マネージャーのバーチャルコラボレーションスキルの学習
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- バーチャルマネージャーのベストプラクティスおよびテクニックを確認する。
- リモートチームの各人との業務上の効率的なコミュニケーションやプロセスを確立する。
バーチャルチームの統率
Juan はチームの新メンバーです。このチームに参加する前は、自ら事業を経営し、たいていは単独で仕事をしていました。Web 会議のホストは手馴れたもので、テクノロジーも巧みに使いこなします。ただし、バーチャルコラボレーションの他の面に関しては初心者です。たとえば、チームに参加したとき、Quip のリアルタイムコラボレーションについて何も知りませんでした。
他の部下は Quip を利用したコラボレーションに慣れているため、いつもどおり、マネージャーはすぐにプロジェクトに着手させます。これまでチームの誰からも意見されることがなかったため、このやり方でうまくいっていると思っていました。
ある日の午後、ちょっと時間に余裕ができたため、Quip の Juan のプロジェクトを見てみることにします。さほど深く考えず、気を利かせてあちこちと手直していきます。ついでに、Juan の代わりにプロジェクトを仕上げています。Juan も喜ぶだろうと思っていました。
Juan は喜んでいませんでした。
プロジェクトを開いた Juan は混乱し、動揺します。自分は何か間違ったことをしてしまったのかと思いを巡らせます。「マネージャーは自分の仕事に不満だったのだろうか?」チームに参加したばかりで、マネージャーとも顔を合わせたことがない Juan は、何が起こっているのかと臆測します。このことについてどのように話をすればいいのかもわかりません。
バーチャルチームのマネージャーは、こうした状況にきちんと対応することが求められます。あなたがこの状況のマネージャーであったならば、どうしたと思いますか?
どうすればいいのか検討がつかなくても問題はありません。これから学習していきます。当社では、バーチャル部下と協調的に仕事をするためのアイデアやベストプラクティスを考案しています。
マネージャーのバーチャルコミュニケーションのベストプラクティス
当社では、マネージャーがバーチャルチームをそつなく率いることができるように、マネージャーとバーチャル部下の信頼関係を築くためのベストプラクティスのリストをまとめています。これらのベストプラクティスは、Juan との間に生じたような誤解について話し合い、回避するためのフレームワークになります。
以下は、優れたコラボレーションを確立し、バーチャルチームをエンゲージさせるうえで当社が推奨する最上級のベストプラクティスです。
定期的な個別ミーティングを設定する |
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気軽に連絡できるようにする |
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部下とのコラボレーションの歩調を確立する |
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迅速に対応する |
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四半期ごとにキャリア開発面談を実施する |
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四半期に一度現場スタッフに同行する |
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リモート従業員の認知度を高める |
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フィードバックを最も有効な方法で与える |
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定期的な個別ミーティングを設定する
マネージャーと部下がプロジェクトを確認し合う有効な方法は、部下との毎週または隔週の個別ミーティングを設定することです。こうした定期的の個別ミーティングでは、両者が同じ課題に対処していることや、プロジェクトがスムーズに進行していることを確認します。
そして、懸念が生じた場合にコミュニケーションチャネルでいつでもすぐに対処できるようにしておきます。誤解など何かが生じた場合には、予め確保された時間を使って問題に対処します。たとえば、定期的な個別ミーティングの際に、Juan のような部下が、この機会を利用して、自身が担当する Quip のプロジェクトに何が起こったのかを質問することができます。
個別ミーティングをどのように活用するかを一緒に考えます。マネージャーの中には、オープンな話し合いで状況を確認する場にすることを好む人もいれば、話し合う内容を事前に決めておくほうが効率的であると考える人もいます。マネージャーとその部下にとって最も有効と思われる形式を選択します。
個別ミーティングで話し合われた事項を速やかに実行に移します。バーチャルミーティングが終了した時点で、次週または次回までに部下に何を期待するのかを把握しているようにします。そして、部下が自分に何を期待されているのかを認識していることも確認します。
バーチャル部下の場合は、同じオフィスにいる部下よりも、個別ミーティングの時間を確保することが重要になる点に留意します。キャンセルする必要が生じたときは、必ずその週のうちに再スケジュールします。
気軽に連絡できるようにする
個別ミーティングは貴重な機会ですが、チームの誰もがマネージャーに気軽に連絡できると認識していることも重要です。部下が気軽に連絡できるようにしておけば、リモート従業員の仕事がはかどり、また、正しい方向に進んでいることを確認して安心できます。
マネージャーが対応しやすいコミュニケーション手段と時間帯を従業員に通知します。すぐに連絡の取れる方法はテキストですか? 電話ですか? それともメールですか?
サポートが必要であるにもかかわらずマネージャーに連絡がつかないとき、部下は誰に連絡すればよいですか? 異なるタイムゾーンで仕事をする従業員がいるときは特に、代理の担当者を知らせておくことが重要です。たとえば、マネージャーがロンドンで仕事をし、部下はサンフランシスコにいる場合は、午後遅くに連絡できる相手を知らせておきます。
チームとのコラボレーションの歩調を確立する
コラボレーションの歩調とは、部下とどのような調子で仕事をしていくかということです。以前に、Juan とそのマネージャーとの間のバーチャルコラボレーションプロセスの不備を指摘しました。こうした状況を回避し、コラボレーションの歩調を確立するうえで鍵となるのがコミュニケーションです。
バーチャルチームに適したコミュニケーション手段を見極めます。業務の内容を踏まえて、どのようなコミュニケーションが適切かを把握します。エンジニアのチームを管理しているとしたら、どのようにコラボレーションしますか? チームと連絡を取り合ったり、業務の品質管理を行ったりするために、どのような種類のコミュニケーションツールを使用しますか?
迅速に対応する
リモート従業員が直面する大きな弱みは、取引の承認を得る場合や特定のプロジェクトを先に進める場合など、許可の取り付けに時間がかかることです。マネージャーのサインオフを要するプロジェクトをすぐに承認できるようにして、リモート従業員をサポートします。
四半期ごとにキャリア開発面談を実施する
視界に入っていなければ、忘れられてしまうのでしょうか? リモート従業員の中には、オフィスにおらず、昇級の機会を耳にすることがないため、昇進や出世の見込みが低いと感じている人がいます。
必ず四半期ごとにリモート従業員のキャリア開発面談を設定します。キャリア開発について話し合うことで、従業員が達成したいと思っていることを常に認識し、バーチャル従業員に正しい方向に進んでいることを実感させることができます。
キャリア開発について四半期に 1 回以上従業員と 1 時間のバーチャル面談を行うか、会社で認められる場合は実際に会って面談します。
こうした面談の実施方法に関するその他のヒントは、「キャリアに関する会話の促進」を確認してください。
四半期に一度現場スタッフに同行する
Salesforce のあるマネージャーは、四半期に 1 回ずつ 42 人のバーチャル部下に「同乗同行」する予定を組んでいます。42 人です! すごいですね。
このマネージャーの部下は顧客との打ち合わせに出かけることが多く、各々のバーチャルデスクを離れていることがほとんどであるため、マネージャー自身が部下に一日同行して、その業務に対する理解を深めています。
「チームのメンバーのことを知り、それぞれと一緒に過ごす貴重な機会でもあるんです。」
このモジュールは、「バーチャル」コラボレーションがテーマで、「直接的」なコラボレーションに関するものではないと思うかもしれません。けれども、どのコラボレーションにも人間関係がかかわり、各人の役割と責任を理解する必要があります。会社の予算が許すのであれば、日常業務に取り組むバーチャル部下と一緒に過ごす日を設けます。たくさんのことを学ぶことができ、その後のバーチャル管理に大いに役立ちます。
リモート従業員の認知度を高める
他の同僚の前で、バーチャル部下の真摯な取り組みについて言及するようにします。そして、部下の業績を敢えて Chatter に投稿します。
考えてみてください。マネージャーが発表しなければ、他の従業員がバーチャル部下の業績を知ることはありません。たとえオフィスにいなくとも、チームにおけるバーチャル部下の存在感を示すようにします。
そして、バーチャル部下が定期的にオフィスを訪問するための予算を優先的に承認します。オフィスで実際に顔を合わせることは、チームが団結するうえで、そしてオフィスで行われている業務とバーチャル部下のつながりを強化するうえで最善の方法です。
フィードバックを最も有効な方法で与える
一日中根を詰めて仕事をしていれば気が張ります。研究では、リモート勤務者は他の従業員より勤務時間が週に平均 10 時間も長いことが示されてます。
ここで、リモート従業員であるあなたが、担当するプロジェクトや企画に全力を注いできたところを想像してみてください。上司に企画書を提出すると、数時間のうちに上司が企画書を目を皿のようにして読み、変更可能な箇所をすべて指摘してきました。
このマネージャーの意図はおそらく間違っていないものと思われます。部下には最善を尽くしてもらいたいと考えているのでしょう。けれども、部下にしてみれば、このフィードバックを全部読むだけで脱力し、敗北感を味わい、場合によってはやる気を失くしてしまうおそれがあります。それどころか、こうしたことが度重なれば転職先を探し始めるかもしれません。誰だって自分はまともな仕事ができないとは思いたくありません。
適切な方法でバーチャル部下へフィードバックすることが極めて重要なのはなぜでしょうか?
- バーチャル部下とは顔を合わせる時間が限られています。確固たる信頼関係を築くうえで、建設的なフィードバックを大量かつ頻繁に書面で伝えることが有効な方法ではないことがあります。
- バーチャルチームを管理するときは、その場ですぐに直接指導する機会がありません。
そんなことを言っても、やんわりとした表現で気遣っている暇はないし、部下も一人前の社会人なのだから……と思うかもしれません。
本当です。やんわりとした表現で気遣えるほど時間に余裕がある人はいませんし、誰もがフィードバックを読んで能力を高めるプロ意識を持つべきです。とはいえ、部下がフィードバックに同意できない場合や、疑問を抱いた場合はどうでしょうか? そうした部下にもフィードバックを実践することを求めますか? フィードバックを取り入れれば企画書が良くなる理由を明確に述べることはできますか?
マネージャーからのフィードバック後もバーチャル部下がエンゲージし続け、フィードバックを学習機会と捉えていることを確認します。
建設的なフィードバックをバーチャル部下に与えるときは特別な配慮が必要です。
- プロジェクトの最後まで目を通し、全体的なフィードバックから始めます。たとえば、プロジェクトの企画書を通して部下が間違った書式を用いている場合には、書式が誤っている箇所に逐一印を付けるのではなく、問題を一度指摘します。
- フィードバックを与える前に、必要なフィードバックかどうか、単に個々人のやり方の違いではないかどうかを自問します。つまり、フィードバックが主観的なものか客観的なのものかを判断します。
- バーチャル部下に電話して、フィードバックを実践する一番良い方法を一緒に考えます。
- 現実的になり、実践する必要のあるフィードバックと、実践してもしなくてもよいフィードバックについて柔軟に話し合います。
まとめ
バーチャルチームの管理にストレスを感じる必要はありません。マネージャーのバーチャルコラボレーションのテクニックやベストプラクティスを認識していれば、バーチャル管理の極めて厄介な問題に備えることができます。