請求商品モデリングの知識を深める
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 請求プロセスでのルート商品と子スペックの役割を説明する。
- パワーアトリビュートで保険契約の契約条件がどのように適用されるかを説明する。
- 請求プロセスでの請求商品スペックとその他の請求スペックの役割を定義する。
請求モデル
「Insurance Quoting Foundations (保険見積の基礎)」モジュールでは、見積と保険契約の基礎となる商品仕様 (スペック) の概念を紹介しています。
内容を簡単におさらいしましょう。保険商品をモデル化する場合、補償範囲スペック、保険対象者スペック、保険対象物スペックを持つルート商品として作成されます。アトリビュートとは、各スペックを定義するコンポーネントです。こうしたスペックとアトリビュートの設定により商品モデルが形成されます。
同じように、商品管理者は請求モデルを使用して請求を定義します。
こうしたコンポーネントは相互にどう関係するのでしょうか?
商品モデル (1) が特定の保険契約レコード (2) の基礎となります。基本的に、保険契約とは保険対象物、保険対象者、補償範囲に関する情報がすべて含まれる商品モデルの特定の設定です。
この保険契約レコード (4) が商品モデル (3) と組み合わされて特定の請求レコードが定義されます。このレコードには、保険契約レコードから請求に関連する保険契約情報がすべて取り込まれます。請求レコードにも、請求モデルから請求に関わる財産物や傷害に関する詳細が取り込まれます。
そのため、請求を理解するには、商品モデルと請求モデルの両方を理解する必要があります。この 2 つを基礎としてあらゆるものが作成されるからです。
請求スペックとアトリビュート
請求商品モデルには、請求に関わる財産物や傷害が記述されます。このモデルには、請求処理の各側面を自動化するルールも含まれます。
ルート商品モデルと同様に、請求商品モデルにはさまざまな商品スペックがあります。
次のような請求スペックがあります。
- 請求商品スペック (1) は商品モデルのルート商品と似ています。他のスペックをルート商品に追加するように、他の請求スペック種別を請求商品に追加します。請求商品スペックには請求のルールも定義されます。
- 請求傷害スペック (2) には他人により被った傷害が定義されます。
- 商品財物スペック (3) には財産物に対する損害が定義されます。
10 以上のスペックが含まれることもあるルート商品モデルに比べ、一般に請求商品モデルはわずか数個のスペックに限られます。通常、収集する必要があるのは傷害と対物損害に関する情報のみです。それ以外の請求に必要な情報はすべて保険契約から取得されます。
自動車請求に関するシンプルな請求商品モデルを見てみましょう。
[Auto Claim (自動車請求)] (1) 請求商品スペックには 2 つの子スペックが含まれます。
- [Injury (傷害)] 請求傷害スペック (2) には傷害に関する情報が保存されます。
- [Involved Vehicle (関係車両)] 請求財物スペック (3) には関係車両の損害に関する情報が含まれます。
これらのスペックにアトリビュートを追加します。アトリビュートにはスペックを定義する詳細が保存されます。
[Involved Vehicle (関係車両)] 請求財物スペックのサンプルアトリビュートを見てみましょう。
2 つのアトリビュートカテゴリ [Auto Vehicle (自動車)] と [請求項目] にはそれぞれアトリビュートが含まれます。
- [Auto Vehicle (自動車)] カテゴリ (1) には関係車両に関する識別詳細を提供するアトリビュートが含まれます。保険契約には保険対象の自動車に関する情報がすでに含まれていますが、他の関係車両に関する詳細は保持されていないため、請求にはこのような識別詳細が保存されます。
- [請求項目] カテゴリ (2) には、関係車両の損害に関する具体的な情報 (重大度、走行可能かどうか、損害の見積など) が保存されます。
初期損害通知の時点で、請求システムには事故に関する情報が収集され、専用の請求サービスで請求レコードに関連情報が自動的に入力されます。
請求ルール
請求商品ルールにより、請求のデフォルトの動作を変更する条件が設定されます。商品ルールは請求プロセスの重要な側面を自動化するシンプルで強力な方法です。
請求商品ルールで true と評価されると、請求補償範囲のオープンや備金額の設定などのアクションが自動的にトリガーされます。ルールは請求がライフサイクルをどう進むかも決定します。請求が別の状態 (損害査定担当者レビュー、調査、クローズなど) に進むための条件を設定します。
通常、請求商品ルールは請求商品自体に定義します。
請求商品ルールでは通常、ルール式でアトリビュートを参照します。
以下の画面例では、このルールでレンタカー補償を自動的にオープンするための条件が設定されています。ルールでは [Involved Vehicle (関係車両)] 請求財物スペックの claimDrivable アトリビュートを参照します。
初期損害通知の時点で、サービスにより、claimDrivable アトリビュートの設定が「no」かどうか確認されます。
- true の場合、レンタカー請求補償範囲が自動的にオープンされ、請求はドラフトからオープンに進みます。
- false の場合、レンタカー請求補償範囲はオープンされず、請求は進みません。
保険契約のモデル化による請求のサポート
請求では請求商品モデルと保険契約を一緒に使用します。このモデリングアプローチでエンドツーエンドのデジタル保険プロセスの整合性が確保されます。保険契約条件を請求とシームレスに連動させるために、モデリングに関して総合的な判断をする必要があります。
商品をモデル化するとき、保険契約で実際に何が補償されるかを定義する補償範囲スペックを作成します。
たとえば、自動者保険契約には通常、複数の補償範囲が含まれ、保険契約者にさまざまな種類の損害に対する補償を提供します。
- 車両衝突では、他の車両や物体との事故により発生した、保険契約者が保有する自動車の損害が補償されます。
- 傷害および対物損害では、他人の怪我や財産物への損害に関連する費用が補償されます。
- 車両総合では、盗難、火災、破壊行為など対象の危険状況による損害に関連する損失が補償されます。
保険契約に応じて、こうした補償範囲が任意または必須になることがあります。保険契約者は保険の購入時に必要な補償範囲と契約条件を選択します。
保険契約者が請求を申請するとき、こうした保険契約補償範囲を請求補償範囲としてオープンすることができます。
- 保険契約者が衝突事故に遭ったら、車両衝突請求補償範囲をオープンできます。
- その事故で他人が怪我をした場合は、[傷害と対物損害] 請求補償範囲をオープンできます。
こうした請求補償範囲には請求される損害に関する具体的な詳細が保存されます。
このように保険契約と請求が緊密に統合されているため、補償範囲スペックを設計する際、特に限度額や免責金額などの保険契約条件に関して、請求プロセスを考慮することが非常に重要になります。こうした条件定義がどのように請求で特に重要な役割を果たすかを学習しましょう。
パワーアトリビュート
請求を処理するとき、請求システムでは限度額や免責金額のような保険契約条件を柔軟に適用する必要があります。インシデント単位や人単位に適用される条件もあれば、全請求にわたって集計する必要がある条件もあります。たとえば、通常、自動者保険契約の免責金額は請求単位に適用されます。
こうした変動する要件をサポートするために、請求管理ではパワーアトリビュートという非常に強力なアトリビュートを採用しています。標準のアトリビュートと同じように作成し、請求時の機能を制御するプロパティを追加して有効にします。
パワーアトリビュートで最も重要な 2 つのプロパティは、アトリビュートクラスとアトリビュートスコープです。
アトリビュートクラス
アトリビュートクラスでは保険契約条件の種別を定義します。複数のクラスを使用できます。
クラス |
説明 |
例 |
---|---|---|
上限 |
補償される損害に対して保険会社が支払う最大金額。 サブ種別として、通貨、スコープ数、単位数などがあります。 |
傷害賠償責任の限度額 20 万ドル |
免責金額 |
請求者が自己負担する金額。この金額を超えるとプランで保険金が支払われます。 |
車両衝突補償の免責金額 500 ドル |
自己負担額 |
治療を受けるなど、ケアの時点で、対象の補償範囲について請求者が支払うあらかじめ決められた金額。 |
緊急外来の受診自己負担額 500 ドル |
自己負担割合 |
免責金額差引後の補償範囲の費用全体に対して請求者が支払う割合。 |
車両衝突補償の自己負担割合 20% |
自己負担限度額 |
保険契約者の責任となる費用分担の最大額。 |
健康保険の自己負担限度額 4,000 ドル |
ファイナンシャルと査定フェーズでは、請求システムにより自動的にクラスごとに適切なロジックが適用されます。
- 請求額が限度額のしきい値を越えると、システムで支払が停止されます。
- 免責金額については、システムで調整金額が計算されて支払詳細に設定されます。
アトリビュートクラスは柔軟でシンプルであるため、期間の短縮や人的ミスの削減に効力を発揮します。
アトリビュートスコープ
条件を追跡する範囲を定義するアトリビュートのスコープを考慮することも重要です。
免責金額があるとします。これが年間免責積金額の場合、各被保険者または保険契約全体のどちらに適用するかを決定する必要があります。免責金額が個々の請求に適用される場合、オープンしている各請求補償範囲または請求全体のどちらに適用するかを指定する必要があります。
スコープを定義すると、請求管理システムで高度な条件設定を簡単に処理できるようになります。
4 種類のスコープを使用できます。
スコープ | 適用方法 | 例 |
---|---|---|
保険契約 |
保険契約のすべての請求 |
保険契約全体に適用される年間免責金額 |
保険契約補償範囲 |
特定の保険契約補償範囲のすべての請求 |
各保険契約関係者に適用される健康診断の限度額 |
請求 |
1 つの請求 |
請求単位の傷害限度額 |
請求補償範囲 |
1 つの請求補償範囲 |
人単位の傷害限度額 |
保険契約条件のパワーアトリビュートを作成して商品モデルに適用すると、新規請求ごと、または請求補償範囲ごとに保険契約条件状況のインスタンスが作成されます。請求に対してファイナンシャルな活動が発生すると、トランザクションにより保険契約条件追跡エントリ台帳に記録されます。これにより、請求ハンドラーが損害査定担当者ワークベンチで簡単に限度額や免責金額を確認できます。
これで、請求の基礎的なコンポーネントを理解できました。次の単元に進んで、初回損害通知でどのように請求に関するデータが収集され、情報から請求レコードが作成されるかを学習しましょう。