いろいろなプロンプト手法を利用してプロンプトを改善しましょう。
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 関連するコンテキストを使用してプロンプトを強化し、人工知能 (AI) の出力を改善する。
- AI エージェントが正確に問題を解決できるように、思考のステップを指示する。
- プロンプトのライフサイクルにおけるステップを概説する。
エージェントと連携して作業する際に、あらゆるプロフェッショナルにとって特に重要なスキルの 1 つがプロンプトエンジニアリングです。エージェントや、その基盤となる大規模言語モデル (LLM) は、人間の自然な話し方や表現に反応するよう設計されていますが、より良い結果を引き出すには工夫が必要です。高度なプロンプトエンジニアリングの戦略を身に付ければ、人工生成知能 (AGI) を単独で使用するレベルから、ニーズに応じて進化するビジネス規模のソリューションへとステップアップすることができます
ゼロショットプロンプト
プロンプトを強化するのは、それほど難しいことではありません。ただし、まずはどの種類のプロンプトを使用すべきかを知っておく必要があります。ゼロショットプロンプトは、ダイレクトプロンプトとも呼ばれ、初めて AI を使用する人が思い浮かべるプロンプトの代表的な例です。これは、追加のコンテキストや例を一切与えず、モデルに直接的な指示を与える方法です。たとえば、クリエイティブなプロジェクトのアイデアを出したり、Web サイトの要約を作成したりといった作業では、このような手法でも十分な出力が得られる場合があります。
以下は、ゼロショットプロンプトの例です。
- この会議の書き起こしを要約し、参加者ごとのアクションステップを一覧にしてください。
- Web サイトが更新されたときにプッシュ通知を送信するコードブロックを作成してください。
ただし、具体的かつ実行可能なタスクになると、ゼロショットプロンプトでは、モデルに与える枠組みが広すぎて、有用な結果が得られない場合があります。フューショット、CoT、ロールベースのプロンプトといった手法を使用することで、AI の能力をさらに引き出すことができます。
フューショットプロンプト
フューショットプロンプトは、AI に完了して欲しいタスクの例をいくつか提示する手法です。プロンプトで例を示すことにより、AI はパターンを学習し、それに沿った結果を出力します。
Salesforce レコード、自動生成されたメールの下書き、ケースの要約、カスタムフローなど、構造やスタイルが重要となる場面で特に有効です。
使用するケース
フューショットプロンプトは次のような場合に使用します。
- 特定の出力形式が必要な場合
- AI に特定のトーン、構造、またはスタイルを模倣させたい場合
- タスクが複雑または特定のドメインに特化している場合 (たとえば、顧客サポートケースを自社のスタイルで要約するなど)
例: Salesforce サポートのユースケースにおけるフューショットプロンプト
Salesforce でサポートケースの要約を支援する AI を活用したアシスタントを構築しているとします。このアシスタントには、課題、解決策、次のステップという形式でケースを要約して欲しいと考えています。
この場合のフューショットプロンプトは次のように記述します。
プロンプト
You’re a Salesforce support agent. (あなたは Salesforce のサポートエージェントです。)Based on the case information, write a concise summary in this format: (ケース情報に基づき、以下の形式で簡潔な要約を書いてください。)
Case: Resolution: Next Steps (ケース: 解決策: 次のステップ)
例 |
詳細 |
---|---|
例 1 |
ケース: 顧客が、モバイルデバイスでダッシュボードが読み込まれないと報告しています。 解決策: ブラウザーのキャッシュをクリアし、ダッシュボードのモバイル互換設定を確認しました。 次のステップ: 動作を確認するため、2 日後にフォローアップします。 |
例 2 |
ケース: ユーザーがセルフサービスポータルでパスワードをリセットできません。 解決策: ユーザーのパスワードを手動でリセットし、ポータルの設定を更新しました。 次のステップ: ほかのユーザーでも同様の問題が発生しないかを監視します。 |
次のケースを要約してください |
ケース: クライアントが Experience Cloud サイトで大容量ファイル (> 20MB) をアップロードできません。 AI 応答の例 (期待される出力) 解決策: サイト設定でファイルアップロードのサイズ制限を調整し、大容量ファイルのサポートを有効にしました。 次のステップ: クライアントに更新を通知し、週末までに正常にアップロードできることを確認します。 |
CoT プロンプト
CoT (Chain-of-thought: 思考の連鎖) プロンプトは、AI が回答を出す前に「考えを言語化しながら進める」ように促す手法です。すぐに回答を出すのではなく、モデルが途中のステップや推論をたどることで、特に複数の手順が必要なタスクや論理性が求められるタスクにおいて、精度が向上します。
リードの評価、ケースの割り当て、予測など、推論が重要となる Salesforce のシナリオで特に効果を発揮します。
CoT プロンプトが適している場面の例をいくつか挙げます。
- 回答の前に、AI にその推論過程を説明させたい場合。
- レコードの条件確認やビジネスロジックの評価など、複数の手順を含むタスクを実行する場合。
- AI の応答をデバッグしていて、思考の過程を可視化したい場合。
プロンプトの例: リード評価における CoT プロンプト
この例では、営業担当が Salesforce レコードの項目に基づいてリードを評価するためのカスタム GPT (Generative Pre-trained Transformer) アクションを構築しています。リードを Hot (見込み有り)、Warm (将来見込み有り)、Cold (見込み無し) のいずれかに分類する前に、モデルに段階的な熟考を促したいと考えています。
プロンプト
You’re an assistant helping a sales rep qualify a lead. (あなたは営業担当を支援するアシスタントです。)Think step-by-step before assigning a status of Hot, Warm, or Cold based on: (以下の情報に基づいて、段階的に熟考してから、見込み有り、将来見込み有り、見込み無しのいずれかの状況を割り当ててください。)
- リードソース
- Industry
- 予算
- 購入タイムライン
例 |
詳細 |
---|---|
例 1 |
リードソース: 紹介 | 業種: テクノロジー | 予算: $80,000 | タイムライン: 1 か月 評価の理由: 紹介元は強い意欲を示している。テクノロジー企業は短期間での成果につながるケースが多い。予算は高く、タイムラインは短い。 評価: 見込み有り |
例 2 |
リードソース: Web | 業種: 非営利 | 予算: $5,000 | タイムライン: 6 か月 評価の理由: Web リードは、緊急性が伴わない限り見込み無しのことが多い。予算は少額で、タイムラインも先。 評価: 見込み無し |
このリードを評価してください |
リードソース: イベント | 業種: ヘルスケア | 予算: $25,000 | タイムライン: 2 か月 AI 応答 (期待される出力) 評価の理由: イベントリードは、特に対面で参加したイベントの場合は関心が高い。ヘルスケアは安定した業種である。予算は適切で、タイムラインも妥当。 評価: 将来見込み有り |
ロールベースのプロンプト
ロールベースのプロンプトは、AI に特定のロールやペルソナを割り当ててからタスクを実行させる手法です。これにより、日常の業務で Salesforce ユーザーが振る舞うのと同じように、モデルはそのロールに合わせたトーン、専門性、意思決定スタイルを再現できます。
ロールを明確に定義すると、AI は次のことができるようになります。
- 職務に固有の言葉づかいや行動を模倣する。
- そのユーザーの視点からタスクを理解する。
- より関連性が高く、正確で、人間らしい出力を生成する。
ロールベースのプロンプトは、組織の動的データと組み合わせることで、さらにパワーアップします。{{Contact.FirstName}}
や {{Case.Subject}}
のような差し込み項目を使用してプロンプトをパーソナライズしてみましょう。
ロールベースのプロンプトを使用する場面をいくつか紹介します。
- AI に特定の Salesforce ペルソナ (例: 営業担当、サービスエージェント、システム管理者) のトーンや意思決定を模倣させたい場合。
- カスタマーリレーション管理のベストプラクティス、主要業績評価指標、ワークフローなど、ビジネスコンテキストに依存するタスクに取り組んでいる場合。
- Slack、フロー、Apex インテグレーションを使用してカスタム指示で AI アシスタントを構築している場合。
プロンプトの例: 営業コンテキストにおけるロールベースのプロンプト
このシナリオでは、ディスカバリーのための電話の後に、営業担当がフォローアップメールを作成するのを支援する GPT 搭載アシスタントを構築します。
AI には Salesforce アカウントエグゼクティブの考え方とトーンを採用させたいと考えています。
プロンプト
Act as a Salesforce account executive. (Salesforce アカウントエグゼクティブとして行動してください。)You’ve just had a discovery call with a prospective customer. (あなたは、見込み顧客とのディスカバリーのための電話を終えたばかりです。)Draft a follow-up email that: (次の内容でフォローアップメールを作成してください。)
- Recaps the key pain points (主要な課題を要約する)
- Highlights how Salesforce can help (Salesforce がどのように役立つかを強調する)
- Includes a CTA for the next meeting (次回のミーティングに向けた CTA を含める)
Use a tone that’s professional, confident, and focused on value. (プロフェッショナルで自信があり、価値に焦点を当てたトーンを使用してください。)
通話の詳細:
- 顧客は営業とサービスの間でデータが分断されていることに苦労しています。
- スプレッドシートとレガシーツールを使用しています。
- チーム間のコラボレーションと可視性を改善することに関心があります。
AI 応答の例 (期待される出力)
Subject: Next Steps on Connecting Your Sales & Service Teams (件名: 営業チームとサービスチームの接続に関する次のステップ)
Hi [Customer Name], ([顧客名] 様)
Great speaking with you earlier! (本日はお時間をいただき、ありがとうございました。)I appreciated learning more about the challenges your team is facing, especially around disconnected systems and the reliance on spreadsheets. (チームの皆様が直面されている課題、特にシステムの分断やスプレッドシートへの依存について、率直なご意見をお伺いできて大変参考になりました。)
As we discussed, Salesforce Customer 360 can help unify your sales and service data in one platform—giving your teams real-time visibility and making collaboration seamless. (お伝えしましたように、Salesforce Customer 360 をご活用いただくことで、営業・サービスのデータを 1 つのプラットフォーム上で統合し、リアルタイムでの可視化と円滑なコラボレーションを実現することができます。)
Let’s schedule a follow-up to explore how this could look in your environment. (貴社の環境でどのように活用いただけるかをさらに検討するために、ぜひフォローアップのご予定を調整できればと思っております。)How’s your availability early next week? (来週前半でご都合のよい日時がございましたらお知らせください。)
Best, (今後ともどうぞよろしくお願いいたします。)
[自分の名前]
Salesforce アカウントエグゼクティブ
会話プロンプト
非常に効果的なプロンプトを使用すると、単に指示を与えるだけでなく、会話を生み出すことさえあります。会話プロンプトは、AI に対して、人間の Salesforce エージェントやユーザーが同僚、顧客、システムとやり取りするときの対話を模倣させる手法です。このプロンプトスタイルは、より人間らしく、コンテキストに即した、自然なやり取りを促し、その結果としてより細やかで有用な応答につながります。
ゼロショットやフューショットプロンプトのように静的な指示や例を提示するのではなく、会話プロンプトは双方向のやり取りを通して AI の振る舞いを形成します。Agentforce で対話的なやり取りを実現したり、段階的に顧客をガイドしたり、入力に応じて適応したりする AI 搭載フローを構築する場合には特に有効です。
会話プロンプトが役に立つのは、次のようなケースです。
- AI に単なるツールではなく、思慮深い協働者のように振る舞わせたい場合。
- Slack、ボット、ガイド付きエクスペリエンス向けにチャットベースのフローを構築する場合。
- 入力が変化するのに応じて AI が応答する、動的な複数ターンの対話を実現したい場合。
- 社内の Q&A、トレーニング、コーチングの会話をシミュレーションしたり置き換えたりしたい場合。
プロンプトの例:
新しい Salesforce システム管理者が、最初の組織を設定する際にユーザーをガイドするフローを構築しているとします。すべての情報を一度に提供するのではなく、AI がユーザーに段階的に質問し、選択肢を提示し、リアルタイムのオンボーディングセッションのような体験を提供します。
プロンプト:
You’re a helpful Salesforce onboarding assistant. (あなたは有能な Salesforce オンボーディングアシスタントです。)Ask clarifying questions, walk the user through setup tasks step-by-step, and offer suggestions when needed. (ニーズを明確化するための質問を出すことで、ユーザーの設定作業を段階的にガイドし、必要に応じて選択肢を提案してください。)Make the experience feel like a live conversation. (ユーザーが体験を人間との会話のように感じるようにしてください。)
AI の出力例 (期待される出力):
Hi there! (こんにちは。)Welcome to Salesforce! (Salesforce をご利用いただきありがとうございます。)I’m here to help you get your org set up. (組織の設定をお手伝いします。)
First things first: are you planning to use Salesforce mainly for Sales, Service, or both? (最初にお尋ねしますが、Salesforce を使用する主な目的は営業とサービスのどちらですか? もしくはその両方でしょうか?)
(ユーザーが「営業」と回答した場合)
Great! (かしこまりました。)Let’s start by setting up your lead and opportunity stages. (それでは、リードと商談のフェーズを設定するところから始めましょう。)Do you already have a defined sales process, or would you like to use Salesforce’s default pipeline to begin with? (すでに定義済みの営業プロセスはありますか? それとも Salesforce のデフォルトのパイプラインを使用しますか?)
反事実プロンプト
反事実プロンプトでは、もし状況が異なっていたらどうなっていたかという「別の現実」を AI に推論させます。この手法は、仮定の変更を想定しながらシナリオを評価したり、結果を説明したり、改善策を提案させたいときに役立ちます。
Salesforce では、意思決定を導いたり、失敗したプロセスのトラブルシューティングを行ったり、ビジネス上の変更の影響をシミュレーションしたりする強力な手段となります。また、コーチング、振り返り分析、シナリオプランニングにおいても有効な方法です。
反事実プロンプトを使用する状況は次のとおりです。
- レコード、商談、キャンペーンが期待通りに機能しなかった理由をトラブルシューティングしたい場合。
- 何が起こり得たかを前提に、AI に最適化案を提案させたい場合。
- 将来の成果を向上させるために、ユーザーをコーチングしたり、過去のケースを分析したい場合。
- チームが戦略やリスクを検討できるように、シミュレーションを構築したい場合。
プロンプトの例:
営業マネージャーによる営業担当のコーチングを支援する、AI を活用したアシスタントを構築するとします。AI に不成立商談を分析させ、重要な要因が異なっていた場合に結果がどう変わっていたかを提案させたいと考えています。
プロンプト:
You’re a sales coach analyzing lost opportunities. (あなたは不成立商談を分析するセールスコーチです。)Based on the opportunity data, explain why the deal was lost—and then offer a counterfactual scenario: what could have changed to win the deal? (商談データに基づいて、なぜ商談が不成立になったのかを説明してください。そのうえで、反事実のシナリオを提示してください。つまり、商談を成立させるために何を変える必要があったかを示してください。)
入力の詳細:
商談: 不成立
商談規模: $45,000
完了予定日: 予定より 2 週間遅れ
意志決定者: 関与せず
競合他社: BigDigital
主なオブジェクション: プラットフォームが複雑すぎると感じられた
営業メモ: デモでは成果ではなく機能に重点が置かれていた
AI 応答の例 (期待される出力):
The deal was lost primarily because the decision maker wasn’t engaged during the buying process, and the demo emphasized features rather than outcomes—making the product seem complex and less accessible. (この商談が不成立になった主な理由は、購買プロセスにおいて意思決定者が関与しておらず、デモでも成果ではなく機能に重点が置かれていたため、製品が複雑で扱いにくい印象を与えてしまったことです。)
反事実のシナリオ:
If the decision maker had been involved earlier—and the demo had focused on business impact rather than product depth—the customer might have seen more value and alignment. (もし意思決定者がもっと早い段階で関与しており、デモが製品の詳細ではなくビジネスへの影響に重点を置いていたなら、顧客はより高い価値や整合性を感じられたかもしれません。)A simplified, outcome-focused presentation could have improved buy-in and potentially secured the deal. (シンプルで成果に焦点を当てたプレゼンテーションにしていれば、賛同を得やすくなり、商談が成立していた可能性もあります。)
クリエイティブプロンプト
クリエイティブプロンプトは、AI が独創的で想像力に富んだ、またはスタイル的に魅力的なコンテンツを生成するのに役立ちます。キャンペーン名のブレインストーミングやイベントテーマの草案作成、注目を集める件名の作成など、クリエイティブプロンプトを使えば、AI の生成力を存分に発揮させることができます。
Salesforce においては、クリエイティブプロンプトはマーケティング、ブランド開発、社内コミュニケーション、エクスペリエンスデザインなどの用途で活躍します。オリジナリティが効果を高める場面で特に効果を発揮します。
クリエイティブプロンプトを使用する状況は次のとおりです。
- ネーミング、スローガン、見出し、コンセプトなど、新しいアイデアが必要な場合。
- トーン、テーマ、ブランドパーソナリティを持ったコンテンツを作成する場合。
- 白紙状態を打破し、バリエーションやインスピレーションが欲しい場合。
- マーケティング、イネーブルメント、コミュニケーションなどのチームを支援する場合。
例:
顧客ロイヤルティと長期的な関係に焦点を当てた今後の Salesforce キャンペーンについて、マーケティング担当者が名前をブレインストーミングできるようにする AI アシスタントを構築するとします。Salesforce のトーンに合った、思慮深くブランドに即したアイデアを生成するように AI に求めたいと考えています。
プロンプトの例
Act as a creative marketer at Salesforce. (Salesforce のクリエイティブなマーケティング担当者としてふるまってください。)Generate 5 name ideas for a customer loyalty campaign that emphasizes connection, trust, and long-term partnership. (つながり、信頼、長期的なパートナーシップを重視した顧客ロイヤルティキャンペーンの名称を考えて 5 つ提案してください。)Make them engaging, brand-aligned, and suitable for use in digital and event marketing. (デジタルおよびイベントマーケティングで使用できるような、魅力的でブランドに即した名称にしてください。)
AI 応答の例 (期待される出力):
- Forever Forward (進み続ける力)
- Trailblazer Together (共に切り拓く)
- Built to Last (続く、つながる)
- Trusted by Design (信頼は設計から)
- Momentum Matters (勢いが未来を動かす)
プロンプトのライフサイクル
プロンプトは自然言語として記述されるため、単なる文章作成や言語の作業だと考えてしまいがちです。たしかに、言語力を高めればプロンプトの作成に役立つこともありますが、それだけでは結果の改善にはつながらないこともあります。というのも、プロンプトの作成にはより深い理解が必要であり、出力だけでなくシステムのしくみに基づいたルールを理解する姿勢が求められるからです。サッカーに例えるなら、単にボールをうまく蹴ることと、フィールドを読み、プレーを組み立て、試合のテンポをコントロールすることの違いのようなものです。ゴールをどう決めるかだけを考えるのではなく、試合全体の流れや仕組みを見極める視点が求められるのです。
ソフトウェア開発や製品管理のプロセスと同様に、プロンプトにもライフサイクルがあり、それがビジネスにおける長期的な価値を左右します。
再利用したいプロンプトについては、以下の点を考慮してください。
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開発: ビジネスニーズに基づいてプロンプトを計画し、プロンプトビルダー、プロンプトテンプレート、モデル API、プラットフォームツールなどを利用して作成します。
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テスト: 作成したプロンプトを実行し、期待する目標と比較して、どのように機能するかを確認します。
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監視: プロンプトが使用可能な状態になったら、Data Cloud の AI レポートや Einstein Trust Layer などのソースから得られるセキュリティと分析情報を活用して、プロンプトがビジネスに与える影響を包括的に把握します。
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反復: これまでのステップで得た知見をもとに、パフォーマンスや精度を改善するための調整を行います。プロンプトテンプレートを使用すれば、フィードバックデータに基づいて新しいバージョンを作成できるため、複雑なプロンプトを毎回作り直す手間が省けます。
プロンプト作成のベストプラクティス
プロンプトの通常のライフサイクルに加えて、エージェント型 AI をより高度に活用していくうえで成功に導いてくれるベストプラクティスもあります。
ユースケースをタスクに分割する可能な限り、ユースケースを見直して、より扱いやすいサブタスクに分割できないかを検討してください。複雑な処理を小さなプロンプトに分解できるようになればなるほど、改善すべきポイントを見つけやすくなり、全体としての価値を高めることができます。
入力を定義するLLM はコンテキストを重視します。コンテキストが多ければ多いほど、より適切に機能します。たとえば、求めるコンテンツに近いトーンの例や、適切な応答の長さ、人間が作成した類似コンテンツを提示することで、より良い結果を得ることができます。また、できるだけ具体的に指示することも重要です。たとえば、「リゾート向けのマーケティングコピーを生成して」と依頼するよりも、「カリフォルニアにあるリラックスした雰囲気の家族向けビーチリゾート向けに、ユーモラスなトーンのマーケティングコピーを生成して」と依頼する方が、より効果的です。
効果的なプロンプトに頼るうまく機能するプロンプトが見つかったら、そのプロンプトで役立つユースケースを保存するリポジトリを用意しましょう。そうすることで自分自身やほかのエンジニアの時間を節約できるだけでなく、新しいプロンプトを開発する人にとっての出発点としても活用できます。
プロンプトについて最も重要なことは、AI を使ってタスクを実行したいときに、毎回ゼロから作り直す必要はないという点です。ユースケースが高度になるにつれて、ここで紹介したベストプラクティスが課題への対応や効率的なスケーリングに役立ちます。高度なプロンプトエンジニアリングのスキルを試す最も効果的な方法は、実際に使用してみることです。
次のユニットに進んで、プロンプトビルダーで学んだテクニックを実践しましょう。
テストのシナリオ
Janina は、全国規模の大手小売チェーンで在庫管理を担当しています。彼女は AI を活用して、今シーズンのホリデー商戦に向けた在庫ニーズを予測しようとしています。まず昨年の販売データを確認し、次に今年のプロモーションとサプライチェーンの遅延を分析し、最終的にカテゴリ別の需要を予測するように AI に依頼しました。