあなたの会社のソリューションを使って効果を上げたという実例を見込み客が聞き知れば、あなたの話に耳を傾ける可能性が高まります。数通りのサクセスストーリーを用意しておくと、対応している相手にとって関連性が最も高いものを選択できます。
関連性のあるストーリーを考案する
他のお客様の成功事例を手短に紹介して、相手を引き込みます。端的なストーリーにして、相手の注意を引きます。古今東西、ストーリーテリングは社会の発展に重要な役割を果たしてきました。私たち人間は、特にストーリー性のある情報に耳を傾けます。
ストーリーを語るときは、次の要素を盛り込みます。
- インシデント: 成功事例のお客様がソリューションを実装する前の状況を説明します。
- アクション: 問題を解決するためにそのお客様が行ったこと (あなたのソリューションを使用) を説明します。
- メリット: ソリューションによってどのように問題が解決され、そのお客様がどのような価値を得たかを説明します。
デール・カーネギーでは、こうしたストーリーを「成功の極意」としています。ストーリーは 1 分以内に収めるようにします。1 分を超えると、お客様の気が逸れるおそれがあります。ストーリーは鮮明で、記憶に残り、簡潔で、具体的な行動を喚起するものにします。
クライアントの信頼性ステートメントを作成する
では、セールスストーリーを伝える戦略的なアプローチである「クライアントの信頼性ステートメント」を見てみましょう。このアプローチは 3 つのステップで構成されます。
- つながりを築く: この段階で会話を始めるか、お客様が直面している課題や機会にさりげなく会話を導きます。
- 相手の心を打つ: お客様の気を引く目的で、お客様の要求やニーズに率直な共感を示したり、あなたが解決可能であることがわかっている業界関連の課題に言及したりします。ただし、まだ売り込むことはしません!
- ストーリーを伝える: 似たようなクライアントがどのように効果を上げたか説明し、信頼を築くチャンスをものにします。
ストーリーに信頼性ステートメントを盛り込みます。次の各文を完成させて作成していきます。
相手が望んでいることは...
一緒に取り組むことは...
その結果...
ストーリーの全容は次のようになります。
クライアントの信頼性ステートメントの例 | |
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つながりを築く |
「デール・カーネギー・トレーニングの [XYZ] と申します。私たちは、組織が長期的なビジネスパートナーシップを築けるようにサポートしています。具体的には、御社の営業担当をコンサルタントに変え、関係の構築と維持に取り組むようにします。長期的な関係が構築されれば、御社のお客様が競合他社に乗り替えようとしても、そのコストが高額になります。」 |
相手の心を打つ |
「包括的な戦略ではなく、限定的な戦術に基づいて商品やサービスを販売するだけの営業担当は、関係を維持できず、絶えずパイプラインを活性化しなければならないことが判明しています。」 |
ストーリーを伝える |
サポートできることを示唆する。「御社の営業チームにもこうした問題があるのであれば、私たちがそのチームの発展に向けてお手伝いできる可能性があります。」 移行する。「状況を的確に把握するために、御社の現状と御社が目指す姿についてじっくりお話させていただきたいと考えています。」 |
自然な会話調で話すことを心掛けます。スクリプトを読み上げている、あるいはリハーサルをしているかのように聞こえないようにします。また、お客様の問題の把握に取り組む段階である点に留意します。
その他の考慮事項:
- 「私は...」で始まる文は回避します。
- アプローチする前に実施したリサーチに基づいて、クライアントに適したストーリーに調整します。
- 具体的な結果、特に投資収益率 (ROI) に言及します。
- 直接的で説得力のある言葉を用います。
- 覇気のある言葉が歓迎されないときは、使いすぎないように注意します。
実際に試してみる
「リソース」セクションにリンクが記載されているデール・カーネギーの「Client Credibility Statement (クライアントの信頼性ステートメント)」ワークシートを使用して、ストーリーの作成を練習できます。ストーリーのドラフトを作成したら、同僚などフィードバックをもらえる人を相手に練習します。
次の単元では、クライアントとつながった後、どのように一緒に取り組んでいくか説明します。