トライアルの提供方法の決定
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- パートナーが使用できる無料トライアルの種類を説明する。
- これらの種類のトライアルの欠点と利点を比較する。
- 特定のプロジェクトに最適な種類のトライアルを評価する。
提供するトライアルの種類の決定
Salesforce は、ISV ができるだけ優れたカスタマーエクスペリエンスを作成できるように支援しており、作成しやすいように製品を共有するさまざまな方法を用意しています。最初のステップは、顧客の要望は何かを判断することです。
見込み客がすでに Salesforce を使用していて 1 つ以上の組織にアクセスできる場合があります。こうした見込み客が既存データを使用して製品を試せるようにする場合、その Sandbox または本番組織にトライアルベースのパッケージを直接インストールできます。これはインストール可能トライアルと呼ばれます。
ただし、既存の顧客データの使用が常に妥当なわけではありません。見込み客によっては、アプリケーションをインストールできない場合や組織さえない場合があります。または、特定のエクスペリエンス向けの特定のアイデアがあって、特定のデータを使用した方が、デモが容易になることもあります。CRM Analytics または設定済みの Experience Cloud サイトを使用する場合もあるでしょう。これらは見込み客所有の組織で実行する必要があります。サンプルデータを使用するトライアルを設定するには、2 つの方法があります。
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機能制限トライアル。見込み客は事前設定された組織にログインし、評価取引先を使用して機能を見て回ることができます。リリースは容易ですが、参照のみで、ユーザーはデータを変更できません。
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Trialforce。ソリューションを含む完全に新規のトライアル組織を作成し、カスタムサンプルデータを入力します。Trialforce ではより多くの準備が必要ですが、カスタマイズが可能です。
インストール可能トライアル、機能制限トライアル、Trialforce の 3 つのアプローチから、製品を見込み客に提供する方法を決定できます。1 つのアプローチを選択することも、必要に応じて組み合わせることもできます。
では、それぞれのトライアルを詳しく見ていきましょう。
顧客所有のデータを使用するトライアル
製品によっては、インストール可能トライアルが最も簡単です。ISVforce パートナーの製品は、既存の Salesforce 機能を拡張します。それらは Sales Cloud、Service Cloud、Health Cloud、Financial Services Cloud の顧客のニーズを満たします。これらの顧客には、既存のデータでソリューションがどう機能するかを示すトライアルを提供することをお勧めします。
では、このしくみを見てみましょう。Sales Cloud を使用する Alice は、常に重複するリードレコードを検索しています。Alice は AppExchange にアクセスし、こうした重複レコードを削除するソリューションがないか確認しました。
あなたの会社、Leed-Dee-Dupe がリリースしたアプリケーション Leed-Dee-Duper にこの機能があります。重複を検出して除去し、リード情報をすばやく直観的にマージします。明らかに Alice には Leed-Dee-Duper が必要です。ただし、まだ気付いていません。
Alice が「リードの重複排除」を AppExchange で検索すると、いくつかの製品が検出されました。Leed-Dee-Duper も含まれていますが、どうすれば Alice に選択してもらえるでしょうか? Alice は無料トライアルができない製品は検討しない可能性があります。インストール可能トライアルがあれば、Alice はすぐに自分のデータを使用して試すことができます。
少しの作業で強い印象を残す
インストール可能トライアルでは、見込み客が実際の顧客データを使用するため、提供側で必要なのは最小限の設定です。サンプルデータの生成や設定はありません。アプリケーションは、顧客がフルバージョンを購入した場合にインストールするのと同じメタデータのパッケージを使用します。購入者の家具が置かれた家を売るようなものです。
トライアル期間は、24 時間のような短期から、必要なだけの長さまでどのようにも指定できます。契約条件は使用するライセンスに応じて異なります。
顧客が製品を購入した場合、顧客の組織のトライアルはフルバージョンに変換されます。購入を見送った場合、ソリューションをアンインストールすることも、ライセンスを期限切れにすることもできます。どちらの場合もデータに影響はありませんが、当然、重複は排除されています。
インストール可能トライアルでは、製品の最もよい面を示すことができます。ソリューションが既存の組織を拡張し、しかも既存の顧客データを使用してそのデモがしやすい場合は、インストール可能トライアルを使用してください。
インストール可能トライアルを使用するのに ISVforce パートナーである必要はありません。OEM (Original Equipment Manufacturer) パートナーを検討してください。OEM パートナーは通常、Salesforce を使用していないお客様に対する販売を行いますが、すでに Salesforce ユーザーである見込み客に働きかける場合はインストール可能トライアルを使用できます。
機能制限トライアルを使用した簡易設定のトライアル
機能制限トライアルは、見込み客の組織に何もインストールすることなく最も簡単に製品のデモを行う方法です。機能制限トライアルは事前設定された Developer Edition 組織で、参照のみのサンプルデータが入力されています。完全に独立しており、顧客側に必要なのは Web ブラウザーのみです。
データを変更できないのになぜソリューションのデモを行うのでしょうか? 多くの場合、参照のみのトライアルでは多くの作業を回避することができます。製品が複雑な外部サービスを使用している場合、機能制限トライアルなら、さまざまな場所で外部サービスを設定する作業が不要になります。サービスは独自の組織で実行されます。
製品で外部会計システムを使用していて、ライセンスシート数が限られているとします。システムは請求書、口座残高などを追跡する他の外部サービスとやりとりしています。このシステムを見込み客ごとにリリースする方法を考え出すのは、かなりの負担です。すべてが設定された機能制限トライアルをリリースするほうがはるかに簡単です。
AppExchange リストごとに 1 つの機能制限トライアル組織を設定します。機能制限トライアル組織には、管理者と評価ユーザー (データ変更不可) という 2 種類のユーザーがあります。見込み客ユーザーは評価ユーザーとして自動的にログインします。これらのユーザーは一切の変更ができないため、他の見込み客のエクスペリエンスも変更できません。
見込み客にデータを変更させずに製品の機能を見せる場合、機能制限トライアルは自己完結型トライアルをリリースする最も簡単な方法です。
Trialforce による個別対応
インストール可能トライアルも機能制限トライアルも有効ではない場合があります。製品によっては、顧客ごとに異なるエクスペリエンスを提供する必要があります。カスタマイズしたエクスペリエンスで確実に見込み客を引き付けるには、完全にインタラクティブな環境が必要です。追加の作業をしてでも可能な限り最適なトライアルを作成する気があるなら、Trialforce を利用することをお勧めします。
Trialforce を使用すると、見込み客はそれぞれ、無料トライアルをホストする既成の組織を利用できます。すべてのトライアル組織が同じになるように設定することも、エクスペリエンスごとに異なる設定を定義することもできます。小売とヘルスケアの見込み客がいる場合、Trialforce ではそれぞれのエクスペリエンスを作成できます。小売の見込み客は、在庫、売上、販促などの POS トランザクションのサンプルデータで試用ができます。ヘルスケアの見込み客には、サンプルの患者、治療、および保険レコードが表示されます。
デモで使用する Trialforce エクスペリエンスを提供したら、営業チームは何ができるか想像してみてください。
Trialforce テンプレートを作成してカスタマイズしたトライアルを作成できます。テンプレートは、このバージョンのトライアルで使用するすべてが含まれる組織のスナップショットです。サンプルデータ、ブランド設定されたログイン画面、およびメールテンプレートが含まれます。テンプレートは必要な数だけ作成できます。たとえば、ヘルスケアの顧客用に 1 つ、小売の顧客用に 1 つなど、見込み客のエクスペリエンスごとに 1 つずつ作成することができます。
Trialforce と他の種類のトライアルとの最大の違いは、サンプルデータおよび設定の作成にかかる労力です。Trialforce は実に柔軟です。事前設定したエクスペリエンスを 1 つ以上作成できます。これに対し機能制限トライアルでは 1 つのバージョンしか作成できません。ただし、その柔軟性も、適切なサンプルデータがなければ効果がありません。強力なテンプレートを作成する方法は、このモジュールで後述します。
容易に顧客の取引を開始する
顧客が製品を試すと決定したら、Trialforce で新しい組織を作成してトライアルとそのデータをインストールします。パートナーとして環境ハブを使用し、TrialforceID でテンプレートを作成して、一意のユーザー名と顧客のメールアドレスを入力します。顧客に、組織とユーザー名の詳細が記載されたメールが届きます。顧客がログインすると、独自のパスワードを設定し、組織のすべてのデータにアクセスして変更することができます。
見込み客が購入を決定すると、Trialforce 組織は本番組織になり、顧客は組織を継続して使用できます。顧客がトライアルに独自のデータを入力していたら、そのトライアル組織を保持したいでしょう。こうした場合にサンプルデータを削除する方法を必ず前もって計画しておいてください。見込み客がトライアル組織を使用したくない場合は、提供者または新しく取引を開始した見込み客は、別のトライアルを作成して最初から始めることができます。
Trialforce の有効性
Trialforce は、OEM パートナーが完全に新規の顧客に販売する場合は特に有効です。これらの顧客は、トライアルのサンプルデータを使用してすばやく使用を開始できます。一方、ISVforce パートナーでも次のようなケースで Trialforce が有効です。
- ビジネスユーザーが製品を評価しようとしているが、パッケージをインストールできない場合、Trialforce を利用すると、組織の管理権限がなくてもビジネスユーザーはソリューションを試すことができます。
- 既存の顧客に、使用中のツールを補完する新製品を見せることができます。
- ソリューションの素晴らしい機能を紹介するのにリッチデータが必要な場合。たとえば、プロジェクト管理アプリケーションの場合なら Trialforce を使用して詳細なガントチャートを作成し、顧客を感嘆させることができます。
- 設定は難しいが、ひとたび稼働すれば素晴らしい製品である場合。面倒な作業は Trialforce に任せましょう。
使用可能なトライアルの種類について詳しく理解できたので、見込み客に提供するエクスペリエンスの種類について考えましょう。これらのトライアルのうち、戦略に最も妥当なものをいくつでも使用できます。また、必要なだけカスタマイズできます。ただし、そのための作業は必要です。
説明はこのくらいにしましょう! 次の単元に進み、各種トライアルの設定方法を確認しましょう。
リソース