第 4 次産業革命の促進要因

学習の目的

この単元を完了すると、次のことができるようになります。

第 4 次産業革命について説明する。
第 4 次産業革命に寄与する要因を識別する。
第 4 次産業革命の範囲が第 3 次までの産業革命の範囲とどう異なるかを説明する。

第 4 次産業革命のはじまりとは?

世紀の変わり目に、状況が再び変わりました。イノベーションのペースが再び加速し始めたのです。

クラウス・シュワブ氏はその著書『第四次産業革命ダボス会議が予測する未来』で次のように説明しています。「第 4 次産業革命は世紀の変わり目に始まり、デジタル革命が基礎となっています。それを特徴付けるのは、インターネットの遍在化とモバイル化、センサーの小型化、性能向上、低価格化、人工知能と機械学習です。」

マサチューセッツ工科大学のエリック・ブリニョルフソン教授とアンドリュー・マカフィー教授は、この時代を「セカンド・マシン・エイジ」と表現しています。デジタルテクノロジーは目新しいものではありませんが、新しい方法で使用されています。

第 3 次までの産業革命と同様に、第 4 次産業革命は私たちをとりまく世界を根本的に変えています。では、どうやって変えているのでしょうか?

第 4 次産業革命とは?

それはよりスマートなつながっている世界です。私たちの周りに築かれつつあります。

第 1 次産業革命についてあらためて考えてみましょう。この革命の原動力となったイノベーションは何でしたか? そうです。蒸気動力です。第 4 次産業革命には、クラウド、ソーシャル、モバイル、IoT、AI というかたちで私たちを前進させる新たなイノベーションがあります。こうしたイノベーションとコンピューティング性能の向上やビッグデータが組み合わされて、次の産業革命が起こっています。

近著『Shaping the Fourth Industrial Revolution』 (第 4 次産業革命の方向付け) でクラウス・シュワブ氏と共著者の Nicholas Davis 氏および Thomas Philbeck 氏は次のように記述しています。「第 4 次産業革命は、私たちをとりまくシステムにおいて進行中の変革や近い将来起こりうる変革を表しており、私たちのほとんどはその変革を当たり前のこととして日々受け入れています。」

この文章について考えてみてましょう。現在、何を当たり前のことと考えていますか? 職場への最適なルートを教えてくれるアプリケーションや、今日の歩数がわかるスマートウォッチはどうですか? 車線変更する前に警告する車載センサーは? 次のバスがいつ頃来るか、リアルタイムで最新情報が表示されるバス停留所はどうでしょう?

[オフィスで机についてスマートフォンを使用する女性の写真]

こうしたイノベーションはすでに現実となっていて、さらに日々新しく現れます。第 4 次産業革命はもう始まっているのです。

第 4 次産業革命は第 3 次産業革命とどう違うのか?

よい質問です。たしかに、この革命とデジタル革命の境界線は少しあいまいかもしれません。では、どうやって線引きしたらよいでしょうか?

シュワブ氏によると、この 2 つを区別する主要な要因が 3 つあります。

速さ
広さと深さ
システムへの影響

それぞれについて説明しましょう。

速さ

世界はかつてないほどつながっており、今回の革命は過去の 3 回に比べ、はるかに速く世界を変革しています。

広さと深さ

Salesforce の CEO Marc Benioff は次のように述べています。「デジタルテクノロジーと材料工学や生物学の飛躍的進歩が 1 つに収束することで、まったく新しい暮らし方が現れています。変化がとらえにくい場合と明確な場合がありますが、テクノロジーは人間であることの意味も変えています。」

システムへの影響

第 4 次産業革命の進歩は非常に高度で相互につながっているため、主要なシステム (たとえば、政治や経済) と国や社会のすべてを変革しています。

なぜ第 4 次産業革命が起きているのか?

すべての産業革命で原動力となっているのはイノベーションです。これは通常、新しいテクノロジーの形をとります。こうしたテクノロジーがコスト低下により広がると、社会を変えます。科学者の研究室にあった 1 台の蒸気機関は概念検証には適しています。一方、数百もの蒸気機関を動力とする鉄道システムは国全体を変えます。

第 4 次産業革命で、私たちが経験している驚くべき変化を促進する主要な要因として、コンピューティング性能と接続デバイスのコストが下がったこと、高度なアルゴリズム、機械学習、その他の形式の人工知能を使いやすくなったこと、ゲノム編集コストが大幅に低下したことなどが挙げられます。

スマートでつながった機械やシステムによって、自動運転車の開発、バーチャルアシスタントの作成、疾患のより正確な診断が可能になり、現実、デジタル、およびバイオの世界を変えています。

こうした変化による影響は?

驚くような統計情報がいくつかあります。

2017 年までに、インターネットの利用者は 30 億人以上、Facebook の利用者は 20 億人以上に達した。
ある予測では、2020 年までに、携帯電話の所有者数が電気や水道の整備された住宅や集落に住む人の数を超える。
2017 年に生まれた子供は生涯、車を運転することがなく、日常作業をロボットに指示するようになる。

現代の子供たちは、テクノロジーが組み合わされて、現実、デジタル、バイオの世界が統合されるのを目撃するでしょう。科学、医薬、その他のテクノロジーにおける進歩が一体となり、それまで治療できなかった疾患や障害はなくなるでしょう。

第 3 次産業革命 (デジタル革命) のはじまりから 60 年経った今でも、私たちはコンピューターが世界を変えることに慣れようとしていますが、第 4 次産業革命は再び人間の暮らし方、働き方、互いのつながり方を変革しようとしています。

つながりが広範囲に拡大したことで、この変革は過去の産業革命よりも速く起きています。その進み方に不安を感じることがあるかもしれません。一方で胸躍ることもあるでしょう。近い将来起こりそうな進歩で社会に大きく貢献できるかもしれません。

次はどこに進むのか?

トレイルの次のモジュールに進み、学習ジャーニーを続けてください。第 4 次産業革命がどのように各業界を変革し、ビジネス、社会、個人に影響を与えているかを説明します。ウィリアム・ギブソンの言葉で締めましょう。「未来はすでにここにある。ただ均等に行きわたっていないだけだ」