誤解を招くグラフの定義
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- グラフの目的を定義して説明する。
- 誤解を招くグラフについて説明する。
始める前に
ソーシャルメディアのフィード、オンラインニュース、そして職場で使用しているビジネスアプリケーションなど、グラフは、あらゆる場所でデータの視覚表現に利用されています。
現代社会ではスピードが命であり、すみやかに意志決定を行ってデータに基づいて行動することが何より重要です。ですが、グラフから導き出される結論について、どのくらいの頻度でその正しさを検討していますか? グラフで表現されている情報を批判的に検証する目に自信はありますか? 身の回りに溢れる日々のデータが増えた今、私たちは自分自身の責任で、データの正確さと、グラフによるデータ表現を慎重に分析する必要があります。
このモジュールでは、グラフで表されたデータによって誤解を招いてしまう一般的な原因とその対策について学習します。グラフのデータを検証する際に着目すべき点とデータを正確に解釈する方法をしっかりと意識することで、自分自身やビジネスに関する意思決定をより確実に行えるようになります。
メモ: データリテラシーのスキルについて感心がある方は、「データリテラシーの開発」トレイルを参照してください。
グラフの目的
まずは基本から始めましょう。Cambridge Dictionary では、グラフを「情報を単純な方法で示した絵図で、その多くは直線や曲線を使用して数量を表す」と定義しています。グラフを使用すれば、未加工のデータをそのまま調べるよりもすばやく、データに潜む関係性やパターンを見つけ出すことができます。データは、グラフの他にもテーブル、ダイアグラム、マップなど、さまざまな手段で表現できます。
たとえば、電気料金の請求書を思い出してください。今月分と先月分の電気使用量がグラフで比較されていませんでしたか? 同じ数字がテーブルで示されるよりも、グラフで表されたほうが注意を引いたのではないでしょうか。
グラフを利用すれば、データを比較したり、トレンドを調べたり、データに基づいた結論を導き出したり、より効率的にデータを活用したりできます。もし 7 月の電気代が跳ね上がっていることに気付いたのなら、その理由や原因を調べるでしょう。そして、8 月はエアコンの使用を控えたり、逆に涼しくなるまでは電気代の予算を増やしたりします。(いずれにしてもアツくならないようにご注意くださいね。😎)
グラフは、職場でも非常に便利なツールとして活躍しています。ビジネスユニットの業務効率を確認したり、イニシアチブの進捗を把握して達成度を評価したりするだけでなく、パフォーマンス管理における人的バイアスの調査にも役立ちます。グラフは、データを調べるのに最適な方向を示してくれます。
「優れた視覚化は質問への回答以上の価値をもたらします。答えを見つけるべき質問が他にもあることを教えてくれるのです。」— Steve Wexler、データ視覚化の専門家であり「The Big Picture」の著者
誤解を招くデータの表現
見ている人に間違った情報を伝えてしまうグラフを意図せずに作成してしまうことがあります。たとえば、グラフを作成した人がデータを理解していても、誤解を招くようなデザインをうっかり選んでしまう場合です。次の棒グラフを見てください。一目見てどう思いますか? すぐに結論を導き出せますか? 中部地域と南部地域では、売上が何倍も違うように見えませんか?
では、次の棒グラフを見てください。
どちらも同じデータを同じ種類のグラフで表しているのですが、縦軸が異なります。このちょっとした違いはどのように影響するのでしょうか?
では 2 つのグラフを並べてみましょう。
左側の棒グラフのベースラインは 0、右側は 39 万ドルです。縦軸の多くの部分がカットされているため、2 つの地域での売上の差が誇張され、中部地域の売上が南部地域の何倍もあるかのように誤解してしまうのです。
日常に溢れる誤解を招くグラフへの対応
グラフを正確に読み取って正しく解釈する方法を身に付けると、誤解を招くグラフが日常に溢れていることに気が付くでしょう。ブログの投稿、新聞記事、ソーシャルメディアの投稿、そして専門家によるプレゼンテーションでさえ、誤解を招くグラフが使われています。
データをより明確かつ正確に表現したいのなら、グラフを確実に読み取って、他の人も同じように読み取れるようにする必要があります。以降の単元では、十分な情報に基づいて適確な判断が下せるように、強い確信を持って正確にグラフを分析するためのフレームワークを提供します。
リソース
- 書籍: Alberto Cairo (2020): How Charts Lie: Getting Smarter About Visual Information,W.W.Norton & Company
- 書籍: Alberto Cairo (2016): The Truthful Art: Data, Charts, and Maps for Communication, New Riders Publishing
- 書籍: Stephen Few (2012): Show Me the Numbers: Designing Tables and Graphs to Enlighten, Analytics Press