プレゼンテーションでのストーリーテリングの使用
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- チームをエンゲージさせるプレゼンテーションを作成する。
- 人々を引き込むプレゼンテーションを計画して実施する。
この単元では、自身のアイデアを発表するときに、相手が映画や演劇を観ているかのように感じさせる方法、あるいは素晴らしいストーリーの一部であるかのように感じさせる方法について説明します。
現在あなたは可能な限り最高の発表者になるためのトレーニングを受けています。チームや取引先の人々はあなたの聴衆です。
いいですか。心配することはありません。わずかな指導で、あなたも確実にスターになれるのです。
プレゼンテーションをまとめるときは、まず初めに聴衆があなたの語るストーリーとのつながりを感じられるようにします。最初に、何を、誰に、どのように発表するのかを考えます。
次のことを自問します。
- 主な聴衆は誰か?
- どのような情報を知らせる必要があるか?
- 聴衆のスキルレベルや背景知識はどのくらいか?
- 聴衆にとって一番大切なことは何か?
ここで一例を見てみましょう。
Jasmine は、あなたと同じくマネージャです。年次レビューの際にチーム全員を集め、各人が達成した内容を述べ、次年度のチームのプロジェクト計画を発表してもらおうと考えています。
Jasmine の聴衆
Jasmine はクリエイティブ分野の 8 人のチームを管理しています。その数人はチームに参加したばかりですが、他の数人は長い間在職しています。中には経験年数が Jasmine より上の人もいます。
チームの面々は、チームが組織の成功にどのくらい貢献したかという点と、各チームメンバーが個人的にどの程度貢献したかという点に関心を抱いています。新しいチームメンバーは、チームのスピードにできるだけ早く追いつけるように、チームが過去 1 年にどのような成果を挙げたのかにも興味があります。
そして、年度末が近づいていることから、チームの最大の関心事は来年度に取り組むプロジェクトです。
Jasmine のチームの年次レビューか、Jasmine のチームのストーリーか?
Jasmine はチームの業績をスライドショーにすることを思いつきました。統計値を算出してグラフ表示すれば、見栄えのする (けれども、おそらく退屈な) スライド式のプレゼンテーションを作ることができます。けれども、Jasmine は一風変わったプレゼンテーションに挑戦することにしました。
Jasmine が過去 1 年間の数値情報に基づいて、チーム全員が登場する現実味のあるストーリーをまとめたらどうなるか考えてみましょう。
下準備
Jasmine は発表の前に、チームの業績を検討し、最大の成功を収めた時のことを思い返します。新メンバーのチームへの参加、グループの偉業、チームの社外行事など主な出来事を挙げていきます。
その年の最高の瞬間や最悪の瞬間を振り返るストーリーに絞り込み、次の質問に答えます。
- チームとして結束した特定の出来事や業績は何か?
- チームの各人にとって転機となった業績は何か?
- チームが最強であったのはいつか?
- 最も弱かったのはいつか?
- チームが一丸となって成長し進化していることを確認するにはどうすればよいか?
Jasmine がこの答えをミニストーリーにすれば、チームメンバーが Jasmine の語るストーリーとのつながりを感じることができます。
最初に Jasmine はプレゼンテーションの基本構造を使用します。簡単に使えるものであることに驚くかもしれません。けれども、この後の例で示すとおり、チームがプレゼンテーションを楽しめるようにエピソードも交えていきます。
具体的な手順は次のとおりです。Jasmine は事前にプレゼンテーションで話をする 3 つのポイントを考えます。この 3 つを次のように呼ぶことにします。
- 要点 1
- 要点 2
- 要点 3
このフォーマットは誰でも使用できます。
次に、Jasmine は 3 つの要点を挙げ、それぞれの概要をストーリー風にまとめます。
はじめに |
発表者は、ストーリーや逸話を挙げて場を和ませた後、本題の 3 つのトピックを説明します。 |
要点 1 ~ 3 |
発表者は要点を紹介し、トピックに関する情報を共有します。 続いて、話し合った内容をまとめて、次に話す内容を述べます。 |
結論 |
最後に、発表者は 3 つの要点を簡潔にまとめた後、聴衆からの質問を受け付けます。 |
Jasmine は次の構造にまとめて使用します。
構造 |
時間 |
例 |
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導入: Jasmine がチームミーティングの準備を整えます。そして議題を伝えます。 プレゼンテーションの説明においても、チームが一丸となって達成した内容に関する逸話を盛り込んでチームを引き込みます。 |
10 分 |
プレゼンテーションのこの部分で Jasmine が行うこと:
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要点 1: 「過去 1 年を振り返る」 Jasmine の 1 つ目の要点は、チームの 1 年を「振り返る」ことです。 ここでもプレゼンテーションに個人的な内容を取り入れ、各人の貢献を紹介して、聴衆をストーリーに引き込みます。 |
10 分 |
プレゼンテーションのこの部分で Jasmine が行うこと:
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要点 2: 「学んだ教訓について話し合う」 Jasmine の 2 つ目の要点は、チームが過去 1 年間に学んだ教訓を確認することです。 自身がマネージャとして学んだ教訓に関する個人的な逸話も披露します。 |
15 分 |
プレゼンテーションのこの部分で Jasmine が行うこと:
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要点 3: 「来年取り組むにプロジェクトの計画について説明する」 Jasmine の 3 つ目の要点は、チームおよびチームが取り組むプロジェクトに関する自身のビジョンについてです。 |
15 分 |
プレゼンテーションのこの部分で Jasmine が行うこと:
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結論、実践内容、質問: Jasmine はチームに説明した 3 つのトピックを要約してプレゼンテーションを終了します。 最後に質問を受け付けます (任意)。 |
10 分 |
プレゼンテーションのこの部分で Jasmine が行うこと:
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プレゼンテーション全般にストーリーを盛り込むと、チームの連帯感やエンゲージメントを促進できます。つまり、Jasmine のプレゼンテーションは、単にチームの数値情報に基づく年次レビューではありません。チームがしてきたことと、それからこれからすることの解説です。
Jasmine がプレゼンテーションの構造を確定したら、次はストーリーを視覚的に示す方法を考えます。
以下に、人々を引き付けるスライドデッキの作成方法のヒントをいくつか示します。
- 内容を整理する — 概要を示す箇条書きの 1 項目ごとに 1 枚のスライドにまとめます。こうすれば、1 枚のスライドに 1 つの内容が要約されます。主要な内容が複数ある場合は、別のスライドを作成します。
- 余裕をもたせる — スライドに情報を詰め込まないようにします。1 枚のスライドに数項目のみを記載します。口頭で説明する内容をすべて表示する必要はありません (スライドを作成したあなた自身が喋るのですから)。要点を絞ってリストにします。スライドごとに 4 ~ 6 項目の箇条書きと 1 つの画像に制限します。文字や画像が多いと、聴衆があなたの話を聞かずに、スライドに目をやります。
- 簡潔にする — 文字やグラフィックが散乱するスライドほど見づらいものはありません。聴衆の気を散らさず、次のスライドにつながるシンプルな内容で十分です。
- 読みやすくする — 文字も画像も通常は大きいほうが好まれます。フォントサイズを 24 ポイント以上にし、聴衆が読みやすいコントラストにします。一般に、背景を明るくして文字を暗くしたほうが読みやすくなります。
以下に、プレゼンテーションの実施前および実施中に参考となるヒントをいくつか示します。
- 準備する — Steve Jobs は基調講演を行う前に何日も、あるいは何か月もかけて準備していたことをご存知ですか? 本当です。つまり、プレゼンテーションのプロになる最初のステップは準備をすることです。次のステップはさらに準備をすることです。質問に答えられるようにスライドデッキを記憶します。
- 早目に到着する — 機器が問題なく機能することを確認し、メッセージを伝えるために心を落ち着ける時間を設けます。
- 姿勢をチェックする — 聴衆に面し、胸を張った姿勢であることを確認します。手を降ろした状態から始め、ジェスチャーを交えて要点を強調します。
- 間を埋める言葉を排除する — 自身の音声を録音して聞き返して「えっと」などの言葉を確認します。そのような間を埋める言葉を口にする頻度に注意して、できる限り使わないようにします。しゃべり続ける必要はありません。間が空いても構いません。あなたが話す内容を聴衆が受け止められるようにします。
- 重要なメッセージを強調する — 声のトーンを変えて盛り上げたり、一拍置くことで重要なメッセージを強調したりします。
- 目を合わせる — 聴衆の目を見て連帯感を生み出します。
昔の人々は生きる術としてストーリーを語っていたことをご存知ですか? たとえば、洞窟の壁画はこの先に危険があることを他の人々に警告するものでした。他者のメッセージを伝達し理解できる人が、安全に緑豊かな牧草地に辿り着くことができました。
ストーリーテリングについて、そしてビジネスにストーリーを利用する理由について学んだ皆さんが、この先も活躍を続け、成功できることを願っております。チームを管理できるだけでなく、チームの意欲をかき立てることができます。
これで、チームのサクセスストーリーを書き上げるために必要なツールと知識を習得することができました。