アートに生成 AI を効果的かつ責任をもって使用する
学習の目的
この単元を完了すると、次のことができるようになります。
- 生成された画像をワークフローに追加する場合の現実的な目標を設定する。
- 生成される出力を効率的に管理するプロンプトを作成する。
- 生成 AI のアートワークの使用に関する倫理的な懸念について説明する。
生成されたアートをプロジェクトに取り込む
プレゼンテーションのコンセプトをイラストで示したい場合や、商品を実際に使用している場面を視覚化したい場合に生成 AI があれば、画像を取り込んでプロジェクトの見栄えをよくすることができます。AI を使って画像を生成すること自体が一種のアートです。適切なアプローチを用いれば、次回のプロジェクトに適した画像を生成できます。
画像を生成するときは、アートが主観的なものである点に留意します。あなたが伝えたいことを的確に示す画像を所望するかもしれませんが、完璧な画像など存在しません! あなたが素晴らしいと思っても、他の人はそう思わないかもしれません。ですから、95% 満足できる画像が生成されれば良しとし、残りの 5% は主観に左右される部分と考えます。
プロジェクトに画像を追加する目的を認識します。たとえば、あなたの目的が、文章の途中に興味を引く画像を挿入することであったとします。けれども、画像を生成し始めた途端に、完璧な画像を手に入れることに躍起になり、それが目的になってしまうことがあります。そうなると、コンテンツを補うものという当初の目的を満たす画像が却下されてしまう可能性があります。
本来は、完璧とは言えない小さな画像で良かったはずです。アートワークがプロジェクトの補足に過ぎないのであれば、多少の不具合があっても気付かれないものと思われます。たとえば、「生成 AI の基本」バッジでこの画像が使われています。
よく見ると、このテーブルには脚が 5 本あります。この画像は完璧ではありませんが、十分に役目を果たしています。概して、ユーザー自身の柔軟性が高いほど、許容できる結果を早く得ることができます。AI 生成ツールの多くは有料サービスであるため、通常はコストも節約できます。こうしたツールの使用においては、柔軟であると同時に賢明になることです。
プロンプトエンジニアリングの技巧
「プロンプトの基本事項」バッジで説明したとおり、プロンプトは生成 AI モデルとやりとりする手段です。テキスト (と場合によっては 1 ~ 2 つの画像) でモデルに指示を与えると、あなたが望むことに対する AI の最善の予測が返されます。通常は、プロンプトの質が高ければ出力の質も高まります。
ところで、適切なプロンプトにするにはどうすれば良いのでしょうか? 単純な質問のように聞こえますが、デジタルアーチストの間でこの点が議論の的になっています。モデルのトレーニング時にどのようなつながりが形成されるのか私たちが完全に理解することはできないため、モデルがどのように応答するかには常に不確実性が伴います。ですから、私たちは知識を基に推測し、最善の結果を期待します。予想どおりになることもあれば、外れることもあります。これがプロンプトエンジニアリングの基盤です。この用語は、アートを制作するツールとして生成 AI を初めて採用したアーチストらのサブカルチャーから広まりました。
プロンプトエンジニアリングとは、プロンプトを試行して、どのような結果になるか検証することです。初期のプロンプトエンジニアが、どうすれば生成 AI の出力に影響を及ぼすことができるか試行錯誤するうちに、驚くほど効果的な手法を見い出しました。プロンプトエンジニアリングは今や高度な技巧に進化していますが、生成 AI ツールの初心者がより良い結果を得るためのシンプルな手法も確立されています。
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スタイル修飾子を使用する。洞窟画から 3D レンダリングまで、アートには無数の形態があります。プロンプトに、印象派などの特定のスタイルや、モネなどの具体的なアーチストを追加します。時代、地域、題材について説明します。アートの特定のスタイルに関連付けられることが多いすべての要素がモデルの一部になります。
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品質記述子を使用する。AI モデルは何をもって美しいとするかについての意見を持ち合わせていませんが、私たち人間には美的感覚があり、自分の意見をプロンプトに書き出すことができます。こうした主観的な意見も最終的にモデルの一部になります。ですから、「高解像度の美しい平穏な田舎の村の絵画」と指示すれば、風光明媚な画像が生成されるものと思われます。
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重要なポイントを繰り返す。アーチストに「雪、雪、雪、雪、雪だらけの田舎の村」を描いて欲しいと依頼するのはしつこいように思えるかもしれません。生成 AI モデルの場合は、反復に忠実に反応します (鬱陶しがることもありません)。反復された言葉や、「非常」「たくさん」などで修飾された言葉が重視されます。
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重要なポイントを強調する。モデルの中には、特定の用語の重要性を直接コントロールできるものがあります。たとえば、Stable Diffusion ではプロンプトの各部に数値を入力できます。具体的には、「田舎の村 | 雪:10 | 星:5 | 雲:-10」と指定すると、大雪が降った後の澄んだ星空が描かれます。すべてのモデルがこうした直接的な重み付けをサポートしているわけではなく、構文も異なるため、使用しているツールでどの程度コントロール可能か確認してください。
stability.ai の DreamStudio で、「印象派のスタイルで描かれた、とても美しい平穏な田舎の村の夜景 | 雪:10 | 星:5 | 雲:-20」というプロンプトに従って AI が生成した画像
プロンプトエンジニアリングをアートとするか、クラフトとみなすか、サイエンスと考えるかは人それぞれですが、この技巧には練習を要します。前述のとおり、完璧なプロンプトというものは存在せず、完璧なアートワークも存在しません。AI による画像を作成するときに、想定外の結果も前向きに受け入れれば、やがて次回のプロジェクトに適した画像にたどり着きます。
生成されたアートワークにまつわる倫理
AI テクノロジーの進歩に伴い、倫理的な問題が浮上しています。万人を満足させる答えを見つけるのは困難ながら、懸念の理解に努めることは可能です。
多くのアーチストにとって最大の懸念は盗作です。モデルのトレーニングにアーチストの作品が使用されれば、モデルがそのスタイルを複製する可能性があります。中には、画像が既存の作品の模倣であることが明白な場合があります。他にも、スタイルが酷似しているため、偽造品が本物として通用する可能性がある場合もあります。多くのアーチストは自分の作品がトレーニングデータから削除されることを望んでおり、幸いにも一般的なモデルのキュレーターは誠意をもって対応しています。
なりすましは作品の模倣ほど明白ではありませんが、より陰湿な問題です。AI を使用して誰かの顔を別人の顔に差し換えるディープフェイク動画についてすでにご存知かもしれません。残念ながら、ディープフェイクは模倣される人の同意なしに作成されることが少なくありません。アイドル歌手がふざけたことを言っている面白い動画を受け取ったところで、特に害はないと思うかもしれません。けれども、それが商品を売るために作成された画像だったらどうでしょうか? あるいは、争点について虚偽を流布するために政治家が利用されているとしたらどうでしょうか? こうした悪用は氷山の一角に過ぎません。「百聞は一見に如かず」とは言えなくなりつつある今、私たちは不正行為を見極めるスキルを磨く必要があります。
生成 AI の有用性は、そのトレーニングに使用されるデータの質に比例します。データにバイアスがかかっていれば、生成される出力にもバイアスがかかります。これまで、医師と言えば男性像が描かれてきたため、たとえ「医師」と「男性」のつながりが現状を反映していなくても、モデルに両者の強いつながりが読み込まれている可能性があります。ですから、あなたにステレオタイプを助長するつもりがなくても、あなたの指示を受けたモデルがステレオタイプを助長することがあります。重み付けを適用してバイアスを打ち消すことを検討します。
生成 AI はある意味、常に派生的なものです。実際、この派生的な性質によって真の創造性が抑制される可能性があります。ピカソが DALL-E にアクセスできたなら、キュービズムは存在したでしょうか? 今日生成された画像で明日の AI がトレーニングされることから、同じスタイルが繰り返されていくことになります。私たち人間が、人間参加型の AI 活用の一形態として、アートに対する独自のビジョンの実現に資することが切実に求められています。
最後に、生成された画像を使用する予定の場合は、「AI で生成」という透かしのような簡単な方法で、その画像の出どころを示すことを検討します。透明性によって信頼が築かれます。モデルでは、作品がフィードバックループに追加されないようにプログラムすることが可能です。作品を AI で生成されたものと認定する決まったやり方はありませんが、米国現代語学文学協会 (MLA) が一定のガイドラインを定めています。
これで、生成 AI の効果的かつ責任ある使い方の詳細を理解することができました。次回のプロジェクトに生成された画像を追加してみてください。
リソース
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Trailhead: プロンプトの基本事項
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Trailhead: 人工知能の責任ある作成
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Web サイト: Prompt Engineering Guide (プロンプトエンジニアリングガイド)
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Web サイト: MLA Style Center: How do I cite generative AI in MLA style? (MLA スタイルで生成 AI を引用する方法)