文化と価値が重要である理由についての理解
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 企業の成功に文化がどのように寄与するのかを説明する。
- 文化において価値が果たす役割を理解する。
- Salesforce がどのように文化や価値へアプローチするのかを詳細に説明する。
企業文化が果たす役割
Nordstrom デパートの従業員が買い物客の結婚指輪から落ちたダイアモンドを探すために、店舗の掃除機を一つ一つ丹念に調べたという話を聞いたことがありますか? Southwest 航空のパイロットが、危篤状態の親戚のもとへと向っている搭乗客のために離陸を遅らせた話はどうですか? あるいは、通販小売店 Zappos の従業員が、足に影響する病状を持つ顧客に花束を贈った話もあります。
これらの話は、企業文化が従業員の行動にもたらす影響を示唆しています。
企業文化について考えたとき、何が思い浮びますか? 企業文化と聞いて、おしゃれなオフィス、無料の試供品、素晴らしい特典を思い浮かべるかもしれませんね。もちろん間違いではありませんが、優れた企業文化の条件はそれだけに留まらないのです。
文化とは、生活圏の文化、信念、集団の伝統など、一個人を形成する文化を指す場合があります。このモジュールでは「文化」とは企業が持つ企業文化を指します。
文化を尊重することが企業にとって重要である理由
文化は、その会社らしさであり、同じ目的に邁進する人々のコミュニティの一員として会社が支持し、尊重するものです。それは、従業員同士の協力の仕方や、同僚、顧客、パートナー、コミュニティとの接し方を定める上での強力な指針となります。コンピューターのオペレーティングシステムにたとえるならば、文化は社内のあらゆる人の行動を駆り立てるバックグラウンドで実行されるコードと考えることができます。
文化は、その在り方が正しければ、競争での優位をもたらす差別化要因にもなります。アカウントエグゼクティブであろうと、ソフトウェアエンジニアであろうと、職種の日常業務はどの組織でも基本的には同じです。違いは、一緒に働く人々と仕事をする環境であり、つまるところ文化ということなります。
健全な職場文化では、リーダーシップの信用度が高くなり、従業員が深い敬意を感じることにつながります。最近のある調査によると、健全な企業文化は次のように定義されています。
- 従業員を惹きつけ、雇用し、維持するのに役立つ
- イノベーションを引き出す
- 俊敏性とスピードを高める
- 品質と効率を向上させる
- 顧客中心と顧客ロイヤルティを促進する
- 業績を伸ばす
ソーシャルメディアの時代には、強固な文化はブランドをも強化します。それは、従業員が会社について前向きな発言をする可能性が高くなるためです。
健全な企業文化の鍵を握るのは透明性です。プロフェッショナルサービスネットワークの Deloitte は、企業の透明性が高まっている現代を表現して「裸の組織」というフレーズを使用しました。企業は文化的な「内輪の恥」を隠しておけなくなりました。インターネットでは誰もが、企業の文化を最もよく知る人、つまりは従業員から直に情報を得ることができます。
従業員が不満を感じれば、他の人にそれを伝える可能性が高くなります。友人だけでなく、オンラインで共有されてしまうことさえあります。これは有能な人材の獲得に大きく影響する可能性があります。
どうしてだと思いますか? 利用するレストランや予約するホテルを決める前に、私たちの多くが Yelp や TripAdvisor といったサイトをチェックするのと同じように、毎月 5,000 万人以上のユニークユーザーが雇用主レビューサイト Glassdoor を利用しています。
Glassdoor によると、次のことが判明しています。
- 求職者の 69% は、たとえ失業中であっても評価の低い企業に就職しようとしません。
- サイトのユーザーの 65% は、企業について意見を形成する前に少なくとも 5 件のレビューを読んでいます。
Glassdoor で、現在の会社と競合他社の人材獲得について調べたことはありますか? Glassdoor の素晴らしいところは、従業員にとっても、そして企業のリーダーにとっても、完全な透明性のある情報源である点です。利用しない手はありません。
ただし、文化は従業員に関することだけではなく、顧客関係を促進することもあれば、逆に妨げることもあります。強固な文化は、魅力ある従業員体験の提供につながります。調査は、素晴らしい従業員体験は素晴らしい顧客体験につながり、それが (ご想像のとおり) より堅調な収益拡大につながることを示しています。データセットでは、顧客体験と従業員体験のレベルが高い企業は、レベルの低い企業のほぼ 2 倍の収益成長を示しています。
文化は従業員、顧客、および企業の成功に大きな影響を与えます。「文化が戦略を食う」という表現を聞いたことがありますか? 朝食になるのか昼食になるのかはわかりませんが。いずれにせよ、まずは文化について強い意識を持たなければ、入念な企業戦略も失敗に終わってしまうおそれがあります。
企業文化の価値
先ほど、米百貨店大手の Nordstrom の従業員が見つけたダイアモンドの話を紹介しました。この従業員は掃除機のごみの中を探すように誰かに言われたわけではなく、考えるより先に行動しました。お客様を何よりも優先するという Nordstrom のカスタマーサービスの基本的価値を見事に体現しています。
また、病気の親戚に会いに行く搭乗客のために離陸を遅らせた Southwest 航空のパイロットの話もありました。このパイロットは Southwest 航空の基本的価値である「奉仕の心」、他者のニーズを優先するということを体現しました。
さらに、Zappos の従業員が、病気が理由で靴を返品した顧客に花を贈った話もありました。この従業員は Zappos の基本的価値である「サービスを通じてワオ! を届ける」ことを実践したのです。
いずれの例でも、ためらわずに、または許可を求めずに従業員が取った行動の指針となったのは、その企業の基本的価値です。これが価値の力です。価値に次を可能にします。
- 従業員の日々の行動、判断、アクションの指針となる
- 従業員を惹きつけ、雇用し、維持する方法の指針となる
- 仕事の仕方や従業員同士の接し方に影響を与える
文化と価値に対する Salesforce の考え方
幸いにも Salesforce の創業者 Marc Benioff と Parker Harris は、構築する製品やそれを市場に投入する方法だけでなく、創造する文化についても強い意思を持っていました。
1999 年に Salesforce を設立したとき、Marc と Parker は利益追求以外の目的を持つ、今までにないタイプの会社を作りたいと考えていました。二人は基本的価値に基づいて会社を設立したのです。
Salesforce のコアバリュー (信頼、お客様の成功、イノベーション、平等、持続可能性) は、お客様とパートナーの Salesforceエコシステム、従業員、コミュニティを結束させます。私たち全員が日々こうした基本的価値を実践することに対して個人として責任を負い、またその責任をお互いに課しています。こうした価値は、私たちに刺激を与え、お客様、コミュニティ、自分たち自身にかつてないレベルの成功をもたらします。
私たちは互いを大切にし、共に楽しみ、世界をより良い場所にするために協力し合います。1999 年以来、Salesforce は 4 億 3 千万ドル以上の助成金を提供し、570 万時間以上のボランティア活動を行い、51,000 の非営利団体が Salesforce のソフトウェアを無料で使用しています。
Salesforce の文化は世界中で評価されています。光栄にも、『Fortune』誌の「World’s Best Workplaces (世界で最も働きがいのある企業)」 (4 年連続)、あらゆる国において Glassdoor の「Best Places to Work (最も働きがいのある企業)」 (2021年)、『People』誌の「Companies that Care (思いやりのある企業)」 (4 年連続) にそれぞれランクインし、Human Rights Campaign の Corporate Equality Index (企業平等指数) では 3 年連続で 100% を獲得しています。
こうした評価を誇らしく思いますが、強固な文化を創造することは終わりのない旅であり、最優先事項であり続けなければなりません。
Salesforce の成功には数々の秘訣がありますが、最も重要なのは次の 3 つです。
- 強い意思を持つ。創業初日から文化について強い意思を持っています。そのため、急成長している間も「常に私たちらしく」いられるのです。
- 責任を共有する。すべてのリーダー、マネージャー、従業員が、文化の保護と進化に寄与できるように権限と機能が与えられています。
- 改善を継続する。私たちは現在の栄光に満足しません。どの企業も満足してしまってはいけません。常に従業員の声に耳を傾け、改善の余地を見つけようとしています。
これまで説明したように、文化とは特典や試供品などよりはるかに大きな意味を持ち、多くのことが文化に懸かっています。基本的価値とそれらを実現する経験について詳しく学ぶ準備はできましたか? これについては次の単元で説明します。それでは始めましょう。
リソース
- 外部サイト: Great Place to Work
- 外部サイト: Glassdoor: Employer Branding 101 (雇用主のブランディング 101)
- 外部サイト: Journal of Marketing: How Can Stressed Employees Deliver Better Customer Service? (ストレスを抱える従業員がどうして優れたカスタマーサービスを提供できるのか?)
- 外部サイト: Glassdoor: Top HR Statistics (人事統計上位)
- 外部サイト: Employee Engagement: The Wonder Drug For Customer Satisfaction (従業員エンゲージメント: 顧客満足度の特効薬)
- 外部サイト: Forbes Insights: The Experience Equation (体験の方程式)
- 外部サイト: The Impact of Culture on Business Strateg y(文化がビジネス戦略にもたらす影響)
- 外部サイト: The Business Case for a High Trust Culture (信頼性の高い文化のビジネスケース)
