ジョブステートメントを作成する
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 効果的なジョブステートメントと非効果的なジョブステートメントを比較する。
- ジョブステートメントを作成する 2 つの方法を定義する。
- ジョブ高度について説明する。
ジョブステートメントの基礎
JTBD フレームワークの主要な要素を理解できたました。次は、どうすれば実践できるかを確認しましょう。
顧客のジョブに基づいてアクションを開始する前に、顧客とのインタビューをもとにアクション可能なジョブと成果のステートメントを作成する必要があります。ジョブステートメントの構造は、組織やロール間で認識を統一するのに役立ちます。
重要: ジョブに関する顧客へのインタビューが完了したら、機能横断チームと結果報告ミーティングをし、インタビューメモに目を通しながらジョブのパターンを見つけ、共通するモチベーションを明らかにし、3 つのディメンション (機能的、感情的、社会的) を明確に記述します。
ジョブステートメントを作成するにはいくつか異なるアプローチがありますが、それらに共通する効果的なステートメントの一般原則があります。次の表で、効果的/非効果的なジョブステートメントに見られる特性を比較できます。
効果的なジョブステートメント |
非効果的なジョブステートメント |
---|---|
顧客の視点を反映する。 |
テクノロジーやソリューションに言及する。 |
「~しているときに」で始まる (トリガーとなるイベントまたは状況)。 |
方法や手法について話す。 |
長期的に安定している。 |
観察したことや嗜好を反映する。 |
必要に応じてコンテキストで明確化する。 |
複合的な概念が含まれる (AND や OR)。 |
次は、表現が重要である理由を示すジョブステートメントの例です。
不適切なジョブステートメント | 適切なジョブステートメント | 理由 |
---|---|---|
モバイルアプリケーションを使用して自分の車から簡単に顧客のメモにアクセスして、ミーティングに備えることができる。 |
外出しているとき、メモにアクセスしたい。その結果、自信を持って顧客とのミーティングの準備ができる。 |
元のステートメントは成果を示し、ソリューションを識別している。 |
従業員は会社の Web サイトでゲーム化されたカスタム学習アプリケーションを使用してコースを受講することを好む。 |
仕事上で新しいことを学ぶ必要があるとき、私はゲーム化された学習アプリケーションを使用したい。その結果、もっと楽しみながらスキルアップできる。 |
元のステートメントには観察結果、嗜好、ソリューションが含まれている。 |
チーム全体が楽しめる、絆を深めるイベントの計画を手伝ってください。 |
チーム力学を強化しようとしているとき、私はみんなが楽しめるエクスペリエンスを計画したい。その結果、チーム全体が楽しみながら仲間意識を培うことができる。 |
元のステートメントには願望のジョブと複合ジョブが含まれている。 |
ジョブストーリーと成果指向手法
ジョブステートメントは 2 つの一般的な手法を使用して作成されます。次のセクションでは、各手法の詳細と、特定の状況にどちらの手法が適しているかを説明します。
ジョブストーリー手法
ジョブストーリー手法では、トリガーとなるイベントまたは状況、ニーズまたはモチベーション、期待される成果という 3 つの要素に着目します。このアプローチは、顧客がジョブを達成するために特定の商品を雇用する理由と、ジョブをよりよく達成できる方法を理解するのに役立ちます。次の表で例を見てみましょう。
ジョブ実行者 |
状況 |
モチベーション |
期待される成果 |
---|---|---|---|
オフィスの従業員 |
通勤の準備をしていて遅れている。 |
現在の天気を知る。 |
通勤中に濡れる可能性を最小限に抑える。 |
マーケティングスペシャリスト |
見込み客にすばやくリーチする必要がある。 |
統合されたデータに基づいてオーディエンスを作成する。 |
オーディエンスを作成するのに必要な時間と技術的知識を減らす。 |
アカウントエグゼクティブ |
私は現実的に最終的な交渉フェーズに進める商談の成立に集中している。 |
適切な商談にすばやく集中する。 |
売上目標を達成する可能性を最大化する。 |
成果指向手法
成果指向手法では、主なジョブを識別し、ジョブごとに期待される成果の包括的なリストを定義します。このアプローチは、新商品を開発したり、市場を再定義したりするときに、考えられるすべてのニーズと成果を理解するのに役立ちます。
顧客のニーズは期待される成果ステートメントによって定義できます。これには次の 4 つの主要な構成要素があります。
- 変化の方向: ジョブ実行者はどのようにジョブを進捗させたいと考えているのか?
- 測定単位: ジョブ実行者が定義した成功評価指標は何か? これには時間、労力、スキル、可能性、能力などがあります。
- ニーズの対象: 何に関するニーズか? ジョブを行うことで何に影響を与えるか?
- 明確化要素: 期待される成果をまとめるために他に必要なコンテキストはあるか?
ジョブストーリーとユーザーストーリーの比較
ところで、ユーザーストーリーはどうするのですか? ジョブストーリーと同じではありませんか? よい質問です!
JTBD のジョブストーリーをアジャイル手法のユーザーストーリーと混同するチームがあります。前提として、JTBD とアジャイル (エピック、ユーザーストーリー、受け入れ基準) は補完し合うものとします。ユーザーストーリーは作成されるソリューション機能を指定するのに対し、ジョブストーリーは枠組みに沿って解決すべき課題の概要を説明します。このように、適切に作成されたジョブストーリーは社内の複数のチームや機能 (マーケティング、エンジニアリング、業務、営業など) に対し、プロセスでそれらのチームの認識を合わせるための概要として使用できます。1 つのジョブストーリーが最終的に複数のユーザーストーリーになることがあります。
Alan Klement 氏によって広く知られるようになったジョブストーリー手法では、トリガーとなるイベントや状況、モチベーションや目標、意図する成果に着目して設計の問題を枠組みに当てはめます。
When _____ , I want to _____ , so I can _____ .(_____ときに、_____ したい、その結果 _____ できる)
最初のシャベルと穴の問題に戻ると、ジョブストーリーは次のようになります。
地面が融けたとき、穴を掘りたい。その結果、種を蒔いて春に花を咲かせることができる。
100 個のユーザーストーリーを 1 つのジョブストーリーの下に個々のステップとしてまとめることができると理解してください。この例の意図する成果は、種が花を咲かせることです。この主なジョブ (花を育てる) は複数のジョブに分解できるため、ユーザーは主なジョブを最初から最後まで完了できます。あるユーザーはシャベルを買うかもしれません。別のユーザーは穴掘り人を雇うかもしれません。他にもあるかもしれません。
ユーザーの成すべきジョブを知ることがプロセスの最初のステップです。全体像を念頭に置くと、プロセスでその後作成されるユーザーストーリーを伝えるのに役立ちます。ユーザーストーリーとジョブストーリーはどちらもカスタマーサクセス全体にとってきわめて重要です。
ジョブストーリーの作成に関する Klement 氏の見解についての詳細は、「リソース」セクションのリンク先を参照してください。
次は、主なジョブの適切な高度を判断する方法です。
ジョブ高度
ジョブステートメントを作成するときに、最も難しいことの 1 つはジョブの適切な高度を判断することです。ジョブ高度は、ジョブの範囲であり、ジョブの範囲が広すぎたり狭すぎたりしないか評価するのに役立ちます。定義するジョブの範囲が広すぎると、ジョブをアクション可能にできなくなり、狭すぎるとイノベーションの範囲が制限されかねません。
以下に挙げる質問は、主なジョブの適切な高度を判断するときに念頭におくべき指針となります。主なジョブは複数の小さいジョブに分割できますが、ソリューションのイノベーションの範囲を定義するためには、主なジョブの適切な高度に合わせておくことが重要です。
- ジョブは長期的に安定しているか? 安定していない場合、ジョブにはおそらく現代のソリューションが含まれています。
- ジョブ実行者が朝目覚めて「今日は『x ジョブ』をする必要がある」と言うところを想像できるか? できない場合、主なジョブが狭い範囲のタスクや細かいタスクを参照している可能性があります。
- このジョブを解決することは、会社の能力やビジネス目標に合っているか? 合っていない場合、ジョブは商品に関する判断を伝えるという点で抽象的または非効果的すぎる可能性があります。
ユーザーが特定のジョブを達成する「方法」を質問すると、ジョブの階層を下に移動します。ユーザーがジョブを達成したい「理由」を質問すると、ジョブの階層を上に移動します。ジョブ高度を判断するには少しコツが要ります。機能横断チームと一緒に試しながら主なジョブの適切な高度に合わせる必要があります。
マーケティングスペシャリストのさまざまなジョブ高度を調べる例を見てみましょう。
レベル |
例 | 成果 |
---|---|---|
願望のジョブ: 理想的な状態、新しい期待される成果、多くの場合、感情的かつ戦略的 |
市場に出すときに包括的に私の顧客を理解している会社として見られる |
|
主なジョブ: 幅広い機能的目標、複数のサブジョブが含まれる |
あらゆるタッチポイントで私の顧客向けにパーソナライズされたエクスペリエンスを作成する |
|
機能的ジョブ |
既存の顧客データを補強する |
|
機能的ジョブ |
統合されたデータに基づいてオーディエンスを作成する |
|
まとめ
ジョブステートメントができたら、次は簡単に検査します。元のインタビュー対象に戻ってジョブステートメントが適切か確認し、各ステートメントに顧客が同意するかどうかを自問します。できれば、顧客に直接質問してください。できなくても、相手の応答はかなり容易に想像がつくはずです。
お疲れ様でした。モジュールはこれで終わりですが、JTBD について学ぶことはまだ沢山あります。完璧なケーキのように、JTBD へのアプローチをユースケースに合わせる必要があります。JTBD フレームワークを効果的に適用して成功を促進するために、このモジュールのすべてのリソースを活用することをお勧めします。