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人間中心デザインを検討する

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

  • 人間中心デザイン (HCD) を定義する。
  • ユーザーエクスペリエンスデザインからサービスデザイン、リレーションシップデザインへの HCD の進化について説明する。
  • リレーションシップデザインを定義する。

人間中心デザイン

昨今のビジネス界ではデザインが注目を集めています。チームがデザインを工夫すれば、複雑な問題を解決し、組織横断的なコミュニケーションを促進し、人々のニーズを重視して、適切で快適なカスタマーエクスペリエンスを実現できます。 

私たちの多くが知らず知らずのうちにデザインに取り組んでいます。開発者がチームの生産性を高めるために Salesforce インスタンスを再構築する場合もデザインに取り組んでいます! 誰もが (本当に誰でも) デザインという手法でビジネスや組織を向上させることができます。

ところで、私たちがデザインという場合、何を意味するのでしょうか?

デザインを定義する方法はたくさんありますが、ここではある 1 つの定義に着目します。人間中心デザイン (HCD) は、人々の問題を解決する創造的なアプローチで、まず人々のニーズを特定し、最終的にそのニーズを満たすソリューション (プロダクト、エクスペリエンス、サービス) を創出します。

HCD は、望ましい結果を導く創造的な問題解決手法です。スタンフォード大学のデザイン研究所で考案され、IDEO というデザインエージェントでビジネス価値を生み出す手段として採用されました。デザインプログラムに潤沢な資金を投入して HCD の原則を適用している企業は、同業他社の 2 倍の業績を上げています。最近では、あらゆる業界の企業が社内のデザイン能力の向上に躍起になっています。 

HCD は人々をその中心に据えています。人々はどのような目標を達成しようとしているのか? そのプロセス全体をどのように感じているか? そのプロセスによって目標達成が促進されているか、妨げられているか? 人々の実体験の理解に努めなければ、人々の問題に対処する適切なソリューションを考え出すことはできません。 

HCD では元来、望ましく、実現可能で、実行可能なソリューションを見つけ出すことを目的にしてきました。 

  • 望ましいソリューションとは、人々が実際に求めているということです。
  • 実現可能なソリューションとは、実際に構築できるということです。
  • 実行可能なソリューションとは、組織のビジネスモデルに適合しているということです。

この 3 つの条件を満たしているのが HCD のソリューションということになります。 

では、ビジネスにおいて HCD の原則がどのように適用されてきたのか、今日的な例を見てみましょう。

  • ユーザーエクスペリエンス (UX) デザイン — ユーザーにとって適切で有意義なエクスペリエンスを創出する。
  • サービスデザイン — すべての対応で一貫したユーザーエクスペリエンスやカスタマーエクスペリエンスを創出する。

UX デザインやサービスデザインでは、お客様に対応する人がデザインしているもの、つまりプロダクトやサービスを説明します。HCD はそれがどのようにデザインされるかということです。HCD の手法は以前から UX デザインやサービスデザインに適用されてきました。HCD は柔軟で強力な実践法です。HCD をどのように活用するかは、あなたが何をしたいかによって決まります。 

このままデザインが進化していけば、HCD の用途が個人のエクスペリエンスの先へと広がっていきます。つまり、人々がどのようにつながり、時間をかけてどのようにエンゲージし、コミュニティや社会にどのように組み込まれていくかが検討されるようになります。これをリレーションシップデザインといいます。リレーションシップデザインとは、継続的なエンゲージメントを育み、時間をかけて人々、企業、コミュニティのつながりを強化していくエクスペリエンスを創出することです。

リレーションシップデザインは、サービスデザインと UX デザインを包含する外円です。

このモジュールでは、HCD の進化に伴うリレーションシップデザインの発展、デザインによって各種のリレーションシップを強化する方法、あらゆるロールや職務が実践できるリレーションシップデザインの中核的なマインドセットについて説明します。 

その前に、UX デザインやサービスデザインの基盤である HCD に、リレーションシップデザインがどのように構築されるのか見ていきます。

ユーザーエクスペリエンス (UX) デザイン

UX デザインは、人がプロダクト (通常はデジタルプロダクト) を通じて得られるエクスペリエンスに着目します。UX デザインの目的は、ユーザーの美的感覚、行動、テクノロジー、環境を理解して、プロダクトやサービスのユーザーエクスペリエンスを向上させることです。

たとえば、あなたが待ちに待った休暇を楽しむために空港に向かう準備をしているとします。チェックインの時間になると、航空会社からメールが届きます。メールに記載されたリンクをクリックすると、フライトのチェックインページが開き、そこに [Check In (チェックイン)] という大きなボタンが表示されます。簡単です。このボタンをクリックすると、[Download Your Boarding Pass (搭乗券をダウンロード)] オプションが示されます。わずか数回のクリック操作で、旅立つ準備が整いました。

机に座って、チェックイン済みの搭乗券が表示されているラップトップを見ている人

十分にスムーズなユーザーエクスペリエンスのように思えますが、UX デザイナーは常により良くする方法を模索します。たとえば、航空会社からテキストが届き、チェックインする場合は「1」、しない場合は「2」と返信するよう促すメッセージが記載されていたらどうでしょうか。「1」と返信するだけで、QR コード付きの搭乗券が送られてくるということです。これで完了です。

UX デザインの基盤となる理論は、プロダクトを使用する人々のエクスペリエンスを中心に据えてプロダクトが構想されれば、その価値が高まるというものです。こうした取り組みは人々の行動に基づき、特定の結果へと人々を導きます。

UX デザインで重視する点:

  • 人がプロダクトをどれだけ簡単に使用できるか。
  • 人がプロダクトを使用してタスクをどれだけ迅速に完了できるか。
  • 人がプロダクトとのやりとりをどれだけ楽しめるか。

サービスデザイン

サービスデザインは UX デザインを基盤に、特定のプロダクトの操作だけでなく、企業のあらゆる対応も考慮して構築されます。サービスデザインでは、ユーザーやお客様にインパクトを与える組織のプロセスやシステムに着目し、ジャーニー全体でそのエクスペリエンスが最適化されるようにします。

先ほどのフライトに話を戻すと、チェックイン時のすばらしいユーザーエクスペリエンスはサービスの一端にすぎません。他にもさまざまなデジタル上の対応や実際的な対応によってあなたのエクスペリエンスが向上します。空港に到着したら、荷物を預け入れるために自動チェックイン機に向かいます。機内では、シートベルト着用のサインが消えるとすぐ、搭乗前にスマートフォンから注文しておいた飲み物を客室乗務員が運んできてくれます。前の座席の背もたれに付いているスクリーンで機内エンターテインメントのオプションをクリックし、見入っているうちにあっという間に目的地に到着し、飛行機から降り立ちます。

乗客が飲み物を注文しておくと、客室乗務員が運んできてくれます。

あなたのエクスペリエンスは、簡単なチェックインプロセスだけでなく、さまざまなやりとりで成り立っています。サービスデザインの基盤となる理論は、こうした対応のすべてに効力があり、企業はあらゆる対応を通してあなたのジャーニーが一貫し、できる限り楽しめるものにする必要があるというものです。 

サービスデザインで重視する点:

  • 人がオンラインや対面でやりとりする際、いかに簡単に目的を達成できるか。
  • オンライン、アプリケーション、各種のデバイス、対面など、さまざまなやりとりを通したお客様のブランドエクスペリエンスがいかに一貫しているか。
  • お客様に優れたエクスペリエンスを届けるために、どのように組織化されているか。

リレーションシップデザイン

リレーションシップデザインは、UX デザインとサービスデザインの両方を基盤に構築され、プロダクトやブランドとやりとりする個人より広い範囲に焦点が当てられます。リレーションシップデザインでは、人がその暮らしの中で築いていく他者とのつながり、企業との継続的なリレーションシップ、広範な地域や地球とのリレーションシップを考慮します。 

リレーションシップをデザインするときは、次の目標を念頭に置きます。

  • エンゲージメント — プロダクト、エクスペリエンス、サービスによってブランドとの継続的なエンゲージメントがどのように促進されるか。
  • つながり — 相互につながっている個人、コミュニティ、ブランドをプロダクト、エクスペリエンス、サービスでどのようにサポートするか。
  • 社会的価値 — プロダクト、エクスペリエンス、サービスがすべての人々 (お客様やユーザー以外の人々を含む) や地球にどのようなインパクトを与えるか。

先ほど「HCD のソリューション」と述べましたが、望ましさ、実現可能性、実行可能性が交わる部分に成功が潜んでいます。リレーションシップデザインではこの条件を拡大して、インクルージョン、サステナビリティ、倫理を念頭にプロダクトやサービスが創り出されるようにします。 

  • インクルーシブなソリューションは、多様なアイデンティティ、実体験、能力をもつ人々がプロダクトやエクスペリエンスを利用できます。
  • 持続可能なソリューションは、地球を守る素材や製造過程で作られます。
  • 倫理的なソリューションは、いかなる人にも害を与えることがありません。この対象は、ユーザーやお客様以外の人々や、歴史的に疎外されてきた人々を含みます。

こうした付加的な条件は、組織が市場で長期的な重要性を保つためだけでなく、世の中をより良い場所にするための推進者になるためにも必要です。

では、どのように実践するのでしょうか? よい質問です。先ほどの空の旅に戻りましょう。リレーションシップをサポートし、強化し、促進するようなトラベルエクスペリエンスをデザインする方法はたくさんあります。

  • 一人旅でなければ、予約時に同行者 (家族かどうかは問わない) のフライト確認番号を入力すると、自動的に隣同士の席が割り当てられます。
  • 従来の性別の概念に合致しない場合は、予約時や旅行中、各自のアイデンティティに応じたノンバイナリーの選択肢が表示されるため、男性と女性のどちらかしか選択できないということがありません。
  • 旅先でさまざまな人とつながりたい場合は、航空会社が他の乗客とつながる方法や、興味があれば目的地の人々と交流する方法を用意しています。
  • 空の旅が環境に与える影響を懸念している場合は、座席の背もたれのポケットに入っている「経済的および環境的責任に関する報告書」を読めば、航空会社の運航や、今回の旅のカーボンフットプリントを相殺する方法について知ることができます。
  • 何らかのサービスに不満がある場合は、航空会社の顧客委員会に参加して、万人のためにより良いエクスペリエンスを一緒に創り出すことができます。この報酬は、マイレージサービスのマイル数で支払われます。

機内でおしゃべりをしている乗客、男女共用のトイレに入っていく人、環境への影響に関する報告書を読んでいる乗客

こうしたトラベルエクスペリエンスのデザインでは、個人間、人々とコミュニティ間、人々とブランド間のつながりに焦点が当てられます。旅行中に数々のリレーションシップが築かれています!

リレーションシップデザインがサービスデザインと UX デザインを基盤に構築されていることを学びました。次の単元では、デザインで強化することが可能な各種のリレーションシップを見ていきます。 

リソース

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