チームのエンゲージメント
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 各チームメンバーのモチベーションを高めるものを特定する。
- エンゲージメントの会話を効果的に行う方法を説明する。
- 各人に合わせた報奨や評価を含むエンゲージメント計画を実行する。
従業員のモチベーションを高めるものの特定
部下が何によって充足感を得るかを特定して理解するには、時間をかけ、正直な会話を重ね、柔軟に対応する必要があります。労力をかけて従業員のモチベーションを解き放つことで、従業員が楽しんでよい仕事をできるようにプロジェクト、アイデア、および会話の枠組みを形成できます。
モチベーションのエキスパートで著者の Daniel Pink によると、人のモチベーションは AMP の頭文字にまとめることができます。AMP は次のものを表します。
- Autonomy (自主性) — 自主的に働き、自分で方向性を決めることができる
- Mastery (成長) — 仕事で成長する機会がある
- Purpose (目的) — 自分の仕事が何か大きなことに貢献しているという信念と意識が持てる
従業員に AMP アプローチを使用して今までのやり方から抜け出させることで、従業員が最良の自分になり、最良の仕事をする機会を与えることができます。従業員はより大きな目的意識を持ち、楽しんで仕事に時間と努力を投じ、目に見える影響を及ぼし、その結果としてビジネスに利益をもたらします。つまり、Win-Win-Win の状況です。
Salesforce では、チームの AMP が Salesforce 文化とマネジメントに根付いています。 たとえば自主性について言えば、Salesforce のマネージャーは、チームメンバーが仕事をやり遂げる方法を自分で決定できるようにしてモチベーションを高めるとともにサポートもしています。しかも、方法だけでなく作業場所も柔軟に選べるのです。必要に応じて在宅で作業することもできますし、キャンパス内にある別の静かな場所やコラボレーションできる場所で仕事をやり遂げることもできます。
成長を促進するために、トレーニングや能力開発の機会を通じて従業員がスキルセットを高められるようにしています。目的に関しては、V2MOM プロセスがあります。これによって従業員は自分の仕事を有意義な方法で会社全体の目標に連携させ、つなげることができます。さらに信頼、お客様の成功、イノベーション、平等、持続可能性という Salesforce の価値観に基づくことで、従業員は、作業環境や周囲の世界をより良い場所にするように行動できます。
Salesforce ではこうした原則を確固たる信念として 3 つの部分からなる従業員価値提案 (EVP) の中心に組み込み、従業員がその時間および能力と引き替えに Salesforce に期待できることを約束しています。
それはどのようなものでしょうか? 確認してみましょう。
従業員のモチベーションを高めるもの | Salesforce の場合 |
---|---|
有意義な仕事をする機会 |
従業員は、やりがいのある方法で個人の作業と影響を会社のビジョンと成功につなげることができる。 |
よい環境でよい同僚と共に働く |
Salesforce 文化の中で優れた同僚と働く。 |
それに対して適正な見返りがある |
キャリアを進展させる機会があり、自分と他者を大切にし、適正な報酬を得ることができる。 |
自主性、成長、目的の促進に加え、従業員のモチベーションを高めるには他にも次のような方法があります。
- 従業員と充実した時間を過ごすことを優先事項にする。
- うまくやり遂げた仕事に対して感謝を示す。
- 従業員の流儀と働き方の好みに合わせてアプローチを変える。
- よりよい聞き手になる。
- 従業員が成長し活躍できる機会を見つける。
- 意思決定をする際に可視性、論理的根拠、および意見を取り入れる。
- 信用すべきときは信用する。
チームのモチベーション向上における自分の役割と、それがエンゲージメント領域のどこに該当するかを把握できたので、次は継続的にエンゲージメントに対処する方法を見てみましょう。
ステップ 3: エンゲージメントの会話を実施する
従業員との膝を交えた 1 対 1 の会話は、おそらく継続的にスケジュールに組み込まれているでしょう。ただし、その会話はほとんど戦略上の最新情報やプロジェクト開発の質問に限られているのではないでしょうか?
従業員のエンゲージメントを高めるには、定期的な 1 対 1 の会話で大局的なことを話し合う余地を作る必要があります。とはいえ、期日や重要な案件のプレッシャーがかかっているときに、目下のタスクから離れて別のことを考えるのは困難です。
では、どうやって会話を準備すればよいのでしょうか。まず、会話を行う事情を共有します。従業員が、組織に対する自分の適性、自分の役割が重要な理由、自分の努力に対するマネージャーの評価を認識していることを確認します。たとえば、次のように会話を始めるとよいでしょう。
「2 人で話しましょう。チームとこの会社に対するあなたの貢献は重要です。あなたが仕事で充実感とエンゲージメントを感じていることを確かめたいのです。」
これで、この会話を本格的に始める準備ができました。次のステップでは、自由形式の質問をして、従業員がどう感じ、何を考えているのかについて理解を深めます。
- あなたがここで成功するために他に手助けできることはありますか?
- 現在の仕事を気に入っていますか?
- キャリアにおいて他にやりたいことはありますか?
- 仕事で最もやりがいがあることは何ですか?
- この職種の何に引き付けられますか?
- 仕事でもっとやりたいことは何ですか?
- あなたが仕事でモチベーションを維持するために、私は何をする必要がありますか?
従業員に会話の主導権を取らせます。強い反応を引き起こすものに注意し、会話の後にこれらの領域に対処します。まとめとして、会話を始めたときの内容で締めくくります。
- チームと会社に対する従業員の適性と、なぜ従業員が重要なのかを再確認します。
- 従業員にとって重要なことを反復します。(彼らの要求のいくつかに対処することを明言します。)
- これらのエンゲージメント目標に向けた進行状況を毎月または四半期ごとに確認する時間を設けます。
直属部下とチェックイン、フォローアップ、または総合的な能力開発に関する会話を行う場合、交通安全でお馴染みの「Stop, Look, Listen (止まる、見る、聞く)」モデルを使用して会話を最大限に活用します。
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Stop (止まれ) — 「実行モード」を一時停止して、従業員が自分の仕事に目的があると感じていること、あなたがその目的の重要性に沿っていることを確認します。具体的には次のような行動で示します。
- 常に従業員の現在の仕事を会社全体のビジョンにつなげます。
- フィードバックをするときには、会社全体を考慮してコーチングします。
- 可能であれば、従業員が最初から最後までプロジェクトの責任を追い、やり遂げる感覚をつかめるようにします。
- 前向きな気持ちと将来への期待をできるだけ持続します。
- Look (見る) — 従業員が現在のプロジェクトについてどう感じるかを説明しているとき、そのボディランゲージと反応性を観察します。
- Listen (聞く) — 80/20 ルールを守り、従業員が会話の大半 (80%) を話すようにします。何を話すか (話さないか) に耳を傾けて、相手の日常的なエンゲージメントを把握します。
時間をとって直属の部下にその仕事について話を聞き、理解することで、彼らの会社での成長と将来にあなたが投資した成果が明らかになります。
ステップ 4: エンゲージメント計画を作成し、フォローアップする
ミーティングの後、話し合った内容と同意した内容の概要を記載した感謝のメールと 1 か月後の予定を案内するカレンダーでフォローアップします。それによって従業員は、あなたが大局的に考えることを歓迎していると確信でき、日々の「終わらせるべき作業」を超えたアイデアを共有できるようになります。また、このような考え方は、今後のディスエンゲージメントの危険を見分ける上でも役立ちます。次に進み、向上をどう評価するかも、エンゲージメント強化の重要な側面であることを学習しましょう。
報奨と評価
従業員が素晴らしい仕事を成し遂げたときにそれを褒めることは、マネージャーとしてすべき最も簡単かつ重要なことの 1 つです。The Energy Project と Harvard Business Review が最近発表したレポートでは、従業員は驚くほど評価の重要性を認めています。
- 53% は評価されたことでいっそう熱心に取り組むようになった。
- 58% は評価されたことでエンゲージメントが向上した。
- 71% は評価されたことで仕事が楽しくなった。
この調査では、リーダーがどのようなことをもっとしてくれたらより積極的に取り組むようになると思いますか、という問いに対し、従業員の 58% が「もっと認めて欲しい!」と述べています。ハーバード大学の別の最新調査でも、パフォーマンスが最高のチームは、チームメンバーやマネージャーがお互いを評価する言葉を建設的なフィードバックより 6 倍も多く交わしていることが判明しています。
そうは言っても、人によって評価への反応は異なることを覚えておきましょう。大勢の前で発表されるのを好む人もいれば、個人的に「よくやった!」と褒められるのを好む人もいます。大切なのは、単に他者を評価するのではなく、その人に意味のある方法で形にすることなのです。各従業員に合わせた方法で報奨を与え、評価するには、次のことを考慮します。
- 興味
- ニーズ
- 好み
- 価値
- コミュニケーションスタイル
ただし、個人がどのように評価されると嬉しいかを知る最善の方法は、尋ねることです。たとえば、次のような質問をします。
- どのような方法で評価されたいですか?
- 何が役に立ちますか? どのような場合に不快に感じますか?
- あなたにとって最も意味があることは何ですか?
- 高く評価されていると感じるのはどのような場合ですか?
次の単元では、最善の努力にもかかわらず従業員が「去ろう」としている場合の対処法や、次の離職者を出さないための方法を見ていきます。
リソース
- 動画: RSA ANIMATE: Drive: The surprising truth about what motivates us (モチベーションの驚くべき真実)
- PDF: The Human Era @ Work (職場での人間らしさの時代)
- 記事: The Ideal Praise-to-Criticism Ratio (称賛と批判の理想的な比率)
- 記事: Why Appreciation Matters So Much (感謝することがとてつもなく大切な理由)
- 記事: 5 Ways Leaders Rock Employee Recognition (リーダーが部下を評価する 5 つの方法)
- 記事: 80+ Ways to Recognize Self and Others (自分と他者を評価する 80 以上の方法)