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V2MOM を使用した組織内の意思統一の実現

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

  • 会社の意思統一が重要である理由を説明する。
  • Salesforce の V2MOM の 5 つの要素を挙げる。
  • V2MOM によって組織内の意思統一がどう図られるかを明確に説明する。

全社的な意思統一の重要性

組織全員の足並みを揃えることは容易ではありません。中小企業でもグローバル企業でも、全員を正しい方向に進ませるのは至難の技です。

会社全体がボートで、従業員がそれぞれオールを握っているところを想像してください。あなたが目的地を示し、全員に「いざ出発!」と声をかけます。承認されたら、次はどうすればよいのでしょうか?

漕艇競技のチームなら、全員の息が合えばスピードが増すことを知っています。スピードを最大、抵抗を最小にするために、漕手全員のオールの入水と離水を完全に一致させる必要があります。勝つためには、誰もが最善を尽くし、成果に対する責任を負うというビジョンをもって邁進し続ける必要があります。

このモジュールに取り組んでいるということは、おそらく自分自身、チーム、そして会社を成功に導くことに関心があるのでしょう。会社の意思統一は、漕艇チームが勝利を目指すこととさほど違いはありません。どちらも要は、組織全員の足並みを揃え、的確なやり方で協力し、共通目標に意識を集中させ、驚異的なスピードで進んでいくということです。

そして漕艇と同様、会社の意思統一も容易ではありません。ハーバード大学の Robert Kaplan が著した『キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード』に掲載されているある調査によると、会社のビジネス戦略と、会社の目標を達成するために自身に期待されていることを完全に把握している従業員は 7% にすぎないということです。残りの 93% は毎日一体何をしているのか不思議になります。会社の目標には直接影響のない業務に取り組んでいるということなのでしょうか? 従業員の意思統一やパフォーマンス向上を図るべき時機であるように思われます。

実際、従業員は意思統一を切望しています。Workforce Intelligence Institute と SuccessFactors による調査では、従業員は次のことを望んでいることが示されています。

  • 自身の業務が会社の成功にどのような形で貢献するのかを明確に理解し、自身で確認すること
  • 自身が行っていることによって何かが変わることを実感すること
  • 自身よりも大きな何かの一部であると感じること

従業員は、組織の目標と戦略を理解し、その達成に寄与しているとき、そして、会社の全体的なビジョンの達成における自身の役割をはっきりと認識できるときに、その積極性が増大します。

意思統一への取り組み

会社の意思統一を優先事項にすることは、適切な出発点です。目標設定や事業計画プロセスを使用して、全員の共通理解を形成することも役立ちます。しかし、各人の目標を確実に一致させる、つまり、会社のビジョンの達成における自身の役割を認識できるようにするためには、特別で革新的なアプローチが必要です。具体的には次のアプローチがあります。

  • 全員が同じ方向に進み続けるようにする
  • 優先順位と最重要事項を明確に示す
  • 目標に対するチームの進捗状況をマネージャーが追跡および測定できる
  • 個人が結果を出すことに責任を負えるようにする

Workforce Intelligence Institute によると、従業員間で意思が統一されて、各人が集中しているときは、会社の業績にプラスの影響があるとのことです。

しかし、簡単に実行できて理解しやすく、全員の意思を統一して積極的に取り組ませながら、意思統一を実現する方法などあるのでしょうか? Salesforce では、V2MOM がその役割を担っています。

Salesforce の V2MOM

Salesforce では、どのようにして意思統一を図っているのでしょうか。会社の猛スピードの成長を考えれば、恒常的なコミュニケーションと完全な意思統一は最も重要です。当社では、何年も前に開発された「秘密」の管理プロセスによって、この両方を達成してきました。

事の発端は、当社の創立者である Marc Benioff が Oracle に勤めていた時代に遡ります。当時 Benioff 氏は、担当する部門のビジョンや目標を明確化するための方法をなかなか確定できずにおり、管理職や人材開発、精神的指導者らの英知を模索していました。そして、聞き知った知識の中でも最適なものを結集して、V2MOM という管理システムを構築しました。これは、Vision (ビジョン)、Values (価値)、Methods (メソッド)、Obstacles (障害)、Measures (基準) を表します。

このツール (「ブイツーマム」と発音します) は、Salesforce の成功の中核を成すものです。他にも活用できるリーダーシップのパラダイムやフレームワークは多数ありますが、V2MOM の魅力はそのシンプルさです。V2MOM は簡単に会得して導入できます。そして何よりも、会社の各従業員に自身の V2MOM を作成してもらい、会社の成功にどのように貢献するかを皆に簡単に知らせてもらうことができます。

V2MOM の各要素を見てみましょう。

要素 定義
ビジョン
行いたいことや達成したいことを定義します。
価値
ビジョンの追求を支える原則や信念です。
方法
業務の完遂に必要な行動や手順です。
障害
ビジョンを達成するために克服しなければならない課題や問題、難点です。
基準
求める成果を表し、測定可能なものとします。

この 5 つの要素をすべて組み合わせれば、自身の進路を示す詳しい地図と目的地に導く羅針盤を得ることができます。

Benioff 氏ら Salesforce の共同創立者が会社を興した当初は、確かに羅針盤が必要でした。言い伝えによると、彼らはアメリカンエキスプレスの封筒の裏に最初の V2MOM を走り書きしたそうです。こんな感じです!

伝えられている話によると、彼らはアメリカンエキスプレスの封筒の裏に最初の V2MOM を走り書きしたそうです。

この初代の V2MOM が、会社および当初の事業計画の基盤になりました。

V2MOM のビジョンが現実になるまでさほど時間を要しなかったことからも、その有効性がうかがえます。

今日でも、Salesforce が事業運営を決定するにあたって真っ先に取り組むのが V2MOM です。Salesforce では毎年、協力して V2MOM を作成しています。この V2MOM は、意思統一をどのように図るか、そして達成目標の優先順位をどのように付けるかの基盤となります。そして、私たちは成果を出すことに責任を持ちます。創立以来、V2MOM は常に成功を可能にしてきた「秘伝のたれ」のような存在です。

Salesforce での V2MOM の作成方法

Salesforce では、V2MOM をどのように作成しているのでしょうか? V2MOM は一部の集団だけのものではありません。この過程は、上層部のコラボレーションプロセスとして始まります。Benioff 氏がその部下と協力して会社の V2MOM を作成します。続いて、フォーカスグループを対象に調査を行い、社内全体の発表ミーティングで披露し、他の人々からのフィードバックを取り入れて最終調整します。

V2MOM は、反復的で透過的、フィードバック主導のプロセスです。V2MOM には誰もがフィードバックや意見を述べることができ、その結果、組織全体の賛同、意思統一、透過性、そして結束がもたらされます。最大の利点は、全従業員が各自の V2MOM を作成できることです。

会社の V2MOM が確定したら、部門、チーム、個人へと順次伝達され、全員が各自の V2MOM を作成します。こうしたやり方によって、Salesforce の各年の優先順位と、各自の役割、目標、パフォーマンスが全社的な成功にどのように貢献するのかを全従業員が明確に理解できます。これこそが意思統一です。

また、V2MOM は Salesforce プラットフォーム内で作成されるため、誰もがボタンをクリックするだけで他の人の V2MOM を確認できます。75,000 人を超える従業員の V2MOM を携帯電話で検索して閲覧し、その人物の人となりや、達成したいと思っていること、その人の業務が会社全体のビジョンの達成にどのように結び付いているかを知ることができるというのは、多大な効果を発揮する啓発的なしくみです。

2 万人超の従業員の中から任意の誰かの V2MOM を携帯電話で検索して閲覧し、その人物の人となりを知ることができます。V2MOM プロセスが完了したら、社内の職位や部署、地域の垣根を越えて、すべての従業員が意思統一を図り、会社の主たる目的に専心し、連携して正しい方向へと速やかに前進していけるようになります。

もちろん V2MOM は、ボックスをクリックして 1 回閲覧したらそれで満足というものではありません。V2MOM はある意味、生のドキュメントで、有意義な対話を誘発したり、年間を通して意思決定に関する情報を伝えたりすることを意図しています。従業員は、自身のマネージャーと優先順位について継続的に対話します。V2MOM の監視、管理、更新については後続の単元で詳しく説明します。

まとめ

核心的な部分で V2MOM は Salesforce を支えています。

  • 各人の V2MOM を会社の V2MOM と確実に一致させることで、全社的な意思統一が図られます。
  • V2MOM に基づいて時間やリソースの割り振りを管理することで、最重要事項を優先できます。
  • V2MOM の基準に照らして進捗状況を常に監視および追跡することで、成果に対する責任を遂行します。

「秘伝のたれ」を味わったところで、そのレシピを探ってみたいと思いませんか? 次の単元で V2MOM の作成方法の「秘訣」を披露します。

リソース

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