ファインチューニングの準備を整える
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- ファインチューニングのデータセットの準備について説明する。
- ファインチューニングプロセスの概要を示す。
データセットの準備をする
最初のステップで、ファインチューニングに使用するタスク固有のデータセットを準備します。具体的には、データのクリーニング、テキストの正規化、LLM の入力要件を満たす形式へのデータの変換 (データラベリング) などを行います。特に重要なのは、データがタスクや分野を反映するものである点と、本番環境でモデルが遭遇すると予想される多様なシナリオを網羅している点を確認することです。ここでは、ファインチューニングするデータセットを準備する方法を見ていきます。
データの収集
特定の分野やタスクに関連するデータを蓄積します。たとえば、ユーザーのやりとりを収集したり、分野固有のデータを使用したりすることが考えられます。
データのクリーニング
関係のないデータを削除し、エラーを修正し、場合によっては機密情報を匿名化します。
データセットの分割
データをトレーニングセット、検証セット、テストセットに分割します。トレーニングセットでモデルをトレーニングし、検証セットでハイパーパラメーターを調整し、テストセットでパフォーマンスを評価します。
モデルを設定する
適切なベースモデルやファインチューニングの手法の選択は、具体的なタスクと使用可能なデータによって異なります。GPT-3.5 Turbo、BERT、RoBERTa など、さまざまな LLM アーキテクチャの中から選択できますが、それぞれ長所と短所があります。ファインチューニングの手法 (転移学習、順次ファインチューニング、タスク固有のファインチューニングなど) も、タスクやデータによって異なります。
モデルの選択
ベースモデルを選択するときは次の点を考慮します。
- モデルが各自の特定のタスクに適合するか
- モデルの入出力サイズ
- データセットのサイズ
- 技術的なインフラストラクチャが、ファインチューニングに必要な計算能力を備えているか
アーキテクチャの選択
タスクに合わせて特定のコンポーネント (分類タスクの最終レイヤーなど) を調整します。コアのモデルアーキテクチャは維持されます。
ハイパーパラメーターの選択
学習率、バッチサイズ、エポック数、正則化のパラメーターの値を決定します。次々と更新するとトレーニング済みの知識の忘却が生じる可能性があるため、学習率は小さいほうが好ましい場合があります。
モデルをファインチューニングする
LLM とファインチューニングの手法を選択したら、トレーニング済みモデルをメモリに読み込む必要があります。このステップで、トレーニング済みの値に基づいてモデルの重み付けが初期化されるため、ファインチューニングプロセスが加速し、モデルが一般的な言語理解を学習していることが確認されます。
トレーニング済みの重み付けを使用して初期化する
最初はトレーニング済みモデルの重み付けを使用します。以前のトレーニングで得た知識を活用することは転移学習の本質です。
適応学習
一部の高度なシナリオでは、レイヤーごとに学習率を変化させる手法を用いることがあります。たとえば、(一般的な特徴をとらえる) 初期のレイヤーが、後半のレイヤーよりも低い学習率で更新されることがあります。
正則化
特にファインチューニングのデータセットが比較的小さい場合、過学習を回避するために、ドロップアウト、重み減衰、レイヤーの正規化などの手法が極めて重要になることがあります。
モデルを監視して評価する
このステップでは、トレーニング済み LLM をタスク固有のデータセットでトレーニングします。このトレーニングプロセスでは、モデルの重み付けとパラメーターを最適化して、損失関数を最小限に抑え、タスクのパフォーマンスを向上させます。ファインチューニングプロセスでは、モデルのパフォーマンスを最適化する目的で、トレーニングセットでトレーニングし、検証セットで検証して、ハイパーパラメーターを調整するという処理が数回繰り返されることがあります。
損失と評価指標を追跡する
トレーニングの間、トレーニングセットと検証セットの損失を継続的に監視します。そうすれば、トレーニング中の過学習や問題を検出しやすくなります。
早期停止
検証セットのパフォーマンスが低下し始めたら、過学習の兆候であるため、(たとえトレーニングセットのパフォーマンスが向上していても) トレーニングを中止します。早期に対処すれば、モデルトレーニングデータの過度の適合を防ぐことができます。
指標を評価する
適切な評価指標 (正確度、F1 スコア、BLEU スコアなど) を使用して、テストセットでモデルのパフォーマンスを測定します。使用する評価指標は、分類、回帰、生成など、実行するタスクによって異なります。
ファインチューニング後に調整する
ファインチューニングプロセスが完了したら、テストセットでモデルのパフォーマンスを評価する必要があります。このステップでは、モデルが新しいデータにうまく汎化しているか、特定のタスクで適切に機能しているかを確認できます。評価に使用する一般的な指標は、正確度、精度、再現度などです。
調整
真の確率が適切に反映されるようにモデルの出力を調整します。時として、ファインチューニングされたモデルがその予測を過信したり過小評価したりすることがあります。
フィードバックループ
エンドユーザーがモデルの出力に関するフィードバックを送信できるシステムを構築します。受け取ったフィードバックを参考にファインチューニングを繰り返せば、モデルを継続的に改善していくことができます。
モデルをリリースする
ファインチューニングしたモデルの評価が済んだら、本番環境にリリースできます。リリースプロセスでは、大規模なシステムにモデルを統合し、必要なインフラストラクチャを設定して、実際のシナリオでモデルのパフォーマンスを監視します。
モデルのサイズ
パフォーマンスを大きく損なうことなくモデルのサイズを縮小するために、ファインチューニング後にモデルの蒸留やプルーニングを実施することを検討します。こうした処理は、モデルのリリース先 (エッジデバイス、Web サーバーなど) によって異なります。
まとめ
ファインチューニングの概念は単純明快のように思えるかもしれませんが、実際には慎重を期した一連のステップや判断を要します。データの準備からリリースに至る各フェーズが、対象の分野やタスクにおけるモデルの有効性や効率性に大きな影響を及ぼす可能性があります。