Manufacturing Cloud の概要
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 製造業界の最新トレンドを説明する。
- 典型的な製造会社とそのビジネスユニットを説明する。
- 典型的な製造会社が直面する一般的な課題とその解決案を挙げる。
- Manufacturing Cloud によって、営業、業務、サービスの各チームがどのように強化されるかを説明する。
製造業界について知る
製造は世界で古くから行われている経済活動ですが、デジタル時代を迎えた今、この業界は大きな変革に直面しています。「Inside Salesforce’s New Trends in Manufacturing Report (製造業の新しいトレンドに関する Salesforce レポート)」によると、最近の世界経済における構造転換によって、製造企業が弾力性と汎用性に優れたバリューチェーンを構築する必要性が高まっています。以下に、製造業界を揺るがしている主なトレンドをいくつか紹介します。
- 販売業務のデジタル化: 製造企業は、起こりうるビジネスの中断に適応し、収益を確保し、成長に向けて最適化する必要があります。工場から会社のオフィスまで、販売業務のデジタル化を加速して、俊敏性、弾力性、安全性を高めています。デジタルトランスフォーメーションは、売上の促進、在庫の最適化、プロセスの自動化、セルフサービスの実現などに役立っています。
- サイロ化されたチームとプロセス: チームがサイロ化されていると、ビジネス環境の変化についていくことができません。相容れない目標、分断されたセールスプロセス、複数の収益モデル、接続されていない注文キャプチャチャネル、分散した顧客データ、サプライチェーンの限られた可視性は、一貫性のある顧客認識とパフォーマンス基準の達成を妨げます。製造企業は、協調文化の構築、目標の統一、チームの連携に向かって取り組んでいます。
- 従来の需要予測への不満: 製造企業は、自社の動的なビジネスの販売予測に寄せ集めの雑多なアプローチが取られていることに大きな不満を抱いています。乱雑なスプレッドシート、エンタープライズリソースプランニング (ERP) システム、コンピューター保全管理システム (CMMS)、会計ソフトウェアなど、さまざまなアプリケーションやシステムで従来型の予測ソリューションが使用されています。製造企業は、需要計画の精度を高めるために、予測機能の最適化を優先しています。
- カスタマーサービスエクスペリエンスの強化: 製造企業は、商品の価値提案の強化と顧客との関係の構築につながる重要分野として、カスタマーサービスに目を向けています。将来に備えた企業は、パーソナライズされたシームレスで記憶に残るサービスエクスペリエンスを顧客に提供することに熱心に取り組んでいます。
では、典型的な製造会社がこのようなトレンドからどのような影響を受けているかを見てみましょう。
Rayler Parts の人たちについて知る
製造業界は、OEM (Original Equipment Manufacturer)、ディーラー、商品サプライヤー、流通業者、小売業者、アフターマーケットメーカーなど、大小さまざまな製造ビジネスが集まっています。その 1 社、Rayler Parts という企業を紹介します。
Rayler Parts は、建設機器メーカーの草分け的存在です。OEM として、重機を製造し、流通パートナーのグローバルネットワークを介して販売し、機械のサービス提供を行っています。
Rayler Parts には、営業部門とサービス部門という 2 つのビジネスユニットがあります。
- 営業部門は、1 回限りのビジネスとランレートビジネスを管理しています。流通業者との長期的な業務契約の計画、パートナーの遵守の追跡、需要計画の作成、主要取引先との連携、流通業者のパフォーマンスの監視を行っています。
- サービス部門は、パートナーからの質問の解決、商品保証と請求の管理、予備部品在庫の追跡を担っています。
次に、Rayler Parts の日々の業務を見てみましょう。
製造企業の問題を知る
Rayler Parts は長年 Salesforce Sales Cloud を使用しています。Cindy Jones は Rayler の並外れたシステム管理者です。ビジネスニーズの分析と Salesforce 機能へのニーズの対応付けに長けています。さまざまなチームメンバーから寄せられる課題や質問に応えて、新たな Salesforce 機能の実装と採用を計画します。
最近、Rayler はディーゼルおよび代替燃料発電機の新しい商品ラインを発売し、その新商品が主要マーケットで飛ぶように売れています。ビジネスは飛躍的な成長を遂げ、営業チームとサービスチームのニーズは変化しました。
Cindy は大量の依頼に 1 つずつ取り組む代わりに、主要な関係者にアンケートを採って全体像を理解することに決めました。各チームの需要を理解し、解決案を出してもらうために、AMER s営業部門の責任者 Elliott Park とサービス部門の統括責任者 Najma Omar に協力を求めました。
チームメンバーにアンケートを採った後、Elliott と Najma は Cindy とミーティングを行い、アンケート結果について話し合いました。まず、Elliott が営業部門の抱える問題について伝えました。
| 問題 | 可能な解決策 |
|---|---|
|
アカウントエグゼクティブが購入の確約と顧客の遵守を一目で視覚的に把握できない。 |
商品の数量と収益に関する契約条件および遵守を確認できる単一ビュー。 |
|
アカウントエグゼクティブが生産上の問題、顧客の要望、景気後退などの要因に基づいて販売計画を柔軟に変更できない。 |
計画数量、販売価格、割引を簡単に調整できる機能。 |
|
取引先マネージャーが商品の在庫レベルを簡単に確認できない。 |
既存の価格指標や数量指標と同様の在庫に関する指標。 |
|
アカウントエグゼクティブが注文履行に基づいて実際の商品数量を手動で更新する必要がある。 |
注文から情報を取得して自動的に営業計画を更新するシームレスな方法。 |
|
取引先マネージャーが目標を作成してチームメンバーに割り当てることができない。 |
目標を簡単に作成してチームメンバーに振り分けることができる方法。 |
|
取引先マネージャーがチーム、商品、地域ごとに個別の販売予測を生成できない。 |
複雑な要求事項に対応できる包括的な販売予測フレームワーク。 |
|
アカウントエグゼクティブがインセンティブの設定とパートナーへのインセンティブの割り当てに苦労している。 |
マネージャーがパートナー向けのパーソナライズされたリベートを作成し、管理するのに役立つ設定しやすいソリューション。 |
次に、Najma がサービス部門の抱える問題について概要を説明します。
| 問題 | 可能な解決策 |
|---|---|
|
サービス担当は顧客の依頼を理解し解決するために複数のレコードを確認する必要がある。 |
顧客のアクティビティを確認できる統合ビューと質問を解決するためのツール。 |
|
保証管理者は納入商品の保証情報をさまざまな場所から取得する必要があり、詳細情報がどこにあるのかわからなくなる。 |
各納入商品の保証内容を対象資格とエンタイトルメントの詳細と共に追跡する方法。 |
|
保証請求の裁定担当者が保証請求に関する十分な情報を集めることに苦労している。 |
保証請求の内容を欠陥商品、既存の保証範囲などの詳細と共に取得する機能。 |
|
サービスマネージャーが予備部品の需要を予測できない。 |
予備部品を予測するための包括的な予測フレームワーク。 |
最後に、Elliott と Najma は営業とサービスの両部門が直面している共通の問題を共有しました。
| 問題 | 可能な解決策 |
|---|---|
|
マネージャーがパートナーへの訪問を調整し、追跡するプロセスが複雑である。 |
マネージャーがフィールド営業担当の訪問を追跡でき、フィールド営業担当が訪問の重要な詳細事項を取得できる柔軟なフレームワーク。 |
|
チームメンバーが多くの反復作業を手動で実施する必要があり、エラーが誘発されている。 |
ワークフロー、反復プロセス、計算の自動化と意思決定のサポートを行う動的ツール。 |
|
取引先マネージャーとサービスマネージャーが販売計画、予測、保証、インセンティブに関してリアルタイムでパートナーと連携するのが困難である。 |
パートナーと製造企業が連携できるオンラインポータル。 |
|
チームメンバーが膨大な量の複雑なデータを分析する方法を知らない。 |
複雑なデータを分析し、その情報を理解しやすいビジュアルに変換し、マネージャーが主要なインサイトを取得するのに役立つツール。 |
Cindy は、とてつもなく多くの課題に直面しています。そこで、Rayler Parts の Salesforce アカウントエグゼクティブに連絡し、Salesforce にソリューションがあるかを尋ねました。
製造企業の夢のような環境に足を踏み入れる
アカウントエグゼクティブは、Cindy に Manufacturing Cloud のことを教えてくれました。Manufacturing Cloud は、製造企業がすべての顧客を管理し、記憶に残るサービスエクスペリエンスを提供し、パートナーと有意義な関係を構築するのに役立つ動的なプラットフォームです。Manufacturing Cloud は、Sales Cloud と Service Cloud の上に構築されています。製造エコシステムの特定ニーズに合わせたオブジェクト、機能、ツール、アプリケーション、コンポーネント、ワークフロー、その他設定が備わっています。このソリューションを使用すれば、複雑な製造ライフサイクル全体でチームが連携できるようになります。
営業、業務、サービスの各チームは Manufacturing Cloud を使用して、ビジネスの成長の加速化、業務の効率化、卓越したカスタマーサービスの提供を実現できます。注文と在庫に関するバックオフィスデータと販売計画の交渉に関するフロントオフィスデータを統合できます。さらに、Salesforce の追加機能を使用して、マーケティング、デジタルコマース、フィールドサービスの各チームを強化できます。使用可能な機能は、Manufacturing for Sales、Manufacturing for Service、または Manufacturing for Sales と Service のいずれを実装しているかによって異なります。
Cindy は Manufacturing Cloud について知ることができ嬉しく思っています。Rayler Parts が Manufacturing Cloud for Sales および Service を実装する必要があると確信しています。徹底的にリサーチしたところで、この素晴らしいソリューションを Elliott と Najma に伝える準備が整っています。
以降の単元で、Manufacturing Cloud が Elliott と Najma のチームにどのように役立つかを Cindy が説明する様子を一緒に見ていきましょう。