特別価格項目を使用する状況について学ぶ
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 価格ルールの対象にしても安全な価格項目と価格以外の項目を特定する。
- 再帰的な計算を実行しない価格ルールを作成する。
- 特別価格項目を対象とするルールを作成する。
対象とする 2 つの価格
単元 1 で説明したように、Salesforce CPQ には価格を調整するための標準ツールが多数あるため、そのツールに特化した 3 つのバッジが提供されています。
- Pricing Methods for Salesforce CPQ (Salesforce CPQ の価格方式)
- Discounting Tools in Salesforce CPQ (Salesforce CPQ の割引ツール)
- Subscription Pricing in Salesforce CPQ (Salesforce CPQ のサブスクリプション価格設定)
CPQ では、どのようにして顧客に対する最終価格 (正価とも呼ばれる) に至ったかを追跡するために、特定の調整を表す多くの仲介項目が使用されます。たとえば、定価は割引率表に基づく調整を表し、見積品目がサブスクリプションの場合は按分されます。すでにご存じだと思いますが、次のような項目があります。
- 元の価格
- リスト価格
- 特別価格
- 定価
- 顧客価格
- パートナー価格
- 正価
ここまで、リスト価格を対象にする価格ルールのみを作成してきました。驚かれるかもしれませんが、他の 1 つの価格項目、つまり特別価格のみを対象にすることをお勧めします。元の価格は、他の価格と比較して承認や検証をトリガーしたり、マージンを正しく計算したりするための参照ポイントとして機能させることができるように、そのままにしておく必要があります。
定価、顧客価格、パートナー価格、正価に関しては、すべて按分価格になります。按分の乗数の計算は厄介です。また、計算が複雑になりがちで、丸め誤差も発生しやすくなります。そのため、このような項目を対象にすることは技術的には可能ですが、実際には対象にすべきではありません。代わりに、リスト価格と特別価格を対象にしてください。
再帰的な計算を回避する
価格ルールを使用する場合、たいていリスト価格が最適な価格項目となりますが、例外もあります。最も一般的な例外は、価格ルールの価格アクションのソースでリスト価格を使用する必要がある場合です。ルールのソースと対象の両方で同じ価格項目を使用するのは、実に不適切な方法です。使用すると、再帰的な計算が発生する可能性が高くなります。たとえば、リスト価格を対象とする価格ルールがあり、リスト価格を含む取得元数式 SBQQ__ListPrice__c * 0.9
も設定されているとします。
リスト価格が 100 ドルから始まる場合、計算を 1 回クリックすると、100 ドル × 0.9 が処理されて、リスト価格は 90 ドルになります。
ここまでは良さそうですが...
もう一度計算をクリックすると、90 ドル × 0.9 が処理され、リスト価格は 81 ドルになります。
おやおや...
3 回クリックすると、81 ドル × 0.9 が処理され、リスト価格は 72.90 ドルになります。
これは困った状態です。リスト価格の値が計算をクリックした回数によって異なっています。このようなことは決してあってはなりません。
要するに、リスト価格を対象にするか、リスト価格をソースとして使用するかのいずれかにするということです。これは、価格ルールで使用する予定のどの項目にも当てはまります。
最も特別な価格
価格調整のソースとしてリスト価格を使用する必要があるシナリオは、少なくとも 1 つはあります。「Pricing Methods for Salesforce CPQ (Salesforce CPQ の価格方式)」バッジで説明されているように、リスト価格はバンドルされているオプションの価格を表す場合があります。つまり、商品をバンドルで販売する場合、単体で販売する場合とは異なる価格が設定されます。これにより、バンドル販売が促進されます。
では、バンドル価格を調整する必要がある場合どうすればよいでしょうか? ここで役立つのが特別価格です。特別価格は CPQ 価格ウォーターフォールの次の価格であるため、その値はリスト価格に基づいて計算されます。特別価格は按分されないため、サブスクリプション期間の長さを考慮することなく、安全に価格を更新できます。
AW Computing がバンドル価格をそのままにしながら、商品の価格設定を調整したいというユースケースを検討してみましょう。現在、バンドルオプションとして SSD ハードディスクドライブを搭載した数種類のラップトップを販売しており、このオプションにはオプション価格が使用されています。また、AW Computing は、小規模企業に対してすべての SSD ドライブを 20% 値下げして提供したいと考えており、これはすでに値下げ済みのバンドル価格に適用する必要があります。特別価格を対象とする価格ルールでは、これを簡単に実行できます。まず、新しい価格ルールレコードを作成します。
- ナビゲーションバーで、[Price Rules (価格ルール)] をクリックします。
- [New (新規)] をクリックします。
- [Price Rule Name (価格ルール名)] に、
Small Business SSD Special Price
(小規模企業の SSD 特別価格) と入力します。 - [Evaluation Scope (評価範囲)] で [Calculator (計算機能)] を選択します。
- [有効] チェックボックスをオンにします。
- [Save (保存)] をクリックします。
では次に、最初の価格条件で取引先が小規模業かどうかを確認します。そのためには、取引先の従業員数が 50 人未満かどうかを確認します。
- [Price Conditions (価格条件)] 関連リストで、[New (新規)] をクリックします。
- [Object (オブジェクト)] で [Quote (見積)] を選択します。
- [Tested Formula (テスト対象数式)] に、
SBQQ__Account__r.NumberOfEmployees
と入力します。 - [演算子] で [less than (<)] を選択します。
- [Filter Type (検索条件種別)] で [Value (値)] を選択します。
- [Filter Value (検索条件値)] に
50
と入力します。 - [Save (保存)] をクリックします。
次は、商品が SSD ハードディスクドライブかどうかを確認する条件を設定します。幸いなことに、AW Computing は一貫性のある命名規則を使用しているため、簡単に選択できます。
- [Price Conditions (価格条件)] 関連リストで、[New (新規)] をクリックします。
- [Object (オブジェクト)] で [Quote Line (見積品目)] を選択します。
- [Field (項目)] で [Product Code (商品コード)] を選択します。
- [Operator (演算子)] で、[starts with (次の文字列で始まる)] を選択します。
- [Filter Type (検索条件種別)] で [Value (値)] を選択します。
- [Filter Value (条件値)] に
SSD
と入力します。 - [Save (保存)] をクリックします。
これで、必要な場合のみにルールが実行されるようになります。次は、特別価格が正しい値になるようにします。
- [Price Actions (価格アクション)] 関連リストで、[New (新規)] をクリックします。
- [Target Object (対象オブジェクト)] で [Quote Line (見積品目)] を選択します。
- [Target Field (対象項目)] で [SBQQ__SpecialPrice__c] を選択します。
この選択リスト値は、この演習をを容易にするために Trailhead チームによって追加されています。実際の業務では、対象にする項目を各自で選択リストに追加する必要があります。 - [Formula (数式)] に、
SBQQ__ListPrice__c * 0.8
と入力します。 - [Save (保存)] をクリックします。
これでほぼ完了ですが、実行する必要のある意外なアクションがもう 1 つ残っています。特別価格には、対処する必要がある独特の動作があります。価格ルールを使用して特別価格を更新するときは、付随する項目である [Special Price Type (特別価格の種別)] の値も必ず [Custom (カスタム)] に更新しなければなりません。特別価格の種別をカスタムに変更しないと、価格ルールは機能しません。そのため、このユースケースには価格アクションがもう 1 つ必要です。
- [Price Actions (価格アクション)] 関連リストで、[New (新規)] をクリックします。
- [Target Object (対象オブジェクト)] で [Quote Line (見積品目)] を選択します。
- [Target Field (対象項目)] で [SBQQ__SpecialPriceType__c] を選択します。
この項目も、演習を簡略化するために Trailhead チームによって選択リストに追加された項目です。 - [Value (値)] に
Custom
(カスタム) と入力します。 - [Save (保存)] をクリックします。
これで、特別価格が想定どおりに更新されるようになりました。小規模企業向けの見積で試してみましょう。
- ナビゲーションバーで、[Quotes (見積)] をクリックし、[All (すべて)] リストビューを選択します。
- [Q-00050] をクリックします。
- [Edit Lines (品目の編集)] をクリックします。
- [Add Products (商品を追加)] をクリックします。
- [LAPTOP15] をクリックします。
- [選択] をクリックします。
- [SSD512] オプションをクリックします。
- [Save (保存)] をクリックします。
- [SSD512] 見積品目の見積品目ドロワー矢印 ( ) をクリックします。
これで価格に対する処理の結果をすべて確認できます。元の価格には、SSD の価格表の価格である 150 ドルが示されています。リスト価格はバンドルオプション価格の結果である 100 ドルになっています。価格ルールが適用され、特別価格が 80 ドルに設定されています。お疲れさまでした。 - [キャンセル] をクリックします。
この演習では、価格ルールのもう 1 つの優れた点を紹介します。それは、特別価格の種別など、価格以外の項目を更新するために価格ルールを使用できることです。見積品目、見積、品目グループの各オブジェクトには、制御する必要のある項目のデータ型が多数あるため、これは非常に役立ちます。次に例を示します。
- 数量 (数値)
- パートナー割引 (率)
- 割引不可 (チェックボックス)
- 割引率表 (参照)
ただし、決して数式項目を対象にしないでください。この値の処理は Salesforce にお任せください。そうしない場合、さまざまな問題が発生します。
つまり、この演習で説明されているのは、1 つの価格ルールに複数の価格アクションを設定すると、1 回のルール適用で多くの変更が可能であるということです。この演習では、割引不可を true に設定する 3 つ目の価格アクションを追加できます。そうすることで、SSD の価格はすでに 2 回引き下げられているため、手動での割引をロックアウトできます。
多くの項目のデータ型をすべて 1 つのルールで操作できるため、価格ルールは極めて強力なツールになります。次の単元では、CPQ のもう 1 つのツールであるサマリー変数の使用方法を学習し、価格ルールの機能を更に高めます。