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プロジェクト管理手法について知識を深める

学習の目的

このモジュールを完了すると、次のことができるようになります。

  • プロジェクト管理手法を定義する。
  • 従来型とアジャイル型の違いを説明する。
  • プロジェクトに適したプロジェクト管理手法を選択する。

プロジェクト管理手法とは?

秤のアイコンと「手法: 従来型とアジャイル型」という文言が示された図

今までに次のような経験をしたことはありませんか? 美しい家や超高層ビルを見て、どのように建てられたのだろうかと不思議に思ったこと、巧みに演出された社交行事に出席し、主催者がどのように成功させたのかを知りたいと思ったこと、スマートフォンで優れたアプリケーションを使用していて、それがどのように開発、立ち上げられたのかと思案したこと。 

このような偉業はどれも、プロジェクト管理の賜物です。イベントの主催者も建築者も当時はそのことを自覚していなかったかもしれませんが、プロジェクト管理を行っていました。つまり、プロジェクトの活動に、何らかのアプローチや方法を適用していました。

プロジェクト管理の方法、または手法とは、プロジェクトの管理を導く一連の原則と慣行です。手法は、プロジェクトマネージャーが活動の決定、行動の確立、意思決定を行うのに役立つフレームワークとなります。Walden University では、「同じようなプロジェクトは 2 つとないため、あらゆるケースに使用できる究極のプロジェクト管理手法が存在していないことは当然だ」と教えています。実際に、多くの手法が存在しています。

ウォーターフォールとアジャイルの比較

「ウォーターフォールとアジャイルの比較」というタイトルが付けられ、ウォーターフォール型のプロセスを表す積み重ねられた長方形とアジャイル型のプロセスを表すループが示された図。

ウォーターフォールは、より従来型の手法です。要件の明確な定義付け、綿密な計画と文書化、1 つのデリバリーまたは結果の実現に焦点を合わせ、線形で連続する定義済みステップに沿って進みます。たとえば、超高層ビルの建築は、デザインから始まり、ブループリント、着工、基礎工事、骨組みなどと続いていきます。次のステップに移る前に各ステップを完了する必要があります。  

アジャイルは、より現代的な手法です。徐々に要件を練り、計画と実行を反復的に行い、成果または結果を漸進的に実現することに焦点を合わせています。機能が限られているアプリケーションを思い浮かべてみてください。時間の経過と共に新たな機能が追加され、顧客がフィードバックを行い、バグが修正され、また新たな機能が追加されます。このようなサイクルが続いていきます。

次の表には、相違点がわかりやすくまとめられています。

ウォーターフォール アジャイル
  • 要件は明確に定義される
  • 計画と文書化は綿密に行われる
  • 成果または結果は 1 回提供される
  • 計画時と主要なマイルストーンでステークホルダーが関与する
  • 時間とコストは計画フェーズで決定される
  • プロジェクトのリスクはプロジェクト早期に定義される
  • 変更は慎重に管理される
  • 要件は徐々に練られる
  • 計画と実行は反復的に行われる
  • 成果または結果は漸進的に提供される
  • プロジェクト全体を通してステークホルダーが関与する
  • 時間とコストは要件が練られる中で定義、調整される
  • プロジェクトのリスクはプロジェクト全体を通して定義、調整される
  • 計画サイクルと実行サイクルでの変更の発生は想定されており、取り入れられる

それでは、それぞれを詳しく見てみましょう。

従来型のプロジェクト管理: お願い、変更はやめて

ウォーターフォール型のアプローチでは、すべての要件を事前に把握することで、プロジェクトの成果または期待される結果を作業開始前に完全に定義できると想定されています。すべての計画は最初に行われ、包括的なプロジェクト管理計画に文書化されます。 

プロジェクトマネージャーはプロジェクトの計画時にスポンサーと主要ステークホルダーと関わり、主要なマイルストーンでも進捗情報とパフォーマンスの確認に関与してもらいます。計画フェーズではスケジュールの設定とコストの見積もりも行い、実行時に厳密に管理します。 

プロジェクトマネージャーは、計画フェーズ中にプロジェクトに関するリスクの特定と分析も行います。リスクは、通常、リスク登録簿に文書化し、各リスクの発生確率、リスク発生時の影響、各リスクに取り得る 1 つ以上の対応を記載します。変更が発生することは想定されておらず、むしろ回避されます。

つまり、従来型のウォーターフォールアプローチでは、実行フェーズでの変更を最低限に抑えるために、事前の計画をしっかりと行います。

従来型のプロジェクト管理の長所と短所を比較する

従来型のプロジェクト管理アプローチでは、綿密な計画と文書化が要求されるということもあって、構造化と予測性の利点が得られます。このアプローチは、建設などの長期的で複雑なプロジェクトを促進します。

以下に、長所と短所を示します。

従来型のプロジェクト管理

プラス面

マイナス面

  • プロセスは構造化され、予測可能である
  • 計画と文書化は綿密に行われる
  • 計画時と主要なマイルストーンでステークホルダーが関与する
  • 時間とコストは計画フェーズで決定される
  • プロジェクトのリスクは計画フェーズで定義される
  • 変更は慎重に管理される
  • 成果または結果はプロジェクトの終了時に 1 回提供される
  • プロセスは柔軟性に欠ける
  • 要件は既知かつ確定済みと想定されている。変更は回避される
  • 文書化は時間がかかり、顧客への付加価値を生まない
  • ステークホルダーの関与は最小限である
  • 時間とコストは、完成済みの正確な計画に依存している
  • 新しいリスクや未計画のリスクに簡単に対応できない
  • 変更事項は正式にレビュー、承認する必要がある
  • 最終的な成果物に顧客が満足しないリスクがある

アジャイル型のプロジェクト管理: 変更? どうぞ!

アジャイルは、柔軟性の高い顧客中心のプロジェクト管理アプローチをサポートする手法を包括的に表す用語です。ソフトウェア開発プロジェクトの失敗という問題に対処するために経験豊富なソフトウェア開発者らによって考案されたアジャイル宣言に定められているアジャイルの価値と原則の特徴を共有しています。 

アジャイル型のプロジェクト管理 (適応型アプローチとも呼ばれています) は、本質的に反復的な手法と言えます。プロジェクトマネージャーは、プロジェクトが進行していく中で要件を練っていきます。プロジェクトの成果または期待される結果は、計画と実行の短いサイクル (イテレーション) から提供されます。 

プロジェクトマネージャーは、プロジェクト全体を通してスポンサーおよび主要ステークホルダーと関わります。プロジェクトチームと共に期待事項を反復して継続的に要件の定義付けと調整を行ううえで、スポンサーとステークホルダーが重要な役割を果たすことを期待しています。プロジェクトマネージャーは、要件が変化していく中で、時間とコストに関する見積もりの定義、調整も行います。 

プロジェクトマネージャーは、新しいリスクの特定や特定済みのリスクの対処、削除が行われる各サイクルでリスク管理を行います。計画サイクルと実行サイクルでの変更の発生は想定されており、新規要件または更新要件として取り入れられます。

一般的なアジャイル手法について知る

特によく使用される 3 つのアジャイル手法は、スクラム、リーン、カンバンです。

スクラム 

  • プロジェクトの成果と結果を反復的に提供するフレームワークである。
  • 多くの場合、ソフトウェア開発プロジェクトで使用される。
  • 動くソフトウェアを漸進的にリリースする。
  • チームとステークホルダーで高度なコラボレーションが行われる。
  • わかりやすい、スケーラブルな方法である。

リーン

  • 効率性と価値を実現するという製造業のリーンの原則を適用する。
  • 非生産的なタスクに関連する無駄を省くことを重視する。
  • チームリソースを効率的に使用する。
  • 段階的なアプローチでデリバリースピードを加速化する。
  • 意思決定の権限でチームを強化する。

カンバン

  • 質の高いプロジェクト成果を継続的に実現する。
  • 通常 3 つのセクション (To Do、Doing、Done) に分けられたカンバンボードによる視覚的なワークフローアプローチである。
  • フィードバックループによってコラボレーションが改善する。
  • 進行中の作業を最適化する。
  • 高度なコラボレーションが行われる効率的なプロジェクトチームを実現する。

アジャイル型のプロジェクト管理の長所と短所を比較する

アジャイルアプローチでプロジェクト管理を行えば、柔軟性と適応性の高い開発プロセスと反復的な計画の利点を得ることができます。このアプローチは、ソフトウェア開発など、頻繁に変更される可能性がある環境のプロジェクトを促進します。

アジャイル型のプロジェクト管理

プラス面

マイナス面

  • 開発プロセスは柔軟性と適応性が高い
  • 計画と実行は反復的なサイクルで行われる
  • 要件は徐々に練られる
  • 計画サイクルと実行サイクルでステークホルダーが実際に関与する
  • 時間とコストはイテレーション中に定義、調整される
  • 計画サイクルと実行サイクルでの変更の発生は想定されており、取り入れられる
  • 成果または結果は漸進的に提供される
  • 焦点を絞れないリスクがある
  • 変更の文化を要する
  • チームメンバーが同じ場所に集まって活動する場合、最適に機能する
  • 反復サイクル時の変更により、時間とコストが増えるリスクがある
  • プロジェクト全体のスケジュールと予算を決定しにくい
  • 漸進的なデリバリーにより製品が断片的になるリスクがある

選択する

従来型のプロジェクト管理は、次のプロジェクトに最適です。

  • 小規模で予測可能である。
  • 範囲、時間、コストの要件が確定している。
  • プロジェクトの開始後、ステークホルダーからのフィードバックに大きく左右されない。

アジャイル型のプロジェクト管理は、次のプロジェクトに最適です。

  • 大規模で複雑度が高い。
  • 範囲を柔軟に変更できることが求められる。
  • プロジェクト全体を通してステークホルダーからのフィードバックに大きく左右される。
  • 迅速な開発を最優先する必要がある。

上記のリストは、取り組んでいるプロジェクトの対象がソフトウェア、サービス、または物理的な製品であるかどうかは関係ありません。アジャイル型は主にソフトウェアプロジェクト向けだと言われていますが、ソフトウェア以外のプロジェクトにも適用できます。次の単元では、Walden University がその理由を説明します。

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