プリファレンスマネージャーを使ってみる
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- プライバシー法の要件を満たすために、プリファレンスマネージャー機能がどのように役立つかを説明する。
- プリファレンスマネージャーダッシュボードを操作する。
なぜプリファレンスマネージャーなのか?
Zephyrus Relocation Services のシステム管理者である Calvin Green を紹介します。Zephyrus は、小規模ながら成長中の企業であり、母国から外国へ異動する企業従業員向けの全般的な転勤管理サービスを提供しています。つまり、Zephyrus は多くの個人情報、時には機密性の高い顧客情報を扱っているということです。同社は、従業員のビザ取得、住居探し、学校探し、語学研修の手配、新しい文化への順応などをサポートしています。
Calvin の課題の 1 つは、組織がデータプライバシーに関する法的要件を常に遵守していることを確認することです。具体的な要件は地域によって異なり、変化していますが、全体的なプライバシー法の状況としては、データ主体を保護し、権限を与えるためのガイドラインが確立されています。一般データ保護規則 (GDPR) のような法律では、個人に次の権利が与えられています。
- 自分のデータにデータ管理者がアクセスするかどうか、またどのようにアクセスするかを制御する。
- 自分のデータへのアクセスを停止するよう管理者に要求する。
- 自分のデータのコピーを管理者に要求する。
- 自分のデータを組織から削除することを要求する。
Zephyrus のようなデータ管理者は、Salesforce プライバシーセンターのようなツールを使用することで、このような要求やデータの保存、削除、転送方法を法的に管理できます。ただし、データ主体の同意を取得して保持する方法についてはどうでしょうか。ここで役立つのがプリファレンスマネージャーです。
プリファレンスマネージャーを使用すると、Zephyrus は、顧客がいつ、なぜ、どのように会社からの連絡を受けたいかを示すためのセルフサービスフォームをホストすることができます。転勤先の賃貸物件や不動産物件を毎日メールで受信したいのか? 現地のイベントや海外駐在員向けの集まりに関するニュースレターを送ってもらいたいのか? 転勤後も、レパートリーが増えている Zephyrus のサービスに関する通知を受けたいのか? プリファレンスマネージャーでは、顧客はいつでも迅速かつ簡単に同意設定を更新できます。
プライバシー法の遵守
データ主体は、自分のデータを誰が所有し、どのようなデータに自分がアクセスできるかを制御する権利を有しているため、Calvin には、データ主体の情報を要求しているのがどの社内チームなのかを明確に伝える方法が必要です。Salesforce にはソリューションがあります。このソリューションでは、Calvin はビジネスブランドオブジェクトを使用して、会社のさまざまな部門を整理できます。
ビジネスブランドオブジェクトにさまざまなレコードを作成することで、営業チーム、ビザ取得チーム、文化的順応チームなど、異なる社内「ブランド」を確立できます。顧客は、Zephyrus のビザ取得に関するサポートのみを求めている場合もあれば、語学研修を見つけるサポートや家の購入のサポートを求めている場合もあります。
このようなブランドレコードは、設定フォームをどのような構造にするのかにおいて不可欠なコンポーネントです。また、Zephyrus の誰から連絡を受けるかを顧客が決められるようにすることで、Calvin は、Zephyrus によるデータ主体のデータの処理方法について異議を唱えたり制限したりするデータ主体の法的権利を尊重しています。
GDPR のようなデータプライバシー法ではデータ処理の基本原則が要求されています。つまり、組織には、データ主体との合意の目的を満たすため、または連絡することへの同意を得るためなど、個人データを保持して使用するための合法的な基本原則が必要であるということです。組織には、自発的かつ具体的であり、情報に基づく明確な方法で同意を得ることが要求されます。
Calvin は、組織のプリファレンスマネージャー設定でデータ使用目的オブジェクトを使用することで、この要件を満たすことができます。
営業チームが、新サービスについて既存の顧客に連絡できるように、メールアドレスを保存したいとします。この場合、メールアドレスを保存するデータ使用目的はマーケティングです。ただし、メールマーケティング目的のために顧客の自宅住所が必要でしょうか? もちろん、そんなことはありません。ただし、顧客の住宅取得をサポートするチームには必要なため、Calvin はそのチーム専用に別のデータ使用目的レコードを作成できます。これで、住宅取得を目的として、顧客の住所を安全かつ合法的に保存することができるようになります。Zephyrus 用のデータ使用目的レコードを作成することで、Calvin の組織はプライバシー法を遵守できます。
プリファレンスマネージャーダッシュボードを操作する
Calvin は、自社が必要とするさまざまなビジネスブランドとデータ使用目的のレコードを作成した後、顧客向けのセルフサービス設定フォームの作成を開始します。Calvin がコード不要の設定フォームを作成するために必要とする機能は、すべてプリファレンスマネージャーダッシュボードから利用できます。それでは、このアプリケーションを使いこなすための手順を見ていきましょう。
アプリケーションランチャーから、「プライバシープリファレンスマネージャー」
と入力して、アプリケーションを選択します。
フォーム
プリファレンスマネージャーは、デフォルトで [フォーム] 機能で開きます。ダッシュボードには、同じフォームの異なるバージョンなど、組織のすべてのフォームがリストされます。[状況] 列には、フォームが公開されているか、公開する準備ができているかが表示されます。
新しいフォームを作成する場合、Calvin は [新規フォーム] をクリックします。既存のフォームを編集する場合は、リストからフォームを選択するだけです。どちらの場合も、Calvin は自動的にプリファレンスビルダーに移動し、そこで一意のタイトルを付けたり、送信ボタンのテキストを変更したりするなど、フォームのコンポーネントをカスタマイズできます。
Calvin がプリファレンスマネージャーを初めて起動すると、フォームが自動的に生成されます。このフォームを編集すると、プリファレンスビルダーの動作の感触をつかむことができますが、この方法ではフォームを最初から作成することになります。このフォームは同意テンプレートから作成されていないため、このフォームを使用するには Apex を設定して使用する必要があります。
同意テンプレート
同意テンプレート機能を使用すると、Calvin は設定フォームに情報を入力できる再利用可能なテンプレートをすばやく作成できます。テンプレートを適用することで、Calvin はフォームの構造や編成を迅速に把握できますが、公開前にプリファレンスビルダーでフォームをカスタマイズすることも可能です。
同意テンプレートを作成する際、Calvin は複数のテンプレート種別から選択することができます。各テンプレート種別では、フォームのベースにするブランド、データ使用目的、連絡先チャネルのさまざまな組み合わせを選択できます。同意テンプレートはいくつでも作成でき、ダッシュボードのテーブルにリスト表示されます。
同意テンプレートを使用してフォームを作成したら、公開できるようになります。Calvin は、プリファレンスビルダーから直接公開することも (フォームを編集している場合)、プリファレンスマネージャーダッシュボードから公開することもできます。フォームが公開されたら、オンラインでホストできます。これで、ユーザーはフォームにアクセスして設定を送信できるようになります。
アクセストークン
Calvin が、Experience Cloud サイトユーザーがログインせずにフォームにアクセスできるようにしたい、またはフォームを外部サイトでホストできるようにしたいとします。このような場合は、アクセストークン機能を使用する必要があります。Calvin は、アクセスを付与したいユーザーのレコード ID を CSV 形式でアップロードします。各ユーザーには、レコード ID と一致する一意のアクセストークンが割り当てられ、Web サイト URL に付加されます。ユーザーが URL をクリックすると、アクセストークンとレコード ID が一致し、魔法のようにそのユーザーの一意のデータが設定フォームに取り込まれます。
各ユーザーには、メールアドレスや電話番号など、Calvin が設定用に収集している自分の連絡先情報が表示されます。ログイン済みの Experience Cloud サイトユーザーについては、サイトにログインした時点でデータが入力されるため、アクセストークンは必要ありません。
フォームがオンラインでホストされると、Calvin は顧客の同意設定を取り込むことができます。このような機能の使用方法に関するステップバイステップのウォークスルーについては、「Create a No-Code Preference Form (コード不要の設定フォームを作成する)」プロジェクトを参照してください。