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ビジネスが変化をもたらす方法について

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

  • ビジネスが地球環境に実質的な変化をもたらす最も効果的な手段について述べる。
  • 平等を推進することで体系的な変化が生じ得る理由を説明する。

Salesforce では、ビジネスは社会を変える強力な基盤であり、未来の世代のために地球の保護に積極的に取り組むことができ、また取り組むべきであると考えています。けれども、Salesforce が孤軍奮闘しているわけではありません。私たちは、これまでないほど多くの企業が、地域社会や環境の問題への取り組みを誓約している様子を目の当たりにしています。たとえば、Salesforce をはじめ、We Mean Business Coalition を通じて対策にコミットしている企業の現在の時価総額を合わせると 35.6 兆ドルを超えています。さらに S&P 500 企業の 92% が、環境イニシアチブの目標と進捗状況に関するレポートを定期的に公表して、企業の透明性を向上させています。  

ビジネスにとっての天然資源の重要性

ビジネスが環境保護に率先して取り組んでいるのはなぜでしょうか? ビジネスが長期的な成功を収めるためには、人的資本と自然資本の両方が必要であるためです。企業が財務面でも環境面でも持続可能な形で成長していけば、絶えず変化する世界でうまく舵を取れるようになります。 

これは何も目新しいことではありません。ビジネスはいつの時代も天然資源に依存してきました。古代ローマの粉ひき場では水車を原動力として、ローマ文明全域に食糧を供給していました。石炭を燃料とする蒸気エンジンにより、輸送分野が発達しました。そして、ブドウの収穫からワインの一大産業が生まれました。今日では、製品と自然環境のつながりはさほど明白ではないかもしれませんが、要因の 1 つであることは変わりありません。 

主要な関係者の期待の変化

投資家は透明性と行動を求めている

投資家コミュニティは、環境面、社会面、ガバナンス面 (ESG) のイニシアチブにおける透明性を高め、対策を強化するよう企業にプレッシャーをかけています。例として、Blackrock の CEO である Larry Fink 氏が 2018 年に発した CEO への手紙が挙げられます。その中で同氏は、「長期的な繁栄を目指すのであれば、どの企業も財務実績を示すだけでなく、その実績がどのような形で社会に還元されているのかを示す必要があります。企業には、株主、従業員、顧客、そして事業を運営する地域社会をはじめとする、あらゆる関係者に利益をもたらすことが求められます」と述べています。Larry Fink 氏の手紙については、この単元の最後にある「リソース」セクションを参照してください。)

「企業には、株主、従業員、顧客、そして事業を運営する地域社会をはじめとする、あらゆる関係者に利益をもたらすことが求められます。」— Larry Fink (Blackrock の CEO)

Salesforce が 2022 年度に持続可能性教育の構築と加速を開始したとき、最優先事項は、Salesforce 独自の気候変動に対する取り組みについてより多くの情報を開示することでした。それがきっかけとなり最初の TCFD 報告書の公表に至りました。気候関連財務情報開示タスクフォース (TCFD) の枠組みは、ビジネスのガバナンス、戦略、リスクおよび機会管理、気候変動関連の主要なメトリクスと目標を含めた、気候変動の影響に関する包括的な情報開示を求めています。Salesforce はこれを、あらゆる組織が開示し、理解する必要がある基本的なデータであると考えています。(Salesforce の TCFC 報告書については、「リソース」セクションを参照してください。) 

顧客は倫理的なやり方を求めている

顧客は発言力を高め、倫理に則った方法で生産されたことがわかる製品を購入する、場合によってはそうした製品であれば多少高くても構わないと考えるようになっています。オーガニック、フェアトレード、地元産などが買い物客にとって聞き慣れた言葉になっています。購入は最早単なる取引ではありません。現在では、製品の生産地や、顧客のブランドへの精神的なつながりが何よりも重要になっています。Cone による研究では、米国人の 79% が、従来の企業とよりも、明確な目的意識のある企業と強いつながりを感じていることが判明しています。 

従業員は価値観に引き付けられる

雇用主は、優秀な人材を求めて競争しています。この競争を勝ち抜くためには、現在の人材が、明確な価値感のある企業に引き付けられていることを認識しておく必要があります。実際、Z 世代の 83% は、就職先を決める際に会社の目的を考慮し、どの企業に身を置くかの主要な決定条件にしています。ミレニアル世代ほど明白ではないものの、他の年齢層の労働者も同じように感じています (米国平均で 55%)。ビジネスにとっては、事業を展開している地域社会の健全性と強靭性をサポートすることが、株主、顧客ベース、将来の人材といった関係者の声に耳を傾け、支援することになります。健全で活気に満ちた地域社会から、ビジネスを含む全員が利益を享受します。

インパクトをもたらす

Salesforce では、できる限り最大のインパクトをもたらすことに尽力しています。当社は時間や労力を費やすことで変化をもたらすことが可能な領域が多数あることを認識しているため、インパクトが最大になる領域を割り出すことに尽力してくれた組織やイニシアチブに感謝しています。ではここで、Project Drawdown という仲間の協力を得て、エネルギー、食料、水、平等の 4 つの主要な領域を詳しく見ていきましょう。(各領域についての詳細は、「リソース」セクションを参照してください。)

私たちが環境に最大のインパクトを与えることができる可能性があるのは、エネルギー、食料、水、平等の 4 つの領域です。

エネルギーシステムに対する考え方を変える

人間によるエネルギーの利用、特に石炭、石油、天然ガスといった化石燃料によるエネルギーの利用が、環境に多大な影響を及ぼします。化石燃料を燃焼すれば、熱帯林の伐採や一定の農業生産方式の影響とともに、膨大な量の温室効果ガスを大気に放出します。温室効果ガスによって熱が閉じ込められ、世界各地で深刻な気象現象や海面上昇が引き起こされています。温室効果ガスの中で最も濃度が高いものの 1 つである二酸化炭素も、海洋に溶け込んで海洋酸性化を引き起こし、現在、サンゴや甲殻類などの海洋生物に大きな打撃をもたらしています。

ソーラーパネルは再生可能なエネルギー源で、先端テクノロジーによってエネルギーシステムに対する考え方を変えられることを示しています。

私たちの家庭や学校、職場、交通機関は、エネルギー利用の効率性を高めたり、安全でクリーンな再生可能エネルギー源に移行することで、気候を変化させている温室効果ガスの排出を削減させる多大な潜在性を備えています。  

食生活を見直す 

私たちが何を食べ、食物をどのように飼育/栽培するかが、地球の地勢、水資源、気候に大きな影響を及ぼします。たとえば、農業はすでに地表の陸地の約 55% を使用し、全世界の取水量の 70% を占め、温室効果ガスの 4 分の 1 以上を排出しています。食品廃棄物の削減は、持続可能な成長に向けた最大の潜在性を備えた領域の 1 つです。全世界で生産される食料の 3 分の 1 は食されることがなく、農家から消費者までのサプライチェーンのどこかで失われています。

地元で採れた季節の食材を食べることは、地域の農家を支援し、輸送に伴う地球温暖化ガス排出を削減する望ましいやり方です。

2019 年の Dreamforce (毎年開催される人気イベント) では、参加者の昼食メニューから牛肉を除外して、900 万ガロンの水を節約しました。さらに、余った食材はできる限り地元の慈善団体に寄付しました。 

真水システムの保護 

つい最近まで地球の水は、陸地と海洋をつなぐ河川網や地下水系に沿って途切れることなく自然に流れ、汚染することもありませんでした。現在、人間が数万か所にダムを建設し、帯水層から水を汲み出す無数の井戸を設置しています。こうした事業によって私たちは自然の流れから大量の水を迂回させて利用することができます。けれども、こうした取水が度を越せば、水量を補給する自然の仕組みが追いつかなくなり、帯水層や河川、湖水が干上がって漁業が衰退し、広範におよぶ生態系が崩壊することになります。

国連食糧農業機関は、全世界の取水率 (特定の産業が使用する水量) を、農業が 70%、地方自治体が 11%、産業が 19% と算定しています。

全世界の取水量の大半 (約 70%) が食物や飼料の栽培に使用されていることから、食品廃棄物を削減し、食生活を変えることは正しい方向への第一歩です。また、新しい携帯電話や洋服、使い捨てカップ、水筒など、何らかのものを購入することで間接的に大量の水を使用していることになります。お気に入りの綿の T シャツを 1 枚作るのに、700 ガロンの水が使われています! 食料の栽培や商品の生産に使用される水を私たちが制御することは困難ですが、購入を減らすことは検討できます。 

責任をもって管理することは、世界で最も貴重な資源である「水」の長期的な持続性を確保するための基本事項です。Salesforce の本社は干ばつが起きやすいカリフォルニア州にあることから、特に水の保全に注意を向けています。Salesforce は 2018 年 1 月、Salesforce Tower に下水循環システムを導入しました。これにより、真水の需要が年間 780 万ガロン削減されます。

Salesforce Tower の下水循環システムは、米国の商業用高層ビルで最大の水循環システムです。

海洋を救う 

海岸地域は、気候変動の影響で四面楚歌の状態に陥っています。海面の上昇や、強度を増している暴風雨によって海岸が浸食され、破壊されています。化石燃料に起因する汚染によって海洋化学が変容しつつあり、海洋生物や生態系全体を脅かしています。特に酸性化により、えら呼吸する海洋動物に最も深刻な影響が及んでいます。5 兆片を超えるプラスチック汚染が海洋を巡回し、海洋食物網に侵入しています。2050 年までに、海洋のプラスチック片が魚類の数を上回ると予想されています。幸いにも、こうした問題の解決策が私たちの手の届く範囲に存在します。 

エクアドルで遊泳しているカメ。2050 年頃には魚ではなく、プラスチックに囲まれている可能性があります。

たとえば、Salesforce は、グローバル気候アクションサミットで Benioff Ocean Initiative と協力し、地元の中学教師 40 名に気候や海洋科学に関するトレーニングを実施しました。 

気候正義で平等に

気候正義は環境正義の一部であり、環境にプラスの影響を与える機会を提供します。環境正義は環境中のすべての有毒汚染物質を網羅するのに対し、気候正義は健康問題、経済的負担、立ち退きやサービス途絶により有色人種コミュニティに不均衡な悪影響を及ぼす二酸化炭素とメタンを放出する施設に焦点を当てています。 

Salesforce 共同 CEO の Marc Benioff がスポンサーとなっている Benioff TIME Tree Fund は、新興国や発展途上国で最も高いリスクに晒されているコミュニティや自然生態系への気候変動の影響の増大を緩和するために、先住民とコミュニティベースの森林管理に取り組んでいきます。 

要約すると、今が行動を起こす時です。世界の人々が救いの手を求めています。変化をもたらすかどうかは、ビジネスと私たち一人ひとりにかかっています。

リソース

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