小売業のマーケティングインテリジェンス入門
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 変化し続ける小売業界について説明する。
- マーケティングインテリジェンスとは何かを要約する。
進化し続ける小売業界
小売業界はかつてない変化を遂げています。お客様によってショッピングエクスペリエンスが日々刷新されています。お客様は高い期待を抱き、小売業に自らが望む対応を求め、モバイルアプリやソーシャルメディアからメールまで、さまざまなチャネルを使ってブランドとやりとりします。実際、お客様の 67% は、どのショッピングチャネルでもシームレスなカスタマージャーニーを実現してくれる小売業者から購入したいと述べています。
成功の鍵を握るのは利便性です。小売業者の多くが従来の店舗販売からオンラインビジネスへと移行し、お客様がいつ、どこにいても対応できるようにしています。さらに、こうした買い物客は驚くほど情報通で、豊富な商品情報やレビューに目を通したうえで購入するかどうかを判断します。
昨今のこうしたショッピング事情により、小売業のマーケターに切実な課題が生じています。多種多様なテクノロジーやチャネルから取り込まれる顧客データやマーケティングデータにどのように対処すればよいのでしょうか? こうしたデータをすばやく活用して、顧客行動に対する理解を深め、お客様の高まるニーズに応え、適切なタイミングで適切なメッセージを届けるにはどうすればよいのでしょうか? さらに、このすべてを効率的に、マーケティングの予算内でこなすにはどうしたらよいのでしょうか? 容易いことではありませんが、マーケティングインテリジェンスがあれば実現可能です。
マーケティングインテリジェンスによるスマートなマーケティング
マーケティングインテリジェンスはその名のとおり、スマートなマーケティングを可能にする、AI 駆動の一種のテクノロジーです。具体的にどのように機能するのでしょうか? わかりやすく言うと、データサイエンスをさらに一歩進めて、マーケターが次のことをできるようにします。
- インサイトを 1 か所で収集して視覚化し、分析する。
- データをコンテキストでとらえ、特定のキャンペーンに関連付ける。
- お客様、競合他社、さらには社内プロセスに関する結論やレコメンデーションを提示する。
お客様は、商品やサービス、ブランドにまつわる小売業者とのやりとりがタッチポイントごとに断絶していると報告しています。お客様のうち、企業は概ね優れたコネクテッドエクスペリエンスを実現していると述べた人は 13% に過ぎません。小売業のマーケターがマーケティングインテリジェンスを使用すれば、小売ジャーニーのどの段階でもお客様と有意義なつがなりを築くために必要な情報を得ることができます。
Isabelle Givens の例を見てみましょう。Isabelle は、アウトドア用品やアパレルの小売企業、Northern Trail Outfitters (NTO) のマーケティングマネージャーです。NTO へのインパクトが最大となる領域に重点的に取り組めるように、限られた予算を再配分する任務を担っています。Isabelle はリソースの優先順位を決定するために、パフォーマンス分析を実施してマーケティングキャンペーンを評価しています。
チームがレポートを仕上げるのに毎月 1 週間も費やしていることを Isabelle が知りました。チームは各要望に応じて毎回手作業でカスタムレポートを作成しています。その上、売上情報、メールクリック数、ソーシャルインプレッション数などを集計するために、個々のチャネルからデータを選り分ける必要があります。
レポートを受け取った Isabelle は、断片的なインサイトから、ファネルのある部分が他の部分にどのように影響しているのか汲み取らなければなりません。たとえば、動画広告によって売上が増大したかどうかを知りたいとします。一見、動画広告は静止画像広告より効果的で、アパレルの売上を押し上げているように思われます。ただし、この評価を確定するためには、Isabelle が 20 種を超えるデータストリームを調べなければなりませんでした。判明した結果をクリエイティブチームに伝え、動画広告を優先して、静止画像広告の制作に費やすリソースを削減するよう指示します。
チームの業務は手作業中心で、課題を抱えながらも、Isabelle は成果を挙げています。もしもすべてのデータが 1 か所に集約され、Isabelle がビジネス全体の KPI を瞬時に把握できるとしたらどうなるでしょうか? 上記のような判断を、数週間でなく、数日で下すことができるものと思われます。
チームがデータに基づく迅速な判断を下すためには、計画やインフラストラクチャを整備することがいかに重要かを Isabelle は日々実感しています。ここで、Isabelle (とあなた) がマーケティングインテリジェンスをどのように活用できるのか見ていきましょう。
マーケティングインテリジェンスを使ってみる
効果的なマーケティングインテリジェンス計画の作成には次の 3 つのステップがあります。
- データの連携と管理: マーケティングデータをまとめて結び付けるプロセスです。適切に行えば、マーケターがソーシャル、検索、ディスプレイ、プログラム型、Web、メール、CRM などのあらゆるデータを 1 か所で確認できます。
- データの分析と最適化: データの意味を理解し、判断を下しやすいように構造化するプロセスです。
- 調整とコラボレーション: 1 つのシステム内のデータを調整して、チーム間のコラボレーションを促すプロセスです。各チームがデータやレポートにオンデマンドでアクセスできれば、全員が一丸となって前進するための情報を得ることができます。
つまり、マーケティングインテリジェンスを利用すれば、お客様が期待する柔軟性、関連性、利便性の高いショッピングエクスペリエンスを実現できます。さらに、企業がデータに簡単にアクセスできるため、適切な判断を (速やかに) 下すことができます。
次の単元では、小売業界のマーケティングのあり方に大きな影響を及ぼす課題について見ていきます。さらに、マーケターがマーケティングインテリジェンスを活用すれば、小売業のカスタマージャーニーを刷新する機会がもたらされることを明らかにします。